低出生体重児の我が子、1歳の特徴は…?原因やリスクは?【体験談&小児科医監修】

筆者は妊娠34週の早産で低出生体重児の男の子を出産しました。「まさか自分が」と戸惑いしかなかった当時を振り返りながら、低出生体重児の原因やリスクについて解説するとともに、NICU入院やその後の成長の過程の体験談をお伝えします。同じような経験をされたママの参考になれば幸いです。

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この記事の監修

眞々田 容子
小児科医
眞々田 容子

目次

  1. 低出生体重児とは?未熟児と違うの?
  2. 低出生体重児の割合は?
  3. 低出生体重児の原因は?
  4. 低出生体重児のリスクは?NICUに入る?
  5. 低出生体重児の届出の方法は?
  6. 低出生体重児はどのように成長する?我が子の特徴は…
  7. 低出生体重児の授乳について。完ミでも問題なし!
  8. 心配はしたいだけしてもいい
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低出生体重児とは?未熟児と違うの?

低出生体重児は、「生まれたときの体重が2,500g未満の赤ちゃん」と定義されています。かつては早産や胎児発育不全などで小さく生まれた赤ちゃんのことを「未熟児」と呼んでいましたが、現在は正期産(37~41週)で生まれて未熟とはいえない2,500g未満の赤ちゃんが少なくないため、低出生体重児と呼ぶようになりました。

筆者の場合は妊娠34週で出産し、生まれた子の体重は2,080gだったため、早産で低出生体重児を出産したことになります。少量の出血があったので受診したら診察台に上がったところで破水し、逆子が戻っていなかったので緊急帝王切開と、急な展開に思考がついていかなかったことを覚えています。

手術前に看護師さんが「2,500gあると良いね」と話すのをぼんやりと聞いていたのですが、このラインに大きな意味があることを知ったのは後になってのことです。生まれた息子は期待より小さく、保育器に入ることになりました。

低出生体重児の割合は?

低出生体重児はどれくらいの割合で生まれているのでしょうか。厚生労働省の調査によると、平成28年は男の子で8.3%、女の子で10.6%となっています。(※1)

過去からの推移を見てみると、2,500g未満で生まれる赤ちゃんの割合は昭和55年が全体の5.2%、平成22年が9.6%と増加傾向にありましたが、最近は横ばいです。(※2)

ちなみに、平成28年の出生時の平均体重は男の子が3.05kg、女の子が2.96kgです。(※1)低出生体重児は大きい子でも平均より500gほど小さく生まれていることになります。ただでさえ小さな赤ちゃんに500gの差は大きいですね。筆者も、想像していたよりずっと小さくか細い我が子を見て心配でたまりませんでした。

低出生体重児の原因は?

低出生体重児が生まれる原因は大きく分けて2つあります。ひとつは「早産」をしてしまうこと。もうひとつは「胎児発育不全」です。では、なぜ早産や胎児発育不全が起こってしまうのでしょう。次のようなことが原因になると考えられています。

喫煙

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素、シアン化合物などは母体の血管を収縮させるため、子宮へ十分な酸素が行き渡りません。すると、赤ちゃんの酸素や栄養が不足し、発育が遅れることになります。

母体にも影響があり、陣痛開始前の前期破水や、胎盤が子宮の出口を覆ってしまう前置胎盤などが起こり、早産へとつながりやすくなります。

飲酒

妊娠中の飲酒が早産のリスクを高めることも知られています。早産以外にも赤ちゃんが奇形を伴ったり、発達障害や学習障害が現れたりすることも報告されています。

妊娠高血圧症候群

妊娠中に高血圧になる「妊娠高血圧症候群」を発症すると、重症では脳出血やけいれん発作が母体に現れたり、赤ちゃんの発育が悪くなったりして、最悪の場合、母子ともに命の危険があります。

妊娠高血圧症候群によって妊娠の継続が危険だと判断されると、赤ちゃんとママの安全のために帝王切開を選択し、早産になることも少なくありません。

妊娠糖尿病

妊娠中に発症した糖代謝異常を妊娠糖尿病といいます。妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの働きで血糖値を下げるインスリンの作用が抑えられるため、血糖値が上がりやすい状態です。早産になりやすいほか、一般の妊婦さんより帝王切開率が高くなる傾向があります。

歯周病

意外に感じるかもしれませんが、歯周病も早産の原因のひとつです。歯周病の細菌や炎症物質が血液にのって子宮に到達すると、子宮を収縮させて早産を引き起こす可能性が指摘されています。

多胎妊娠

双子などの多胎妊娠は妊娠高血圧症候群などの合併症が多く、胎児発育不全や早産のリスクが単胎妊娠に比べて高まります。双子の妊娠の約半数は早産だといわれています。

高齢出産

35歳以上での出産を高齢出産といいます。生まれたときから身体の中にある卵子は、年齢を重ねると老化していきます。老化した卵子は染色体異常が起こりやすく、流産や早産の可能性を高めてしまいます。

同時に、卵巣や血管など母体の機能も加齢によって低下するため、早産の原因となる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などのリスクが高まります。

遺伝

母親の体格と赤ちゃんの出生体重には関連があり、母親の身長が高いほど低出生体重児が少ないことが報告されています。つまり、身長が低い女性のほうが低出生体重児を出産する可能性が高く、これは骨盤が小さいために胎児の成長をさまたげてしまうことが原因と考えられています。(※3)

原因不明の場合も

低出生体重児となる原因がはっきりとわからない場合もあります。筆者もこのパターンで、妊婦健診で異常を指摘されたこともなく、タバコもお酒も飲まない、体形も標準でしたが、突然の早産となってしまいました。

低出生体重児のリスクは?NICUに入る?

妊娠37週以降に生まれれば心配ないことが多い

2,500g未満で生まれても、妊娠37週以降の正期産であれば赤ちゃんの身体の機能は十分に発達していることが多く、ほぼ心配はいりません。体重が2,000g前後あれば、その後の成長にも大きな問題はない可能性が高いですが、出生後に黄疸や低血糖が出ることもあります。発達の遅れが出ることもあるようです。

早産で生まれた赤ちゃんはリスクが高い

早産で生まれた赤ちゃんは、お腹にいた期間が短いほど身体の機能が未熟なため、次のようなさまざまな心配が出てきます。

・黄疸が出やすい
・重度の感染症や合併症を起こしやすい
・低血糖が起こりやすい
・無呼吸発作が起こりやすい
・未熟児網膜症の心配がある

この他にも、脳性まひ、発達の遅れや難聴などさまざまな障害が出る可能性もあるでしょう。

NICUに入ることも

小さく生まれ、特別なケアが必要と診断された場合には、NICU(新生児集中治療室)に入院して24時間体制の治療を受けます。NICUは細菌感染を防ぐために厳重に管理され、保育器や人工呼吸器、心拍の監視モニターなどが整えられています。

我が子のNICU体験記

筆者の息子もNICUに入院しています。生後5日目にミルクを吐いてしまい、呼吸が落ち着かずにチアノーゼを起こしたことから、出産した病院から大学病院へ救急搬送されました。一度も抱っこも授乳もしていない状態で別の病院への搬送、しかも自分は帝王切開だったためにまだ入院が必要という状況でした。

晴れて退院となった後は、NICUにいる息子に面会に行きました。厳重管理されているだけあって、入れるのは両親だけ。しかも、手術前の医師のように入念な手洗いをし、手術着のようなガウンとマスクを着用してやっと入室が許可されました。

NICUでは赤ちゃんの状態に応じて、抱っこしてミルクをあげたり、沐浴の練習をしたりと触れ合いの時間が持てます。管がつながれた小さな身体を見るのはつらかったですが、出産直後から感じていた無力感や喪失感が少しずつ埋められていくようでした。

担当看護師さんとの交換ノートも心の支えになっていました。息子の1日の様子や、ミルクを飲んだ時間・量などが記録してあり、家に帰ってからのお世話のポイントも教えてもらいました。赤ちゃんだけでなく、母親の心のケアまでしてもらえたのはとてもありがたかったです。

低出生体重児の届出の方法は?

生まれた赤ちゃんが低出生体重児だった場合には、母子保健法に基づいて市区町村に届出をしなければいけません。多くは母子手帳につづられている「出生通知書」がこの届出を兼ねています。保健師の訪問指導など支援が受けられるので、すみやかに届出ましょう。

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低出生体重児はどのように成長する?我が子の特徴は…

成熟して生まれた赤ちゃんと低出生体重児の成長はどのような違いがあるのでしょうか。厚生労働省の資料によると、低出生体重児、なかでも1,500g未満で生まれた「極低出生体重児」は、脳性まひなどの運動発達の障害や知的障害を伴う場合が多いとされています。(※2)

さらに、立ったり歩いたりなどの運動の発達、言葉の発達もゆっくりになる特徴があるようです。自閉症や学習障害など発達障害のリスクも高いとされています。

我が子1歳までの特徴

一般的な妊娠期間より6週間早く、2,080gの低出生体重児で生まれてきた息子は、1ヶ月のNICU入院期間を経て自宅に戻ってきました。その後の生活は成熟して生まれた赤ちゃんと変わりありませんでしたが、首すわりや離乳食のスタート、ひとり歩きなどの発達は、本来の出産予定日を基準とする「修正月齢」を目安にしていました。

ミルクの飲みっぷりも良く、身長や体重は初めこそ母子手帳に記載の成長曲線を下回っていましたが、生後3ヶ月で追いつき、7ヶ月では上限に近づく成長ぶりでした。健診に行くたびに「小さく生まれたなんて信じられない」と驚かれるのを誇りにすら感じていました。

実はNICUを退院するとき、医師から「脳の一部がダメージを受けている」と知らされました。言葉を失う筆者と夫に医師は、「でも赤ちゃんの場合はそうなってもほかでカバーしようと働くから、まず心配はない。1歳頃まで様子を見て、問題がなければ大丈夫でしょう。」と付け加えました。

そんな経緯から、順調に成長し1歳を迎えたときはほっと胸をなでおろしました。

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3歳で聴覚障害が判明

すっかり安心して育児を楽しんでいた筆者でしたが、ひとつだけ気になることがありました。それは言葉の発達が遅いことです。2歳を過ぎても不明瞭な単語をいくつか発するだけ。保健師さんから「聞こえていないのでは」と指摘を受け、入院していた大学病院を受診すると、まもなくして難聴が発覚したのです。

障害は残ったけれど…

聴覚障害がわかってからは、補聴器の装用、言葉の教室へ通うなどめまぐるしい毎日を過ごしました。補聴器の効果はすごいもので、装用したその日から水を得た魚のように言葉を吸収しはじめ、1ヶ月後には2語文を話すまでになりました。それまで不明瞭な単語を発していたのは、聞こえないながらも口の形を見て真似ていたのだと胸をしめつけられるようでした。

その後は中学まで特別支援学校で過ごしました。部活に熱中するだけでなく、本をむさぼるように読む子だったので学習効果も上がったのか、進学校の合格も果たしました。

低出生体重児で生まれても、障害が残っても、こんなパターンもあると心にとめておいていただけたら幸いです。

低出生体重児の授乳について。完ミでも問題なし!

低出生体重児で生まれた赤ちゃんには、できるだけたくさんおっぱいを飲ませて、大きくなってほしいと願うものですよね。筆者も当然そう思ったのですが、母乳がまったくといっていいほど出ませんでした。

生まれてすぐに保育器に入ったこと、その後NICUに入院したことで、一度も腕に抱いて授乳することなく1ヶ月以上過ぎてしまったのが原因かもしれません。低出生体重児を出産した場合、ショックで母乳が出なくなってしまうママは少なくないとも聞きました。赤ちゃんの哺乳力が弱く、おっぱいをうまく吸えないことも影響しているようです。

そんなことから息子は、入院中は搾乳して凍らせ毎日病院に運んだ少量の母乳(一度の搾乳で取れたのは10mL程度)とミルクの混合で育ちました。自宅に戻ってからは、数mL程度しか出ない母乳とミルクの混合となり、まもなくして完全ミルクに切り替えました。30分以上かけて直母で飲ませても体重が数gしか増えていないことが続いたためです。

初乳すら満足に与えていませんが、息子は健康に育ち、大きな病気もしていません。虫歯も1本もできませんでしたよ。

小さく生まれた赤ちゃんに飲ませるミルクの量は、どれくらいを目安にしたらいいのか悩むところですよね。赤ちゃんの状態や体重によっても大きく変わりますが、息子の場合は次のとおりでした。

体重
ミルクの量
生後1ヶ月2,000~2,500gほど40mL×8回 (計320mL)
生後3ヶ月5,000gほど140~180mL×5回 (計740~820mL)

心配はしたいだけしてもいい

低出生体重児で生まれた小さな我が子を目の前にすると、申し訳ない気持ちや、これから始まる育児への不安などで胸が押しつぶされそうになることでしょう。周囲の人は「大丈夫」と励ましてくれるかもしれませんが、ナイーブになっているママは「そんな無責任な発言しないで」と感じてしまうかもしれません。実際に筆者がそうでした。

そんな経験からアドバイスできることがあるとすれば、心配でたまらない気持ちは抑えこまないほうが良いということです。心配はしたいだけしましょう。そして考えあぐね、泣き疲れたらそのとき一歩前に進むことができます。

低出生体重児を生んだママにとって、障害が残ってしまった息子の例は一番避けたい未来かもしれません。ですが、息子と歩んできた道は振り返るとキラキラと輝く、愛おしい時間ばかりです。低出生体重児で生まれたからといって、幸せな時間が減ることはありません。病気や障害を抱えることになっても同じです。胸を張って気持ちを朗らかに、赤ちゃんとの時間を過ごしてくださいね。

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