【産婦人科医監修】妊婦は鉄分不足に注意!必要量やプルーン・サプリなどの補給法、レシピも紹介
妊娠中は、胎盤を通して赤ちゃんに鉄分を送るため、ママは鉄分不足や貧血になることがあります。日常的に、鉄分を含む食材をしっかりと摂る必要がありますね。ここでは鉄分補給におすすめの食材や効率的な摂り方、サプリメントでも鉄分の摂取が可能かについて産婦人科医監修で解説します。
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目次
妊婦の鉄分必要量は?不足・貧血になりやすい理由
妊娠中は循環血液量が増える
貧血は、妊婦の2割程度が発症するといわれています。これまで貧血気味ではなかった人も、妊娠すると貧血に悩まされることがあります。一般的に、妊娠中の貧血は鉄分の欠乏によるもの、葉酸の欠乏によるもの、そのふたつを合併したものにわかれています。
ママが貧血を発症しやすくなる原因のひとつは、妊娠中の循環血液量の増加です。胎盤を通して栄養や酸素を赤ちゃんへスムーズに送らなければならないため、全身の血液量が増えるのです。循環血液量は妊娠初期から徐々に増え、妊娠32週頃には非妊娠時とくらべて40~45%近く増加します。
血液量が増えると、赤血球や血色素の割合が相対的に減り、ヘモグロビン値が低くなります。ヘモグロビン値が減少すると身体が酸素不足に陥り、息切れや倦怠感、頭痛などの症状を訴える妊婦さんもいるでしょう。
さらに、妊娠後期では母体に蓄えていた鉄分を赤ちゃんに優先的に送るため、ママの鉄分欠乏状態が強まります。貧血が進むと、赤ちゃんに必要な栄養や酸素がうまく運べなくなり、発育がさまたげられる可能性があるため注意が必要です。出産後も、鉄分が足りていないと、ママの産後の回復が滞る場合もあるので、鉄分は産前産後と意識的に摂取していきましょう。
妊娠中に必要な摂取量は?
鉄の摂取推奨量(単位=mg) | 妊娠中期・後期 | 妊娠初期・授乳中 | 一般的な女性の耐容上限量(15歳以上) |
---|---|---|---|
月経なしの一般的な女性(18~29歳/30~69歳) | 6/6.5 | 6/6.5 | 40 |
付加推奨量 | +15 | +2.5 |
成人女性が一日に必要な「鉄分摂取量」は5.0~9.0mgとなっています。生理時かどうかでも必要量は変わってきます。豚レバーが1串6.5mg、ひじきが小鉢1杯2.8mg、納豆が1パック1.7mgほどの鉄分を含むので目安にしてみてください。(※1)
一日の理想的な鉄分摂取量である「摂取推奨量」は必要量よりも少し多く、6.0mg~11.0mgとなっています。できれば推奨量に近づけたいものですね。これにプラスして、妊娠初期では一日2.5mg、妊娠中期以降は一日15.0mgの鉄分を摂るのが理想とされています。
とくに妊娠中期・後期は普段の倍以上の鉄分を摂らなくてはいけないため、効率良く鉄分摂取できる方法を探してみましょう。
妊婦は2種類の鉄分を上手に摂取しよう
鉄分は、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分かれます。野菜類や豆類、海藻類に含まれる鉄分は非ヘム鉄であり、身体への吸収率は1~6%と少なくなっています。これに対し、肉類や魚類に含まれているヘム鉄の吸収率は10~20%と大きくなっています。
そのため、鉄分を効率良く摂るためには、ヘム鉄を多く含む動物性食品を中心にした食事がおすすめです。非ヘム鉄の食材は、ビタミンCやクエン酸、動物性タンパク質と一緒に調理することで鉄分の吸収率が上がります。ヘム鉄と非ヘム鉄は吸収の経路や特徴が違うので、両方をバランス良く摂ったほうが効果的です。
コーヒーやお茶に含まれる「タンニン」は非ヘム鉄の吸収を阻害するため、食後30分ほど開けてから飲んだほうが良いでしょう。貧血予防には、鉄分だけではなく、良質なタンパク質や葉酸、ビタミンB12などの栄養素も必要となります。栄養バランスのとれた食事を心がけたいものですね。
妊娠中におすすめのヘム鉄が含まれている食べ物
ヘム鉄は、動物性食品に多く含まれています。昔から「貧血にはレバー」といわれているように、豚レバーには豊富な鉄分があります。しかし、豚レバーには過剰摂取に注意すべきビタミンAも多く含まれるため、偏って食べるのは避けたほうが良いでしょう。レバーほどではありませんが、馬肉やラム肉、牛肉など赤みが強い肉にもヘム鉄は多く含まれています。
お肉が苦手な人は、かつおやまぐろ、いわしなどの魚介類で補っても良いですね。あさりやしじみなどの貝類にも多く含まれるため、料理に取り入れてみましょう。貝類は造血効果のあるビタミンB12も多く含まれているのでおすすめですよ。
妊娠中におすすめの非ヘム鉄が含まれている食べ物
非ヘム鉄は豆類、野菜類、海藻類などに多く含まれています。ひじきや納豆、小松菜、ほうれん草、プルーンなどがおすすめです。ヘム鉄に比べると吸収率は下がりますが、野菜類は他にも葉酸など貧血に効果のある栄養素が多いため、バランス良く取り入れていけると良いですね。
非ヘム鉄を摂取する際は、鉄分の吸収をサポートしてくれるビタミンCやクエン酸を同時に摂ると良いでしょう。ビタミンCはレモンやオレンジ、ブロッコリーなどに多く含まれています。ドレッシングにレモン汁を入れたり、果物を一緒に食べたりと工夫してみましょう。
妊娠中の鉄分補給に役立つ飲み物やお菓子はある?
カカオは栄養価が高く、鉄分やマグネシウムなども含まれています。カカオの含有量が多い「純ココア」なら鉄分量も多く、糖分も入っていないのでおすすめです。ココアには微量ですがカフェインも含まれるため、何杯も飲むのは止めたほうが良いかもしれません。
コンビニなどでよく見かける「飲むヨーグルト」にも、鉄分が含まれているものがあります。入っている鉄分は非ヘム鉄なので吸収率は低いですが、手軽に不足分を補うことができるかもしれません。カロリーや糖分が気になるママは、大量に飲むのは避けたほうが良いでしょう。
鉄分が強化されたお菓子をおやつにするのもおすすめです。栄養強化食品にはウエハースやクッキー、シリアルなどがあります。基本的に、鉄分は食事から取り入れるべきですが、つわりでどうしても食べられないときは、鉄分が入ったゼリー飲料などで補っても良いですね。
妊娠中の鉄分摂取にサプリは利用できる?
さまざまな会社から鉄分のサプリメントが販売されています。DHCやアサヒのディアナチュラ、大塚製薬のネイチャーメイドなどが有名かもしれませんね。妊娠中はこのような鉄分サプリを積極的に利用したほうが良いのでしょうか。
一般的に、必要な栄養素はできるだけ食事から摂ったほうが良いと考えられています。サプリメントは手軽に栄養補給ができますが、デメリットもあるのです。医薬品と違って、市販のサプリメントは品質や規格が一定ではありません。また、用法用量の注意文を読まずに使用している場合、知らず知らずのうちに過剰摂取となっている可能性があります。
ただ、忙しい妊婦さんにとっては、食事だけですべての栄養を満たすのは難しいことかもしれません。鉄分の推奨量を摂取するのが難しいときは、サポート役として、サプリメントを利用しても良いでしょう。サプリメントを使用するときは、注意書きをよく読み、一日の用量や回数をしっかり守ることが大切です。
妊婦が鉄分を摂りすぎるとどうなる?
鉄分の耐容上限量は、成人女性の場合一日40mgとなっています。普段の食事で超えることはあまりありませんが、サプリメントを使用している場合は注意が必要です。鉄分を摂りすぎると、便秘や胃腸障害が起こることがあります。
鉄剤の点滴や注射を継続して打っている人や、輸血を何度も受けている人は「鉄過剰症」となる可能性があります。血中の鉄の値が過剰になり、肝臓や心臓などに貯蔵され、臓器がダメージを受けてしまうことを言います。食事やサプリメントでは鉄過剰症となる可能性は低いですが、過剰摂取にならないように気をつけましょう。
妊婦におすすめの鉄分補給レシピ
朝の忙しい時間に手早く鉄分を補給するには、ミックスジュースがおすすめです。ほうれん草や小松菜を冷凍保存しておくと便利ですよ。ほうれん草に含まれる「シュウ酸」は鉄分の吸収率を下げるので、一度茹でてから冷凍するか、シュウ酸の少ないサラダほうれん草を使うのがおすすめです。
野菜の非ヘム鉄はビタミンCとの相性が良いので、フルーツを混ぜたほうが良いですね。冷凍したままの野菜と、オレンジやレモン、バナナと一緒にミキサーにかければ鉄分補給にぴったりのミックスジュースができあがります。牛乳や氷を混ぜれば、夏の暑い時期でもスッキリ飲めますよ。
妊娠中の鉄分補給に関する体験談
筆者は妊娠後期に軽い脳貧血になりました。入院するほどではありませんでしたが、頭がくらくらして、力が入らなくなることがたびたびありました。血液検査の結果からも貧血と判明し、医師から鉄分を補給する薬を出してもらいましたが、普段から意識して鉄分が多い野菜を摂るように努めました。
しばらくすると脳貧血の症状は治りましたが、ひどいときは一日中ぼんやりしていたので、普段からもっと食生活に気をつけておけば良かったと後悔しています。それからは、鉄分の入ったタブレットなどを常備して、食事でうまく鉄分を摂れないときに利用しています。
妊娠中は、鉄分が多めに含まれている野菜ジュースを習慣的に飲むようにしていました。しかし、血液検査の結果はいつも貧血と診断されるかどうかギリギリの数値…。
迎えた出産では出血量が通常より多く、産後は完全に「貧血」と診断されました。入院中は鉄分の点滴を毎日打つことになったため、出産前だけでなく出産後も鉄分は必要不可欠な栄養素だと、身をもって感じました。
鉄分をしっかり摂って貧血を予防しよう
妊娠中は、ママの身体を循環する血液量が増えたり、赤ちゃんに優先的に栄養を送ったりするため、鉄分不足になる場合があります。貧血が進むと赤ちゃんに影響することがあるため、しっかりと鉄分を補給しておきたいものですね。普段の食事で意識して鉄分を摂取しましょう。
鉄分はレバーやあさり、小松菜やほうれん草に多くまれています。サプリメントや栄養強化食品を利用しても良いですが、過剰摂取には十分気をつけましょう。