臨月に眠いのに眠れない!眠気やだるさは出産兆候?原因と対策を解説

臨月になると、眠さやだるさがあるのに目がさえてしまって眠れないという状態が続くことがあります。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。なにか適切な対処法はあるのでしょうか。お産に向けて身体が変化している妊娠後期から臨月にかけ、妊婦さんの身体の中で起こっていることや、昼間の眠気の対処法について解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 臨月とは?
  2. 臨月は眠気・だるさを感じやすい?
  3. 臨月に眠いのに眠れないのはなぜ?
  4. 臨月に眠い!どう対策する?
  5. 臨月の眠気の体験談
  6. 臨月に眠いのは出産の兆候かも

臨月とは?

妊娠する期間は昔から十月十日(とつきとおか)と呼ばれ、10ヶ月目に産み月を迎えます。妊娠週数でいうと、36週~39週となります。ひとつ注意しておきたいのが臨月=正期産ではないということです。正期産は37週から41週までとなり、36週での出産は早産に分類されます。

臨月に入ると、赤ちゃんはいつ外に出ても大丈夫なほどに成長しています。赤ちゃんもママも出産に向けて少しずつ準備を始めるため、赤ちゃんが骨盤内に下がってきたり、前駆陣痛(ぜんくじんつう)を感じたりと、これまでと違った変化が見られるようになります。

臨月は眠気・だるさを感じやすい?

プロゲステロンの作用で眠い・だるい

妊娠中はプロゲステロンという女性ホルモンがたくさん分泌されます。別名「黄体ホルモン」とも呼ばれるプロゲステロンは、妊娠前にも分泌されており、通常は排卵後から生理前までの高温期に子宮内膜を維持するためにはたらいています。着床、妊娠に欠かせないホルモンですが、分泌が多いと、眠気やだるさ、便秘などの症状があらわれます。

胎盤がまだできあがっていない妊娠初期には、妊娠を維持するために多くのプロゲステロンが分泌されます。妊娠初期に眠くなったりだるくなったりするのは、このプロゲステロンが影響するためです。

実は、妊娠後期の眠気にもプロゲステロンが関係しています。プロゲステロンはエストロゲンの子宮収縮作用を抑える作用があるため、妊娠期間を通じて分泌量は徐々に増え続け、妊娠後期に分泌のピークを迎えます。そのため、妊娠後期も眠気を感じやすくなっているのです。

夜に眠れなかった反動で眠い

妊娠後期は大きくなったお腹が重く、どの体勢で寝てもなかなか寝付けないものです。しかも、膀胱が圧迫され頻尿となるため、夜中に何度もトイレに行きたくなり、ますます眠れません。昼間に眠くなるのは、夜に質の良い十分な眠りを確保できなかったことも理由のひとつです。

お腹が大きく疲れやすいため眠い

妊娠後期は、心拍数や身体の中をめぐる血液の循環量が増加します。体重も増えるため、身体にかかる負荷は大きく、疲れやすくなっています。少し動いただけで息切れしたり、動悸がしたりすることもあるほどです。

疲労が蓄積されると、身体を休めるための信号として眠気が訪れます。普段から適度なリラックスを心がけたいですね。

臨月に眠いのに眠れないのはなぜ?

ホルモンバランスの影響

妊娠中期以降は、プロゲステロンに加えてホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が盛んになります。これは、エストロゲンが子宮の収縮を調整するはたらきを持つためです。

エストロゲンは、安眠にいざなうセロトニンの分泌に欠かせないものですが、分泌量が多いと眠りを浅くする作用もあるといわれています。妊娠後期には出産に向けてホルモンのバランスが変化するため、身体はだるく眠いのに、しっかりと眠れないという状態が続くことがあるのです。

出産・将来への不安

出産を間近に控えると、痛みや産後の生活に対する不安が頭をもたげます。きちんといきめるか、どれくらい痛いのか、赤ちゃんは無事に生まれてくるのかと、考え出すとキリがありません。

夜眠るときに浮かんでくる不安の一つひとつが、脳の緊張状態をつくりだします。脳が緊張状態になると、交感神経が刺激されて目がさえてしまうかもしれません。眠る前はリラックスし、心穏やかに過ごすようにしましょう。

臨月に眠い!どう対策する?

我慢せず眠る

眠れないことにとらわれすぎると、かえって目がさえてしまいます。夜眠れなくなるということは考えず、日中でも眠いときは眠りましょう。少しの休息をとるだけでも、心身の緊張がほぐれるかもしれませんよ。

軽い運動をする

いつどこでお産が始まるかわからない不安から、あまり外出しないでいると、身体は運動不足になってしまいます。軽い運動をして身体の緊張をほぐし、出産に向けた体力づくりにつなげましょう。

外の空気を吸って身体を動かせば、自然と気持ちもリフレッシュして、不安が軽くなるかもしれません。ただし、医師に運動を控えるよう指導されている場合は指示に従ってください。

食べ過ぎない

妊娠後期は、胃酸の分泌が増えます。さらにはホルモンの影響で、食道と胃の接合部分の筋肉が緩んでいる状態です。そのため、胃酸や食べたものが逆流しやすくなっています。

食べ過ぎは胃のむかつきや吐き気を引き起こします。食事は胃の負担とならない適度な量を食べるようにし、お腹が空いてしまうときは一回の食事量を減らして、食事の回数を増やす工夫をしてみましょう。

日中少量のカフェインを摂る

日中スッキリしたいときは、カフェインを含んだコーヒーやお茶を飲むと良いでしょう。カフェインの摂り過ぎは赤ちゃんに影響するといわれていますが、その関係はまだ解明されていない部分が多く、許容される摂取量は国や機関によって異なります。日本では具体的な基準量は決められていませんが、世界では1日2~3杯程度を上限としている国・期間が多いようです。

海外の研究では、妊娠前までコーヒーやお茶を習慣として飲んでいた場合、適度な摂取がストレスを軽減するという報告もあり、カフェインをまったく摂取してはいけないとわけではないのです。飲み過ぎに注意しながら、気分晴れやかに、コーヒーやお茶の香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

ガムを噛む

メントールタイプの刺激があるガムは、目覚まし効果が期待できます。これは、ガムを噛むという動作が、交感神経を刺激するためです。交感神経が有意にはたらくことで、眠気を防いだり集中力を高めたりすると考えられます。

また、ガムを噛むことがリラックスにつながるという研究結果も報告されています。ガムを噛む一定のリズムが副交感神経にはたらきかけ、ストレスを抑制したり、疲れを軽減したりするのです。刺激が弱いフレーバーのガムでは、眠気覚ましとならないことがあるので注意してください。

ストレスをためない

緊張や不安を感じていたり、疲れやストレスを抱えていたりすると、交感神経が活性化され覚醒状態が続きやすくなります。夜の眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなったりと、十分な眠りがとれないため、日中の眠気につながります。

精神的なことが原因で寝不足となっているときは、眠りを妨げる原因を取り除いていきましょう。不安なことがあるときは、夫や友人と話をすると気分がまぎれることがあります。好きなアロマをたいてリラックスするのも良いですね。

臨月になると体重管理や行動範囲の制限など、セーブしなくてはいけないことが出てきて、なかなか思うように動けないジレンマもあるでしょう。しかし、あまり思いつめず、なにごとも無理をしないことが大切です。

臨月の眠気の体験談

第一子妊娠中はやりたいことがいろいろとあり、臨月に入っても眠気を感じることはあまりありませんでした。しかし、第二子を妊娠中は妊娠後期に入るころから腰や股関節の痛みが出てしまい、あまり出歩くこともなく、暇さえあれば上の子と一緒に横になっていた気がします。

ただし、眠気があって横になっても、ぐっすりと眠ることはできませんでした。お腹の重みが気になり、身体の痛みで体勢が定まらず、上の子の入園準備の時期と重なったことから産後の生活のことも心配。眠りが浅くなり、眠ってもすぐ目覚めてしまう状態の繰り返しでした。

始めのうちはぐっすり眠りたいと思ったものですが、そのうちまとまった睡眠をとるのはあきらめました。小刻みな睡眠を多くとることで、眠気をまぎらわせることにしたのです。この習慣があったからか、産後の夜の授乳で何回も起こされるのはそれほど苦痛ではありませんでした。こればかりはケガの功名といえるのかもしれません。

臨月に眠いのは出産の兆候かも

臨月になって、これまであまり感じていなかった眠気を感じることが増えたら、出産に向けて身体が準備を始めた証拠かもしれません。赤ちゃんからいつ出産のサインが来ても良いように、入院準備や産後の生活の準備をすすめておきましょう。

眠りの質が変わるのはホルモンの影響が大きいといえますが、ホルモンバランスの変化は産後も続きます。身体がいうことを聞かないと、じれったい思いをするときもあるかもしれません。しかし、産前産後はそういう時期なのだと割り切り、あまりナーバスにとらえすぎないこともポイントですよ。