私が患者だったころにしてもらいたかったこと【パパ小児科医コラムvol.10】

子どもに予防接種を受けさせるときや、病気で検査や手術を受けさせるときに、本当のことを子どもに伝えないことはありませんか。パパ小児科医の加納友環(ぱぱしょー)先生が、ご自身の子ども時代の体験をもとに、子どもにウソをつかずにきちんと説明する大切さを教えてくださいました。

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この記事の監修

目次

  1. 子ども時代の入院検査の苦々しい記憶
  2. 痛みは軽減されるべきもの
  3. 子どもは説明を受ける権利を持っている
  4. 子どもにはきちんとウソをつかずに説明してほしい
  5. 痛くて泣いても構わない
  6. パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
  7. 著者:加納友環(ぱぱしょー)
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子ども時代の入院検査の苦々しい記憶

私は7歳のとき、ある大学病院に何ヶ月も入院していました。
特発性血小板減少性紫斑病(しはんびょう)という病気で、血を止める成分である「血小板」が少なくなる病気です。

入院中には繰り返し採血や点滴などの処置がありました。
最初は採血や点滴も泣きわめいていましたが、何度か経験するうちに「まあ我慢できないほどでもないか」とだんだん慣れてきて、次第に泣かずに「はいどうぞ」と処置をしてくれる先生に手を差し出すようになりました。

突然の大きな処置

入院中の処置に慣れてきたある日、看護師さんから「ちょっと検査があるから来て」と呼び出され、いつもの処置室に入っていくとなんだか様子が違いました。
処置室にいた先生は手袋をして青い手術着のようなものを身にまとっています。しかも主治医の一人だけではなく何人もの先生がその格好でとても重苦しい雰囲気でした。

「ちょっと痛い検査だけど、すぐ終わるから」
そう言われても直感的に怖い!と思った私は「いやだ!」と逃げ出そうとしました。
しかし何人もの看護師さんに捕まえられ、処置台に仰向けに押さえつけられ、パジャマのズボンを下ろされました。

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私を取り囲む大勢のお医者さんや看護師さん、上から照らされるライトを見て、
「バラバラに解剖されてしまう!」
そう感じた私は、「いやだいやだー!」と叫びながら暴れました。

しかし大勢の大人がそれ以上の力で抑えつけて、
「腰のところから注射するけど、すぐ終わるから」
そう言って腰のところにチクリ。

「痛いー!あー!」叫んでもやめてくれそうにありません。

予告なしの激痛

1回の注射で終わりかと思いきや、その次にこれまで感じたことのないほどの激痛が腰から全身にひろがりました。
「ギャー!!」

見ると今まで見たことがないくらい、信じられないくらい太い針が私の腰に刺さり、さらに先生がゴリゴリと中に押し込んでいました。
(な、な、なんてことするんだ・・・い、痛いなんてもんじゃない。なんだこれ本当にバラバラにされるのか。)

汗だくになりながら抵抗してもさらに処置は続き、その「激痛」は何度も繰り返されました。人生で一番痛いことランキングがあれば、その日だけでTOP10を独占したことでしょう。繰り返し襲ってくる激痛に叫び声をあげ、身も心もボロボロになって処置は終わりました。

後から知りましたが、これは血液の病気の時に調べる骨髄の検査の様子です。
骨に注射針を刺すのでとても太い針を使います。

どのような手順かと言いますと…
まず普通の針で局所麻酔の注射をします。この痛みは、これまでと大差ありません。その次に実際に骨髄針を刺します。骨に太い針を刺すのでもちろん痛いですし、ゴリゴリしなければ刺さりません。想像するだけで痛そうですね。その後、骨髄を吸引して検査に出します。その吸引がまた痛く、リアルに体が跳ね上がるほどの痛みで、少なくとも合計3回痛い検査です。

痛みは軽減されるべきもの

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入院中何度か検査しましたが、初めての検査のあまりの痛みに「次は絶対に全身麻酔して」とお願いしました。病棟としても暴れん坊の困った少年だったのでしょう。その後は毎回点滴からお薬を入れて全身麻酔してもらえて、気づいたら処置は終わっていました。

後日、同じ検査を少し年齢が上のお兄ちゃんが麻酔をせずに受けているのを見て、母親から「○○くんは麻酔もせずじっとできてすごいね。麻酔なんかしているのはあなただけよ」と言われました。

心の中で「検査受けたことないからそんなこと言えるんだ。めちゃくちゃ痛いんだぞ!」と思いつつ、痛みに耐えることができない自分を情けなくも感じたものです。

もう30年近く前のことで、当時の医療の文化や親の世代の価値観があるので、当時のことを責め立てる意図はありません。とはいえ、今はこのような痛みの強い処置には通常、鎮静(麻酔で眠らせる)や鎮痛(痛み止めを使う)を用いることは常識です。

「病院のこども憲章」(※)にも、「身体的、精神的ストレスを軽減するような方策が講じられるべきである」と説明されています。

また痛みについても個人の感覚なので、「○くんが我慢できたからあなたも我慢できる」は成り立ちません。そもそも痛みはないに越したことはないのです。

子どもは説明を受ける権利を持っている

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今、自分が医療者になって思うところがあります。一つは麻酔という手段があるのなら、事前に(親を通した説明も含め)選択肢を提示することはできなかったのか、ということ。もう一つは、麻酔しないにしても、このようなだまし討ちのような形ではなく、事前に説明することはできなかったのか、ということです。

7歳とはいえ、ちゃんと説明してもらえれば選ぶことはできます。検査の意味もわかると思います。合計3回は痛いということがわかっていれば、心の準備ができて暴れ方はましだったかもしれません。感染対策であることがわかれば術衣を着ていることにも恐怖を感じにくかったでしょう。

ちゃんと説明してもらえればこれほどまで嫌な経験にはならなかったのではと思います。

「病院のこども憲章」(※)にも、「子どもたちや親たちは、年齢や理解度に応じた方法で、説明を受ける権利を有する。」という説明があります。現在は、子どもにも検査の意味やどんなことをするかをわかるように説明しています。見通しが立てば処置の恐怖は軽減されるのです。

子どもにはきちんとウソをつかずに説明してほしい

私は今、小児科の診療の場でしばしば胸が痛むことがあります。それは予防接種や血液検査のときに、事前に内容を知らされることなく診察室に入り、パニックを起こす子どもがしばしばいることです。

事前に内容を知らせることで子どもが逃げ出してしまうかも…など、親にもいろいろ事情はあるかもしれません。しかし、だまし討ちのような状況になると自分の経験がフラッシュバックして胸が痛みます。

とはいえ、親は「暴れると他の患者さんに迷惑かけるかも…」「時間がかかって次の人を待たせてしまうかも…」そんな不安感からやむを得ずとっている行動です。周囲の視線が少しあたたかくなるだけでも少し変わるかもしれません。

痛くて泣いても構わない

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「痛くないよ」というのもウソになってしまいます。実際針を刺されたら誰でも痛いので、私は聞かれたら「痛いことは痛いけど、大切なお薬なんだよ。」「痛いけれども、大切な検査なんだよ。」とありのままに説明します。何度も説明してわかってもらいたいと思います。

もちろん泣いたって構いません。「泣いたり声を出したりしてもいいけど、危ないから動かないように頑張ろうね」そう説明します。全員ではないですが理解してじっとしてくれる子もいます。

「男の子のくせにこんなに泣いて」「もう小4なんだから、泣くのやめなさい」など言われている子どもを見ると、あの日私が母から言われた言葉が思い出されて胸が痛みます。男の子だって、高学年だって泣いてもいいのです。泣いても泣かなくても「よく頑張ったね」で良いのではないかと思っています。

もし今の私が30年前にタイムスリップしたら、大人たちにこう言うでしょう。
「子どもでもわかる言葉で説明してくれたらわかるし、自分で決めることもできるよ。痛い注射でもウソをつかず説明してほしい。痛くて泣いてもいいでしょう?泣いても泣かなくてもお薬の効き目は一緒でしょ?」と。

パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム

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著者:加納友環(ぱぱしょー)

二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。

TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。

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