赤ちゃんの先天性股関節脱臼の症状は?原因と治療法、見分け方

赤ちゃんの股関節が外れる病気の「先天性股関節脱臼」。生後3、4ヶ月の乳児健診で診断されることが多いようです。診断が遅れると治療が長引くこともあるので、早期発見が大切です。ここでは、赤ちゃんの「先天性股関節状脱臼」の症状と原因、見分け方、治療法、予防法について、医師監修の記事でご紹介します。

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この記事の監修

染谷 朋之介
小児科医
染谷 朋之介

目次

  1. 先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)の症状
  2. 先天性股関節脱臼の見分け方
  3. 先天性股関節脱臼の原因
  4. 先天性股関節脱臼の治療法
  5. 先天性股関節脱臼を予防するには?
  6. 先天性股関節脱臼は早期発見が重要
  7. あわせて読みたい

先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)の症状

女の子に多い先天性股関節脱臼

先天性股関節脱臼とは、赤ちゃんの股関節が外れてしまう病気です。病名が「先天性」となっていますが、先天性股関節脱臼の原因のほとんどは後天性の場合が多く、9割以上を占めていると言われています。

先天性股関節脱臼は女の子の方が発症する割合が高く、女の子の発症確率は男の子に比べて約10倍となります。生後3~4ヶ月の健診のときに発見されることが多いようです。先天性股関節脱臼は治療で治る病気なので、もし健診で診断されても、あまり心配しすぎないようにしてくださいね。

先天性股関節脱臼は診断が遅れがち

脱臼といっても赤ちゃんに痛みはほとんどなく、泣くこともないので、先天性股関節脱臼の症状には気づきにくいことが多いようです。最近では、先天性股関節脱臼の診断の遅れが目立っています。1歳以降に先天性股関節脱臼を診断された子どもの大半は、乳児健診を受けていたにもかかわらず、病気の発見に至らなかったのです。乳児健診で異常がなくても、家庭においても何か赤ちゃんの股関節がおかしいなと感じたら、小児科医に診てもらうことをおすすめします。

また、赤ちゃんの抱き方や、おむつ・衣服の着せ方によっても先天性股関節脱臼を招く恐れがあります。産まれたばかりの赤ちゃんは特に注意が必要です。

先天性股関節脱臼の見分け方

先天性股関節脱臼には、以下のような特徴があります。

・赤ちゃんの太腿のシワが明らかに左右非対称
・足の長さが違う
・股関節が開きにくい
・おむつを付けたときに、ぴったりとおさまらない
・足を曲げた状態で股を広げると、ポキポキと音がする

家族にも先天性股関節脱臼の経験がある人がいると、赤ちゃんにも遺伝で約4割の確率で発症することがあるようです。自分や夫の家族に、先天性股関節脱臼の人がいなかったか聞いておくと良いでしょう。

また、寒い時期に生まれた赤ちゃんは暑い時期に生まれた赤ちゃんよりも厚着なので、股関節の動きが妨げられ、先天性股関節脱臼を発症しやすいそうです。

股関節脱臼が心配で検査へ

赤ちゃんの股のシワが両足で比べて違う、と気になり病院で検査を受けました。検査は異常なしで、ほっとしたものです。検査を受けて異常がないならそれだけで「安心」を得ることができるので、万が一の早期発見のためにも、心配な場合は早めに病院を受診しましょう。

先天性股関節脱臼の原因

赤ちゃんの先天性股関節脱臼の原因は、主に赤ちゃんの自然な姿勢を妨げてしまっていることにあります。赤ちゃんの身体に負担がかかることが、先天性股関節脱臼の原因となります。

赤ちゃんの自然な姿勢とは、腕は少し曲げて万歳をしているW型、足はひざを曲げたようなM字型という姿勢です。大人からすると、足が開いているよりは閉じていた方が楽なのではと感じるかもしれませんが、この姿勢が赤ちゃんにとって一番楽な姿勢なのです。赤ちゃんの姿勢になるべく負担がかからないように、自然な姿勢を保ってあげることが先天性股関節脱臼の予防には大切です。

先天性股関節脱臼の治療法

自宅での治療法

軽度の股関節脱臼であれば、赤ちゃんの育児環境を良好に保つことによって自然治癒を促すことが可能です。自宅では「リーメンビュゲール」という装具を赤ちゃんの足に3ヶ月ほどつけ、外来通院で治療することが多いようです。早期に治療できると完治も早いので、先天性股関節脱臼が疑われる場合はかかりつけの小児科に相談してみてください。

この「リーメンビュゲール」を装着する治療法は、赤ちゃんの足を固定されてしまうため、ママが抱っこしたり、授乳したり、子ども自身が好きなように動いたりすることに制限がかけられます。自由に足を動かしてしまうと、脱臼が治りにくくなるためです。

入院での治療法

また、1歳を過ぎると足を引っ張って治療する「けん引」が必要となる場合が多いようです。この治療法は入院を必要とします。赤ちゃんは成長とともに動くことが多くなりますし、歩く年齢だとなおさら動きたくて仕方がない時期ですよね。その時期の入院治療は、母子ともにとてもつらいものになるでしょう。けん引でも直らない場合は手術が必要となります。1歳を過ぎると日常的に股関節に痛みを伴うこともあるため、先天性股関節脱臼は早期発見が重要です。

先天性股関節脱臼を予防するには?

早期発見が重要とされる先天性股関節脱臼。先天性股関節脱臼を予防するには、どのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。ママが日常のお世話で少し気を付けるだけで予防ができるので、ぜひ注意してみてくださいね。

抱っこのしかたに気を付ける

乳児股関節脱臼を予防するためにも、赤ちゃんを抱く時には「コアラ抱っこ」をすると良いでしょう。コアラ抱っこは、コアラが木につかまるような姿勢の抱き方をイメージしてください。そうすることで、赤ちゃんの股関節や膝の関節を曲げた格好を保つことができ、理想的な抱き方となります。

赤ちゃんを抱っこをする際には、首がすわっている場合は縦抱きをして、脚がM字型になるようにしてあげてください。赤ちゃんの生後6ヶ月頃までは、この抱き方をしてあげると良いでしょう。

おむつ替えの時は優しく

おむつ替えのときは、両足持ち上げたり強く引っ張ったりせずに、左右の足裏をくっつけて、優しく持ち上げるようにおむつを替えてあげましょう。力任せに赤ちゃんの足を引っ張るなど、雑なおむつ交換をしているママは要注意です。

また、おむつ交換だけでなく、遊びの中で足をむやみに引っ張ることも、脱臼につながることがあるそうです。日頃から気を付けていきたいものですね。

向き癖を付けないようにする

赤ちゃんがいつも同じ方向を向いていると、向き癖と反対側の股関節の開きが悪くなるようです。でもし赤ちゃんに向き癖があったら、ときどきママが反対側に向きを変えてあげるようにしましょう。

ママが添い寝する方向や、枕元のおもちゃの位置を左右交互に変えてあげるのも効果的です。赤ちゃんが同じ方向ばかり向かないようにしてあげましょう。特に、首がすわる生後3~4か月頃までは注意すると良いでしょう。

先天性股関節脱臼は早期発見が重要

ひと昔よりは減ったとされている先天性股関節脱臼ですが、最近では増加傾向にあるそうです。乳児健診を行う自治体の中には「日本小児整形外科学会のガイドライン」を採用していないところもあるようなので、乳児健診で異常なしと診断されても、心配な点がある場合は小児科で診察を受けてください。先天性股関節脱臼は早期発見が重要となりますので、ママはオムツ替えの時など、日頃から気にかけてお世話をしてあげるとよいでしょう。

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