妊婦が食あたりになったら?食中毒の症状、胎児への影響や原因、対処法・予防法

【医師監修】妊娠中は免疫力が低下し、妊婦さんは食中毒などの感染症にかかりやすい状態です。食中毒を起こす原因にはサルモネラやヒスタミン、リステリアなどさまざまな種類があり、感染すると胎児に影響するものもあります。生卵やホタテなど食中毒の原因となる食材や感染経路、食あたりの対処法・予防法について解説していきます。

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この記事の監修

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産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 妊婦が食中毒・食あたりに注意すべき理由
  2. 妊娠中に気を付けるべき食中毒の原因と症状
  3. 妊婦が食中毒・食あたりになると胎児に影響する?
  4. 妊娠中の下痢、吐き気などの症状は食中毒?つわり?
  5. 妊婦が食中毒になったら何科を受診する?
  6. 妊娠中の食中毒・食あたり予防法
  7. 赤ちゃんのためにも食中毒を予防しよう
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妊婦が食中毒・食あたりに注意すべき理由

食中毒は、有毒な微生物などに汚染された飲食物を摂取することで起こります。下痢や嘔吐、発熱などの症状が一般的ですね。細菌やウイルス、化学物質による食中毒が存在します。医学用語ではありませんが、食あたりとよばれることもあります。

妊娠中はホルモンのバランスが崩れたり、つわりで栄養バランスが偏ったり、精神的なストレスがたまったりと、免疫力が低下しやすい状態になっています。また、赤ちゃんというママにとっての「異物」を排除しないように、細胞性の免疫が一時的に低下しています。そのため、妊娠中は感染症にかかるリスクが高くなるといわれています。

食中毒になると、ママの体調が悪くなるだけではなく、お腹の赤ちゃんに影響することもあります。胎盤を通じて赤ちゃんが細菌に感染し、早産や死産を引き起こす可能性はゼロではありません。妊娠中は赤ちゃんのためにも、食中毒の感染予防を心がけたいものですね。

妊娠中に気を付けるべき食中毒の原因と症状

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リステリア(ナチュラルチーズ・肉や魚のパテ、生ハムなど)

リステリア菌は食品を通して人に感染する食中毒菌のひとつで、妊娠中は一般の人よりも20倍ほど感染しやすいといわれています。(※1)リステリア菌は発育できる温度の範囲が広いという特徴があります。加熱殺菌は有効ですが、0~45℃でも死滅しないため、冷蔵庫の中でも増殖することがあります。

国内では、リステリア菌による集団食中毒と判断された事例はまだありませんが、欧米では乳製品や食肉加工品などからリステリア菌が検出され、集団食中毒が発生しています。リステリア菌に感染すると、倦怠感や発熱など、インフルエンザに似た症状が現れることがあります。重症化すると、髄膜炎や敗血症となる場合もあるようです。ママに重い症状がなくても、お腹の赤ちゃんに影響が残ることもあります。

加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなどは、リステリア菌に感染する可能性があるため、妊娠中は避けたほうが良いでしょう。とくに海外から輸入された食品は注意が必要です。

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ヒスタミン(マグロ、カツオ、ブリ、サバなどの赤身の魚)

ヒスタミンとは、特定の菌が持つ酵素の作用により、アミノ酸の1種である「ヒスチジン」が変換されて作られる物質です。ヒスチジンはマグロ、カツオ、ブリ、サバといった赤身の魚や、それらを加工した食品に多く含まれています。ヒスタミンを作る菌はたくさんの種類があり、低温でも高温でも増殖する可能性があります。

ヒスタミンは一度生成されると、冷凍や熱処理をしても除去することはできず、食中毒を防ぐことはできません。菌の増殖を防ぐには、魚を常温で放置しないこと、冷凍した魚は冷蔵庫で解凍すること、冷凍や解凍を繰り返さないことなど、温度管理が重要なポイントとなります。また、菌は魚のエラや内臓に多く存在するため、魚を購入したらエラや内臓を取り除いてから保存することも大切です。

ヒスタミン食中毒は、1時間以内に顔面紅潮、発疹、頭痛、嘔吐などのアレルギーのような症状があらわれます。魚を食べたときに舌やくちびるにピリピリとした刺激を感じたら、ヒスタミンが生成されている可能性があるので食べるのをやめましょう。

カンピロバクター(鶏肉などの肉類)

細菌による食中毒の中で、国内で最も多く発生しているのがカンピロバクターによるものです。家畜やペット、野生動物などがカンピロバクター菌を保持しています。カンピロバクターは加熱には弱い細菌ですが、低温に強いため冷凍庫や冷蔵庫の中でも死滅しないといわれています。

鶏の生食や、加熱が不十分な肉料理が原因になることが多いようです。少しの菌でも発症するため、調理器具や手指から二次感染する可能性もあります。また、殺菌されていない井戸水や湧水が原因となることもあるので注意が必要です。

原因となる食品を食べてから2~3日ほどの潜伏期間を経て、腹痛、下痢、発熱、頭痛、嘔吐などの症状が出るのが一般的です。肉類は十分に加熱し、生肉調理後の調理器具や手指は、しっかり洗浄・消毒するようにしましょう。

トキソプラズマ(加熱が不十分な肉類)

トキソプラズマ原虫という寄生虫が口から入って寄生することで、食中毒になることがあります。トキソプラズマ原虫は、加熱が不十分な肉や感染した猫のフン、フンが混ざった土などに存在しています。

トキソプラズマに感染すると、軽い頭痛や微熱が起こります。まったく症状が出ないことも多いようですね。ママが妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合は、赤ちゃんに影響が出る可能性があります。

サルモネラ(生卵や卵の関連食品)

サルモネラは食中毒を引き起こす菌のひとつです。おもに卵やその関連食品が感染源となります。また、汚染された卵から調理器具などを通して他の食品が二次汚染することもあります。サルモネラ食中毒のおもな症状は吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、発熱などです。高熱が出たときは脱水症状を起こすこともあり、重症化しないように注意が必要になります。

卵は必ず冷蔵庫に保管し、短期間に消費すること、割り置きはしないことが大切です。妊婦さんや高齢者など、感染リスクが高い人は生卵は避けたほうが良いでしょう。調理をするときは、卵黄も卵白も固くなるまでしっかり加熱することが推奨されています。調理するときは、十分に加熱してサルモネラ菌を死滅させることが大切です。

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ウェルシュ菌 (牛肉や鶏肉、魚などの煮込み料理)

ウェルシュ菌は、土や水、人や動物の腸内など幅広く生息している細菌です。汚染された牛肉や鶏肉、魚などを使った「煮込み料理」が感染源のひとつとなります。ウェルシュ菌は熱に強く、空気を嫌う細菌のため、粘り気のある液体が入った大きめの鍋の底で繁殖しやすいという特徴を持ちます。

とくにカレーやスープ、シチューには注意が必要です。前日に加熱調理したものを常温で放置しないこと、調理中は空気が入るようによく混ぜ合わせること、調理したものはなるべく早く食べることが大切です。感染すると、軽い腹痛や水のような下痢が起こることがあります。

ノロウイルス(牡蠣やホタテなどの二枚貝)

冬に多くなるのが、ノロウイルスによる食中毒です。ノロウイルスに感染すると、吐き気やおう吐、下痢、腹痛、微熱が1~2日続くことがあります。感染しても症状に出ない場合や、軽い風邪に感じる場合もあるようですね。

ノロウイルスは、感染した人が調理をした食品や、加熱不十分な二枚貝(牡蠣、ホタテ、ムール貝など)から経口感染するといわれています。

ウイルスの粒子が小さく除去が難しいことや、エタノールが効きにくいことにより集団感染となりやすいのが特徴です。赤ちゃんに直接影響することはないとされていますが、妊娠中は重症化することもあるので、ママの健康のためにも感染予防はしっかりと行いましょう。

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妊婦が食中毒・食あたりになると胎児に影響する?

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妊婦が食中毒になった場合、必ずしも胎児に影響するわけではありません。しかし、一部の細菌は胎盤を通して、赤ちゃんに感染することもあります。とくに注意が必要なのは、リステリア菌とトキソプラズマです。

リステリア菌に胎児が感染すると、流産や早産、死産を引き起こすことがあります。また、生まれたときから赤ちゃんが髄膜炎や敗血症をわずらっているケースもあります。妊娠中は、ナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモンなどは避けるようにしましょう。

ママが初めて妊娠中にトキソプラズマに感染した場合、胎児に感染することもあります。トキソプラズマに感染した赤ちゃんは、眼の異常があらわれたり、脳内石灰化、水頭症となったりするリスクが出てきます。妊娠中は、肉は十分加熱し、土いじりや猫のトイレ掃除はできるだけ避けましょう。

赤ちゃんが直接感染しなくても、食中毒でママの体調が悪化し、結果的に赤ちゃんに影響が出ることもあります。お腹の赤ちゃんのためにも、食中毒は回避して、健康的なマタニティライフを目指したいものですね。

妊娠中の下痢、吐き気などの症状は食中毒?つわり?

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妊娠中に吐き気や下痢などが起こった場合、食中毒なのかつわりなのか判断できないこともあります。食中毒を疑うポイントのひとつは、下痢が慢性的になっているかどうかです。下痢が3日以上続いている場合は、食中毒の可能性があります。

しかし、つわりの症状も食中毒の症状も個人差が大きいので、区別するための完全な基準はありません。迷ったときは、まずは産院に連絡して診てもらうようにしましょう。原因がわかれば安心ですし、赤ちゃんの状態も診てもらうことができますよ。

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妊婦が食中毒になったら何科を受診する?

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まずは、妊婦健診を担当している産院に相談してみましょう。食中毒かどうかは自分では判断できませんが、産院で診てもらえば自分だけでなくお腹の赤ちゃんの異変にもすぐに気づいてもらうことができます。妊娠中でも安全な対処や薬の処方をしてもらうことができる点においても、安心できますね。

病院で診てもらうまでは、個人の判断で下痢止めを飲んだり、吐き気止めを飲んだりするのは避けたほうが良いでしょう。産婦人科だけでは対処できない場合、内科や消化器内科を紹介してもらうこともあります。その場合も、担当の産院を通したほうが妊娠の経過や状況を伝えてもらえるので安心です。

妊娠中の食中毒・食あたり予防法

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生ものの食品は避ける

妊娠中は、なるべく生ものは避けるようにしましょう。牛肉、鶏肉、豚肉、レバーの生食は止めて、必ず加熱することが大切です。加熱調理の温度と時間の目安は、食材の中心部分の温度が75℃になってから1分間以上加熱することです。肉の色の変化でいうと、ピンク色の部分が完全に見えなくなるぐらいまで加熱したほうが良いですね。

妊娠中は生ハムやパテも、避けたほうが良いでしょう。お寿司やお刺身も、できるだけ食べないほうが安心です。魚には良質なタンパク質が含まれますから、焼き魚や煮魚にして食事に取り入れていきましょう。

生野菜はよく洗う

加熱調理をしない野菜や果実は流水でよく洗いましょう。国内の調査では、野菜や果実からはサルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O157はほとんど検出されていませんが、セレウス菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌などは検出されています。

サラダ用カット野菜には洗浄済みのものもあるので、表示を確認してみましょう。カット野菜や葉物野菜などは、菌を増やさないよう低温で保存したほうが良いでしょう。食材を切るときは、加熱しないで食べる野菜などを先に、加熱する肉などを後にしたほうが楽ですよ。

手洗いをしっかりする

家に帰ってきたときや食事をするとき、調理を始める前には必ず手を洗いましょう。どんなにきれいに見えても、手指に食中毒を引き起こす菌がついている可能性があります。おすすめの手洗い方法は以下の順序です。

1.流水で手をぬらす
2.石鹸を十分に泡立てて、手のひらをこする
3.手のひらと手の甲を合わせてこする
4.両手を組んで指のあいだをよく洗う
5.爪のあいだも洗う
6.手首も忘れずに洗う
7.蛇口をせっけんで洗い流してからひねり、流水でせっけんを洗い流す
8.清潔な乾いたタオルで水気を拭き取る

二度洗いをするとさらに効果的です。手や指に傷があるときは、調理用手袋をするなど工夫しましょう。

調理器具をすぐ洗う、清潔に保つ

使った調理器具はすぐに洗うのが基本です。生肉や魚を一度切ったら、調理器具を洗剤でしっかり洗い、熱湯をかけておきましょう。毎回手指もハンドソープなどで洗っておきましょうね。

食器や調理器具を水に浸しておくと、微生物が増殖し、食中毒菌も急激に増える可能性があります。スポンジやタワシに存在する微生物が飛びちって、周りに付着することもあります。包丁、まな板、スポンジ、布巾などは洗うだけではなく、最後に熱湯や漂白剤などで消毒をしておくとさらに安心ですね。

赤ちゃんのためにも食中毒を予防しよう

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妊娠中は免疫力が下がることもあり、妊婦さんは食中毒に感染しやすい状態といえます。とくにリステリア菌やトキソプラズマはお腹の赤ちゃんに影響を与える可能性もあり、注意が必要です。調理のとき、食事をするときは、手洗いをしっかり行いましょう。生ものは避けて、しっかり火を通したものを食べることも大切です。ママのためにも赤ちゃんのためにも、毎日「清潔」を意識して食中毒を予防していきたいものですね。

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