乳幼児突然死症候群(SIDS)を予防するために家庭でできること【パパ小児科医コラムvol.13】
赤ちゃんが何の予兆もなく睡眠中に亡くなってしまう、乳幼児突然死症候群(SIDS)。睡眠中の赤ちゃんが心配で、何度も寝顔を確認してしまうママやパパもいることでしょう。パパ小児科医の加納友環(ぱぱしょー)先生に、乳幼児突然死症候群の発症リスクを減らすための対策や、うつぶせ寝との関係について教えていただきました。
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目次
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?
病気や事故など、子どもの命を脅かすものはいくつもあります。そのなかのひとつ、乳幼児突然死症候群(通称SIDS:sudden infant death syndrome)は、先天奇形・周産期トラブル、不慮の事故に次いで0歳の死因で4番目に多く、すべての親が不安を感じるものでしょう。
SIDSはこれまで元気に過ごしていた赤ちゃんが、突然前触れもなく亡くなってしまうものです。生後1週間~6ヶ月のあいだに起こることが多く、年間約70人の赤ちゃんがSIDSによって亡くなっています(※1)
突然赤ちゃんの死が訪れ、人々を不幸のどん底へと突き落とします。しかし、はっきりとした原因はいまだ明らかになっていません。
乳幼児突然死症候群の対策方法!7つポイント
SIDSの原因は明らかになっていませんが、打つ手なしというわけではありません。SIDSになる可能性を減らす対策がいくつかあります。
1.禁煙をする
妊娠中の母親の喫煙はもちろん、生まれてからの母親や周囲の人の喫煙により、SIDSのリスクが上昇します。
2.うつぶせ寝を避ける
うつぶせ寝がSIDSのリスクとなるため、仰向け寝キャンペーンがなされたところ、SIDSが大幅に減少しました。
しかし、仰向けにしても、どうしても寝返りしてうつ伏せになってしまう子もいます。その場合は、深く寝ているのを見計らって仰向けにしてあげると良いでしょう。
また、寝返り返りをして自力で仰向けに戻れる子は、様子をみてもよいと個人的には考えています。ちなみに寝返り防止クッションは窒息のリスクがあるためおすすめしません。
3.母乳育児をする
ミルク育児と比較して、母乳を飲んでいる赤ちゃんのほうがSIDSを発症しにくいというデータがあるため、可能な範囲で、赤ちゃんには母乳を飲ませると良いでしょう。(※2)
ただし、ミルクの成分自体がSIDSの原因というわけではありませんので、必要に応じてミルクを使用してかまいません(※3) 母乳とミルクの混合栄養でも、SIDSの予防効果はあります。
4.あたためすぎない
厚着をすることでSIDSのリスクが上昇します。子どもは身体に熱がこもりやすいので、大人が少し涼しいと感じるくらいがちょうど良いと考えてください。
5.やわらかいマットレスは避ける
深く沈みこむようなやわらかいマットレスは窒息のおそれがあるので、かためのものを選びましょう。
6.親と同じ部屋で、添い寝を避けて寝る
親と添い寝をしているときの発生率が高いことから、添い寝はSIDSのリスクを上昇させるという調査結果があります。枕や布団など大人の寝具が赤ちゃんの窒息の原因になったり、大人の身体が赤ちゃんかぶさってしまったりといったリスクが考えられます。
添い寝を避け、赤ちゃんは親と同じ部屋のベビーベッドに寝かせることをおすすめします。同じ部屋に寝ていれば、たとえば赤ちゃんがベッド柵に足をとられるなどしんどそうな場合に早く気づいてあげることができます。布団に寝かせる場合も、できるだけ同じ布団で添い寝をするのは避け、赤ちゃんの布団はわけたほうが良いでしょう。
赤ちゃんが添い乳をしないと寝ない場合もあるかもしれませんが、添い乳をせずに寝られるようになることが、SIDSの予防の点からもより良い睡眠の点からも理想です。
7.寝る場所に何も置かない
赤ちゃんの寝る場所には、極力何も置かないようにしましょう。ぬいぐるみやおもちゃだけでなく、赤ちゃんの鼻や口にかかってしまうことがあるため、枕・毛布・タオルケットも置かないほうが安全です。
赤ちゃんは、周囲に何も置かない、ガランとしたマットレスに寝かせると良いでしょう。おくるみなど身体をくるむものは使用せず、冷暖房器具とスリーパーで体温調節してください。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因は解明されていない
SIDSの直接的な原因は不明なため、これらのリスクの仕組みについてはまだはっきりはしていません。タオルが赤ちゃんの顔にかかったり、やわらかいマットに顔をうずめてしまったりなどで、呼吸に負担がかかる状況は影響があるのではないかと個人的には思います。
うつぶせ寝と乳幼児突然死症候群の関係
ひとつ注意が必要な点は、うつぶせ寝はSIDSのリスクを高めはしますが、直接の原因ではないということです。うつぶせ寝をしていてもSIDSが起こらないことのほうが多く、「うつぶせ寝をさせていたからSIDSが起こったのだ」とは言えません。
リスクは減らしたほうが良いですが、住環境や家庭の事情などで現実的にはすべての対策ができないこともあります。無理のない範囲で、できる限りの対策を家庭でしていきましょう。
少しでも不安を減らすためにSIDSの対策をしよう
私には2人の子どもがいます。SIDSを起こしやすい年齢は過ぎ、少し安堵してる今日このごろです。まだ赤ちゃんが生まれて間もないころ、寝ているときにちゃんと息をしているか何度も確認してしまう経験をした人はいるかもしれません。私もそのひとりです。
ある夜中ふっと目が覚めたとき、暗い部屋の中ですやすやと寝息をたてる赤ちゃんを見ながら「もしSIDSを起こしてしまったら……」と頭の中でつい考えてしまい、想像した瞬間になんともいえない寒気と不安感を覚えた記憶があります。
泣きそうになりながら、そっと赤ちゃんの手を握りながら再び眠りにつき、朝起きたらちゃんと息をしている赤ちゃんが隣にいて、「ああ生きててくれてなんて素晴らしいんだろう」そんなことを感じることもありました。
親であることは不安の連続です。子どもたちが生きて、元気でいてくれることはどれほどありがたいことでしょうか。私は、親御さんたちの抱くSIDSの不安や大きな悲しみを減らすため・なくすために、できることをしたいと考えています。ご家庭内のできる範囲で、今回ご紹介したSIDSを減らすための対策を実践してみてください。
パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
著者:加納友環(ぱぱしょー)
二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。
TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。