仕事中のつわりで休める?休む期間や診断書の有無について
仕事をしている女性が妊娠5週頃から16週頃までのあいだのつわりをどのように乗り切ったら良いのかまとめました。つわりで仕事を休む場合に必要な手続きや書類、役立つ書類や制度をご紹介します。妊娠初期はうれしい半面、仕事と子育ての両立に悩む機会も多いことでしょう。安心してつわり時期を乗り越える方法をみつけたいですね。
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目次
つわりを理由に仕事を休むときの心得
つわりの報告の方法・時期は?
妊娠を周囲に報告する目安のひとつに、安定期に入ってからという考え方があります。しかし、つわりは妊娠5週頃からはじまり、16週くらいまで続くのが一般的です。安定期に入るころにはつわりの症状は改善されていることが多く、フォローやサポートを得やすくするためには、妊娠がわかった早い段階で職場に報告することが望ましいと言えそうです。
どのように報告するか、誰に相談するかは職場の環境で左右されるところがあります。就業規則があればその内容を確認しながら、直接の上司や出産経験のある女性に相談してみると良いでしょう。
どんな症状だったら休める?
日本産婦人科学会が示す「つわりと妊娠悪阻の症状による分類」では、1日数回の苦痛を伴う吐き気や嘔吐があったり、食事をとることが難しかったりした場合、冷や汗、頭痛、強い全身倦怠感を示すときに重症度のつわりと分類されています。
また「母性健康管理指導事項連絡カード」では、つわりの症状が著しいときの標準措置として勤務時間の短縮があげられており、必要に応じてその他の指導が加えられるようになっています。2つを指標にすると、吐く回数が頻回で、食事や飲み物をとるのが難しい場合、極度な倦怠感があるときは、医師の指導を通じて休暇を取得することが可能と考えられます。
しかしつわりには症状の強さをあらわす尺度はなく、仕事を休める基準値は設けられていません。そのため、仕事を休めるかどうかは個別のケースごとに、総合的に判断する場合が多いのが現状です。つわりは疲れなどの体調不良が原因で悪化するケースがあるともいわれています。医師や職場とよく相談し、無理なくスケジュールを管理できると良いですね。
つわりを理由に休める期間は?
妊娠、出産を通じ、女性に不利益が生じることがないように定められた法律には労働基準法や男女雇用機会均等法があります。労働基準法では女性が申請すれば産前6週間、産後8週間は就業させてはいけない規定となっています。しかし、つわりに関する特別な規定は設けられていません。
そのため、労働時間の短縮や休憩に関する措置、症状に応じた作業の軽減や休業の措置をとるよう企業に求めた法律を基準に、個々の事例で休業の期間を決めていきます。
つわりの症状が強いときに、症状や職場の環境に応じて医師や職場に相談し、休業と時差通勤、勤務時間の短縮などを組み合わせて対応していくのが望ましいと考えられるでしょう。
つわりで診断書をもらう方法は?
つわりで診断書が発行されるケースは、尿中のケトン体の数値や血圧が高いといった異常があったときや、脱水や著しい体重減少があったときなど、なにかしらの治療が必要とされる状態のときとなります。このような場合、医師や病院窓口に申請して診断書を発行してもらいます。
数値に異常がない場合でも、通常業務が困難な場合は診断書を作成してもらえることがありますが、つわりは個人差があり、また対応は医師によって異なります。診断書の発行を申請したからと言って、確実に診断書がもらえるかは断言できないのです。
また企業側から休業期間を指定されるなど、会社都合にあわせた診断書の提出を求められることがありますが、診断書は虚偽の記載ができない公的な書類である以上、会社や自分の都合にあわせて診断書を書いてもらうことは難しい場合もあるでしょう。
診断書と同等の効力を持ち、会社に対して医師の指導内容を守るようお願いするための申請書の形式も備えたものに「母性健康管理指導事項連絡カード」があります。母性健康管理指導事項連絡カードは厚生労働省のホームページなどからダウンロードできる書類で、医師の指導内容を会社側に伝えるために役立ちます。詳しくは通院している病院で確認してみましょう。
つわりで仕事を休むと給料はどうなる?
一般的に、症状の重症度にかかわらず、治療を必要としないつわりは病気扱いではなく「特別な健康状態にある」という判断です。そのため、医師の指導をともなわないつわり休暇が、病気休暇となるか欠勤となるかは会社の規定に順ずることとなります。
病気休暇、いわゆる病欠の扱いとなった場合は、企業側にその期間の賃金を支払う義務はなく、原則として給与は支給されません。そこで、有給休暇を取得してつわり休暇に充てる方もいます。
診断書や母性健康管理指導事項連絡カードをもとにしたつわり休暇では、健康保険組合に対し傷病手当金を申請できるケースがあります。傷病手当金は、病欠時の賃金カット分を補填する制度で、病気やケガのために4日以上の休暇を取得した場合に給付金が支給されます。支給条件については細かい規定があります。詳しくは加盟する健康保険組合に問い合わせてみましょう。
つわりを軽減するコツ
食事は少量ずつこまめに
日常生活でつわりを軽くするためにできる工夫は、どのようなものがあるのでしょうか。工夫できることはいくつかありますが、そのうちの1つが一度に食べる食事の量を減らし、回数を増やすことです。
つわり症状は、空腹になると強く出る傾向があります。また、妊娠中は食道の筋肉が緩んでいるため食べたものが逆流しやすく、たくさんの量を食べると吐き気や嘔吐につながる可能性も出てきます。食事を少量ずつこまめにとることで、つわり症状の軽減を期待できますよ。
起床時にすぐつまめるものを用意
つわりを英語であらわすと「morning sickness」。この表現は、朝に症状が強く出ることに由来します。起きがけの症状を軽くするコツは、寝たままの状態で手の届く位置に軽くつまめるものを用意しておくことです。
起き上がると吐き気がこみ上げてくるので、一口サイズのおにぎりや個装されたクッキーなど、横になった状態でも口に入れられるものがおすすめです。
外出時も軽食を用意
外出するときは、人が大勢いる場所で具合が悪くならないか気になるものです。そういうときはバッグの中にも軽食を用意しておきましょう。
袋がジップで密封できるタイプのグミ、口の中に清涼感が広がるミント系のガムやタブレット、ゼリータイプの経口補水液は手軽で携帯に便利なアイテムです。
好きなことに没頭する
つわり症状はいつ襲ってくるのかわからず、できれば症状があらわれないでほしいと願うものです。症状が続くうちに、これを食べたら気持ち悪くなるのではないかと、ときに恐怖心すら芽生えてしまうこともあるのではないでしょうか。
そんなときは趣味や仕事など、好きなことに気持ちを集中させてみましょう。つわりのことを忘れてしまうほど作業に没頭すると、自然と症状がやわらいでしまうことがありますよ。
一定の時間症状が治まっていることが続くと、つわりを乗り越えられるという自信につながります。その気持ちが、徐々につわりを遠ざけてくれるかもしれません。
無理せず休む
症状がつらいときは、無理せずに休むことも大切です。つわりは病気ではないとはいえ、通常の状態とは程遠いのも事実です。身体や気持ちが疲れをため込んでしまうと、自律神経の乱れにつながり、結果としてつわりの症状が強くなることも考えられます。
家事や上の子の育児で手が抜けるところは手を抜き、家族にサポートを頼めるところはお願いして、休息をとることを心がけましょう。
仕事中にできるつわり対策
上司・同僚の理解を得る
つわり期間中に勤務する場合は、自身の症状や状態について職場の上司や同僚の理解を得ておくとよりスムーズに仕事を進めることができるかもしれません。体調によって休業や中座する可能性があることを伝えたり、勤務時間の短縮や通勤時間帯の変更時にお願いする業務内容をまとめたり、フォローする側が困らないように整理しておくと良いでしょう。
法律上は妊娠中の女性に対し、健康を阻害しないための措置を講じることは会社側の義務ではありますが、上司や同僚のサポートに対して感謝の気持ちを忘れず、お礼の言葉や申し訳ない気持ちが伝えられると素敵ですね。
デスクにつまめる食べ物を常に用意
食事を少量ずつ頻回にすると良いとはいえ、勤務中に食事のために何度も席を外すのは気が引けます。そのようなときは、ビスケットやクラッカー、飲むゼリーなど手軽にお腹を満たせる食べ物を用意しておくと安心です。
飴やガム、梅干しといった小さなものなら、明らかに食べている様子を見せずに口の中をリフレッシュしてくれますよ。
こまめに休憩をとる
つわりの症状がやわらげば、仕事に対して気持ちを上向きにすることができますね。つわりの期間中はいつもより休憩をこまめにとって身体を休めましょう。
できれば横になって休めることがベストですが、周囲に人がいる場所では気を遣ってしまいます。可能であればパーテーションで区切った場所を用意してもらったり、会議室を借りたりして休息をとることが望ましいと言えます。
横になるのが難しければ、15分を目安に目を閉じて休憩するだけでも疲れを回復させることができますよ。
マスクをつけかえる
人の体臭や整髪料などの香料、食事のにおいはつわり症状を強めるきっかけになりやすいものです。職場で許されるのであれば、マスクを着用し、できるだけにおいを遠ざけましょう。
着用したマスクは、自分の吐き出す呼気が原因でマスク自体のにおいが気になることがあります。外出先で取り換えられるよう、ストックを用意しておくと対策になりますよ。
つわりで病院へ行くべき症状
一日中続く嘔吐(おうと)
一日中嘔吐が続き、食べ物や飲み物を受け付けないほど重症となると、なんらかの治療が必要な状態に陥っている可能性があります。この状態を妊娠悪阻(にんしんおそ)と言います。
妊娠悪阻の診断基準のひとつとなるのが、1日のうちで頻回に起こる慢性的な嘔吐です。嘔吐が続くと、胃酸が失われ身体はアルカリ性に傾きます。この状態を代謝性アルカローシスと呼び、筋力の低下やけいれんの発症が懸念されます。
一方で、身体が酸性になることもあります。つわりに関連し、ケトンという名前を聞いたことがないでしょうか。ケトンは食事がとれず糖代謝が行われないときに体内の脂肪がエネルギー源として生成されたものです。筋肉や腎臓で処理できない分が尿中や血中に排泄され、身体は高い酸性を示すようになります。
血液はもともと中性で、極端にアルカリ性に傾いたり酸性に傾いたりすると重篤な症状が起こることがあります。嘔吐が続くようであれば、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
5パーセント以上の体重減少
妊娠悪阻になると、著しい体重の減少がみられます。5%以上の体重減少も治療が必要なつわりの診断目安となるので、体重を注意深く観察しましょう。
体重の5%とは、体重50kgで2.5kgに相当します。医師や助産師によっては、体重減少の目安を2週間に4kg以上の体重減少があったときとする場合もあります。いずれにしても、短期間のうちに体重がみるみる減るようであれば、妊婦健診を待たずに早めに受診することをおすすめします。
脱水症状
嘔吐の症状で水分摂取ができないことが続くと、脱水症状が起こることがあります。脱水症状は、めまいや吐き気、頭痛を引き起こし、重症化すると意識障害が起こることもあるほど注意が必要なものです。
水分がほとんどとれないことのほか、尿の回数が減ったり便秘になったりといった症状も脱水症状を疑う目安となります。トイレの回数が少ないなと感じたときは、医師に相談するようにしましょう。
仕事を持つ女性のつわり症状との向き合い方
つわりの原因は解明途上の段階ですが、赤ちゃんを守るための防衛反応だという説もあり、身体を休め、できるだけ気持ちを穏やかに過ごすことがポイントとなります。つわりを乗り切るコツを取り入れながら、家族のサポートを受けゆったりとした毎日を送れるよう心がけたいものです。
しかし、仕事をしていると穏やかとは程遠い状況となることがあるのも事実です。つわり症状のつらさは病気のつらさと大差がないことも多いのに、職場の環境によっては理解を求めにくいこともあるでしょう。
厚生労働省では外部機関に委託し、母性健康管理サイトを公開しています。はたらく女性が安心して妊娠、出産に臨めるような情報が掲載されているほか、メールで相談が行える窓口が設けられています。困ったときはこうしたサービスを活用しながら、つわり期間を乗り切っていけると良いですね。
※この記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。