子どもの中耳炎の症状と原因は?子どもが風邪で耳が痛いときの受診先は?|耳鼻科医監修
耳鼻科医監修|普段は熱があっても元気な子どもが、急にぐずる・耳が痛いという症状を訴えた場合、中耳炎が疑われます。中耳炎は小学校に上がるまでは繰り返すことも多いといわれています。ここでは、子どもの中耳炎の症状や、子どもが夜間に症状を訴えたときの応急処置や、病院での治療や薬について解説します。
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目次
子どもの中耳炎の原因
中耳炎がおこる原因
中耳炎とは、細菌やウイルスが中耳に入り、炎症をおこし膿がたまる病気です。多くの場合、風邪や副鼻腔炎など細菌感染やウイルス感染が起きた際に、細菌やウイルスが鼻水とともに鼻の奥の耳管より中耳に入って発症します。
子どもが中耳炎になりやすい理由
中耳炎は子どもに多い病気のひとつで、多くの子どもが小学校1年生になるまでに1回くらい数回くらいは耳炎になるといわれています。
小さい子どもは耳管が短く太く、また大人よりも角度が水平に近い構造となっています。そのため、鼻で増殖した細菌やウイルスが耳に届きやすいのです。年齢とともに耳の構造が変わり発症回数は減るものの、子どもの中耳炎は繰り返すものと考えて間違いないようです。しかし中耳炎は大人でも発症する病気であり、「何歳になると発症しなくなる」というものではありません。
プールやお風呂は中耳炎の原因ではない
中耳炎は症状が耳に出るため、プールやお風呂で耳に水が入ることが原因という説がありますが、それは勘違いです。仮に耳に入った水に細菌が入っていても、鼓膜を通って中耳に入ってくることはありません。
中耳炎の種類は?急性中耳炎と滲出性中耳炎の違い
中耳炎にはいくつか種類があります。子どもは急性中耳炎から滲出性(しんしゅつせい)中耳炎になりやすいともいわれており、注意が必要です。中耳炎の種類と症状は以下の通りです。
急性中耳炎
急性中耳炎とは、風邪などにより中耳に細菌やウイルスが入り、炎症が起こったり膿がたまったりする状態を指します。症状としては、耳の痛みや発熱などが起こります。子どもが小さいうちは、高熱が出ることも珍しくないようです。急性中耳炎の痛みは、夜中に強くなることが多いといわれています。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは、鼓膜の内側の中耳に液体(浸出液)がたまる病気のことを言います。急性中耳炎が治りきらず、中耳に膿が残った場合におこることが多いといわれています。また、アレルギー性鼻炎など鼻やのどの慢性的な炎症がある場合も、浸出液を排出する動きが弱まって滲出性中耳炎になりやすいようです。
急性中耳炎に比べて痛みを訴えることは少なく、自覚症状は「耳が聞こえにくい」ことぐらいです。したがって、気づくのが遅れることも多々あるようです。
子どもの中耳炎の症状は?熱や痛みはある?
機嫌が悪い
急性中耳炎は風邪や鼻の炎症をきっかけに発症することが多い病気です。風邪症状に加え、以下のような様子が複数みられれば要注意です。
・急な発熱や高熱、数日熱が下がらない
・耳を痛がる、耳が赤い、熱い
・とにかく機嫌が悪く、耳をよく触る、首を振るなどの仕草をする
・耳が聞こえにくい
・耳だれがある
中耳にたまったうみが外耳に出てきたものを「耳だれ」とよびます。耳だれがある場合、急性中耳炎が悪化してすでに鼓膜に穴が開いている状態、あるいは滲出性中耳炎が疑われます。症状が弱くても、滲出性中耳炎は耳鼻科での治療が必要な病気ですので、早急に受診しましょう。
子どもが風邪で耳を痛がるときの受診は小児科?耳鼻科?
中耳炎の診断では、鼓膜の状態や中耳に水のたまっている様子を確認します。子どもに中耳炎の症状が疑われるときには、可能な限り耳鼻科を受診しましょう。鼻水の吸引や、鼻からお薬の蒸気を入れるための機材なども耳鼻科は充実しています
耳鼻科に行きたくても、診療時間や場所の事情により受診が難しい場合は、小児科を受診しましょう。中耳炎は耳の病気ではありますが、子どもがよく発症する病気ですので小児科医にも知見が多いです。小児科で診察をし、痛みをとめるための解熱鎮痛剤を処方してもらったうえで、長期的な治療にむけて耳鼻科を紹介してもらうとよいでしょう。
子どもの中耳炎の治療方法、中耳炎の薬は?切開やチューブは必要?
急性中耳炎の治療は服薬が中心
子どもが中耳炎と診療されると、解熱鎮痛剤や抗生物質(抗菌剤)が処方されることが多いようです。抗生物質については、日本の中耳炎治療のガイドラインでは、重症度に応じて処方有無を決めるよう勧められています(※1)。したがって、急性中耳炎の場合は鎮痛剤の服薬が治療の中心となります。
また、急性中耳炎を引き起こしたときには、原因となる鼻やのどの炎症を取り除く必要があります。子どもが中耳炎を発症していないときであれば家庭でも鼻水の吸引(鼻吸い)が可能ですが、中耳炎を発症しているときは、却って痛みが強くなることもあります。中耳炎の症状があるときには耳鼻科で鼻水の吸引(鼻吸い)の処置を受けましょう。
急性中耳炎で熱がなかなか下がらない場合や薬が効かない場合に、切開手術を行うことがあります。急性中耳炎を繰り返す子どもに切開手術を行うかどうかは、医師によっても判断が分かれるところのようです。鼓膜の切開と聞くと痛そうなイメージがありますが、手術は局部麻酔をした上で行いますので痛みを感じることはありません。鼓膜は皮膚と同じで再生しますので、メスで切開したあとは数日で閉じるそうです。ただ子どもが小さいと、耳に麻酔薬を入れること自体が難しいことも考えられます。医師とよく相談して進めましょう。
なかなか治らない滲出性中耳炎の治療
滲出性中耳炎の場合も急性中耳炎と同様に、鼻やのどの治療が必要になります。鼻の病気やのどに腫れがある場合、膿を排出しようとする耳管の働きが悪くなり滲出性中耳炎になりやすくなるといわれています。耳管だけ治療しても、耳管の入り口の炎症が改善されなければ、再び耳管に浸出液が流れ込むことになるからです。
通気療法といって、耳管から空気を送って滲出液の排出を促す治療もあります。
浸出液の排出が難しい場合は切開手術を行い、浸出液を吸い出すことがあります。切開手術は局部麻酔をした上で行うため、痛みを感じることはないでしょう。また、入院の必要もありません。鼓膜は皮膚と同様に、再生する器官ですので切った後は数日でふさがります。
重度の滲出性中耳炎で治療開始から3ヶ月以上たっても依然耳が聞こえにくい、鼓膜の状態がおかしい場合、鼓膜にチューブを入れる手術が検討されます(※2)。切開手術と同じように、麻酔した上で鼓膜に穴をあけてチューブを挿入します。治療が終わると、鼓膜にできた穴は自然にふさがります。
急性中耳炎も滲出性中耳炎も、治療は最後まで続けましょう
中耳炎は、短時間で悪化しますが、治癒するには長期間を要します。治療の途中で耳の痛みがなくなっても、医者から「完治」と言われるまでは通院するようにしましょう。処方されている薬は、親の判断で服用を中止することなく、しっかりと飲み切ることが大切です。
子どもが耳を痛がるときの応急処置
子どもが急性中耳炎になった場合、夜中に痛みが強くなることもあります。しかし、夜間の緊急診療が受けられる病院は限られており、問い合わせをしても、よほどの緊急性がない限り極力夜間診療を控えるようアドバイスされることもあるでしょう。
解熱鎮痛剤を飲ませて痛みを止める
子ども用の鎮痛剤で痛みを和らげて、子どもが眠れるようにしましょう。鎮痛剤を使用するのは1~2回程度にし、翌朝病院を受診するようにしてください。市販されている子ども用の解熱鎮痛剤を常備しておくと、もしものときに安心ですよ。
耳の後ろを冷やす
耳の後ろ側を冷やすと痛みが和らぎます。タオルに包んだ小さな保冷材や、冷たくしたタオルなどで、冷やし過ぎに注意しながら耳の後ろを冷やしてあげましょう。
横にならず身体は起こしておく
中耳炎のときに身体が横になると、鼓膜が圧迫されて耳が痛みます。痛みを和らげるように椅子に座ったり、ママやパパの身体に寄りかかるように座らせたりして、できるだけ上半身を起こすようにしましょう。
耳だれや鼻水は拭きとっておく
耳だれが出ている場合は、優しく拭き取ってください。耳の外側に出ている耳だれのみ拭くようにし、耳の中のものは触らないようにしましょう。耳だれや鼻水を拭き取り、清潔に保つことが大切です。
子どもが中耳炎になったときの幼稚園・保育園はいつから?
中耳炎そのものはうつる病気ではない
中耳炎そのものは、他の子どもにうつる病気ではありません。子どもの熱が下がり痛みを訴えないようであれば、幼稚園や保育園に登園できます。また、インフルエンザのように特別な許可も必要ありません。ただし中耳炎のきっかけとなった風邪はうつりますので、配慮は必要です。
中耳炎の発症後の幼稚園・保育園の登園で気を付けること
中耳炎のときに処方される抗生物質は、1日3回飲む必要があるものが大半です。園に相談して昼間にも飲ませてもらえるようにしましょう。保育園の場合、医師が処方した薬で所定の書式で園に連絡すると、飲ませてもらうことができます(※3)。幼稚園で、投薬を断られる場合は、お迎え後に家庭で飲ませるようにしましょう。
子どもが中耳炎になったときのお風呂・プールはいつから?
中耳炎でもお風呂には入れる
中耳炎は風邪症状が原因ですので、通常の風邪と同様の判断で大丈夫です。子どもの熱が高い場合、痛みがある場合、耳だれがある場合や鼓膜切開の直後は入浴を避けましょう。チューブを入れている場合は、耳にお湯が入らないように注意してお風呂に入りましょう。
中耳炎のときのプールは医師に相談
お風呂と同様、熱も痛みもなければ中耳炎にかかっていてもプールには入れます。ただし、鼓膜切開直後やチューブを入れているタイミングであれば、プールに入るのは医師に相談してからにしましょう。
中耳炎の再発を防ぐ日常生活
風邪を予防する
中耳炎にならないためには「風邪を予防」することも大切です。普段から、手洗い・うがいはもちろん、規則正しい生活を送るようにしましょう。鼻水がつまっている場合は、こまめに片方ずつ鼻をかむように子どもに促してくださいね。
もし風邪をひいてしまったら、悪化させないうちに早めに病院を受診し、早く治すようにしましょう。
乳幼児は風邪をひいたら耳鼻科も受診
乳幼児は風邪をひくと中耳炎になりやすいので、小児科の他に耳鼻科にも連れて行くと安心です。特に、急性中耳炎の経験がある場合は、繰り返しかかりやすいため注意が必要です。
授乳中の場合、添い乳はしない
鼻風邪をひいているときに添い乳をしてしまうと、どうしても鼻水が管を通って耳へと行ってしまいがちです。そのため、中耳炎になるリスクが大変高くなります。鼻風邪をひいているときに授乳する場合は、なるべく添い乳を避けましょう。風邪が治れば添い乳をしても問題ないので、治るまでは気を付けてあげてください。
子どもの中耳炎の体験談
子どもの中耳炎についてままのてに寄せられた体験談を紹介します。
我が家の長男は4歳頃から9歳まで、滲出性中耳炎に悩まされ続けました。滲出性なので、もっと小さいころから膿がたまってしまっていた可能性があり、かなり進行してしまいました。抗生物質3ヶ月、鼓膜切開3回、チュービング手術で入院を全てやりました。月2回の耳鼻科通いも長く続き、手術や鼓膜切開したのに再発を繰り返して大変つらい思いをしました。
今思うのは、赤ちゃんのころからもっと定期的に耳鼻科検診をし、早めに対処していれば良かったということです。滲出性中耳炎は自覚症状がないので、注意しておくに越したことはありません。
子どもの中耳炎はなかなか治らない、繰り返す病気
痛みや熱などの症状がなくなると、つい「治った」と思い通院をやめがちですが、子どもの中耳炎は治りづらい病気です。自覚症状が消えた後も、耳管に水が残り滲出性中耳炎となることもあるので気長に治療しましょうね。