【産婦人科医監修】臨月は苦しい?息苦しくて眠れないとき・お腹が張ってつらいときの対策

臨月になり息苦しいと感じることや、動悸が激しく感じることは少なくありません。妊娠後期から徐々に息苦しいときが増え、夜眠れないママもいることでしょう。臨月にはお腹の張りや力強い胎動もあり、息苦しいとつらいですね。なぜ息苦しさを感じるのでしょうか。ここでは臨月のママが苦しいと感じる原因や、すぐに試せる対処法を解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 臨月とは?苦しい・つらいの?
  2. 臨月に息苦しい・苦しいと感じる理由
  3. 臨月に息苦しくて眠れないときは?
  4. 臨月に息苦しさ・苦しさでしんどいときの対処法
  5. 臨月の息苦しさ・苦しさに関する体験談
  6. 息苦しさを感じたときは体勢を工夫して
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臨月とは?苦しい・つらいの?

妊娠10ヶ月(妊娠36週)に入ると、臨月とよばれます。臨月に入れば、医学的に赤ちゃんがいつ生まれても大丈夫な「正期産(37週0日〜41週6日)」の時期ももうすぐですね。

臨月に入ると、出産予定日よりも早く生みたいと願うママは多いようです。赤ちゃんに少しでも早く会いたいという気持ち以外にも、以下のような理由があります。

・お腹が重くてしんどい、動けない
・胸がつまったような息苦しさがある
・お腹が張るような感じがして痛い

ママは赤ちゃんとの対面にわくわくする一方で、大きくなり続けるお腹の重みや身体の痛み、慢性的な息苦しさに悩むころかもしれません。夜中に息苦しさを感じると、ゆっくり眠れずに疲れがたまってしまいますね。

臨月に息苦しい・苦しいと感じる理由

循環血液量の増加

妊娠中は、赤ちゃんに栄養を行き届かせるため、ママの循環血液量は大きく増加します。個人差はありますが、臨月では全身をめぐる血液の量が非妊娠時の40~45%も増えるといわれています。

循環血液量が増えると、心拍数は増加し、血圧は上がります。臨月に心臓がドキドキするのを感じたり、息切れを感じたりする原因のひとつです。循環血液量が増えると血液中の赤血球数が相対的に減るため、貧血になるママもいます。

ホルモンバランスの変化

妊娠すると、ホルモンの分泌バランスが変化します。とくに、女性ホルモンと呼ばれるプロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が盛んになります。妊娠中に呼吸が増加するのは、プロゲステロンが呼吸中枢に作用しているからと考えられています。呼吸の回数が増えると、息苦しいと感じる場合があります。

また、エストロゲンには、眠気を抑制する働きがあります。お産間近になるとエストロゲンが急激に増えるため、寝つきが悪くなり、寝苦しさを感じることもあるようです。妊娠後期に息苦しいとき、夜に眠れないときはホルモンが影響しているのかもしれません。

子宮の増大

妊娠初期では鶏卵ぐらいの大きさだった子宮は、臨月になると30~33cmほどになります。増大した子宮は心臓や肺などの内臓を圧迫するため、息苦しさや動悸を感じることがあります。

胃が子宮に圧迫されて、妊娠初期のつわりのように気持ち悪さを感じることもあるでしょう。妊娠後期に入って、食事を思うようにとれなくなったと感じるママは少なくないようです。出産直前になると、子宮の位置が下がってくるため、心臓、肺、胃への圧迫が減り、息苦しさや気持ち悪さが改善されることもあります。

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ストレス

精神的なストレスが、息苦しさの原因となることもあります。お産間近になると、さまざまな不安要素が出てくる場合があります。たとえば、逆子や双子などの場合、帝王切開のことを考えて心配になるママもいます。陣痛がどのくらい痛いのかを想像して、胸が苦しくなるママもいるでしょう。

二人目を出産するママは、上の子のことが心配でストレスをためてしまうこともあるようです。過度のストレスは息苦しさだけではなく、さまざまな不調の原因となるため、心身ともにリラックスすることが大切です。

臨月に息苦しくて眠れないときは?

臨月に眠れない理由

臨月に眠れない理由はさまざまです。まず、お腹が大きくなることによって寝返りが難しくなります。仰向けやうつ伏せで寝ることが難しくなり、いつもと同じ寝方ができなくなることで、ストレスを感じる場合もあるようです。また、妊娠中に多く分泌されるプロゲステロンやエストロゲンといったホルモンの作用で、体温が上がり眠気が抑制されることがあります。

他にも、大きくなった赤ちゃんの激しい胎動が原因で、眠りが浅くなってしまうケースもあるようです。出産に対する精神的な不安や、妊娠中のストレスが積み重なって眠れなくなることも珍しくはありません。

臨月に眠れないときの対処法

臨月に息苦しいと感じて眠れないときは、寝る体勢を工夫してみましょう。横向きが基本ですが、足にクッションを挟んでみたり、抱き枕を使ってみたり、脚を高くしてみたりするのも良いでしょう。リラックスできる環境づくりも大切です。お気に入りの音楽を流したり、アロマを使ったりして、心地良い寝室を目指しましょう。

パートナーに協力してもらうのも良いでしょう。不安を話し合うことでストレスが緩和することもあります。また、手足をマッサージしてもらうことで血行が良くなって、眠りが訪れやすくなるかもしれませんよ。

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臨月に息苦しさ・苦しさでしんどいときの対処法

安静にする

苦しさを感じたときは、まずは安静にすることが一番です。家事や仕事の手をいったん休め、横になって目を閉じましょう。自分の呼吸を意識して、ゆっくりと深呼吸するとリラックスできますよ。みだれた自律神経を調整してくれるかもしれません。温タオルで目を温めるのもおすすめです。

お腹の張りを感じたときも安静にすることが大切です。陣痛が始まる可能性もあるので、お腹の張りが規則的ではないか、痛みが徐々に強くなっていないかという点にも注意してみましょう。

寝方を工夫する

夜に息苦しくて眠れないという人は、寝方を変えてみましょう。臨月では仰向けの姿勢はおすすめできません。「仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群」となる可能性があります。臥位低血圧症候群になると、子宮の増大で静脈が圧迫され、血液が心臓に戻りにくくなり、息苦しくなったり気分が悪くなったりします。こうした症状が現れた場合は、速やかに身体の左側を下にして寝るようにしましょう。

うつ伏せ寝でお腹の赤ちゃんがつぶれることはありませんが、やはり臨月にうつ伏せで寝るとママが苦しく感じることが多いでしょう。寝返りのたびに起きてしまうママは、抱き枕やクッションを使ってみるのもおすすめですよ。

赤ちゃんの向きやママの状態によって、楽な姿勢は変わります。クッションを抱っこしたり、足に挟んでみたり、自分にとって一番楽だと思える寝方を探してみましょう。

左側を下にして横になる

身体の左側を下にして横向きに寝る「シムス(シムズ)の体位」を取ると、リラックスできて苦しさが緩和されることがあります。うつぶせ気味に横になり、下側の腕と足は後ろに起き、上側の腕と足は前に出して軽く曲げる体勢です。クッションや抱き枕を下に置いても良いかもしれません。

左側を下にするのは、子宮の圧迫による血行不良を防ぐためです。左側を上にして寝ると大静脈が圧迫され、心臓へ向かう血行が悪くなって寝苦しさを感じる場合があります。同様にリンパ管も圧迫されるので、むくみや静脈瘤の原因になることもあります。むくみやすいひとも、シムスの体位がおすすめですよ。

足を上げて横になる

横向きが落ち着かない人は、足を高くして仰向けになるのも良いでしょう。膝の下にクッションや丸めたバスタオルを置いて足を高くすると、楽になるといわれています。腰に負担がかかりにくく、下半身の血行不良も防ぐことができます。

足を温める

足を温めると、全身の血行を良くする効果があるといわれています。息苦しさや寝苦しさを感じているママは、血行が良くなることでリラックスできるかもしれません。足湯をしたり、布で包んだカイロをあてたり、温タオルで包んだりすると良いでしょう。

食事を小分けにして食べる

妊娠後期にも、子宮の増大による胃腸の圧迫などが原因で、つわりのような吐き気を感じることがあります。胃の不快感があって苦しいときは、消化しやすい食事を心がけましょう。一度の食事量を減らし、胃に優しいものを小分けにして食べるのがおすすめです。

食材は小さめに切って、なるべく柔らかくして食べましょう。食後は胃の内容物の逆流が起こりやすいといわれているため、すぐに横にならないほうが良いでしょう。気持ち悪くて動けないときは、クッションを置くなどして、なるべく上半身を高くして休むと身体への負担が少ないですよ。

改善しないときは病院へ

安静にしていても、動悸やお腹の張りがおさまらないとき、息苦しさが続いて咳が止まらないときは、産科の医師に相談してみましょう。何か他の病気の可能性もあります。息苦しさと同時にむくみがみられるときも医師に診てもらったほうが安心です。

臨月の息苦しさ・苦しさに関する体験談

抱き枕で息苦しさを解消

筆者は臨月に入ると、夜中に息苦しくなって眠れなくなることがよくありました。お腹を圧迫しないように横向きで寝ていましたが、それでも暑さや寝苦しさを感じて、ストレスがたまってしまいました。

ひんやりした素材の大きめの抱き枕を購入し、それに抱きついて寝るとずいぶん楽になりましたよ。散歩や運動をした日は息苦しさが楽になったため、筆者の場合は運動不足もひとつの原因だったのかもしれません。

息苦しさを感じたときは体勢を工夫して

臨月に息苦しさを感じる原因は人それぞれです。眠りが浅くなってしまうときは、横向きでクッションを抱えるなど、寝る体勢を工夫してみましょう。胸のつかえや気持ち悪さがあるときは、食事の仕方を変えてみるのも良いでしょう。動悸がひどいときや、安静にしても苦しさがおさまらないときはすぐに産院に相談してみましょう。苦しさを乗り越えて、リラックスしてお産にのぞめると良いですね。

※この記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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