子どもの血液検査、結果はどう見る?ケース別にわかりやすく図解【パパ小児科医コラムvol.4】

子どもの熱や咳が続くときに、病院で簡易的な血液検査をおこなうことがあります。レシート用紙のような検査結果を渡されて戸惑ったことがある方もいるかもしれませんね。今回は、Twitterで大人気のパパ小児科医ぱぱしょー先生が、血液検査がどのようなときに行われるのか、医師が何を見ているのかをわかりやすく解説してくださいました。

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目次

  1. どんなときに血液検査をするの?
  2. 血液検査の項目の見方
  3. 具体的な症例と血液検査の見方
  4. 著者情報
  5. パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
  6. あわせて読みたい

TwitterやInstagramでママたちから絶大な信頼を得ているパパ小児科医(ぱぱしょー)先生が、小児科医とパパの両方の立場から子育てのアドバイスを書いたコラムの第4弾。今回は子どもの熱や咳が続くときに受ける「簡易的な血液検査」がテーマです。血液検査をすることでどのようなことがわかるのか、医師による診察の説明を理解するための参考にしてくださいね。(ままのて編集部)

どんなときに血液検査をするの?

前回は風邪の一般的な経過や細菌とウイルスの違いなどについてお話しました。

子どもの風邪に薬は効かない!?病院での診察の意味は?【パパ小児科医コラムvol.3】
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風邪は自然経過で治るものとはいわれていますが、それでも熱や咳が続くときは不安を感じるものです。本当に風邪をひいているだけなのか、様子を見るだけでいいのかどうかを判断するために、医師は子どもの全身状態を見るとともに血液検査を参考にすることがあります。

子どもの手はむちむちしていて検査がとても難しいので、クリニックなどでは項目を絞った指先からの簡易的な採血がよく行われています 。レシート用紙のような検査の結果をもらったことがある人がいらっしゃるかと思います。これは少量の血液で特定の項目だけを測定器にかけて、比較的短時間で結果がでるものです。(腕から採取しているクリニックもあります。)

あの紙には一体何が書かれているのでしょうか?今回の記事でおおまかに説明します。(検査の正常値については、年齢によっても異なるのでこの記事では割愛しています。正常か異常かは担当の先生から直接聞いてください。)

血液検査の項目の見方

簡易採血では主に下記の仮想の例のような項目を見ることができます。

まず熱や咳が長く続くときにチェックするのが、WBCつまり白血球です。感染症のうち、とくに細菌の感染ではWBCが上がりやすくなります。また、CRPも同時にチェックします。CRPはちょっと専門的ですが、肝臓で作られるタンパク質の一種で、炎症の指標として用いられるものです。このCRPがとても高いと細菌感染の可能性が高まります。

WBC=白血球は数種類に分類されます。下のほうの項目「WBC Flags」は、白血球の割合がわかる指標です。LYMはリンパ球、MONは単球、GRAは顆粒球を意味しており、顆粒球は好中球、好酸球、好塩基球の3つを含みます。好中球は細菌感染症で上昇しやすく、顆粒球の中で最も数が多いため、ここでは顆粒球の割合は好中球の動きを見ているという認識でOKです。(MONは便宜上書いていますが、専門的なのでここでは知らなくても大丈夫です。)細菌感染のときにはGRAが、ウイルスの感染ではLYMが上昇する傾向にあります。

そのほかの項目はどうでしょうか?
RBCは赤血球、Hbはヘモグロビン。これらで貧血の有無を見ることができます。ただ貧血かどうかを知りたいときは血液中の鉄など他の項目も一緒に見たほうがいいので、貧血を知る目的で簡易採血をすることはあまりなく、通常の採血で調べます。

PLTは血小板。血を止める成分です。少ないと血が止まりにくい可能性がありますが、簡易採血では誤差が大きいので本当に調べたいときはこちらも通常の採血で確認します。

BSは血糖値です。これは「しんどそうなとき」に大きな意味を持ちます。つまり食事がとれていないときなどは血糖値が低い状態=低血糖になりますから、すぐにブドウ糖を摂取しなければなりません。母乳やミルクを飲めないときやイオン飲料などを受け付けないときには、点滴も必要になります。

具体的な症例と血液検査の見方

具体的な血液検査の見方について、仮想のモデルケースを見ながら説明していきます。

ケース1

1歳の男の子で4日続く熱があり、食欲が低下して、咳こんで眠れません。かなりしんどそうです。血液検査を見ると、WBCとCRPのところにH(=High)がついています。何かが起こっている印象ですね。

前回の記事でも述べたように、ウイルス感染が主な風邪には抗生剤が効きません。一方で細菌感染など風邪以外の病気の場合には抗生剤を使えることがあるため、ウイルスではなく細菌の感染であることを判断するのはとても重要です。ここではWBCとCRPがとても高くなっており細菌感染の可能性があるのではないかと考え、抗生剤の投与を考慮します。

熱が続いていて夜眠れないくらい咳こんでいるため、もしかしたら肺炎など起こしているかもしれませんね。ひょっとしたら入院が必要かもしれない、小児科医はそんなことを考えながら検査をしています。小児科医は普通の風邪と考えれば、血液検査をしません。通常の風邪では説明がつかない経過をとるとき、このように血液検査を参考にすることがあります。

ここでひとつおさえていただきたいことは、血液検査だけで全てがわかるわけではないということです。細菌感染があるかどうかも、細菌培養検査などのより詳しい検査をしないとはっきりしません。これまでの経過や身体の診察などが基本にあったうえで、血液検査が活かされます。

ケース2

1歳女児で同様に4日続く熱ですが水分がとれていて、こちらは元気そうですね。血液検査の結果を見るとHighがついているところがありません。大丈夫そうですね。でも同じ4日続く熱でどうしてこんなに違うのでしょうか。

先に結果を言うと、このケースは突発性発疹を想定しています。突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6、7型によるウイルスの感染によるものですので、WBCやCRPは上昇しにくいのです。突発性発疹は通常の風邪と異なり、3日以上熱が続くことも珍しくありません。4日熱が続くので検査をしましたが、この結果であれば抗生剤も必要ないし、元気だから様子見でOKと考えられます。

さらに様子見でOKを裏付けるものとして、下のほうの項目「WBC Flags」が役に立ちます。ここではLYMの割合が多くGRAが少ないですね。ウイルスの感染ではLYMの割合が多くなり、細菌の感染ではGRAの割合が多くなる傾向がありますので、ケース2はどうやらウイルス感染の可能性が高そうです。
(ケース1ではGRAが77%ですので、細菌感染の可能性が高そうです)

このように簡易採血の結果を見ることは、抗生剤が必要なのか、様子を見てもいいのかの判断に役立ちます。

以上ざっくりですが、簡易採血について説明しました。
もちろんお子さんによって事情も異なりますし、例外的な解釈もあります。ここで知っていただいたことを参考に主治医の説明の理解が深まりましたら幸いです。

著者情報

二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。

TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。

パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム

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