【産婦人科医監修】臨月の運動のポイントは?妊娠後期からおすすめの室内運動やスクワットを解説!
産婦人科医監修|臨月になり体調面で問題がなければ、医師から適度な運動をすすめられることがあります。臨月時期の適度な運動は、体重の維持や筋力増加につながり、安産につながるといわれています。しかし、無理をしたり間違った方法で運動したりすると、ママや赤ちゃんに影響があることも。臨月の時期におすすめの運動や注意点を解説します。
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目次
臨月の運動の効果は?運動しないとどうなる?
妊娠後期に入り、そろそろ安産に向けて運動をしようと思っているママもいるかもしれません。臨月を過ぎると、下の方が見えないほどお腹も大きくなってきます。そんな状態では、なかなか思い通りに動けないこともありますよね。臨月の運動はどうして必要なのでしょうか。
残念ながら、臨月に運動すれば安産になるという科学的な証拠はまだ出ていません。しかし、妊娠後期の運動には体重の維持や精神的なリフレッシュなど、さまざまなメリットがあります。運動不足が続いて肥満になると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の合併症リスクも高まる可能性があります。
単胎妊娠で、妊娠の経過に異常がないと診断されたママなら、身体に負担のかからない範囲の運動はおすすめです。臨月の運動にはどういった効果があるのか見ていきましょう。
子宮口を開きやすくする
予定日を過ぎてもなかなか陣痛が始まらないと悩むママもいます。軽い運動をすると、赤ちゃんが下りて子宮口が柔らかくなる可能性があります。一般的に、陣痛が始まると子宮口や子宮頚管が柔らかくなり、赤ちゃんの頭に押されて子宮口が開き始めます。運動でついた筋力や柔軟性がそのサポートをしてくれることがあります。
子宮口が開きだしてから、全開大になるまでの時間は個人差があります。順調に分娩が進行して10時間程度で全開大になることもあれば、異常がなくても30時間以上かかることもあります。子宮口が全開になる時間が短いほうが安産であるとは限りませんが、ママの身体への負担は少なくなるかもしれませんね。
股関節を柔軟にする
ヨガであぐらのポーズをとったり、足を広げたストレッチをしたりすることで、股関節の柔軟性を高めることができます。股関節が柔らかくなると、骨盤の動きや産道の広がりがスムーズになる可能性があります。
一人目よりも、二人目の出産のほうがスピーディであることが多いといわれていますよね。出産を経験した産道が柔らかくなることがその理由のひとつであると考えられています。また、股関節をほぐすと全身の血行が良くなるといわれており、むくみや冷え性を改善するための方法として取り上げられることもあります。
体力をつける
適度なスポーツは、心肺機能や体力の増強につながります。出産は体力勝負といわれています。初産だと、陣痛が始まってから出産まで10時間~15時間ほどかかることもあります。なかには1日がかりで陣痛と戦うママもいます。
体力が尽きて、疲れきった状態が続くのはママにとってはつらいですよね。産後の回復や、育児でも体力は必要になってきます。臨月の運動で心肺機能を鍛え、体力を身につければ出産への自信もわいてくるかもしれません。
過度な体重増加を防ぐ
臨月を過ぎると、体重が増えやすくなるママもいます。子宮が少しずつ下りることで胃の圧迫感が減り、食欲が戻ることもありますし、出産まであと少しという気の緩みが出て過剰に食べてしまうこともあります。しかし、臨月の急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群などの合併症のリスクを高めます。子宮や産道に余分な脂肪が付くと難産になる可能性もあるといわれているため、体重の増えすぎには注意しましょう。
体重増加の目標は妊娠前の状態によって異なりますが、標準的な体型の人は7~12kg、やせ気味の人は9~12kg、肥満の人は4~6kgが理想的な範囲とされます。体重が増加すること自体は問題ではなく、増えすぎが問題であることを忘れず、適度な増加量を保てると良いでしょう。臨月の適度な運動で体重コントロールを意識的に続けていきたいですね。
妊娠後期~臨月におすすめの運動7選
臨月の運動1:階段昇降
臨月に入ると、外出が難しいこともあります。夏は暑くて熱中症の可能性がありますし、寒い冬に長時間外に出るのも妊娠中は望ましくありません。破水や陣痛のことも考えて、妊娠後期の運動は室内でするのがおすすめです。
室内で気軽にできる運動に、階段昇降があります。二階建ての家であれば、手すりをしっかり持ってゆっくり上にのぼってみましょう。下りるときはさらに慎重に。もし下が見えなくて怖いようであれば、上りだけでも構いません。お腹が張るようであればすぐに休憩します。
階段がない場合は、踏み台昇降でも良いですね。雑誌などを置いて自分で踏み台をつくるのは危険なので、専用の器具を購入して行いましょう。骨盤周りの筋肉がほぐれ、安産につながる可能性があります。
臨月の運動2:スクワット
臨月に入ると、医師や助産師からスクワットをおすすめされたというママもいるようです。スクワットは骨盤底筋の伸び縮みをスムーズにする可能性がありますが、腰に負担がかかるので通常のやり方では危険です。
妊娠時のスクワットでは、壁に背中と頭をくっつけることが基本です。転倒や、体幹が不安定になるのを防いでくれます。できれば手すりにつかまるなどして、身体のバランスを崩したときにも対応できるようにしておきましょう。
立った状態で始めて、ひざを軽く曲げ腰を落とします。骨盤が左右に開くのを意識するとより効果的です。そのあと、骨盤を小さく揺らすように前後ろへゆっくり振り、直立姿勢に戻します。難しいときは動画も参考にしてみましょう。
スクワットによって赤ちゃんを産道に送り出す動きがしやすくなったり、骨盤が開きやすい状態になったりすることが期待できます。腰やお腹の痛みを感じたらすぐに止めて、横になって様子を見ましょう。
臨月の運動3:ラジオ体操・安産体操
妊娠後期の運動を室内でするなら、日本人に馴染み深いラジオ体操もおすすめです。子ども時代、夏休みに毎日していたというママもいるかもしれません。やさしい動きで全身をバランスよくほぐすことができますが、妊娠中は気をつけたほうが良いポイントもあります。
全国ラジオ体操連盟の指導者によると、妊娠中はラジオ体操第一の両足で飛ぶ運動はなるべく避け、腕を上下に伸ばす運動は力まず軽く行ったほうが良いとのことです。また、腰を大きく動かす運動も様子を見ながら注意深く行いましょう。
安産運動は出産をスムーズにするための運動で、さまざまな方法がありますが、寝そべった状態や椅子に座った状態で行うものが多いようです。お腹の張りが少ない時間を選んで、少しずつでも毎日続けてみましょう。
臨月の運動4:ウォーキング
すぐにできる簡単な運動といえば、ウォーキングを思いつくママも多いでしょう。ウォーキングは有酸素運動ですし、外の空気を吸いながら四季を感じることで気分もリフレッシュできます。有酸素運動は血行を促進し、ママにもお腹の中の赤ちゃんにも良い影響があるといわれています。
臨月に運動で外を歩くときは、身体を冷やさない服装で、舗装された平坦な大通りなどを選びましょう。保険証や母子手帳もなるべく持ち歩いたほうが良いでしょう。雨が降って地面が濡れているときは、転倒の危険もあるので止めたほうが良いですね。「無理なく楽しく」をモットーに、疲れない範囲で楽しみましょう。
臨月の運動5:マタニティスイミング
寒い時期の運動は身体が冷えてしまうこともあります。そんなときにおすすめなのが、マタニティスイミングです。マタニティスイミングを行うプールの多くは、温水がつかわれています。また、水中で身体を動かすためバランスよく負荷がかかり、一部を痛めてしまうリスクが低いといわれています。
マタニティスイミングのメリットは、血行促進、体重増加の防止、体力強化などがあります。また、陸上では身体の重いママも水中では軽くなってリラックスできますし、同じ環境のママたちとコミュニケーションをとることでストレス解消にもつながるかもしれませんね。
ただし、プールサイドで転倒するリスクや、プールから菌に感染するリスクもあります。プールに入るときは足元に十分注意する、プールからあがったらしっかり身体を洗い流すなど、安全に楽しむための注意は欠かさないようにしてくださいね。
臨月の運動6:マタニティヨガ
マタニティヨガも、妊娠中のママに人気のエクササイズです。出産をスムーズにし、妊娠中も快適に過ごすことができるといわれ、地方自治体や産院でも取り入れているところがあります。安産に必要な筋力や身体の柔軟性を上げることができますが、マタニティヨガの最大の特長はその呼吸法にあります。
ヨガでは鼻で大きく呼吸し、呼吸のリズムや深さをコントロールします。呼吸をコントロールする力は、リラックスや痛みの緩和につながり、出産時の「いきみ」に役に立ちます。また、目を閉じて深く呼吸をし、お腹の赤ちゃんに意識を向ける「胎児瞑想」は、赤ちゃんとのつながりが強固になるような感覚を与えてくれます。
専門のスタジオに通っても良いですし、マタニティヨガの専門書やDVDも販売されています。動画などを参考にしても良いですね。身体を痛めないように、簡単なポーズからゆっくり始めてみましょう。
臨月の運動7:家事
特別な運動やストレッチをしなくても、普段の家事の積み重ねが適度な運動につながります。妊娠後期からの運動を兼ねて室内の床を雑巾がけするのも良いでしょう。お腹が重く感じますが、四つん這いで行うので臨月でもバランスが取りやすい運動です。腕やお尻を動かすので筋力もつきます。お部屋も気分もスッキリするかもしれません。
洗濯物をたたむときは、姿勢を正してあぐらを組むのもおすすめです。股関節の柔軟性を高めることができます。他にも、洗濯干しや食器洗い中に足を交互に後ろに上げ、太ももの裏の筋肉を伸ばす運動をすれば腰痛予防になるかもしれません。
臨月にしてはいけない運動はある?
妊娠中の運動は、有酸素運動かつ全身運動で、楽しく続けられるものが望ましいとされています。逆に、避けたほうが良い運動はどのようなものでしょうか。
転倒のリスクがある運動
妊娠後期を過ぎると、自分が思っている以上にお腹が大きくなり、バランスが取りにくくなります。そのため、転倒の危険性があるスポーツはなるべく避けたほうが良いといわれています。
転倒、転落の危険性があるスポーツといえば、スキーやスケート、サイクリング、乗馬などがあります。乗馬も落馬の可能性があるのでおすすめできません。妊娠前から雪上スポーツが好きだったママも、しばらくは我慢しましょうね。
人やモノと衝突するリスクがある運動
競技性の高いスポーツ、相手と接触するリスクのあるスポーツも妊娠中は危険といわれています。たとえば、バレーボールやバスケットボールなどの球技は、ボールや人にぶつかる可能性があるので望ましくありません。
妊娠中は誰かと競ったりぶつかったりする運動は避け、自分のペースでのんびりと行える運動にシフトしていきましょう。
ジャンプする運動
臨月では大きくジャンプをすることも避けたほうが良いといわれています。体重が増えているため、ひざや腰に負担がかかりやすく、また振動があまりにも大きいと子宮に伝わって子宮収縮につながる可能性も否定できません。
転倒の危険性もあるため、縄跳びやトランポリンなどはなるべく避けましょう。ラジオ体操や安産体操でも、ジャンプの部分は地面に足をつけたまま行ったほうが良いですね。
臨月に運動するときのポイントと注意点
陣痛を促すため、体力を付けるために臨月に運動をするのは良いといわれていても、注意すべき点がいくつかあります。母体やお腹の赤ちゃんに影響をおよぼさないように、注意を守り運動を行うようにしましょう。
無理な運動・激しい運動はしない
妊娠中は、お腹の赤ちゃんに栄養を届けるため、血流量が増えた状態になっています。そのため、心臓や呼吸にもともと病気がある人は運動を避けたほうが良いでしょう。また、医師から切迫流産や切迫早産、前置胎盤を診断されている場合も運動は厳禁です。双子以上の多胎妊娠も、運動は避けたほうが良いとされています。
環境も重要な要素です。真夏の炎天下や高温多湿の場所での運動は避けましょう。急激な体温の上昇はお腹の赤ちゃんにも悪影響の可能性があります。また、妊娠中は重心が前方になり、体重も増えるため、バランスを崩しやすくなっています。なるべく平坦な場所を選びましょう。
健康自慢のママでも、運動中にたちくらみや頭痛、お腹の張り、ふくらはぎの痛みなどを感じたら、すぐに止めて安静にしましょう。しばらく休んでも改善しないときは産婦人科を受診したほうが安心です。
医師に相談すると安心
もともとは運動が好きな人でも、妊娠状況によってはできないこともあります。自覚できるような痛みがなく順調に思えても、担当の医師に許可をもらってから運動を行ったほうが安心ですよ。
また、適した運動方法も人によって変わってきます。陣痛を促進するような運動したほうが良いのか、なるべく安静にして軽いストレッチ程度が良いのか、運動内容に関しても担当の医師と相談してみましょう。
また、定期健診で問題がなくても、運動中に呼吸困難や下腹部の強い痛み、出血などがみられたときはすぐに病院に連絡しましょう。いざというときのために、外出時には携帯電話や母子手帳は忘れずに持ち歩きましょうね。
妊娠後期~臨月の運動の体験談
筆者は妊娠初期から後期まで体調に問題はなかったため、安定期を過ぎるとマタニティヨガ、ストレッチ、ウォーキングを行っていました。体重の増えすぎだけが心配だったので、妊娠前は車や自転車で行くようなところでも、とにかく歩いていきましたよ。妊娠中に買ったウォーキング用のシューズは出産後にはボロボロになってました。
産院までは歩いて40分ほどの距離だったため、ウォーキングのルートにしていました。何かあってもすぐに病院に行けますし、気になることがあったら助産師さんに相談できますからちょうど良かったのです。ウォーキング中は音が聞こえないとあぶないため、音楽を聞くのは止めて外の音を聞いたり、お腹の赤ちゃんのことを考えたりしました。
適度な運動のおかげか、予定日前日に無事安産で長女を出産しました。陣痛から子宮口全開まで一日がかりでしたが、体力や気力も尽きずに頑張ることができましたよ。
気分転換も兼ねて無理をせず適度な運動を!
臨月を過ぎると、もうすぐ赤ちゃんに会えますね。嬉しい気持ちと一緒に、出産や育児のことを考えて不安な気持ちを感じるママもいるかもしれません。
そんなときは、気分転換を兼ねて、無理をせずに軽い運動をしてみませんか。心と身体が安定すれば安産につながります。自分にあった運動を毎日の生活に取り入れていけると良いですね。
※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。