【産婦人科医監修】妊娠後期の食事の注意点は?後期つわりで食べられないときは?

妊娠後期になると、子宮による胃の圧迫がなくなることで食欲が旺盛になり、食べ過ぎてしまう妊婦さんが少なくありません。反対に、いわゆる「後期つわり」で吐き気がひどく、あまり食べられないというケースもあります。ここでは、妊娠後期に悩みがちな食事の注意点のほか、積極的に摂りたい栄養素、後期つわり対策について解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 妊娠後期とは
  2. 妊娠後期の食事の注意点
  3. 妊娠後期に控えたほうが良い食べ物は?
  4. 妊娠後期に摂取したい栄養素
  5. 後期つわりで食べられないときはどうする?
  6. 心と身体の栄養になる食事を心がけて
  7. あわせて読みたい

妊娠後期とは

妊娠後期とは、妊娠28週(8ヶ月)以降の時期を指します。出産に向けて赤ちゃんが急激に成長し、子宮が大きくなるため、母体の負担もいっそう大きくなります。

妊娠28週から36週くらいまでは、大きくなった子宮が周りの臓器を圧迫するため、さまざまな症状があらわれます。胃が押し上げられることで、つわりのような胃のむかつきが出る場合もあれば、心臓や肺が圧迫されて、動悸や息切れを感じることもあります。妊娠後期に「食欲ない」と感じるママも少なくありません。

妊娠37週を過ぎると、一般的に赤ちゃんの体重は2,500gを超え、身体の各機能も十分に成熟しており、いつでも外に出られる状態です。出産が近付くにつれて、赤ちゃんが下りてくるため、多くの妊婦さんは胃がすっきりして食欲が増してきます。その反面、頻尿や尿漏れ、腰痛、恥骨痛といった症状が出てくる可能性があります。

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妊娠後期の食事の注意点

体重が増え過ぎないようにする

出産間近になると、子宮による胃の圧迫が弱くるため、食欲が旺盛になる人が多いのですが、ついつい食べ過ぎてしまうと、適切な体重増加量を超えてしまう可能性があります。

妊娠後期に推奨される体重増加のペースは、肥満の人を除いて1週間あたり0.3~0.5kgとされています。体重が過度に増加した場合は、妊娠糖尿病といった疾患のリスクが高まるほか、肥満によって微弱陣痛など難産になりやすいことから、医師に食事制限を指示されることもあります。

食べ過ぎて体重が急激に増えないよう、普段から適切なエネルギー量を摂取することを心がけてください。妊娠後期には、妊娠していないときに必要なエネルギー量+450kcaLを1日に摂取するのが目安です。エネルギー量だけでなく、妊娠後期に摂取すべき栄養素が不足しないよう、栄養バランスにも配慮しましょう。献立の立て方については、医師や助産師に相談するほか、妊婦向けのレシピ本を参考にするのもおすすめです。

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妊娠中の疾患を予防する

妊娠後期は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といった妊娠中特有の疾患を発症しやすい時期です。いずれも、普段の食事に気を配ることで発症リスクを下げられるといわれています。

妊娠糖尿病は、妊娠の影響で糖代謝異常が起こり、血糖値が正常より高くなってしまうことです。母体側には妊娠高血圧症候群や早産、胎児側には胎児発育不全などのリスクがあります。妊娠糖尿病を予防するには、栄養バランスの良い食事を1日3食、一定の時間に食べるようにします。食事の際は、糖質の吸収を穏やかにする食物繊維が豊富な野菜から食べ、糖質が多いご飯は最後にするなど、血糖値を上げない食べ順を意識してください。

一方、妊娠高血圧症候群は、何らかの原因で高血圧になることで、尿たんぱく、血管障害、臓器障害などを発症します。妊娠高血圧症候群の原因は明らかになっていませんが、「塩分を摂り過ぎない」「太り過ぎない」が予防のポイントです。1日の塩分摂取量は6.5g未満(※1)になるようにして、薄味の献立を心がけましょう。また、脂っこいメニューや糖分の多い食べ物も控えるようにします。

なお、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群を発症してしまった場合、食事療法を行うことがあります。BMI値に応じて摂取カロリーを制限するほか、妊娠糖尿病では1日の食事を4~6回に分ける「分食」を行うなどします。

妊娠後期に控えたほうが良い食べ物は?

妊娠後期に限らず、妊娠中は食べるのを控えたほうが良い食べ物がいくつかあります。絶対に食べてはいけないというわけではありませんが、赤ちゃんに悪影響がないとは言い切れないため、避けたほうが安心ではないでしょうか。

ビタミンA(レチノール)を多く含む食べ物

ビタミンAは胎児の皮膚や粘膜の形成に不可欠です。しかし、レバーやうなぎなど動物性食品に多く含まれる「レチノール」というビタミンAを過剰に摂取すると、胎児の水頭症や口蓋裂などのリスクが高まるとされています。1日の摂取上限量の2,700μgREを守り、食べ過ぎに気を付けましょう。

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リステリア菌に感染する恐れのある食べ物

免疫力が低くなっている妊婦さんはリステリア菌に感染しやすいのですが、もしも感染した場合、早産の原因になりかねません。リステリア菌による食中毒の原因になりうる食べ物としては、ナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモンなどがあげられます。

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メチル水銀を含む魚介類

マグロやメカジキなど、メチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦さんが過剰に摂取すると、赤ちゃんに神経障害や発達障害をもたらすリスクがあるとされています。クロマグロは週80g未満など、妊娠中の魚介類の摂取量の目安を厚生労働省が公表しているので参考にしましょう(※2)。

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サルモネラ菌に感染する恐れのある食べ物

妊娠中に生卵を食べることは禁止されていませんが、サルモネラ菌に感染する恐れがあるため注意が必要です。サルモネラ菌による食中毒で激しい下痢が起こると、子宮収縮を促してしまう可能性もあります。

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妊娠後期に摂取したい栄養素

妊娠後期は体重の増え過ぎに気を付けたい時期ですが、食べる量を極端に減らすなどして無理な食事制限をすると、赤ちゃんに必要な栄養素まで不足してしまいます。赤ちゃんの成長や妊娠中のトラブルの予防、安産のために、以下に紹介する栄養素を積極的に摂りましょう。ただし、これらの栄養素に偏るのも良くありません。バラエティに富んだ食材でいろいろな栄養素を摂ることが大切ですよ。

タンパク質

タンパク質は、赤ちゃんの筋肉や血液を作るのに必要不可欠な栄養素です。妊婦さんの体力や免疫力を高めて、出産という大仕事に備える意味でも積極的に摂りたいですね。妊娠後期は、妊娠していないときと比べて摂取量を1日あたり25.0 g増やすことが推奨されています。赤身肉や鶏のささみなど、脂肪分の少ない良質なタンパク質を選ぶのがおすすめです。

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鉄分

妊娠中は、胎児に栄養や酸素を供給するために母体の血液量が増えます。それに伴い、鉄分の需要が高まり、鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」になりやすくなるのです。鉄分の需要量は、胎児が成長するにつれて増加し、妊娠中期から後期にかけては非妊娠時に比べて1日あたり9.5mg付加するよう推奨されています(※1)。ビタミンCを一緒に摂ると、鉄分の吸収を助けてくれるため、鉄分を含む料理にレモン汁をかけるなど工夫すると良いでしょう。

鉄分が豊富な食べ物は、ほうれん草や赤身魚、大豆製品などです。レバーも鉄分が豊富ですが、レチノールを多く含むため、過剰摂取しないように気を付けましょう。

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ビタミンC

ビタミンCは母体の免疫力を高め、風邪などの感染症の予防になります。ビタミンCはピーマンやトマト、芽キャベツ、ブロッコリー、イチゴなどに多く含まれます。

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ビタミンB群

ビタミンB6は、皮膚や粘膜の健康維持に役立つほか、つわりによる吐き気を和らげる効果があります。ビタミンB6の吸収率を上げるためには、ビタミンB2を一緒に摂取すると良いといわれています。ビタミンB6はパプリカやマッシュルーム、バナナなどに、ビタミンB2はレバーや納豆、牛乳などに多く含まれます。また、モロヘイヤやアボカドなどはビタミンB6・B2ともに豊富です。

一方、ビタミンB群の一種である葉酸も妊婦さんにとって必要な栄養素です。葉酸はDNAの合成に関わっているほか、造血作用があります。胎児の器官形成が活発な妊娠初期には特に欠かせないのですが、貧血の予防のために妊娠中期以降も継続的に摂取するのがおすすめです。

メルミー
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メルミーの魅力は、産婦人科医と管理栄養士によるダブル監修を受けていることです。葉酸のほか鉄やカルシウムなど、妊娠中に特に重要な17種類の栄養素を配合し、内14種類の栄養素については厚生労働省の定める栄養機能食品の基準値をクリア。「無添加」なのも嬉しいポイントですね。

厚生労働省が定める管理基準を満たしたGMP認定工場で生産されているほか、放射能検査や残留農薬検査もクリアして品質にこだわって作られています。また、配合されているすべての成分について、原産国と最終加工国の両方が公開されています。

カルシウム

カルシウムは赤ちゃんの骨や歯を作る大切な成分です。妊娠中は母体に回る分のカルシウムが不足しやすく、将来的に骨がもろくなる可能性があります。妊娠中の摂取推奨量は非妊娠時と変わらないのですが、日本人はもともとカルシウムが不足しがちで、推奨量を下回る人が多いため、妊娠中は積極的に摂取しましょう。

カルシウムは牛乳やヨーグルトといった乳製品のほか、小魚、アーモンド、小松菜などに含まれています。

タンパク質や、カツオやサバといった食材に豊富なビタミンDには、カルシウムの吸収率を上げる働きがあります。グラタンのときには具を鶏ささみかサバにするというように、レシピを工夫してみてください。

カリウム

妊娠後期は血液量が増えるため、もともとむくみやすくなっているのですが、さらに塩分の摂り過ぎや運動不足が重なると、むくみが悪化しがちです。カリウムには体内にたまった余分な塩分を尿として排出してくれる働きがあり、むくみの改善に効果が期待できます。塩分の摂り過ぎによって妊娠高血圧症候群のリスクを高めないためにも、カリウムが豊富な食材を毎日1品でも献立に組み込みたいですね。

カリウムを含有するのは、ジャガイモやパセリ、豆腐、アボカドなどです。バナナやキウイフルーツといった、手軽に食べやすいフルーツにも多く含まれていますよ。

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食物繊維

妊娠中はプロゲステロンという女性ホルモンが大量に分泌されるのですが、このプロゲステロンには腸の働きを抑制する作用があるため、便秘になりがちです。臨月に入るとプロゲステロンの分泌量は減り始めるものの、出産に向けて赤ちゃんが下りてくることで腸が圧迫されると、出産直前まで便秘が続く場合があります。

便秘の改善のために、食物繊維を積極的に摂りましょう。食物繊維には、余分な脂肪分を包んで排出する水溶性食物繊維と、腸内の汚れを押し出す不溶性食物繊維があり、両方をバランス良く摂取することが大切です。水溶性食物繊維は海藻類やイモ類、不溶性食物繊維は根菜類やきのこに多く含まれます。

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後期つわりで食べられないときはどうする?

後期つわりとは

大きくなった子宮が胃を持ち上げることで、胃もたれや胃痛、吐き気といった症状があらわれることを俗に「後期つわり」と呼ぶことがあります。臨月に入り、赤ちゃんの頭が骨盤内に下りてくると、胃が圧迫されなくなり、後期つわりも治まることが多いのですが、中には出産直前まで症状に悩むこともあるようです。

後期つわりの食事の対策


後期つわりになると、気持ち悪くて食欲が出ない、食べてもすぐに嘔吐してしまうといったことは珍しくありません。しっかり食べられないと、栄養不足などで赤ちゃんへの悪影響が出ないか不安になってしまいますよね。

後期つわりの症状を少しでも緩和し、食べる量を徐々に増やしていけるように、意識的に生活習慣を変えてみましょう。

たとえば、胃が圧迫された状態で普段と同じ量を一度に食べると、すぐに気持ち悪くなってしまうため、1回の食事量を少なくして、食事の回数を増やしてみてください。

胃への負担を減らすために、食材は消化しやすいものを選びましょう。卵や牛乳、うどん、りんごなどが消化に良いですよ。また、料理の際は食材を小さく切り、柔らかく煮込むのがおすすめです。

一方、胃液が薄まって消化が悪くならないよう、食事中は水分を摂り過ぎない、胃酸の逆流を防ぐために、食後すぐは横にならないといったことも大切です。

ただし、上記の対策をしても食べられない状態が続く、水分補給も難しいといった場合は、早めに病院を受診しましょう。薬の処方や点滴、入院などの処置をとってもらえると考えられます。

後期つわりの体験談「フルーツや生野菜がおすすめ」

臨月に入ったころから、胃の不快感や胸のつまりといった症状が出ました。毎食後ではないのですが、食べて少し経つと急に吐いてしまうということが1日1回はありました。出産直前は実家にいたのですが、母が「母親になるのだからしっかり食べろ」と食べさせたがるタイプで、つい食べ過ぎてしまいがちだったのも吐いてしまう原因だったかもしれません。

後期つわりがひどいときは、真夏だったということもあり、スイカやソーダ味のアイスをよく食べていました。実はフルーツは苦手なのですが、この時期はおいしく食べられました。生野菜もさっぱりしておすすめです。逆にだしの香りは妊娠中通して苦手でした。私の場合、妊娠初期にダメと感じたものは妊娠中期以降もずっと苦手意識がありました。

食べても吐いて戻してしまうということはもちろんつらかったのですが、食べられない状況を母に認めてもらえなかったのもとてもつらかったです。食べられない妊婦さんに対して、周りが「母親になる自覚がない」などと言って無理に食べさせることがないよう、後期つわりについての認知が広がると良いなと思います。

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心と身体の栄養になる食事を心がけて

出産は大変なエネルギーを使う大仕事です。また、赤ちゃんが生まれて子育てが本番になると、ますます体力が必要になります。妊娠中からしっかりと栄養をとり、産後に備えられるようにしましょう。

栄養バランスの良い食事というと難しく考えてしまいがちですが、旬を意識するのがポイントです。旬の食べ物は栄養価が高いですし、何よりおいしく、価格も安いですよ。

食事は身体だけでなく心の栄養にもなるものです。栄養バランスに気を配ることはもちろん大切ですが、食事について悩み過ぎて、ストレスを感じてしまっても良くありません。筆者は妊娠中、野菜たっぷりの和食中心の食事にして、週に1回は好きなものを食べてよしという緩めのルールで過ごしていました。出産までの残り少ない時間、ゆったりとした気持ちで食事を楽しんでくださいね。

※この記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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