【小児科医監修】インフルエンザの予防接種!ワクチンの効果や副作用は?いつ接種すればいい?

冬の到来とともに流行するインフルエンザ。保育園、幼稚園、学校などの集団生活を送る子どもはもちろんですが、未就園児や赤ちゃんも感染が心配になりますね。重症化を防ぐため、インフルエンザの予防接種を検討している保護者も多いでしょう。ここではインフルエンザワクチンの効果や副作用、接種の推奨時期などについて解説します。

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この記事の監修

相坂 明
小児科医
相坂 明

目次

  1. インフルエンザの流行時期と予防接種予約
  2. インフルエンザ予防接種の種類は?接種回数は何回?
  3. インフルエンザの予防接種の料金相場は?
  4. インフルエンザの予防接種の効果が出るまで
  5. インフルエンザワクチンによる副作用
  6. インフルエンザの予防接種を受けるときの注意点
  7. 予防接種を打ってもインフルエンザにかかる?
  8. 乳児にもインフルエンザの予防接種は必要?
  9. インフルエンザの予防接種に関するママの体験談
  10. 妊婦はインフルエンザの予防接種を受けられる?
  11. リスクを理解したうえで、インフルエンザの予防接種の検討を
  12. あわせて読みたい

インフルエンザの流行時期と予防接種予約

流行時期

インフルエンザシーズンはその年の第36週から翌年の35週までを一区切りとしています。2024/25シーズンは2024年9月2日~2025年8月31日までです。

冬はさまざまな感染症が流行しやすい季節です。インフルエンザも同様で、例年11月末ごろから報告数が増えはじめ、1月ごろにピークを迎えます。ただし、流行の時期についてはその年によって多少のばらつきあるようです。

近年は、さまざまな感染症で例年とは異なる時期の流行がみられるため、インフルエンザの定点医療機関当たり報告数や報道を通じ、感染状況を確認するようにしましょう。

インフルエンザ予防接種の予約時期

ワクチンは接種してから効果が出るまでのあいだに2週間ほどかかります。そのため、流行しはじめてから予防接種をしても効果が出るまでに罹患する可能性があり、一般的には12月に入るまでには必要な回数の接種を済ませておくと安心だといわれています。

予防接種の受付は、9月末~10月頃に開始する病院が多いようです。ホームページなどでかかりつけ医の予防開始時期を確認しておきましょう。

インフルエンザ予防接種の種類は?接種回数は何回?

24/25シーズンから経鼻弱毒生インフルエンザワクチンが開始

日本国内でこれまで「不活化インフルエンザHAワクチン」が使われてきました。これに加えて、24/25シーズンからは経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの供給も開始されます。

経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは2023年3月に、日本国内での使用が承認されたワクチンです。不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンには、接種回数や適応年齢に違いがあります。

不活化インフルエンザHAワクチン

不活化インフルエンザHAワクチン(インフルエンザHAワクチン)は、これまでインフルエンザの予防接種に使われていたワクチンです。

インフルエンザHAワクチンは不活化ワクチンで、注射による接種が行われます。年齢によって推奨されているワクチンの接種量、回数が異なります。平成28年度の厚生労働省の発表によると、推奨されるインフルエンザHAワクチンの接種量と接種回数は以下通りです。

・6ヶ月以上3歳未満:1回0.25mL 2回接種
(ただしワクチンの種類によって1歳以上からの摂取に限られるものがある)
・3歳以上13歳未満:1回0.5mL 2回接種
・13歳以上:1回0.5mL 1回接種
(ただし1回目と2回目の接種のあいだに13歳になった場合は2回接種を推奨)

赤ちゃんや子どもは免疫力が低く、抗体が付きにくいことから2回接種が推奨されています。1回目の摂取と2回目の接種のあいだを2週間~4週間明けるの一般的ですが、より高い免疫効果を得るために3週間~4週間あけて接種することが望ましいという医師の意見もあります。

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、ほかの予防接種を同時接種したいと考える保護者も多く、他の予防接種とあわせて接種することは、基本的に問題ないといわれています。ただし、副作用の多いワクチンですので単独接種を推奨する医師もいます。ワクチン接種の前に母子手帳、予防接種のスケジュール表などを持参して医療機関に相談すると良いでしょう。

経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(生ワクチン)

経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは弱毒化したインフルエンザウイルスを鼻から噴霧する生ワクチンで、高い感染防御効果が期待されています。接種回数が1回で済み、従来の注射と比べて負担が少ないという利点があります。

しかし適応年齢が2歳~18歳と決められており、2歳未満は使用できません。また、飛沫や接触による水平伝播の可能性があるため、公益社団法人日本小児科学会は、妊婦や免疫不全患者がいる家庭では従来通りの不活化インフルエンザHA ワクチンを推奨しています。発熱や鼻水などの副反応も報告されています。

24/25シーズンの供給量はインフルエンザHAワクチンが約2,604万本なのに対し、経鼻弱毒性生インフルエンザワクチンが約130万本と大きな差があります。医療機関によって導入していなかったり、扱う本数が少なかったり場合もあるため、接種を希望する場合は早めにかかりつけ医に確認してみましょう。

インフルエンザの予防接種の料金相場は?

インフルエンザの予防接種の値段は保険適用外のため、病院やクリニックによってばらつきがあります。1回につき、2,000円から4,000円前後で値段を設定している施設が多いようです。2回とも同じ医療機関で接種した場合は、割引や2回目半額といったサービスのある医療機関もあります。

健康保険組合によっては被保険者(健康組合に加入している人)やその家族も、ワクチンの接種費用の助成が受けられたり、後で料金が全額戻ってきたりするケースもあるようです。子どもが生まれるまでインフルエンザの予防接種について、よく知らなかったという人は多いものです。勤務先の福利厚生として、そういった医療サービスが受けられる場合があるので確認をしてみてくださいね。

市区町村といった地方自治体によっても、小学生以下の子どもや赤ちゃんにはインフルエンザ予防接種の助成が受けられるケースがあります。助成を受けるために特定の問診票が必要だったり、予防接種の助成を受けられるのは指定された医療機関を利用する必要があったり、同じ市区町村内の医療機関で予防接種を受けなければいけなかったりと、自治体独自の決まりがあることが多いでしょう。予防接種を受ける前に各自治体の保険所に問合せをして確認してみてくださいね。

インフルエンザの予防接種の効果が出るまで

インフルエンザワクチンの効果はすぐに出るわけではありません。2回接種が推奨されている年齢の子どもの場合、ワクチンの2回接種が完了してから効果が現れるまでに早くても2週間はかかるといわれています。

厚生労働省の発表では効果の持続期間は約5ヶ月とされています。そのため、本格的にインフルエンザが流行する12月に突入する2週間前までにインフルエンザの予防接種をしておくと、1シーズンは効果が持続されると考えられています。効果のピークは1ヶ月後とする意見もあることから、遅くとも12月初旬には接種を終えておくことが望ましいでしょう。

インフルエンザワクチンによる副作用

ママやパパのなかにもインフルエンザワクチンを接種後に体調が悪くなった、接種箇所が腫れたといった症状を経験したことのあるママやパパもいるでしょう。インフルエンザワクチンの副作用は、ワクチンの効果を高めるために出る副反応ともいわれています。

風邪に似た症状

インフルエンザの予防摂取をした、ほぼ全員に現れる副反応として、発熱や悪寒、頭痛、だるさ、吐き気、下痢、筋肉や関節の痛みなど、風邪とよく似た症状が現れることがあります。ただし、通常は2~3日で症状が消失することがほとんどです。

かゆみ・発疹

インフルエンザワクチンはの成分に対する反応として、一般的にみられるもので、注射痕が赤く腫れたり、かゆみやいたみが出るケースがあります。

インフルエンザワクチンは鶏卵を利用して製造されています。注射痕はかゆみがでやすいものですが、インフルエンザワクチンは接種した人に卵アレルギーがある場合はとくにかゆみや発疹が出やすい傾向があるようです。

アナフラキシーショック・急性脳症

脳炎・脳症と言った重篤な副反応も起こりえますが、その頻度は非常にすくないといえます。
同じく頻度は低いですが、ワクチンの製造過程で混入する微量の成分に対してアレルギー反応が起きると、アナフラキシーショックなどの重篤な副反応が起こる場合があります。

ただし、ワクチンに含まれる卵由来の成分は非常にわずかなため、従来言われていたような卵アレルギーの患者さんでも、ワクチンを接種できることがほとんどといえます。ワクチン接種を受ける際は、前もって副作用について納得できるまで医師に確認をしておくと良いでしょう。

インフルエンザの予防接種を受けるときの注意点

インフルエンザワクチンの接種を受ける時には、体調の良い時を選んで受けるようにしましょう。特に赤ちゃんや幼児など、生まれて初めてインフルエンザワクチンの接種を受ける時には十分な注意が必要です。とはいえ、寒くなる秋や冬に子どもの体調が万全といえる日は少ないということもありますよね。軽い風邪症状があっても、発熱がなく症状が安定しているようなら接種できることも多いので、接種前に医師に体調面について相談をして判断を仰ぐと良いでしょう。

アナフィラキシーショックなどの急激な副作用が表れないかを確認するためにも、接種後30分は医療機関内や付近で静かに過ごすようにしましょう。それ以外の副作用は予防接種後24時間以内に表れることが多いといわれています。接種箇所を清潔に保ち、かきこわしたりしないよう爪を短くそろえ、よく様子を見るようにしましょう。

副作用の発熱があまりに高熱だったり、2日以上熱が下がらなかったりするときには、受診をした方が良いでしょう。接種痕の腫れや発疹も保護者からみて気になる場合や痛がる様子がある場合は早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

予防接種を打ってもインフルエンザにかかる?

インフルエンザワクチンは、もともとインフルエンザウイルスの感染を完全に予防できるものではなく、効き目にも個人差がある、というのが実情のようです。しかし、厚生労働省では、インフルエンザワクチンには発症後の重症化(肺炎や脳症など)や長期化を防ぐことには効果があるという研究結果を発表しています。

ただし、インフルエンザウイルスには〇型といわれるウイルスのタイプがいくつか存在し、ウイルスの特徴によってさらにいくつかのタイプに分けることができます。インフルエンザワクチンがどの型のインフルエンザウイルスに効果があるのかということが重要なようです。同時期のインフルエンザの流行でも、地域によってインフルエンザA型が流行っている地域やB型流行っている地域とばらつきがあります。

インフルエンザワクチンは前年の流行の傾向から、その年に流行するウイルスタイプを予測して製造されています。近年はさまざまな型のインフルエンザの流行により、いくつかのウイルスタイプが複合されたワクチンが導入されていますが、その年に流行するウイルスのタイプと一致しなければ、十分な効果が出ないこともあります。

乳児にもインフルエンザの予防接種は必要?

乳児にも予防接種が推奨されている

乳児の予防接種の必要性にはさまざまな見解があるようです。少し上の年齢層に比べて、インフルエンザの予防接種をしても感染を防ぐ効果が薄いこと、副作用が出やすいことなどから、接種をしないという保護者も一定数いるようですね。

しかし、乳児は発症すると重症化する可能性もあり、お世話をするママやパパにも感染し、2次被害を拡大させる可能性も高いことから、予防接種を推奨する医療機関がほとんどのようです。乳幼児であってもインフルエンザの発症や重症化を予防する効果はあるという報告もあることから、特に保育園など集団生活に参加している赤ちゃんには接種を勧めているようですね。

手洗い・うがいも大切

インフルエンザワクチンの接種以外にも、赤ちゃんがインフルエンザにかからないよう厚生労働省では、家族や周囲の人に手洗い、うがい、咳が出るときのマスクの使用を呼び掛けています。特に赤ちゃんの世話をするママ、パパが十分な感染予防を行うようにしましょう。手洗いならば、ママやパパが赤ちゃんの手を石けんで洗ってあげることができそうですよね。外からの帰宅後や、離乳食が始まっている場合、食事前の手洗いを徹底するとある程度の感染は防げるかもしれません。

また、インフルエンザの流行シーズンには人混みの中に赤ちゃんを連れて行かない、体調が悪そうと感じたら外出を控えるなどして赤ちゃんをウイルス感染の可能性から遠ざけるのも、予防のひとつの手です。

赤ちゃんや子どものインフルエンザ感染を防ぐためにも、ママやパパができる対策は徹底するようにしましょう。ママやパパができる予防としてはワクチン接種のほかにも、手洗い、うがい、手洗い後のアルコール消毒、マスクの着用、室内の加湿などがあげられるでしょう。

インフルエンザの予防接種に関するママの体験談

ままのて編集部に寄せられた、子どもが予防接種をしていなかったママたちからの体験談を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

0歳の赤ちゃんがインフルエンザにかかることの怖さを知りました

子どもが2歳の12月はじめのころ、お友だちの7か月の女の子がインフルエンザにかかり、重症になってしまったという話を聞きました。40℃を超す高熱とともにけいれんが起き、救急車を呼んで急いで病院へ行き、最終的にインフルエンザ脳症と診断されたとのことでした。「命が危ないのでは」と思うほどの状況だったそうです。やっとハイハイを始めたばかりでまだたっちもできないような赤ちゃんに、リハビリ治療を行うことになり、後遺症が出る可能性もあると言われて、ママはしばらくの間、生きた心地がしなかったと聞きました。

重症になってしまったその赤ちゃんはまだ保育園や習いごとなどの子どもの集団には入っていなかったようです。でもそれゆえにママは、「こんな季節に私が人混みに出たりして連れ歩いたのがいけないのかな」「予防接種も受けていなかったことにより重症化をしてしまったのでは」とひどく自分を責めてしまったそうです。身近な赤ちゃんがインフルエンザにかかり、私も恐怖を覚えました。

インフルエンザの予防接種には賛否ありますが、このようなケースもあり得るので、私自身も後悔しないよう、子どもには毎年予防接種を受けさせるようにしています。

子どもたちが次々とインフルエンザにかかってしまいました

上の子が生まれたときからずっと、母子ともにインフルエンザの予防接種を受けていました。そのおかげか、我が家はインフルエンザとは無縁で、5年後に下の子が生まれる年まで感染することはありませんでした。しかし下の子が1歳の12月、私は初めて油断しました。年末の行事の準備や日々の育児に追われ、予防接種に出遅れてしまいました。このとき「今年はもうタイミングも遅いから、今さらしなくてもいいかな」と思ってしまったのです。そもそもこの時季に、病気の子どもたちで混雑する小児科に1歳児を連れて行くことに抵抗がありました。

すると、その翌週、上の子(当時小1)が突然の高熱でインフルエンザA型と診断されました。下の子と隔離するために別室で寝かせ、規定通りに小学校を休ませてやっと登校できるようになりホッとしたのもつかのま、今度は私が40℃近い高熱を出して寝込んでしまいました。私はインフルエンザではなかったのですが、楽しみにしていた子どものクリスマス行事を泣く泣く欠席することになりました。病後の上の子と感染要注意な下の子の世話をまる二日間パパにまかせっきりになってしまい「予防接種をさぼったせいかな」と、自分を責めました。

ようやく私が回復したころ、下の子が突然の高熱…。小児科へ行くと、下の子もやはり、上の子と同じインフルエンザA型。一連の騒動を通して、来年は絶対に予防接種を受けようと心に決めたのでした…。

妊婦はインフルエンザの予防接種を受けられる?

妊婦さんは妊娠前に比べて体力や免疫が低下していて風邪や感染症にかかりやすいといわれています。とくに、すでに上のきょうだいがいる場合、保育園、幼稚園、学校からインフルエンザウイルスをもらってくるかもしれません。上の子どもがインフルエンザにかかってしまい、お世話をしなければならないというようなケースもあるでしょう。

インフルエンザにかかってしまった場合、タミフルやリレンザといったインフルエンザ感染症の治療薬を妊婦さんに投与した際の安全性については、情報量が十分ではなく、立証はされていないようです。そのため、ワクチンの接種を推奨する医療機関がほとんどですが、なかには妊娠初期の妊婦さんへのワクチン投与は控える医師もいるようです。安定期に入ってからの接種は積極的にすすめる医療機関もありますが、気になることがあれば担当の医師に確認してから接種するようにしてください。

ワクチンを接種してもしなくても、手洗い、うがいの徹底、なるべく人混みを避ける、マスクを使用するなどしてインフルエンザウイルス感染の可能性から身を守ってくださいね。

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リスクを理解したうえで、インフルエンザの予防接種の検討を

インフルエンザの予防接種には賛否あるので、慎重になるママやパパもいるようです。個人差はありますが、子どもに痛い思いをさせて注射をしても完全に予防できるというデータがなかったり、副作用が出るかもしれなかったりという話を聞くと迷ってしまいますよね。

しかし、インフルエンザワクチンはインフルエンザ感染症の発病や重症化を防ぐなどの一定の効果は立証されています。リスクと効果のバランスをよく考えてワクチン接種を検討するようにしましょう。

※この記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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