【産婦人科医監修】臨月に体重が増えすぎるとどうなる?臨月の体重増加の目安と太りすぎ解消のポイント!

出産を間近に控えた臨月。安静にしようとして運動量が減ったり、つわりがなくなって食べ過ぎてしまったりして、むくみやすい・太りやすい時期でもあります。臨月の体重増加の目安はどのくらいなのでしょうか。体重増加が止まらないとどんなリスクがあるのでしょうか。体重増加の体験談や体重増加を防止する方法もあわせて紹介します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 臨月の体重増加の目安とは
  2. 臨月の体重増加の原因は?
  3. 臨月の過度な体重増加によるリスク
  4. 臨月の体重増加を防ぐポイント
  5. 臨月の体重増加に関する体験談
  6. 妊娠中の体重増加が少なすぎるとどうなる?
  7. こまめな体重管理で母子ともに健康な臨月を
  8. あわせて読みたい

臨月の体重増加の目安とは

BMIによる推奨体重増加量

妊婦の適切な体重増加量は、妊娠していないときのBMIによって区分されます。BMIとは以下の式で求められる数値のことで、体重と身長の関係によって肥満度をあらわす指標です。

BMI= 体重(kg) ÷ 【身長(m)の2乗】

BMIが18.5未満のやせ体型の人は妊娠期間全体で+12~15kg、18.5~25.0の人は+10~13kg、25.0以上の人は+7~10kgとなるのが理想的だと考えられています。著しい肥満のケース(BMI30.0以上)では個別対応となり、それぞれに合わせた目標体重が設定されることになるでしょう。(※)

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体重増加の内訳

臨月に体重が増加するのはどうしてなのでしょうか。妊婦の体重増加量の内訳としては、胎児の体重増加や羊水量の増加、母体の血液や水分量の増加など、さまざまな要素が考えられます。

具体的に何がどのくらい増加したかは体重のみからはわからないため、体重測定以外にも血圧や血液の成分の検査、超音波検査などを定期的に行い、正常な体重の増え方をしているか、胎児や母体に異常がないかをチェックしていくことが重要になります。

臨月の体重増加の原因は?

赤ちゃんの成長

臨月にはお腹の中の赤ちゃんが急速に成長します。すべての器官が完成するとともに身長・体重が新生児と変わらない水準にまで達し、いつ生まれても外の世界で生きていける身体になります。赤ちゃんの体重が増加すれば、その分母体の体重も増加します。

食べ過ぎ

妊娠後期~臨月にかけては、子宮の位置が下がってくるため胃の圧迫感が減り、つわりの症状がなくなることで食欲旺盛になる傾向があります。

出産後は赤ちゃんのお世話や授乳の忙しさもあり、ママが好きなものを好きなだけ食べることは難しくなったり、しばらくは外食をしづらくなったりすることが予想されますね。そこで出産前の臨月のうちに、好きなものを好きなだけ食べておこうと考える妊婦さんもいることでしょう。実家に帰省してついつい食べ過ぎてしまうこともあるかもしれません。

好きなものを食べることはもちろん構いませんが、カロリーの摂りすぎや栄養バランスの崩れには注意が必要です。過度に体重が増え臨月に太り過ぎとならないよう、定期的に体重をチェックして食べる量を調節しましょう。

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運動不足

運動不足でカロリーの消費量が減り、体重増加につながってしまうケースもあります。臨月になると出産が間近であるため、できるだけ安静にしていなければならないと考える人も少なくないでしょう。お腹が大きくなって動きにくいため、動くのが億劫に感じる人もいるかもしれません。

しかし、運動不足は過度な体重増加の原因となりうることに加えて、分娩時に股関節や子宮口が開きにくくなる原因にもなりえます。持病や何らかの妊娠トラブルで医師から安静にするように言われている人を除いては、軽い運動をする分には問題ありません。少しでも身体を動かす時間を設け、臨月に太り過ぎないように心がけてみましょう。

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臨月の過度な体重増加によるリスク

臨月に体重が急増すると、母体や赤ちゃんにどのようなリスクが発生するのでしょうか。リスクを大きく分けると以下の3つが考えられます。

妊娠高血圧症候群

妊娠中に高血圧になる、あるいは高血圧に蛋白尿を伴う「妊娠高血圧症候群」は過度な体重増加によるリスクのひとつです。高血圧と蛋白尿以外の症状としては、頭痛やむくみがあげられます。

ひどくなると痙攣を主な症状とする「子癇(しかん)」や肝機能・腎機能の障害、胎児発育不全や胎児機能不全、妊娠中期以降にお腹の中に胎児がいる状態で胎盤が剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」などを引き起こす要因となる場合があり、妊娠高血圧症候群と診断された場合には食事管理と薬の服用を中心として治療を進めることになります。

妊娠糖尿病

肥満や過度な体重増加は妊娠糖尿病の危険因子になるともいわれています。妊娠糖尿病とは、妊娠の影響で糖尿病にはいたらない程度の糖代謝の異常が起こることを指し、発症すると早産や胎児発育不全、胎児の奇形などさまざまなリスクを抱えることになります。妊娠高血圧症候群と同様に治療のなかで食生活を改善し、正常な血糖値になるようコントロールする必要があります。

微弱陣痛

陣痛が弱すぎて分娩が進行しなくなってしまう状態を「微弱陣痛」と呼び、肥満や急激な体重増加が微弱陣痛の要因になることがあります。微弱陣痛の兆候としては、陣痛の周期が長くなったり持続時間が短くなったりすることがあげられます。

微弱陣痛となった場合には水分補給や子宮収縮薬の投与をしながら陣痛が起こるまで待機するのが基本です。ケースによっては帝王切開になることもあるでしょう。

臨月の体重増加を防ぐポイント

こまめな体重測定・記録

臨月の体重増加を防ぐためには、まずはこまめな体重測定を心がけ、測るだけでなく体重の変化をしっかりと記録することが大切です。妊娠中は妊娠期間全体の体重増加量だけでなく週ごとの体重増加量を把握して管理しましょう。

ちょっとした体重の変化に気づくことでカロリー摂取量やカロリー消費量を調節しやすくなり、臨月に太りすぎとなる前に対処できるようになるかもしれません。自分の身体の状態を正確にとらえることから始めてみてはいかがでしょうか。

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バランスの良い食事

臨月にはお腹の赤ちゃんが急速に成長するため、ママは引き続きバランス良くさまざまな栄養素を摂取し、胎児に過不足なく栄養を届ける必要があります。臨月に太ることを恐れてダイエットに走ってしまう人もみられますが、お腹の赤ちゃんのためにもやり過ぎは禁物です。あくまでも過度な増加を防ぐのにとどめて、栄養バランスのとれた食事をとり、適度な体重増加量を維持するようにしましょう。

明らかな食べ過ぎで太っている妊婦さんであれば、カロリー摂取量を減らす必要があるでしょう。それでも一気に減らすのではなく、必要な栄養摂取量は保ったうえで体重増加を抑えることがポイントになります。蛋白質やビタミン、葉酸、鉄、カルシウムなどを欠かさず摂取し、健康的な身体づくりに努めましょう。

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適度な運動

臨月はお腹が大きいため運動しにくく、また出産が近いことから安静が第一だと考えて一日中寝て過ごす人もいるかもしれません。しかし運動不足でカロリー消費量が減ると急激な体重増加の原因になりえます。また筋肉の運動量が減るために分娩時に股関節がスムーズに動かなかったり、子宮口が開きにくくなったり、産道に脂肪がついて胎児が通りづらくなったりすることも考えられます。臨月にも適度に身体を動かすようにしましょう。

臨月におすすめの運動としては、ウォーキングやスクワット、階段昇降などがあげられます。どの運動をするときも無理のない範囲にとどめ、安全には十分気をつけましょう。運動を始める余裕がない人は家事をいつもより念入りにするだけでも良い運動になるかもしれません。

外に散歩しに行くときは近所で済ませるようにし、母子手帳や健康保険証、診察券、携帯電話、現金を必ず携帯しましょう。おしるしや破水が起こったときのためのナプキンやタオルも持っていくと安心です。

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臨月の体重増加に関する体験談

臨月の体重増加を止められず反省した例

第一子の妊娠中、食の好みが急に変わりフルーツや甘いものが欲しくなっていました。さらに妊娠が進むにつれて食べ物がおいしく感じられ、体重増加が止まりませんでした。臨月前には予定体重を突破。体重増加が激しくなってきて看護師さんや助産師さんに指導を受けても、ちゃんと動けば大丈夫という甘い考えで食事量を減らすことなく臨月まで過ごしました。

「このままではダメだ、食べる量を減らさなくちゃ」と考えるたびにそれがストレスになるという悪循環でした。ダイエット時期のリバウンドに似たような感覚です。我慢しなければならないと考えることがストレスになるということを繰り返して臨月を迎え、そのまま出産にいたりました。

病院でも産後の健診でも「許容範囲を超えて太ると自分のお産にリスクを作るだけ」と言われ、「次に出産を考えているなら、妊娠中の体重管理はまじめにやりないさい」と叱られました。体重増加がリスクになるということへの認識の甘さを持ったまま過ごしたことを反省しました。

つわりの反動で激太りした例

臨月までつわりがあり、食べられるようになってから急に体重増加を指摘されたというママがいました。臨月まであまり食べることができなかった反動だったのでしょう。

臨月になると赤ちゃんの位置が変わってくるので、胃の圧迫がなくなり必要以上に食べてしまう方も多いと聞きます。臨月は太りやすい時期だと思っておけば不必要に食べることがなくなるかもしれません。臨月はさらに注意しようと思うことも大事です。

炭水化物の食べ過ぎで急激に体重が増加した例

三人目のとき、臨月にご飯が異常においしく感じられ米大好き人間になっていました。パンも好んで食べていたこともあり、臨月は炭水化物摂取量が多かったと思います。臨月になってからの米好きは変化ないまま。炭水化物の摂りすぎのせいでしょうか、体重増加が止まらなくなり、最終的に予定体重の10kgオーバーで臨月を迎えました。

臨月から徹底した食事管理を実施した例

友人は妊娠中のほとんどの期間は胃もたれがひどかったそうですが、臨月前に胃もたれがなくなってきたころからだんだんと太り始め、臨月に突入してから医師に食事管理を徹底するように注意されていました。周りが見ても臨月時期の太るスピードは速かったです。

この友人のように臨月時期の体重増加が原因で厳しい食事管理をする人もいるため、食事は大事だと痛感します。臨月に入っていなくても、今まさに臨月でも、必要以上の体重増加がないように意識し、健康な状態で出産を迎えてくださいね。

妊娠中の体重増加が少なすぎるとどうなる?

過度な体重増加には多くのリスクがありますが、逆に体重が十分に増えない場合は問題があるのでしょうか。体重は適度な増加量を保つことが大事であり、増えない場合にももちろんリスクがあります。妊娠中の体重増加が少なすぎる場合の主なリスクについても確認しておきましょう。

胎児発育不全(FGR)

胎児の発育が遅延することを「胎児発育不全(FGR)」と呼びます。母体の体重増加が十分でないと、胎児の成長に必要な栄養が届かず、胎児の発育が遅れる原因となることが考えられます。

胎児発育不全になると、出生後には低体温や低血糖、低Ca血症、多血症、精神発達の遅れといった影響が出ることが指摘されています。ケースによっては出生後すぐに亡くなってしまう赤ちゃんもみられます。

低出生体重児

近年、妊娠中の過度なダイエットが増加していることにより、2,500g未満で生まれる「低出生体重児」が増加しています。低出生体重で生まれた赤ちゃんでも、早産でなく器官が完成している状態で生まれた場合は大きな問題なく成長していくケースがほとんどです。

成長後の生活習慣病

胎児のときに長期にわたって栄養状態が悪かった場合、成人後のメタボリックシンドローム(肥満や高血圧、糖尿病など)のリスクが高くなるという説があります。特に糖尿病や血管障害とのつながりが強いと考えられており、近年注目されています。

こまめな体重管理で母子ともに健康な臨月を

臨月は太りやすい時期ですが、食欲にまかせて食べ過ぎると母子の健康に悪影響をおよぼすことがあります。一方で、体重増加に敏感になりすぎてダイエットしようとするのも良くありません。もともとの肥満や持病といった特別な事情がない限りは、体重増加そのものは問題ではなく、「過度に」増えることがさまざまなリスクのもとになるのだということを頭に置いておきましょう。

これまで体重のことをあまり気にしていなかった人は、少し面倒でも、まずは自分の体重の変化を週ごとに把握することから始めてみてください。臨月に太りすぎたと感じる場合や、体重増加量が適切でない場合には、食事を見直したり運動量を増やしたりして調節してみましょう。間食の量をほんの少し減らす、近所を散歩するなど、手軽にできることから始めてみてはいかがでしょうか。赤ちゃんのためにもくれぐれも無理はしないでくださいね。

※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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