産婦人科医監修|妊婦がインフルエンザになったら?胎児への影響と予防接種・薬について

妊娠中にインフルエンザにかかったらどのような影響があるのか心配な妊婦さんは多いでしょう。妊婦さんがインフルエンザにかかるとどうなるのでしょうか。母体・胎児への影響が気になります。他、手洗いやうがい・湿度などの予防法、予防接種は受けられるのか、予防接種に含まれる防腐剤の影響などを医師監修で解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 妊婦はさまざまな症状に悩む機会が多い
  2. 妊婦も注意したい「風邪とインフルエンザの違い」
  3. 妊婦は特にインフルエンザに気をつけて
  4. 妊婦がインフルエンザにかかった可能性があるなら
  5. 妊婦がインフルエンザは何科を受診すれば良い?
  6. 妊婦のインフルエンザ治療に薬は処方される?
  7. 妊婦のインフルエンザ、母体・胎児への影響は?
  8. 夫・上の子、家族がインフルエンザにかかったら
  9. 妊婦もインフルエンザの予防接種は可能?
  10. 妊婦のインフルエンザ予防接種、副作用や費用は?
  11. ワクチンには防腐剤として水銀が入っている?
  12. 妊婦のインフルエンザ予防
  13. インフルエンザ予防グッズを楽天・Amazonでチェック!
  14. 妊娠中はインフルエンザの予防につとめて
  15. あわせて読みたい

妊婦はさまざまな症状に悩む機会が多い

妊娠による身体の変化の影響から、妊婦は免疫力が低下するといわれています。妊婦であれば妊娠初期・中期・後期を通して、さまざまな症状に悩まされる機会が多いかもしれません。喉の痛み・咳・発熱などの風邪のような症状を感じる場合にはインフルエンザの可能性を考える人もいるでしょう。

免疫力の低下をはじめ、血液量の増加や体型の変化といった妊娠による身体の変化は腹痛・腰痛・貧血・つわりなどさまざまな症状を引き起こす場合があります。母体やお腹の赤ちゃんへの影響を考え、自己判断で症状を放置したり薬を飲んでしまったりせず、必要であれば医師によく相談しながら症状緩和を目指していくことが大切かもしれません。

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妊婦も注意したい「風邪とインフルエンザの違い」

喉の痛み・咳・発熱・鼻水といった症状を感じると、風邪の可能性を真っ先に考える人が多いかもしれません。遭遇することが多い病気のひとつでもある風邪ですが、寒い時期にはインフルエンザの可能性も考えられるでしょう。鼻水・咳・喉の痛みといった症状が共通しているインフルエンザと風邪ですが、他の症状と流行時期の有無が異なります。

症状

さまざまなウイルスによって起こる風邪の症状は、喉の痛み・鼻水・くしゃみ・咳などが中心になり、比較的ゆっくりと症状が進行することが多いでしょう。一方でインフルエンザの症状は、鼻水や咳以外に38℃以上の高熱、頭痛・関節痛・筋肉痛・身体がだるいといった全身症状が現れ、比較的急激に発症するケースが多いようです。ただしそれぞれの症状には個人差があります。風邪でも熱が出る人もいれば、インフルエンザでも軽症ですむ人、気管支炎・脳症・肺炎など重症化する人もいます。

流行の時期

風邪は1年間を通して常にかかる可能性があり、季節の変わり目や疲れたときなどにかかる人が多いかもしれません。インフルエンザは寒い時期に最も流行します。多くの場合には12月から3月、特に1月から2月がピークとなります。ただしまれに4月から5月まで続く場合もあるため、流行期はあくまでも目安です。 

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妊婦は特にインフルエンザに気をつけて

高齢者・幼児・持病のある人・妊娠中の女性などがインフルエンザにかかると、重症化する危険性が高いといわれています。特に妊娠中は、妊娠による身体の変化が原因となり感染・重症化のリスクが高まります。

妊婦は免疫力が低い

妊婦はお腹の胎児を受け入れるために免疫力が低くなります。インフルエンザはもちろん、さまざまな病気に注意が必要です。

治りにくく重症化しやすい

妊娠中は免疫力の低下に加えて、妊娠期間を通して起こるさまざまな身体の変化によって風邪やインフルエンザといった病気を治すのに時間がかかる場合があります。妊娠初期のつわりによる体力の低下、妊娠中期以降は子宮が大きくなることによる肺活量の低下、心肺機能の低下などによりインフルエンザに感染しやすくなり、肺炎など重症化しやすくなるでしょう。

妊婦がインフルエンザにかかった可能性があるなら

妊娠中はインフルエンザに感染しやすく、重症化しやすいといわれています。急な発熱、夫や上の子など家族がインフルエンザにかかっていて妊婦自身も感染の可能性がある場合にはすぐに病院で診察してもらうことが大切です。インフルエンザに感染していたとしても、インフルエンザ「発症から48時間以内」に薬を服用することで肺炎などの重症化するのを防ぐことができるといわれています。

お腹の赤ちゃんに影響を与えないためにも、体調の変化や異常が見られたらすぐに病院へ行くようにしましょう。病院を受診する際には、インフルエンザ感染拡大防止のために「インフルエンザの可能性がある旨を受診前に電話で連絡する」「飛沫感染防止のためにマスクを着用する」といったマナーも守りましょう。

妊婦がインフルエンザは何科を受診すれば良い?

妊婦がインフルエンザにかかったら「病院の何科を受診すれば良いのか」を悩む方も少なくありません。妊娠中にインフルエンザの可能性があり病院に相談したい場合には、内科でも産婦人科でもどちらの科の受診も可能です。ただし受診する前に必ずインフルエンザの可能性がある旨を電話で相談してから受診することが大切です。他の妊婦への影響を考えて基本的には内科を受診すると良いかもしれません。内科を受診する場合には妊婦である旨を必ず告げ、母子手帳を持参してくださいね。

妊婦がインフルエンザで内科もしくは産婦人科どちらを受診する場合でも、感染拡大防止のためのマナーを守ることが重要です。「事前にインフルエンザの可能性があることを電話で相談」してから受診すると、検査を待つあいだに他の患者さんに会わないような配慮がされる場合があります。また、「マスクを着用」した状態で受診することで飛沫感染の予防にも期待ができるでしょう。また、可能な限り症状が現れてから48時間以内の受診が重症化の防止には重要だといわれています。

インフルエンザ感染が確認できたら、必要に応じて治療が行われます。点滴などの処置が行われたり、タミフルなどの薬の処方が行われたり、場合によっては入院が必要になるケースもあるでしょう。妊婦はインフルエンザの重症化のリスクがあるため、病院を受診し適切な対処を行うことが大切です。

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妊婦のインフルエンザ治療に薬は処方される?

妊婦さんがインフルエンザに感染した場合でも、普通の人と同じように内服薬のタミフル・ロキソニン・カロナールや吸入薬のリレンザ・イナビルといった薬が処方される場合があります。症状の程度や妊娠の経過・医師の治療方針によって薬の処方の有無は異なります。

妊娠中は薬の服用に慎重にならなければいけませんが、タミフル・リレンザなどの抗インフルエンザ薬が胎児に影響を与える可能性は低いとされています。また、タミフルなどの薬による副作用のリスクよりも、インフルエンザによる高熱などの症状が胎児に与える影響のリスクの方が高いとされています。薬に対する不安から「薬なしの治療」を希望する人もいますが、お腹の赤ちゃんへの影響を考えるのであればこそ医師の判断を信じることが大切でしょう。

必要であれば漢方などの方法が可能か聞くのも良いでしょう。風邪であれば麻黄湯などの市販の漢方もありますが、妊娠中は漢方薬も自己判断で服用せず、必ず医師に相談してから使用しましょう。

妊婦のインフルエンザ、母体・胎児への影響は?

妊娠中にインフルエンザにかかった場合、妊婦自身への影響とお腹の胎児への影響が気になる人も多いことでしょう。妊婦および胎児への影響は研究が進められている段階であるため、なるべく予防を心がけ、症状が現れたら速やかに病院に相談することが大切です。

母体への影響

インフルエンザ患者の多くは1・2週間程度で自然治癒しますが、妊婦は重症化しやすく場合によっては死にいたる深刻な合併症を引き起こす可能性があります。妊娠初期・中期・後期と妊娠が進むにつれて心肺機能の悪化による入院リスクは増加するというデータもあるようです。インフルエンザの症状のひとつである高熱は早産を引き起こす可能性もあります。

胎児への影響

妊婦がインフルエンザにかかった場合、胎盤を通じて胎児への直接的な影響が出ることはないと考えられています。ただし妊娠初期にインフルエンザにかかると神経管閉鎖障害・先天奇形が増えるという意見、インフルエンザウイルスが直接の原因ではなく高熱が先天性奇形のリスクを高めるという意見もあるようです。

夫・上の子、家族がインフルエンザにかかったら

妊婦がインフルエンザの予防に注意していても、夫・上の子などの身内、職場の同僚や仕事の取引先など身近な人がインフルエンザにかかることはあるでしょう。特に注意が必要なのは同じ空間で長い時間を過ごす「家族」がインフルエンザにかかった場合でしょう。特に幼稚園や保育園・小学校に通っている子どもはインフルエンザに感染しやすいため注意が必要かもしれません。

感染防止を心がけて

インフルエンザは「飛沫感染」「接触感染」という2種類の感染経路があります。このため感染した家族と妊婦は、可能な限り別室で過ごし食事も別にするのが望ましいといえるでしょう。タオルの共有を避け、定期的な換気をしましょう。感染した家族がいる部屋の入り口に手指用アルコール消毒剤を置きこまめに使用し、定期的に手洗いをしましょう。熱が下がっても2日程度は外出を控えて様子を見ましょう。

薬の予防内服という方法も

インフルエンザに感染した家族の看病・お世話は、できれば妊婦ではなく親族などに手伝ってもらうのが望ましいでしょう。ただし、どうしても妊婦自身が看病・お世話をしなければいけない場合もあるでしょう。妊婦のインフルエンザ感染防止策として、タミフルやリレンザなどの薬を予防として飲むという方法もあります。完全に予防できるわけではありませんが、医師に相談してみると良いでしょう。

妊婦もインフルエンザの予防接種は可能?

妊婦もインフルエンザの予防接種を受けることができます。インフルエンザの予防接種はインフルエンザが肺炎など重症化するのを防ぐことができるため、積極的に検討すると良いでしょう。予防接種を受けることで万が一インフルエンザにかかった場合でも胎児への影響・妊婦の身体への負担の軽減に期待できます。

インフルエンザの予防接種は、妊婦のインフルエンザ重症化のリスクを抑えられるだけでなく、その抗体が胎児に移行して出生後の赤ちゃんも生後6ヶ月までインフルエンザにかかりにくくなることがわかっています。インフルエンザの流行シーズンが始まる前に予防接種を受けておくと安心できるかもしれません。夫や上の子など家族が予防接種を受けることも大切です。

妊婦のインフルエンザ予防接種、副作用や費用は?

接種時期

妊娠初期の接種は控えた方が良いという意見もありますが、インフルエンザワクチンの接種によって流産・奇形のリスクが高くなるという報告はないといわれており、妊娠中のすべての期間を通して接種可能とする意見もあります。

予防接種後に効果が現れるまでに2・3週間、効果が持続する期間が3・4ヶ月といわれているため、流行シーズン前の10月・11月前後に接種するのが良いでしょう。接種の有無をふくめ、接種タイミングも医師とよく相談して決めるのが良いかもしれませんね。

副反応

日本で使用されているインフルエンザワクチンは「不活化ワクチン」と呼ばれる妊婦・胎児に対して危険性が低いとされるもので、特別な副反応(副作用)や胎児に異常が出る確率が高くなったというデータはないようです。

一般的な副反応としては接種箇所の赤み・腫れ・痛み、発熱・頭痛・だるさなどがありますが、通常3日程度でなくなります。まれにアナフィラキシーショックが起こる場合がありますが、接種後すぐに反応が出ることが多いため、異常があればすぐに医療機関に連絡しましょう。

費用

インフルエンザの予防接種は治療に含まれないため、原則自費となります。金額は医療機関によって異なります。ただし自治体によっては、妊婦のインフルエンザ予防接種の費用の一部助成をしているところもあるようです。

注意点

インフルエンザの予防接種による一般的な注意点は妊婦も同様です。注射当日のお風呂は問題ありませんが、予防注射した部位をこするのは控え安静にしましょう。副反応(副作用)が起こる可能性を考えて接種後24時間は体調に注意しましょう。 その他注意点は医師から説明があるでしょう。気になることがあれば接種前に確認してみてくださいね。

どこで(何科で)受けるか

妊娠中のインフルエンザ予防接種はどこで受けるべきか悩む人も少なくないかもしれません。内科・産婦人科どちらでも接種自体は可能ですが、ワクチンの在庫状況にもよるでしょう。まずは接種したい病院にワクチン在庫の有無を確認しましょう。産婦人科以外での接種になる場合には妊婦である旨を告げて予約するようにしましょう。

ワクチンには防腐剤として水銀が入っている?

インフルエンザを予防するための注射に使われているワクチンには水銀が入っているという話を聞いたことがある方もいるかもしれません。日本で使用されているインフルエンザ予防のワクチンにはエチル水銀(チメロサール)と呼ばれるものが防腐剤として添加されているものと無添加のものがあります。

水銀というイメージから妊婦や胎児への影響が不安になる人もいるかもしれませんが、含有量は日本人の1日の摂取量の半分以下とされており妊婦・胎児への影響はないとされています。自閉症との関連が指摘されたこともあったようですが、現在は関連が否定されています。

妊婦のインフルエンザ予防

妊婦、そして夫や上の子など妊婦の家族を含めたインフルエンザ予防注射の接種が理想的ですが、ふだんからの健康管理・生活習慣も大切です。

十分な睡眠

十分な睡眠をとることで、免疫力を上げることができるといわれています。体型の変化などで睡眠不足になる妊婦も多いですが、疲れたときや体調が悪いときには可能な限り横になり、できればしっかりとした睡眠をとりましょう。

適度な運動

妊娠中でも体調が良いときは適度な運動を取り入れて体力をつけるようにしましょう。もちろん大きなお腹を抱えて過度な運動をしたり無理をしたりするのは控えましょう。

手洗い・うがい

毎日の手洗い・うがいも大切です。産後の赤ちゃんとの生活もふまえて、帰宅時・食事の前・料理する前などに手を洗う習慣を今からつけると良いでしょう。ウイルスは石鹸に弱いため正しい方法で手を洗い、すすぎもきちんとしましょう。手洗い後のアルコール消毒も効果に期待ができるようですよ。

部屋を適度な湿度に保つ

空気が乾燥していると、喉の粘膜を守る機能が低下し、風邪やインフルエンザにかかる可能性が高くなります。特にインフルエンザが流行する冬は加湿が大切です。

加湿器などで湿度50%から60%を保てるようにしましょう。部屋を加湿した上で、水分の摂取もこまめにおこなうことで喉の潤いを保つこともできるでしょう。

外出時はマスクをする

妊娠中に外出するときは、飛沫感染を防ぐためできるだけマスクをするのがおすすめです。特にインフルエンザの流行期には必ずマスクを着用すると良いでしょう。

人混みを控える

外出するときに、人が多い場所は避けるようにしましょう。

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妊娠中はインフルエンザの予防につとめて

妊婦がインフルエンザにかかることで母体・胎児に直接大きな影響をおよぼす可能性は高くありませんが、重症化による肺炎・早産などのリスクはあります。妊娠中のインフルエンザの予防接種は任意ではありますが、可能であれば受けた方が良いかもしれません。よく医師と相談してみてくださいね。

インフルエンザについてわからないことがあれば、厚生労働省によるインフルエンザQ&Aのページを参考にするのも良いでしょう。また、不明点があれば医師に相談することも大切です。薬やワクチン・注射に対しての不安・疑問は多いかもしれませんが、自己判断せずに適切な処置を行うことで、母体および胎児への影響を最小限に抑えましょう。

手指のアルコール消毒剤の使用や部屋の湿度維持など、比較的手軽にできる部分から試してみても良いかもしれませんね。

※この記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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