熱性けいれんの対応は?てんかんとの違いや後遺症は?2回目を予防できる?

乳幼児の10人に1人の割合で38℃以上の発熱時にけいれんを起こす子どもがいます。これは熱性けいれん、ひきつけともよばれ意識障害を伴う全身けいれんです。わが子に熱性けいれんが起こると、てんかん発作の疑いや後遺症などを心配する保護者も多いでしょう。熱性けいれんの症状や原因、対処法や予防はできるのかなどを解説します。

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この記事の監修

染谷 朋之介
小児科医
染谷 朋之介

目次

  1. 熱性けいれんとは?
  2. 単純型熱性けいれんと複雑型熱性けいれん
  3. 熱性けいれんの原因は?
  4. 熱性けいれんの対処法と注意点
  5. 熱性けいれんで救急車を呼んでも良いの?病院に行くべき?
  6. 熱性けいれんで入院することもある?
  7. 熱性けいれんの後遺症は?
  8. 熱性けいれんを起こしやすい子もいる!2回目を再発した場合は?
  9. 熱性けいれんと似た症状の病気
  10. 熱性けいれんは予防できるの?ダイアップとは?
  11. 熱性けいれんには正しい知識と落ち着いた対応を
  12. あわせて読みたい

熱性けいれんとは?

熱性けいれんは英語でfebrile convulsionと言います。直訳すると「発熱によるけいれん発作」で、38℃以上の高熱の発熱に伴って起こるけいれん発作です。おもに発熱から24時間以内に起こりやすいといわれています。

熱性けいれんの症状は?

赤ちゃんや子どもが熱性けいれんになると、意識を失った状態で全身をこわばらせてガクガクと揺らすような症状であることが多いでしょう。なかには嘔吐を伴ったり、白目をむいて、泡をふきながらバウンドするように身体をけいれんさせたりするケースもあるようです。身体をピンと硬直させたまま意識を失ったり、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫の状態)を引き起こしたりすることもあります。

単純型熱性けいれんと複雑型熱性けいれん

熱性けいれんは「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」の2種類に分類されています。特徴、見分けるときのポイントは下記の通りです。

【単純型熱性けいれん】
熱性けいれんのほとんどが単純性熱性けいれんです。初回の発作は6ヶ月~4歳ぐらいまでに起こり、単純性熱性けいれんは神経学的な異常はないといわれています。しかしママやパパが心配な場合、検査などについて医師に相談してみるのも良いでしょう。

【複雑型熱性けいれん】
下記のような症状があるときには複雑型熱性けいれんの可能性があります。
・けいれんが5分以上続く
・一日のうちに何度もけいれんを起こす
・発熱している期間中に何度も発作を繰り返す
・けいれんが左右非対称であったり、身体の特定の部分にだけ起こったりする
・けいれんが治まっても、意識が戻らなかったり麻痺がのこっていたりする

複雑型熱性けいれんの場合、脳に何らかの疾患があったり、別の病気の可能性や代謝異常・感染したウイルスへの反応だったりするケースがあり、血液検査や脳波検査などを受ける必要があるでしょう。

熱性けいれんを起こしやすい年齢・月齢は?

熱性けいれんは、一般的には低年齢の乳幼児(主に生後6ヶ月~6歳)に起こりやすい症状です。一般的に1回目の熱性けいれんを起こしやすいのは生後6ヶ月~4歳くらいまでの乳幼児といわれています。患者の8割は3歳までに初回の発作を経験します。

なかには6歳を過ぎても熱性けいれんを起こす子どももいますが、ほとんどの場合、すでに熱性けいれんの既往があるようです。

熱性けいれんの原因は?

詳しい原因は不明

熱性けいれんが起こる詳しい原因ははっきりとはわかっていません。乳幼児は身体や脳の発達が未熟なため、急激な体温の変化などのストレスに脳が反応してしまうと考えられています。

熱性けいれんは遺伝するの?

熱性けいれんには遺伝性があり、家族歴が重要だといわれています。ママやパパが子どものころに熱性けいれんを起こしたかどうか確認しておきましょう。

まだ熱性けいれんを起こしていない子どもであっても、近しい親族が熱性けいれんの既往がある場合、保育園・幼稚園などの保育施設に子どもを預ける際には施設側に伝えておいても良いかもしれません。

熱性けいれんの対処法と注意点

日本小児神経学会が出している医師・看護師などの医療従事者向けの「熱性けいれんガイドライン2015」でも、初めて熱性けいれん発作を目にした人は動揺し、対処法などに悩むものだと記載されています。はじめて我が子の熱性けいれん発作を目にしたママやパパに慌てないようにといっても現実的にはむずかしいでしょう。

しかし子どもが熱性けいれんを起こしたときには一刻も早くママやパパ、看護者が冷静さを取り戻すことが重要です。熱性けいれんの多くは3分以内に収まるもので、一般的な単純性熱性けいれんの場合、後遺症があったり、脳に異常を及ぼしたりするものではないので落ち着いて対応しましょう。

対処法1.けいれん発作が起きたら子どもを横に寝かせる

ポイントは下記の3つです。

1.平らで柔らかいところ(布団やラグなど)に寝かせる
2.嘔吐物などで喉を詰まらせないよう、また呼吸がしやすいように首を後ろに反らせ、顔を左向きにさせる
3.着ている服の特に首周りを緩める

熱性けいれんを起こしているときには、子どもを抱きかかえるのはあまりよくないとされています。ベッドやソファーなど高さのあるところで発作を起こしたときには無理に抱きかかえず、落ちないように見守るようにしてください。多くの熱性けいれん発作では嘔吐を伴うため、発作の最中は嘔吐物で口や鼻が覆われないようぬぐってあげてください。

対処法2.けいれん発作の時間をはかる

熱性けいれんの診察や治療の際に必ず聞かれるのは発作に関する時間です。

「発作が起こった時刻」「発作の時間の長さ」「発作がおさまってから意識を取り戻すまでの時間」

を答えられるよう計って、メモしておいてください。余裕があれば動画を撮影しておくのも診察のときに役立ちます。

対処法3.けいれん発作がおさまったら

けいれんが治まったら体温を測りましょう。呼吸ができているか、顔色はどうかなどを確認してください。しばらくは子どものそばを離れず様子を見守りましょう。熱性けいれん発作のあとは、ママやパパが騒がず落ち着いて静かな環境で安静にしてあげることを心がけてください。

熱性けいれんを起こしたときの注意点

子どもが熱性けいれんを起こしたときはパニックになってしまう人がほとんどですが、どんなにパニックであってもやってはいけないことがあります。

1.大声で呼びかける
2.激しく揺さぶったり、顔や身体をたたいたりして起こそうとする
3.子どもの口の中に手や割りばしなどを入れる

ママやパパが大声をだすことや子どもの身体に刺激を与えることは熱性けいれんを長引かせる可能性があり逆効果です。またけいれん発作中に口の中に異物を入れると子どもの口や喉を傷つけてしまう恐れがあります。

この3つはどんなにパニックに陥ってもやらないようにしましょう。また熱性けいれんが治まった後にやるのも絶対にやめておきましょう。

熱性けいれんで救急車を呼んでも良いの?病院に行くべき?

熱性けいれんで救急車を呼んだ方が良い場合

熱性けいれんが起こるのが2回目以降であったり、けいれんの症状の時間が5分以上だったりした場合にはすぐに救急車を呼びましょう。はじめてのけいれんであっても救急車を呼んでも構いません。また6歳以降ではじめての熱性けいれんを起こしたという場合にも救急車を呼びましょう。

初めての熱性けいれんでは病院へ

単純性熱性けいれんだとママやパパが判断できる場合は落ち着いてから病院に行くのも良いでしょう。単純性熱性けいれんの場合は、病院に行っても特別な検査や治療が必要ない場合がほとんどです。しかしママやパパは、受診をすることで安心できることもあるでしょう。

特にはじめての熱性けいれんであった場合は念のためにもかかりつけの小児科を受診しましょう。

判断に悩んでしまうときには#8000 小児救急相談に電話して指示を仰ぎましょう。

熱性けいれんで入院することもある?

単純性熱性けいれんの入院

子どものけいれんが単純性熱性けいれんだと判断がつく場合には、入院となるのは1歳前後までの赤ちゃんが多いようです。熱性けいれんの原因となる病気を回復させるための入院や念のために入院措置で麻痺や神経異常といった症状がないか様子を見るというような目的がほとんどでしょう。

ママやパパの体力的、心理的な負担をへらすために入院を勧められるということもあるので、医師としっかり話をしましょう。

複雑型熱性けいれんなどの入院

複雑型熱性けいれんの場合や6歳以上の子どもが熱性けいれんを起こした場合は、けいれんを起こす病気が隠れていないか、検査をすることになります。脳波検査や髄液検査なども行う場合がありますが、生命の危機が迫っているというわけではないケースでは、どこまで原因究明を行うか保護者と話し合って決めることになるでしょう。熱性けいれんで入院した場合、予期される検査、検査項目は以下の通りです。

血液検査:低血糖や電解質、アンモニアの異常
頭部 CT・MRI:脳出血や脳腫瘍、先天的な形態異常、脳炎による脳浮腫の有無
髄液検査:髄膜炎や脳炎の診断
脳波検査:てんかんなどの、けいれんを起こしやすい素因の有無
特殊検査:血液や尿を使って、代謝異常症などのスクリーニング

熱性けいれんで入院するときの入院期間や費用

熱性けいれんでの入院期間は、単純性熱性けいれんで3~4日、複雑性熱性けいれんでも検査の内容などによりますが1週間程度のケースがほとんどです。自治体によって助成の範囲が異なりますが、乳幼児の医療費助成が効くため多額の入院費となることはあまりないでしょう。入院が決まったら、会計の窓口などで確認をしておくと安心ですね。

熱性けいれんの後遺症は?

単純性熱性けいれんや生涯のうち1回だけの熱性けいれんというケースでは、後遺症がでるということはほぼありません。一方、複雑方熱性けいれん、とくに長時間(15分以上)の熱性けいれんが起こったという場合には、脳に酸素が届いていない状況が長く続くことになり、脳に損傷を与えてしまうことがあります。

熱性けいれんを起こしやすい子もいる!2回目を再発した場合は?

熱性けいれんで2回目、3回目の発作が起こる確率は30%ほどです。熱性けいれんを起こした赤ちゃん、子どもの半数以上が生涯で1度きりの発作で済んでいるという調査結果もあります。数回発作を起こした子どもでも小学校入学前後くらいまでには熱性けいれんは治まってきます。


一日のうちに熱性けいれん発作が2回以上あった、一つの感染症にかかっている間に2回以上熱性けいれんを起こした、という場合にはそのけいれんは複雑型熱性けいれんや別の感染症などによるものかもしれません。2回目が起こったら夜間でも救急外来を利用してください。

また熱性けいれんは一生に1度だけというケースがほとんどですが、1度でも熱性けいれん発作が起こった子どもの場合、2回3回と熱性けいれんが再発する可能性もあります。心配な場合には予防などについてかかりつけ医とよく相談をしましょう。

熱性けいれんと似た症状の病気

てんかん

てんかんは脳の器質的な病気で、大脳の異常興奮などが原因でけいれん発作を引き起こす障害です。てんかんは性別や年齢を問わずにけいれん発作や意識消失などを繰り返す病気です。

発熱時に起こる熱性けいれんと同じように、てんかんの発作でも発熱がきっかけとなって起こる場合があります。脳波検査でも似通った結果が出ることがあるため、乳幼児の内は判断が非常に難しいといえるでしょう。

また複雑型熱性けいれんが度々起こると将来的にてんかんに移行しやすいという研究結果があります。早めに発見して抗てんかん薬の服用などの治療を始められると良いでしょう。

急性脳症

急性脳症はインフルエンザウイルスなどのウイルスに感染したことが原因で脳に異常が起こる病気です。意識障害やけいれんなどの症状が出るため、熱性けいれんとの判断がむずかしいでしょう。麻痺などの後遺症が残ったり、最悪の場合、死に至ったりするケースもあります。

発熱を伴うけいれんの原因となっている病気がインフルエンザやロタといったウイルス性の疾患である場合、けいれん発作が5分以上続く場合は急性脳症を疑って病院や小児救急相談(#8000)に問合せをしましょう。


髄膜炎

髄膜炎は髄膜に細菌などが侵入し炎症を起こしたために起こる病気です。けいれん発作を伴うまでは、頭痛や発熱といった普通の風邪と症状が変わらず、判断が付きにくい病気でもあります。髄膜炎を発症すると1日で悪化し、重い後遺症が残る、命に関わることがある、と重症化してしまうケースもあるようです。

急性脳症や髄膜炎はときには命を落とすこともある怖い病気ですが、予防接種や手洗いうがいなどでウイルス感染を避けたり、重症化を防いだりすることで予防できます。熱性けいれんを経験した後でも、基本的に予防接種は可能です。ママやパパは子どもの急性脳症や髄膜炎予防のために日々のケアや予防接種を受けさせるなどしてサポートしましょう。

熱性けいれんは予防できるの?ダイアップとは?

熱性けいれんの予防として、四肢の付け根や頭を冷やす、水分をしっかりとらせるなどの方法があげられます。熱性けいれんの直接の予防法というよりは、体温を急激に上げない、脱水症状を起こさせないことなどに有効です。

また現在の日本では、子どものけいれんを抑える「ダイアップ」という坐薬で熱性けいれんを予防するのが一般的です。熱性けいれんでダイアップを処方されるのは複雑型けいれんであったり、過去にも数回発作を起こしたことがあったりする子どもの場合だけです。

熱性けいれんでダイアップを使うタイミング!2回目はいつ使う?

熱性けいれんを再発する可能性のある子どもの場合、発熱が38℃を超えた時点で1回目のダイアップを使用します。

さらに1回目のダイアップ使用から8時間過ぎても熱が下がらないときに2回目のダイアップを使用するのが、一般的な使い方です。医師の考え方や子どもの病状によっては1回目のダイアップ使用から8時間後に解熱していても、2回目を使用するよう指示が出るケースもあるようです。2回のダイアップ使用により、24時間以内はけいれんを抑制できるといわれています。

3回目のダイアップを処方されている場合は、2回目のダイアップ使用から24時間以上あけて使用するよう指示が出るでしょう。いずれにせよ、医師の指示を守って使用してください。

熱性けいれんでダイアップと解熱剤が処方されたときは

熱性けいれんでダイアップと解熱剤が同時に処方されるときに、子どもの年齢や医師の考え方によって解熱剤も坐薬で出されることがあります。解熱剤の坐薬とダイアップを使う場合には、順番と間隔に注意しましょう。

先にダイアップを使用、30分以上あけてから解熱剤の使用をするようにしてください。解熱薬の坐薬には油分が多く、先に解熱剤を挿入するとダイアップの効果が発揮されない可能性があるようです。内服タイプの解熱剤が出た場合には順番はあまり気にせず使用することができます。

熱性けいれんの予防薬「ダイアップ」の副作用は??

ダイアップの使用後には、ボーっとする、よく眠る、ふらつきなどの副作用がよく見られるようです。ほかにも、不機嫌で良く泣く、興奮するなどの症状がみられる場合があります。だいたいは一過性のものであり3、4日以内に落ち着くでしょう。

もしダイアップ使用後に嘔吐する、ダイアップの副作用のようなボーっとした状態が1週間以上続く、などの場合には、処方を受けた病院に問合せをしてみましょう。

またダイアップを使用後に、再びけいれんが起きたという場合にも病院に問合せをしましょう。

熱性けいれんには正しい知識と落ち着いた対応を

目の前で我が子が熱性けいれんになるというのは、保護者にとっては非常にショッキングな光景でしょう。パニックになってしまったり、病状や治療が落ち着いた後も、不安にかられたりすることもあるかもしれません。しかし何より重要なのは、ママやパパがクールダウンして対処することです。

また熱性けいれんについて正しい知識を持っておくことも大切です。熱性けいれん発作があった子どもでも、複数回熱性けいれんを起こしたり、後遺症やてんかんに移行したりするケースというのは数として多くはないようです。2回目の発作が起こった際にママやパパが慌てたりしなくて済むように、再び熱性けいれんにならないように、保護者ができる予防策をとることを心がけましょう。



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