赤ちゃんの【先天性筋性斜頸】とは?原因・症状・治療法!手術は必要?
先天性筋性斜頸(せんてんせいきんせいしゃけい)とは、生まれつき赤ちゃんの首が左右どちらかに傾いていたり、首にしこりがあったりすることを言います。比較的多くの赤ちゃんに見られ、命に関わる病気ではありませんが、病名が付くとママは心配ですよね。ここでは、先天性筋性斜頸の原因や症状・治療法・手術が必要かどうかを紹介します。
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目次
先天性筋性斜頸(せんてんせいきんせいしゃけい)とは?
先天性筋性斜頸(せんてんせいきんせいしゃけい)とは、赤ちゃんの首が左右いずれかに傾いたり、常にどちらか同じ方向に向いていたりする症状のことを言います。新生児から症状があること、医師が比較的判断しやすいことなどから、生まれてから数日のうちに診断されることが多いでしょう。
先天性筋性斜頸の判断材料は、首のしこりや赤ちゃんの首の傾きなどです。症状が軽い場合は、1ヶ月健診や3ヶ月健診などで気付かれるケースもあるようです。いずれにしても0歳のころは経過観察を中心とした治療になるので、ママは自宅でどのように対処すればよいか、定期的な受診が必要なのかなど医師からしっかり話を聞くと良いでしょう。
また、赤ちゃんが左右どちらか一方を好んで向く「向き癖(むきぐせ)」との違いは、主にしこりの有無とされています。
先天性筋性斜頸の原因
先天性筋性斜頸の主な原因は、赤ちゃんが産道を通るときに、首や頭に力が加わることが原因とされています。赤ちゃんが生まれるときに、首の下の鎖骨から耳の後ろを繋いでいる胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という筋肉の伸び縮みがうまくいかず、傷がいく場合があります。すると、筋肉の組織が裂けて、出血したりむくみが生じたりと、左右いずれかの首にしこりができます。
胸鎖乳突筋に傷がおこる理由はさまざまです。もともと首の筋肉が弱めであった・赤ちゃんが胎内にいるときの姿勢に問題があった・初産のため出産時に首を強く引っ張られた・逆子などの理由があげられるでしょう。
先天性筋性斜頸は、基本的に生まれて間もないころから症状がはっきりと見られ、医師が判断しやすい病気のひとつとされています。一般的な先天性筋性斜頸の原因がはっきりとしているため、治療の方法もある程度は確立されていると言って良いでしょう。
先天性筋性斜頸の症状
先天性筋性斜頸の症状はさまざまです。一般的に、どのような症状があげられるのでしょうか。
首が傾いている
先天性筋性斜頸と診断される場合、生まれたばかりの赤ちゃんの首が、左右どちらかの斜め上を見るように傾いている症状があります。
片方ばかり向いてしまう
赤ちゃんをあおむけに寝かせたときに、首が左右どちらか一方しか向かないという症状も多く見られます。医師やママが首を動かしても、自然と片方ばかり向いてしまう場合も、先天性筋性斜頸が疑われます。
首にしこりがある
生まれたばかりの赤ちゃんの首にしこりがある場合、先天性筋性斜頸が疑われます。一般的に、左右どちらかの胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という首の筋肉に、しこりがみられて診断されることが多いでしょう。一般的に、赤ちゃんが常に向いている方とは反対側の首筋に、大人の指先程のしこりがみられます。
しこりは生後2~3週間のうちに大きくなり、1歳半までには大半の赤ちゃんが自然治癒するとされています。
顔や頭の後ろが非対称
先天性筋性斜頸の場合、顔や後ろから見た頭の形が非対称の場合も少なくないようです。いずれも、医師が赤ちゃんを触ったり見たり診察をして判断します。
赤ちゃんの斜頸の種類
赤ちゃんの斜頸の症状は先天的なもの以外の場合もあります。斜頸と診断された場合、出産時の衝撃だけが原因とは言い切れません。赤ちゃんの傾斜で考えられる原因を紹介します。(※1)
先天性筋性斜頸(せんてんせいきんせいしゃけい)
先天性筋性斜頸は、首が常に傾いていたりしこりができたりする症状です。出生時の衝撃で、後頭部と鎖骨や胸の胸骨をつなぐ筋に傷がいったり出血をしたりすることが主な原因でしょう。
首にできたしこりは、生後2~3週間のうちに最も大きくなるとされます。先天性筋性斜頸と診断されたとしても、1歳までに8~9割の赤ちゃんが自然に治ることが多いようです。
骨性斜頸(こつせいしゃけい)
骨性斜頸(こつせいしゃけい)とは、生まれたときから頸椎(けいつい)という首の骨が、変形していることが原因でおこる傾斜です。先天性筋性斜頸と同じく新生児のころに症状が現れて、レントゲンを撮影して診断されることが多いでしょう。
赤ちゃんの手を引いて起こしても首が持ち上がらなかったり、うつ伏せの状態で首が持ち上げられなかったりするため、症状が重い場合は外科手術をすすめられることがあります。
炎症性斜頸(えんしょうせいしゃけい)
炎症性斜頸(えんしょうせいしゃけい)とは、中耳炎や扁桃炎などの炎症があった後、首と頭を繋いでいる環椎(かんつい)と軸椎(じくつい)という部分の並びに異常がおこり、首が動かせなくなったり傾いたりする症状をいいます。
放っておくと環椎と軸椎の並びが固定されて、首が動かなくなる危険性があるようです。気になる症状があれば、早めに整形外科を受診するよう気を付けましょう。
眼性斜頸(がんせいしゃけい)
眼性斜頸(がんせいしゃけい)とは、赤ちゃんが何かを集中して見るときに、首を大きく傾ける症状を言います。テレビや動くものに興味を示す、生後6ヶ月以降に気づかれることが多いでしょう。片目を眼帯や手でおおうと首の傾きがおこらないことが多く、眼性斜頸の診断基準のひとつとされています。
首の筋肉が突っ張っている状態は少なく、比較的やわらかい傾斜が特徴です。
先天性筋性斜頸の検査
何科を受診するの?
先天性筋性斜頸が疑われる場合は、小児科か整形外科を受診すると良いでしょう。通常は、出生後数日で先天性筋性斜頸とわかることが多く、出産した産院の医師や保健師が気づき診断されることが多いようです。
医療機関に受診するタイミング
受診する症状が軽症の場合、出生時に気付かれない場合があります。退院後や自宅出産をしてしばらくしてから、赤ちゃんの首が傾いていたり常にどちらか一方を見ていたり、首にしこりがあったりと、気になる場合は迷わず小児科か整形外科を受診すると安心ですね。
診断や検査方法は?
先天性筋性斜頸は、主に医師が赤ちゃんの身体を触る触診(しょくしん)や視診(ししん)により診断されます。医師は、主に下記の点を診ることが多いでしょう。
・胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)に左右の差がないか
・首がどちらか片方に傾けにくくないか
・同じ方向ばかり向かないか
・首にしこりがないか
先天性筋性斜頸の場合、首にしこりがあることがほとんどで、赤ちゃんの首はしこりのない方に回るとされています。首をしこりのある方向に向けたとしても、首のしこりに触れることで反対の方向へ首を動かす場合は、先天性筋性斜頸と診断されることが多いようです。
先天性筋性斜頸の治療法
先天性筋性斜頸は、ある程度は自宅で治療をして経過観察をすることがほとんどです。自宅では、どのようなことに気を付けて過ごすと良いのでしょうか。
赤ちゃんの頭をこまめに動かす
先天性筋性斜頸と診断された赤ちゃんは、何度頭の向き方を治しても、また元の方向に向きなおる傾向があります。まずは赤ちゃんの首をこまめに向きやすい方向とは反対の方向へ、動かしてあげましょう。赤ちゃんは、何度首を動かしてもまた同じ方向へ向きますが、ママが気が付いたときに動かしてあげるだけで大丈夫です。
そのうちに、赤ちゃんが向きやすい方向とは反対側に向いている時間が、長くなるかもしれませんね。(※2)
背中にタオルをあてる
赤ちゃんが常に向いている方向とは反対側に向かせてあげるために、背中に大きめのタオルやバスタオルを折りたたんだり丸めたりして、少し身体を高くしてあげる方法があります。向き直りやすい方の背中にタオルなどを置くことで、身体が傾き、クセが治りやすくなるようです。
しかし、タオルをあまり高くし過ぎると赤ちゃんが何かしらの反動で寝返り、窒息などの危険があります。常にタオルをあてるのではなく、時間を決めたりママが見守ることができる時間だけチャレンジしたり、工夫ができると良いですね。
抱っこの方向を変える
授乳や抱っこの際に、赤ちゃんの頭がどちらか一方に偏らずに、こまめに抱く方向をチェンジすると良いでしょう。ママは赤ちゃんを抱きやすい利き腕がありますが、たまには赤ちゃんの頭を反対にして抱っこしてあげてください。初めは違和感があっても、すぐに慣れるはずですよ。
いつも向いている反対側から刺激を与える
赤ちゃんは生後3ヶ月頃から、大人と同じように音に反応しやすいとされています。常に赤ちゃんが向いている方向の反対から音を出したり声をかけたりして、刺激を与えても良いでしょう。赤ちゃんも最初は「なんだろう」と思うだけでも、次第に音の正体を目で見たくなり、首を反対に動かすよう努力をするはずです。
できるだけ優しい音や声かけを心がけて、赤ちゃんを驚かせないように気を付けてくださいね。
自然治癒を待つ
先天性筋性斜頸と診断をされても、8~9割の赤ちゃんは生後1歳頃までには自然に治ることがほとんどのようです。新生児のころにあったしこりがなくなり、首の筋肉の突っぱりが左右同じになることで、首の動きがスムーズになります。
医師から「大丈夫」と診断されるまでは長い期間のように感じますが、自宅でできる治療法を心がけながら、長い目で見てあげられると良いですね。
先天性筋性斜頸が治らない場合
先天性筋性斜頸の治療は1歳頃までは様子を見て
先天性筋性斜頸の治療は急ぐ必要はありません。基本的に、首のしこりは、生後1ヶ月を過ぎると徐々に吸収されて小さくなるとされています。ほとんどは生後3ヶ月~1歳半までに治ることが多いでしょう。
自宅でできる治療法を心がけながら、経過観察することがほとんどです。
1歳を過ぎても治らない場合は手術が必要?
1歳を過ぎても、首にしこりがあったり首の傾きが大きかったりする場合は、手術をすすめられることがあります。主に、1歳頃までに症状が改善しない場合は、幼児期になる2~4歳頃に手術を行うことが多いでしょう。(※3)
主に、胸鎖乳突筋切腱術(きょうさにゅうとつきんせつけんじゅつ)という、硬く縮んだ胸鎖乳突筋に切り目を入れて、筋肉を長く保つようにする手術が行われます。具体的には、硬く突っ張っている箇所を鎖骨などから切り離すことが目的です。そのために、小児科や整形外科から、専門医を紹介してもらうことになるでしょう。
手術後は、首を安静にするために、4~5日入院が必要です。退院後はしばらくは、首周りを固定する頚椎カラーを使用することがほとんどでしょう。首のしわに沿い切開するので、通常は手術の傷跡が残らないことが多いとされます。
ママは自分を責めずに赤ちゃんの様子を見守ろう
先天性筋性斜頸と診断されるのは、赤ちゃんが生まれてまもないころが多いでしょう。医師から何かしらの病名を告げられると、ママは驚きとショックを隠せませんよね。
先天性筋性斜頸は、出産時の衝撃が原因の先天的なものが多く、防ぎようのないものとされています。ママは妊娠中の生活を悔やむなど自分を責めずに、赤ちゃんの様子を観察してあげましょう。
8~9割の赤ちゃんが、自然と治ることが多い病気です。不安なことがあれば、医師から原因や症状・治療方法をしっかり聞くなど、ママが安心できるよう話しあいましょう。退院後は、1ヶ月健診や6ヶ月健診など、定期的に医師に経過を診てもらうと安心ですね。