【産婦人科医監修】妊娠後期の胃もたれ・胸焼けの原因と解消法は?薬を飲んでも大丈夫?
妊娠初期の苦しいつわりを乗り切ったはずなのに、妊娠後期に入って胃もたれや胸焼けを感じるママも多いようです。赤ちゃんが生まれる間際の妊娠後期の胃もたれには、初期とは違った理由が存在します。妊娠後期の胃もたれ・胸焼けの原因と、今日から試せる改善方法を産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けとは?
妊娠後期の胃もたれ・胸やけの感じ方
妊娠28週以降(妊娠8ヶ月~)である妊娠後期は、出産間近の大切な時期です。つわりなどの身体の不調も落ち着き、出産への最終準備をしているときですね。しかし妊娠後期になって、胃もたれや胸焼けを感じるママは少なくないようです。妊娠後期の胃もたれや胸焼けにはどんな特徴があるのでしょうか。
不快感の種類や頻度は個人差がありますが、以下のような症状を感じる人がいます。
・食べると胸がムカムカする
・吐きそうで吐けなくてつらい
・胃の圧迫感があって気持ち悪い
・げっぷやおならが頻繁に出る
妊娠初期のつわりと似たような症状なので、そのままつわりが続いていると思うママもいるようです。
妊娠後期の胃もたれ・胸やけが起こる時間帯
胃もたれや胸焼けが起こる時間帯もさまざまです。胃酸の分泌が活発になる食後は、食べたものが逆流しそうな不快感を覚える人が多いようです。
妊娠初期の「食べつわり」とも似ていますが、寝起きや空腹時に胸焼けを感じる人もいます。ストレスなどによって胃酸が出て、一日中胸焼けが起こる人もいます。
また、寝る前に胸のあたりがムカムカしたり、胃もたれを感じたり人もいます。そうした症状が原因で妊娠後期に眠れない日が続く妊婦さんもいるかもしれません。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けの原因
後期つわり
妊娠初期と同じく妊娠後期にもつわりと似た吐き気や胃痛を感じることがあり、これを「後期つわり」と呼ぶことがあります。後期つわりの明確な原因はわかっていませんが、子宮の圧迫が一因であるといわれています。
妊娠前は鶏の卵ぐらいであった子宮は、妊娠後期では子宮底長が30cm近くまで広がっています。子宮の上には腸や胃が存在しているため、子宮で大きく押し上げられた消化器官は動きが悪くなってしまうことがあるのです。
一般的に胃は縦長に配置されていますが、持ち上げられると横に近い形になります。胃液の流れやぜん動が悪くなる可能性があり、胃痛や吐き気といった症状が出ることがあります。胃にたまった空気がスムーズに出なくなるため、げっぷに苦しむ人もいるようです。腸も動きが悪くなることがあり、下痢や便秘になることもあります。
逆流性食道炎
妊娠後期に「逆流性食道炎」と診断されるママもいます。逆流性食道炎とは、胃酸の逆流が原因で起こる病気です。本来、食べたものは胃に存在する強い酸で分解され、腸に吸収されます。胃には酸から粘膜を守る機能がありますが、食道にはありません。そのため、なんらかの原因で胃酸が食道に逆流してしまうと、酸で炎症が起こり吐き気や胸焼けにつながることがあります。
妊娠中のママは子宮で胃が圧迫されているので、胃酸の逆流を防いでいる「下部食道括約筋」という筋肉がゆるみやすく、逆流性食道炎になりやすいといわれています。また、妊娠後期ではお腹が大きくなり、姿勢が悪くなりがちです。胃の中の圧力が高くなると、胃液の逆流が起こりやすくなるようです。
ホルモンバランスの変化
妊娠中は、ホルモンの分泌量に変化が出ます。妊娠を維持するため、女性ホルモンである「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌が増加します。
このうち、プロゲステロンには消化器官の運動を鈍くする作用があり、エストロゲンには胃の入り口の筋肉などを緩める作用があります。こうした作用により胃酸の逆流や吐き気が起こり、妊娠後期の胸焼けにつながることがあります。
ホルモンは互いのバランスが重要なため、一方的に何かが増えれば良いというわけではありません。「愛情ホルモン」ともよばれるオキシトシンは、授乳や分娩をサポートする働きがあります。胃腸の動きを良くする作用もありますが、ストレスに左右されるため、分泌バランスがくずれると胃もたれにつながる可能性もあります。
ストレス
ストレスが妊娠後期の胃もたれや胸焼けの原因になることもあります。妊娠後期は、出産や育児への不安が出てくるころでもありますよね。続けてきた仕事を休んだり、お腹が大きくなって思うように動けなくなったりすることがストレスにつながる人もいます。ストレスは脳に負担をかけるのでホルモンバランスをみだしてしまうことがあるのです。
また、消化器官は自律神経が調整しているため、ストレスの影響を受けやすいといわれています。自律神経のバランスがくずれると、交感神経が胃の血管を収縮させたり、副交感神経が必要以上に胃酸を出したりすることもあります。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けは病気の場合もある?
妊娠後期の胃もたれや胸焼けは、ホルモンバランスや子宮の増大が原因であることが一般的ですが、病気の可能性もゼロではありません。体調の変化には気を遣い、胃の痛みがひどい、出血があるなど気になることがあればすぐに病院に相談しましょう。担当医にスムーズに伝わるように、「いつ」「どのような」症状が出たのかを定期的にメモしておくと良いでしょう。
ヘルプ症候群
ヘルプ症候群とは、妊婦中や出産後のママだけが発症する合併症です。血液検査で診断可能であり、Hemolysis(赤血球の破壊)、Elevated Liver enzymes(AST や ALT などの肝臓由来酵素の上昇)、Low Platelet(血小板減少)の頭文字をとってHELLP(ヘルプ)とよばれています。
妊娠高血圧症候群と症状が良く似ていて、妊娠中期以降に発症しやすいといわれています。自覚症状としては、 上腹部(胃)の痛みや違和感、食欲不振、倦怠感などがあります。自覚症状がない場合も多いので、発見されにくい病気ともいえます。胃の痛みや違和感があるときは、一度医師に相談してみても良いでしょう。
妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降に高血圧を発症すると「妊娠高血圧症候群」と診断されます。妊婦の約20人にひとりの割合で起こるといわれる症状です。重症化すると、ママの血圧上昇、脳出血、ヘルプ症候群、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離などを引き起こす可能性があります。
妊娠高血圧症候群の自覚症状はあまりない場合もありますが、頭痛や急激な体重増加、むくみなどがみられることがあります。起こりやすい合併症である「子癇」や「ヘルプ症候群」ではみぞおちの痛みや吐き気が初期症状として現れることもあるでしょう。
ウイルス性胃腸炎
妊娠中でもウイルスや細菌などの感染性病原体が原因になり、吐き気や嘔吐などの急性の胃腸炎症状を引き起こすこともあります。ウイルス性胃腸炎はロタウイルスやノロウイルスなどで、冬に多くみられます。細菌性胃腸炎には、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどがあり、夏場に多くみられます。
ウイルス性胃腸炎が重症化すると、脱水症状に陥ることもあります。胸のむかつきだけではなく、ひどい吐き気や嘔吐が続いたり、下痢がみられたりする場合はすぐに病院で相談してみましょう。
胃潰瘍
胃潰瘍は胃酸の消化作用によって、自分の粘膜が攻撃されてしまう病気です。胃の粘膜を守る働きと攻撃する力のバランスがくずれてしまうことが原因といわれています。胃潰瘍の多くは、ピロリ菌が関係しているようです。
食後、時間が経つとみぞおちや背中が痛むなどの症状が出ます。妊娠中でも胃潰瘍になる可能性はあります。つわりだと思っていた症状が実は胃潰瘍だったというケースもみられるので、気になるときは医師に診てもらいましょう。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けの解消法
1回の食事の量を減らして回数を増やす
妊娠後期の胸焼けや胃もたれを防ぐには、なるべく胃に負担をかけない食べ方がおすすめです。一度に多くの食事を摂ると、消化しきれず胸がむかつく可能性が出てきます。逆にまったく食べない状態が続くと、酸が空の胃を傷つけることもあります。お腹の赤ちゃんに栄養が届きにくくなってしまうのではないかという点が心配になる人もいるかもしれません。
少ない量を小分けにして食べることで、胃への負担を減らすことができます。ただし、ずっと食べ続けているだらだら食べは消化には良くありません。時間を決めて、1日5回ぐらいにわけて適量を食事するのがおすすめです。どうしても食べられないときに無理やり食べる必要はありませんが、できるだけバランス良く栄養を摂るように意識しましょう。
よく噛んでゆっくり食べることを意識することも大切です。唾液が多くなるため消化を助けますし、食材が細かくなれば胃腸にも負担がかかりません。噛む回数を心で数えながら食べると、自然とゆっくり食べられるようになりますよ。
消化に良いものを食べる
食事の回数だけではなく、食事の内容にも目を向けてみましょう。一般的に、揚げ物など脂肪の多い食べ物は消化しにくく、胃液の逆流が起こりやすいといわれています。
また、スパイスが多く使われる辛い料理も胃に負担がかかります。つわりのときは、酸っぱいものが食べたくなる人も多いですが、食道の粘膜を刺激するので、胸焼けがするときは酸性の食べ物は避けたほうが無難です。
お粥やスープなど、温かくてやわらかいものは消化に良いとされています。水分も摂れて一石二鳥ですね。また、牛乳やヨーグルトなどの乳製品もおすすめです。乳製品を摂ると食道の内側に膜ができ、胃酸から胃を守ってくれるといわれています。胃酸が活発になる食後や寝る前に、ホットミルクを飲んでみても良いですね。
食後すぐに横にならない
食後は食べたものを消化しようと、胃酸がもっとも活発になるときです。このときに横に寝転んでしまうと、胃の上部が口の高さと同じくらいになるため、胃酸が逆流し妊娠後期の胸焼けを起こす可能性があります。
できれば、食後1~2時間は横にならないようにしましょう。寝る時間から逆算して夕食をとると良いかもしれません。空腹になると胸焼けがする人の場合は、少量を時間をかけて食べて、様子を見て横になりましょう。
枕を高くして眠る
寝るときに身体を横にすることで、食道に胃液が逆流し胸焼けにつながるということもあります。この場合、胃の上部よりも口が上に来るように枕の位置を高めに設定することで、胃液の逆流を防ぐことができるかもしれません。重力がありますから、物理的に高いほうには液体は逆流しにくいわけですね。
枕をふたつ重ねたり、大き目のバスタオルを折って重ねても良いでしょう。頭部が10~20cm高くすると効果的といわれています。ただし、妊娠後期の場合は枕を高くすると腰に負担がかかることもあります。身体が痛くない程度に高さを調整してみましょう。
どうしても横になりたいときは、なるべく左側を下にすると胃酸の動きがスムーズになるといわれています。胃が圧迫されるうつ伏せや仰向けは避けたほうが良いかもしれません。
ツボを押す
いろいろ試しても改善されないときは、胸焼けや胃もたれを軽くするツボを試してみても良いかもしれません。
・足三里(あしさんり)
膝にあるお皿の外側から、指4本分ほど下がったところにあるくぼみです。消化器官の疾患に効果的だといわれています。
・内関(ないかん)
手のひらを上に向け、手首のしわの中央から、指をひじに向かって3本分置いたところです。内臓の働きに深く関わり、吐き気、胃痛などを改善してくれるといわれています。
・巨闕(こけつ)
身体の中心線上で、みぞおちの上にある尖った骨から、指2本分下にあるツボです。あらゆる胃の症状に効果が期待できるといわれています。
ただし、ツボは素人が力任せに押すと危険なこともあります。妊娠時は自己判断によるマッサージや指圧などはできるだけ避け、プロに診てもらったほうが良いかもしれません。
身体を冷やさないようにする
冷えは血流を悪くするため、消化器官の働きを悪化させることもあります。血流は赤ちゃんに栄養を届ける役目もありますから、なるべく身体は冷やさないようにしましょう。冷房の効いた部屋に長時間いる、薄着をする、冷たいものばかりを食べるといった行為は、冷えの原因になることがあります。
腰周りはできるだけ冷やさないよう、ブランケットを持ち歩いたり腹巻をしたりと対策を練りましょう。飲み物や食べ物は、人肌に近いぬるめのものが冷えを防いでくれます。ぬるめのお風呂にゆっくり入ると冷えの改善につながることがありますし、リラックス効果も期待できますよ。
ストレスをためない
ストレスは胃や腸の働きを悪くする可能性があります。ホルモンバランスや自律神経を整えるためにも、妊娠中はストレスをためない生活を心がけましょう。ヨガや読書、お昼寝など、自分に合ったリラックスの方法を探してみましょう。
身体に不調がなければ、ウォーキングなどの軽い運動もおすすめです。産後は忙しくなる可能性もありますから、気のあう友人や家族との時間を取って、ランチをしたりおしゃべりしたりするのもストレス解消につながるかもしれませんよ。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けで薬を飲んでも大丈夫?
妊娠中の胃もたれや胸焼けがひどい場合、薬で症状を抑えたい人もいるかもしれません。しかし自己判断で市販薬を飲むのは控えましょう。
胃もたれや胸焼けになった場合、胃酸を抑えたり、胃腸の動きを活発にしたりするような市販の薬を飲むと、改善することもあります。しかし、妊娠中は禁止されている薬もあるので注意が必要です。強い子宮収縮作用がある成分が入っていることもあります。
薬のパッケージなどを見ると、妊娠中に服用可能かどうかが書いてあることもあります。しかし、妊娠の状況は一人ひとり違います。飲んでよい薬かどうかを自分で判断するのは難しいので、可能であれば医師に相談して症状に合った薬を処方してもらいましょう。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けはいつまで続く?
妊娠36~39週頃になると、赤ちゃんの頭が少しずつ骨盤の中に下がっていき、子宮の外にでる準備を始めるようになります。これぐらいになると、胃や胸の圧迫感が減り、食欲が出てくるママもいるようです。
しかし、なかには出産間際まで胃もたれや胸焼けの症状がでる人もいます。自分でできる対策を取りながら、少しでも改善して楽しいマタニティライフを過ごしましょう。
妊娠後期の胃もたれ・胸焼けは生活習慣を見直しながら付き合っていこう
妊娠後期の胃もたれや胸焼けは、ホルモンバランスの変化や子宮が大きくなったことが原因としてあるようです。胃酸が逆流しやすくなるので、食事内容や回数を工夫して、健康的に無理なく防いでいけると良いですね。生活習慣の見直しは、産後の健康的な生活にもつながります。
胸焼けや胃もたれが感じないときがきたら、いよいよ赤ちゃん側の準備ができたというサインかもしれません。その日を楽しみに、残りのマタニティライフを暮らしていけると良いですね。
※この記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。