うちの子は食物アレルギー?大切なのは食べられないものと量を知ること!【パパ小児科医コラムvol.6】

赤ちゃんの離乳食を始めるときや、給食のある保育園・幼稚園に子どもを入園させるときには、我が子に食物アレルギーがあるか心配になる方が多いのではないでしょうか。Twitterで大人気のパパ小児科医ぱぱしょー先生が、食物アレルギーの診断の仕方や、食物アレルギーがあるときの対応法をわかりやすく解説してくださいました。

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目次

  1. アレルギー採血で食物アレルギーの確定診断はできない
  2. 経口食物負荷試験という方法
  3. 食物アレルギー症状かどうかの判断の仕方
  4. 子どもに食物アレルギーの症状が疑われるときには?
  5. 食物アレルギーか心配なときには病院を受診して
  6. 著者情報
  7. パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
  8. あわせて読みたい

入園の季節には食物アレルギーかどうかを示す書類の提出が必要になり、子どもが食物アレルギーかどうか気になる患者さんが多く受診されます。食物アレルギーはどのように診断されるのでしょうか?

アレルギー採血で食物アレルギーの確定診断はできない

子どもの食物アレルギーを気にして受診するきっかけは、たとえば次のようなものではないでしょうか。

「保育所に入るのですが、まだ食べたことのないものが多いので、アレルギー採血をしてほしいです。」

結論を先に言いますと、アレルギー採血だけでは食物アレルギーの診断は確定できません。なぜでしょうか。

アレルギー採血の結果の値は、たとえばこの表のようなものです。

「クラス」というのはアレルギーのレベルのようなものです。抗体価の数値が高いほどクラスの数字が大きくなり、実際に食べてアレルギーの症状が出る可能性が高くなります。

ただし抗体価の数値が0でなくても、実際にアレルギー症状がでるとは限りません。たとえばある調査によると、1歳の子どもで卵の抗体価の数値が3(kUa/L)の場合は、実際に卵を食べて症状が出る確率は約60%でした。残りの40%は実際に食べても症状が出なかったのです(※1)。

このようにアレルギー採血はあくまで症状が出る可能性=リスクの予想に使うものですので、本当のところは実際に食べてみないとわかりません。

経口食物負荷試験という方法

実際に食物アレルギーがあるかどうかは、食べてみないとわからないものです。しかし、子どもに食べたことがないものを初めて食べさせる場合や、アレルギー検査で数値が陽性だった場合に、自宅でその食材を試すのは怖いと感じるでしょう。

その場合は、病院の中で食べてみる「経口食物負荷試験」というものがあります。実際に子どもにアレルギーの原因となる可能性のある食材を食べさせてみて、その後数時間、発疹の有無や脈拍、呼吸状態などを確認しながら経過をみる検査です。もしも症状が出た場合にはすぐに対応できるので、安全にその食材を試すことができます。

子どもに対して実際に負荷試験をするかどうかは、過去にアレルギーの症状があったか、アトピーや喘息などアレルギー疾患をもっているか、アレルギー検査の数値が高いかなどのリスクを総合的に判断して行いますので、担当の先生と相談してください。

症状が出る可能性が低いと考えられる場合は自宅で試すようすすめられるかもしれません。もし心配であれば、病院を受診しやすい時間帯に試してください。

食物アレルギー症状かどうかの判断の仕方

家で試しに子どもに食べさせてみても、アレルギーかどうか判断に迷うことがあります。たとえば、「トマトを食べたら口の周りが赤くなった。アレルギーですか?」などと聞かれることがあります。

食物アレルギーの疑いがある症状というのはどのようなものでしょうか。

食物アレルギーの5つの症状

アレルギーの症状は、下記の5つに分類されます。自宅で目にするのは最初の3つが主でしょう。

(1)発疹などの皮膚症状
(2)咳こみなどの呼吸器症状
(3)嘔吐や腹痛などの消化器症状
(4)血圧低下などの循環器症状
(5)意識症状などの神経症状

食べてから時間を追って症状がどう変化するかが重要

一般的に食物アレルギーの症状は食べてから数分で現れます。遅れて出る症状もありますが、多くの場合は数時間以内に症状が出るため、1日以上経過していたらアレルギー症状の可能性は低いと考えられます。

また食べ物は消化吸収されるため、アレルギーの場合は時間とともに症状が変化します。たとえば食べて15分で発疹と咳が出て、10分後さらに発疹が広がり、30分後には咳がましになるというように、比較的短時間で状況が変わる場合はアレルギーの疑いが高まります。

食べてから顔に発疹が出て2日くらいずっと治らないという場合は、変化がないので食物アレルギーの可能性は低いと考えてよいでしょう。

症状が同じ食物で「再現」されるかも重要なポイント

食物アレルギーの場合、体調に問題ないときであれば、ある食品を同じ量食べたらほぼ同じような状況が「再現」されるはずです。

たとえば、「前はキウイを特に問題なく食べていたのに、今日食べたら背中に発疹が出ました」という状況は、同じ食物で同じ状況が「再現」されていないので食物アレルギーの可能性が低くなります。偶然発疹が出た可能性もあり、食べ物との関連は強くなさそうです。

このように再現性がはっきりしない場合には自宅もしくは病院でもう一度食べて、本当に症状が出るかを確認したほうが良いでしょう。

子どもに食物アレルギーの症状が疑われるときには?

子どもが食物アレルギーを起こしやすい食品は、鶏卵、牛乳、小麦の3つです。鶏卵(39%)牛乳(21.8%)小麦(11.7%)と、子どもの食物アレルギー全体のおよそ7割を占めます。そのほかピーナッツ、果物類、魚卵、甲殻類、ナッツ類、そばと続きます(※2)。

発症頻度が少ないものでは、一度食物アレルギーを疑われる症状が出たとしても、実際にもう一度食べてみると問題ないことも多いものです。本当は食べられるのに除去しているケースをしばしば見かけます。そのため、アレルギーの再現性の確認は大切です。

再現性の確認のために自宅で試すか、もしくは病院で負荷試験をするかになりますが、どちらを選択するかはケースによります。症状の時間経過が食物アレルギーを強く疑うものであるか、アレルギー採血の数値が高いか、その食物がアレルギーを起こしやすい食品であるかなど総合的な判断が必要ですので、担当の先生と相談してください。

食物アレルギーか心配なときには病院を受診して

経口食物負荷試験によってアレルギー症状の再現性を確認すると、本当に食物アレルギーかどうか判断ができますし、実際にどのくらいの量を食べられるかも知ることができます。

食物アレルギーと診断されても、少量なら食べられる場合もあります。アレルギーの原因となる食物であっても、食べられる範囲で食べていくほうが、症状が治りやすく食生活の幅も広がります。

また、ごく少量で症状が出る場合であっても、一生そのまま…というわけではありません。皮膚や喘息のケアなどで、将来的に改善できることもあります(食物アレルギーの治療の詳細については、後日記事にする予定です。)。

本当に食べられないもの、食べると危険な量を知ることは、子どもが安全に生活を送るうえで重要です。保護者の皆さんの注意の仕方も変わってくるでしょう。

「うちの子は食物アレルギー?」
と悩んでいる方は病院を受診し、本当に注意すべきことは何かを医師に見極めてもらってください。

【続編】食物アレルギー診断後の治療についてはこちら

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著者情報

二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。

TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。

パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム

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