【産婦人科医監修】お迎え棒に陣痛を促す効果はあるの?臨月のセックスの注意点は?
お迎え棒は陣痛を促すジンクスのようなものです。内診ぐりぐりではなく自然な陣痛でお産へ臨みたいというパパママに関心が高いもので、出産予定日近くにセックスをすることをいいます。お迎え棒は陣痛を促してくれるのでしょうか。危険性はないのでしょうか。お迎え棒の医学的根拠やお迎え棒の方法、お迎え棒の注意点を解説していきます。
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この記事の監修
目次
お迎え棒とは?陣痛を促す効果はあるの?
臨月に陣痛を促すジンクス
お迎え棒とは、臨月に入りセックス、つまり腟内への挿入を伴う性行為を行うことをいいます。赤ちゃんを迎え入れるため、出産予定日が間近になったころや、出産予定日が過ぎたころに妊婦さんがパートナーと一緒に行うジンクスのようなもので、お迎え棒を実際に試した人の中からは「陣痛がきた」、「おしるしのような出血があった」と体験が寄せられることもあります。
予定日が近づくと、子宮口の開き具合や子宮口の硬さを健診で確認します。このとき、医師の判断で子宮口が硬い妊婦さんに卵膜剥離の処置が施される場合があります。子宮口が固く、予定日が過ぎてしまった妊婦さんのなかには、卵膜剥離や分娩誘発剤の使用といった人為的処置を避けるために、お迎え棒を試す人がいるのです。
お迎え棒は妊婦さんとパートナーが営む性行為そのものなので、人の手を介さずに、自然に近い形で陣痛を促せるというところが受け入れられているポイントです。しかし、絶対に陣痛が起こるわけではないことや、感染や早期破水のリスクがあることも承知しておく必要があります。
お迎え棒に医学的な根拠はない
お迎え棒が陣痛を促す効果があるとされる根拠は、精液中に含まれるプロスタグランジンが子宮収縮を促す作用を持っているからです。また、セックス中に乳頭を刺激することが、子宮収縮作用のあるオキシトシンの分泌促進につながることもひとつの要因です。
しかし、精液中のプロスタグランジンや乳頭刺激で分泌されるオキシトシンがどれほど陣痛促進に効果を発揮するのかは、医学的に解明されていません。お迎え棒が陣痛促進に有効であるというデータもなく、根拠に乏しいのが現状です。
実際、お迎え棒をすすめる医師や助産師がいる一方で、臨月のセックスにはリスクがあるという医師もおり、出産の現場でも意見は分かれるところです。
スキンシップ効果が期待できる
腟内への挿入や射精が陣痛を促進するという医学的な根拠に乏しいとはいえ、夫婦やパートナー間でスキンシップをとることは、幸福感を得るうえでとても重要なものです。
なぜなら、子宮収縮作用のあるオキシトシンは、別名「抱擁ホルモン」や「幸福ホルモン」とも呼ばれ、ギュッとハグしたりボディタッチをしたりすることで分泌が促されることがわかっているからです。
早産の心配がない時期となり、医師からセックスを禁止されていなければ、スキンシップの一環としてお迎え棒を試してみるのも良いかもしれませんね。
臨月にセックスしても良いの?
臨月のセックスは禁止ではない
臨月にセックスすることは、原則として禁止ではありません。しかし、臨月は腟や子宮口がやわらかいため、出血したり傷ついたりしやすい状態です。妊娠中は女性の性欲が減退する傾向にあることから、痛みや不快感があるときの無理な挿入は控えましょう。
医師からセックスが禁止されている場合は、医師の指導に従いましょう。不安なときは、性行為をしても良いか医師に相談するようにしてください。
突然破水するリスクがある
刺激により、陣痛が起こる前に破水してしまう前期破水となることがあります。お腹が張りやすい人は特に注意し、違和感や不快感があるときはセックスを中止しましょう。
臨月のお迎え棒をしないほうが良い人は?
お腹が張っている
臨月でのお腹の張りは、出産が近づいていることも考えられます。定期的にお腹の張りがあれば、陣痛の可能性も考えられます。張りが治まらず徐々に痛みが強くなるようなら、産婦人科に確認してみましょう。
お腹の張りが不規則だったり、一時的なものだったりすると前駆陣痛の可能性があります。張りがあるときは急激な子宮の収縮が前期破水を引き起こす恐れがあるため、お迎え棒は控えたほうが良さそうです。お迎え棒の最中にお腹が張ってしまったときも、その場でセックスを中止するようにして様子を見てくださいね。
出血がある
出産が近づくと、分娩の前兆として少量の出血が起こることがあります。この出血は子宮口が開き、卵膜が子宮壁からはがれたときの出血がおりものと一緒に排出されたもので、「おしるし(産徴)」と呼ばれています。
おしるしの出血は、粘性がありドロッとしているのが特徴です。おしるしがあると2~3日後には陣痛が起こる可能性が高いため、早期破水のリスクを考えるとお迎え棒は控えたほうが良いでしょう。
出血が長く続いていたり、サラサラとした血液が足を伝ったりする出血であれば注意が必要です。常位胎盤早期剝離などの異常出血の可能性があるため、早めに医師による診察を受けてください。
切迫早産
臨月に入っていても、36週のうちに出産があると早産という扱いになります。もともと切迫早産と診断されていたり、お腹が張りやすかったりする場合は正期産となる37週まで安静に努めましょう。
正期産が出産予定日前後の期間を設けているのは、出産予定日の算出方法が関係しています。出産予定日は最後の生理開始日から280日目に設定されます。そのため、最後の生理開始日が間違っていたり、月経周期がもともと不定期だったりすることを考慮して、5週間の正期産の期間を設けています。
正期産の時期が近いからと、自己判断でお迎え棒を行うのはリスクが伴います。医師から切迫早産気味と診断されている場合は、赤ちゃんがママのお腹の中でゆっくり過ごせるように、医師の指示に従うようにしてくださいね。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、安静が必要な病気です。セックスをすると血圧があがるため、赤ちゃんに行きわたる酸素が不足したり、栄養不足を招いたりすることがあるので注意が必要です。
急激な血圧上昇は、ときに子癇やHELLP症候群といった重篤な症状に発展するケースもあります。このような重症化が起こるのは非常にまれなことですが、妊娠高血圧症候群は医師の指導に従い、出産までの時間を穏やかに過ごすよう心がけましょう。
前置胎盤
前置胎盤は子宮の入り口を胎盤がふさいでしまっている状態です。子宮口との物理的な位置が近く、子宮口が開くにしたがい出血しやすい状況となります。ママや赤ちゃんにとって危険な出血につながるおそれがあるため、無理な運動やセックスは避けましょう。
前置胎盤と診断されたママは、ハイリスクであることに不安を抱くことも多いのではないでしょうか。心配なことは医師や助産師さんによく相談し、お迎え棒はなくともパパとのコミュニケーションをとって、リラックスしながら過ごせると良いですね。
臨月のお迎え棒の方法と注意点は?
コンドームを着ける
妊娠中は身体の防御機能が低下し、ウイルスや細菌への抵抗力が弱まっています。セックスを通じた感染症を予防するためにも、コンドームは必ず着用するようにしましょう。
もしも臨月に感染した場合は、出産までの期間が短いことから治療が完了しないことが考えられます。赤ちゃんが産道を通る際に腟内に残存したウイルスや細菌に感染すると、肺炎や髄膜炎、敗血症といった全身症状があらわれる感染症もあります。
また妊娠中期までのセックスは、早産や前期破水の原因となる絨毛膜羊膜炎の要因となります。妊娠期間全般を通じて、セックスをする際のコンドームの着用は、こうした感染症を防ぐために効果的です。
深い挿入はしない
妊娠中は腟の血管が拡張し、充血している状態です。妊娠前と比べて刺激に敏感で、傷が付きやすくなっています。挿入は浅く、ゆっくりとするように心がけましょう。
深い挿入や激しい行為は、前期破水の原因となったり早産を招いたりする可能性があります。お互いを思いやりながらコミュニケーションをとり、途中で痛みや不快感があったときは行為を中止するようにしてくださいね。
お腹が張ったらやめる
お迎え棒の最中にお腹が張ってしまう場合は中断しましょう。しばらく安静にしてお腹の張りが治まれば大きな心配はいりませんが、その日はお休みすることをおすすめします。
行為の後にシャワーを浴びる
性行為の前にシャワーを浴びて清潔を心がけることはもちろんですが、性行為の後も外陰部を洗い流し、清潔を保つようにしましょう。
感染症の原因となる細菌は、湿った場所や不衛生な場所を好みます。パパとのコミュニケーションの後は余韻に浸りたい気持ちもあるかもしれませんが、パパと一緒にシャワーを浴びるなどして、赤ちゃんのための環境を整えていきましょう。
乳頭を刺激しない
乳頭を刺激すると、子宮収縮作用を持つオキシトシンというホルモンが分泌されます。このホルモンは、産後に赤ちゃんがおっぱいを吸うことで分泌が促され、子宮がもとの状態に戻るはたらきを助けます。
臨月に入ると、赤ちゃんがおっぱいを吸いやすいように乳頭をマッサージするように指導されることもあるのではないでしょうか。こうした場合、お腹が張りやすい人は正期産の時期に入ってから行うように指導されるのが一般的です。
お迎え棒での乳頭刺激も同様で、お腹が張りやすい人は乳頭刺激をすると切迫早産や前期破水を引き起こすことも考えられます。正期産の時期に入る前の乳頭刺激は避けたほうが良さそうです。
無理のない体位にする
臨月のセックスは身体への負担が少なく無理のない体位で行いたいものです。ママが横向きに寝て背中側からパパが挿入する体位なら、腹部を圧迫せずに挿入も浅くなります。パパが後ろから抱擁して、やさしく包み込むよう体勢なので、お互いのぬくもりを感じることができますよ。
身体を冷やさない
身体を冷やすと、血行が悪くなりさまざまな身体の不調につながりやすくなります。部屋を暖かくしたり、上に布団をかけたりと身体を冷やさない工夫が必要です。
行為の後はシャワーを浴び、夜ならばパジャマを着てから就寝するようにしましょう。なにも身に着けないまま眠りに入ると、身体が冷えてしまうかもしれません。
臨月のお迎え棒で気をつけたい症状は?
お腹が張る
セックスの途中でお腹が張ったり痛みが出たりするときは、すぐに行為を中止しましょう。しばらく安静にして落ち着くようであれば一過性の張りだと考えられます。
もしも規則的に張りが生じ、痛みが徐々に強くなってくるようであれば陣痛の可能性もあります。産院に連絡し、指示を仰ぐようにしてくださいね。
出血がある
セックスの最中になにかが伝わるような違和感や、出血がみられたときは行為を中止して出血の状態を確認してください。ドロッとした粘性の出血であれば、出産の兆候としてあらわれるおしるしかもしれません。
サラサラとした出血は、おしるしとは別の原因が考えられます。病院で診察を受け、医師の診断を受けましょう。出血の原因は素人では判別しにくいものです。不安があるときは、病院で相談すると安心です。
胎動がなくなる
臨月は一般的に胎動が減る傾向がありますが、お迎え棒の後にもしも急に胎動が確認できなくなった、長い時間胎動を感じないなどいつもと違う様子がみられたら、赤ちゃんになんらかの異常が起こっているのかもしれません。病院に連絡し、診察を受けましょう。
お腹の赤ちゃんを信じて出産のタイミングを待とう
分娩は、身体の中でさまざまなホルモンや物質が分泌され、陣痛の間隔や強度、子宮口のやわらかさや開き具合のバランスがちょうど良く整ったタイミングで開始するものです。
お迎え棒の刺激が、お産の進行にどの程度貢献するのかはわかりません。お迎え棒効果を期待しすぎず、焦らずにタイミングを待ちましょう。赤ちゃんとの対面が待ち遠しい気持ちが、赤ちゃんに伝わると良いですね。
※この記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。