子どもは肺炎や胃腸炎でしばしば入院するということを知っておこう【パパ小児科医コラムvol.12】
子どもが突然入院することになると、重い病気なのではないかと不安になるママやパパは多いでしょう。しかし、子どもが一時的な感染症で入院になることは珍しくありません。パパ小児科医の加納友環(ぱぱしょー)先生に、子どもはどのようなときに入院が必要となるのか教えていただきました。
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我が子が入院することになると「重い病気なんじゃないか?」と、親御さんはとても不安になるのではないでしょうか。日々の診療の中でも、入院をおすすめすると泣いてしまうママがしばしばいらっしゃいます。
小児科では、もともと大きな病気はなくても、一時的な感染症で突然入院が必要になることがよくあります。最初は普通の風邪だったものが悪化して肺炎を引きおこしたり、普通の胃腸炎でも脱水症状がおきたりして、子どもが入院するケースは珍しくありません。大きな病気がないにもかかわらず、1年に5~10回も繰り返し入院するような子どももいます。
子どもの症状がどのくらいの状態になったら、小児科医は入院を考えるのでしょうか。いろいろな病気で入院が必要となりますが、ここでは子どもの入院で最も多い「肺炎」と「感染性胃腸炎」を中心に説明します。
ただし、実は子どもがこうなったら入院という基準は曖昧です。その病院の方針や保護者の心配度合いなどによっても変化します。ここで示す入院の目安は、あくまでひとりの小児科医の見解であることをご了承ください。
熱が続き入院をすすめるケース
イラスト:ヤマハチ
一般的にいわゆる普通の風邪をひくと、咳や鼻水の症状が出て、熱は2〜3日で自然に落ち着きます。この期間にすぐに入院となることはあまりありません。
熱が3日を超えるようであれば、小児科医は風邪以外の可能性を考え始めます。子どもの状態にもよりますが、血液検査をして結果を確認しつつ、飲み薬の抗菌薬などで経過を見ることが多いでしょう。
それでも熱が続いた場合、5日目くらいになるとそろそろ入院を検討するということになります。(もちろんそれ以前に必要があれば入院となります。)咳の風邪で熱が長引いたり、途中から急に呼吸困難が出て酸素投与が必要となったりする状況では、肺炎をおこしている可能性があるからです。呼吸困難がなくても子どもの熱が5~7日も続いていたら、私は入院を考えます。
なお、早く抗生剤を飲んでいたら入院を防げるというわけではなく、肺炎にはなるときはなると理解してください。
ある調査では肺炎になる5歳未満の子どもは、1000人あたり19.7人ほどいたとのことです(※)。
感染性胃腸炎で入院をすすめるケース
イラスト:ヤマハチ
胃腸炎はどうでしょうか。胃腸炎にかかると、最初は下痢や嘔吐が酷いものの、数日でだんだんと落ち着いていくものです。子どもがかかる頻度の高いウイルス性胃腸炎は、下痢をしてウイルスが外に出て行けば自然に治っていきます。
ただし、下痢嘔吐が酷くて水分を取れないと、脱水になり入院が必要です。子どもが脱水症状をおこすと、ぐったりしてきて尿が出なくなってきます。食事もとれないので、低血糖になって痙攣をおこす場合もあります。
下痢嘔吐がひどい数日のあいだに、イオン飲料などの水分を口から摂取して脱水を予防できるかどうかで、入院が必要かどうか変わってきます。こまめにでも水分が摂取できて尿が出ているようなら、通院で粘ることもできます。逆に、少量の水分でも飲めばすぐ吐くというときは、点滴のために入院が必要なことが多いでしょう。
自宅でできない治療が必要なときは入院が必要
入院はしたくないと考える人がほとんどでしょう。病院としても必要な患者さんのために入院ベッドを空けておきたいので、小児科医が「入院しましょう」というときは、どうしても入院が必要と思われるときに限ります。
肺炎では抗生剤の点滴や酸素の投与、胃腸炎では水分の点滴というように、「自宅ではできない治療が必要かどうか」が入院のひとつの目安です。
イラスト:ヤマハチ
本当に入院するかどうかは、子どもの全身の状態と家族の事情を確認しながら、相談して決めます。
ほかのきょうだいのお世話をしてくれる人がいないなど、入院しにくい状況であれば、できる限り通院で治療するようにします。ただし、改善せずに翌日や翌々日に入院となってしまうことが多いということにも注意してください。
逆に「熱が続くのが不安で、もう入院させて欲しい」と親御さんが希望される場合もあります。入院の基準は、家族の状況や不安感によっても変化するものです。(もちろん命の危険がある場合は、家族の事情に関係なく入院していただきます。)
肺炎や胃腸炎の入院は通常数日~1週間ほどです。
熱が下がり元気が出てきても、それは点滴やお薬を使って一時的に改善しているもののため、即退院とはいきません。治療をやめたらすぐにぶり返してしまいます。事情によってすぐに退院しても、結局は再入院ということもよくあります。熱が下がり元気になっても数日は様子を見たほうがよいでしょう。
症状が重いときには、入院の準備をしておくとスムーズ
子どもの体調は変化が早いものです。熱が続いて受診したら、そのまま大きな病院を紹介されて入院となるケースはよくあります。早く治療すれば治るのも早いですから、家に帰らずにそのまま病院へ行くよう言われることが多いでしょう。
突然の入院に慌てることになるので、入院になりそうな状態のときは荷物の整理などしておくとスムーズです。慣れたママの場合、「今日は入院になると思っていた。もう荷物は準備してきた」とおっしゃる人もいます。
子どもはよく入院する
イラスト:ヤマハチ
入院中には子どもの体調のほかに、いろいろなことがおこります。付き添う親の体調も崩れやすいですし、ほかのきょうだいも同じ感染症で体調不良になることがあります。身体が元気でも、きょうだいの入院中にママと離れて不安定になる子もときどきいます。
子どもの入院中は、マンパワーが不可欠です。いろいろな人の協力がないと家庭がまわらないことがあります。子どもの付き添いのために、大人が急にお仕事を休むことも出てくるでしょう。
子どもはしばしば入院が必要になり、それは急にやってくるということ。そのことを子どもがいる人もいない人も理解して、皆で協力しあえるといいなと思います。
パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
著者:加納友環(ぱぱしょー)
二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。
TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。