卒乳はママと赤ちゃんで決めよう!納得できる「おっぱいばいばい」のタイミング【パパ小児科医コラムvol.7】

子どもの離乳食が進んでくると、いつ授乳をやめるべきかと考えるママは多いでしょう。周囲から「まだおっぱいを飲んでいるの?」と聞かれ、焦る気持ちが芽生えることもあるかもしれません。パパ小児科医の加納友環(ぱぱしょー)先生が、卒乳のタイミングや進め方を教えてくださいました。

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目次

  1. 卒乳の時期の目安は決まっていない
  2. ゆるやかな卒乳の方法
  3. 卒乳は赤ちゃんとママが納得できる形で
  4. 著者:加納友環(ぱぱしょー)
  5. パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
  6. あわせて読みたい

「2歳でまだおっぱい飲んでるの?そろそろやめたら?」
「いつまでもおっぱいを飲んでいると甘えた子になる。2歳までにやめたほうがいい」
断乳や卒乳に関して、周囲からこんなことを言われて悩んでいる人は多いのではないでしょうか?

結論からいいますと、母乳を何歳までにやめなければならないという明確な基準はありません。今回は「卒乳」についての考え方を解説していきます。

卒乳の時期の目安は決まっていない

まず卒乳を考えるのはどのようなタイミングでしょうか。

たとえば、ママが仕事に行き子どもが保育園に通うためであったり、妊娠または妊娠を計画しているためであったり。そのほか2歳をこえて周囲からもそろそろやめるように言われたことや、おっぱいばかり飲んでいて離乳食をあまり食べないことなども理由としてよく聞くものです。

このようにママや赤ちゃんによってそれぞれ事情が違います。それだけでも「おっぱいは◯歳までにやめよう」とくっきり線引きすることはできないことがわかりますね。

医学的にも授乳する年齢の上限は定められていない

では具体的に何を目安にすれば良いでしょうか。

AAP(アメリカ小児科学会)の「母乳と母乳育児に関する方針宣言」によると「母乳育児は少なくとも生後1年間、それ以後は母子が互いに望む限り長く続けましょう」とあります(※1)。WHO(世界保健機構)の「補完食」には「2年かそれ以上母乳を与えましょう」とあります(※2)。このように、最低いつまでは続けるべきかについては述べられてはいますが、年齢の上限については設定されていないのです。

生後5~6ヶ月で開始する補完食(=離乳食)が進んできたら栄養的には満たされてきて、母乳が栄養に占める割合はだんだんと少なくなっていきます。しかし母乳を飲み続けることには、感染症のリスクを低下させるなどメリットがあるのです。そのため、母乳であれば2歳かそれ以降も飲んでいくほうが良いでしょう。赤ちゃんがおっぱいをまだ飲みたいと考えているのに、ある年齢でスパッとやめることは心身ともに負担が大きいですから、自然に卒業していくことが理想です。

ちなみに2歳、3歳と年齢があがってもおっぱいを飲み続けると甘えた子になると言われることがあるかもしれませんが、とくに根拠はありません。スキンシップをとり、愛情を満たされることはむしろ子どもの心を安定させますから、心理面でネガティブな影響があるとは考えなくていいと思います。

妊娠中の授乳については、流産の原因になるということは証明されていない(※3)ので禁忌ではありません。ただ状況により卒乳あるいは断乳が望ましいことがありますので、担当の産婦人科医とよく相談してください。

子どもが離乳食を食べないときには断乳するべき?

離乳食を食べず、母乳ばかり飲む子の場合、卒乳というよりスパッとやめる断乳をすればお腹がすいて食べるようになるのではないかと考えるかもしれません。しかし実際は、急速に断乳してお腹がすいたからといって、必ずしも離乳食を食べるようになるとは限りません。

子どもによってはうまくいくかもしれませんが、そのまま離乳食も食べない状態が続けば栄養をとれず体重が減ったり脱水になったりする可能性があります。食事量アップ目的の断乳はギャンブル性が高いものですのでおすすめしません。母乳で栄養を確保しつつ、食事量が増えていくのをじっくり待つほうが現実的です。

また急激な断乳は母子ともに負担のかかるものです。急におっぱいを飲めなくなることは、子どもにとってはおなかがすくだけでなく、ママとのスキンシップが失われてつらいでしょう。また子どもがおっぱいを飲みたがっているのに飲ませられないということは、ママにとっても大きなストレスになります。病気等の理由で急激に断乳を進めないといけない状況以外は、ゆるやかに卒乳へと向かうほうがいいと思います。

ゆるやかな卒乳の方法

ゆるやかな卒乳はひとそれぞれ方法がありますが、段階的に進めていくことが基本です。

たとえば日中の授乳を減らしていき、夜はフリーで飲ませてあげる方法があります。日中は外出してできるだけ母乳を飲めない状況をつくったり、母乳をほしがったときはおやつを与えたりするのです。保育園に入園する子は、状況的にこの形をとりやすいかもしれません。

逆に夜間授乳から減らしてくというのも、ひとつの方法です。生後6ヶ月以降であれば、夜間の授乳を減らすことによる栄養面の影響は大きくありません。また夜におっぱいを飲まなくても入眠できるようにしていくことは、睡眠の点でメリットがあります。

卒乳を考える月齢になると子どもは大人が言うことをある程度は理解しています。そろそろおっぱいをやめていくことを伝え、子どもも気持ちの準備ができるように促すことが大切です。

卒乳は赤ちゃんとママが納得できる形で

どのような方法ですすめていくとしても、卒乳はママの考えやお仕事、赤ちゃん側にタイミング、保育園の入園のタイミングなど、さまざまなことが関係しています。それらのバランスをとってママと赤ちゃんにとって良い方法を考えていかなければならないため、特別な理由がない限り第三者が「◯歳でやめましょう」と強制することはできません。

おっぱいはママにとっても赤ちゃんにとっても愛情にあふれた貴重な時間です。赤ちゃんにとってもママにとっても、できれば卒乳または断乳でつらい思いをせずに、おっぱいに対してあたたかな経験を残してもらいたいと思います。

すべての赤ちゃんにいつかは訪れる「おっぱいばいばい」。

それがママにとっても赤ちゃんにとっても納得のいくものになることを願っています。

(文:パパ小児科医 加納友環(ぱぱしょー)/イラスト:ヤマハチ)

著者:加納友環(ぱぱしょー)

二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。

TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。

パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム

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