手足口病は妊婦にも感染する?妊娠初期~臨月における胎児への影響は?【産婦人科医監修】

手足口病というと子どものあいだで流行するだけではなく、大人にも感染するケースがまったくないわけではありません。妊娠初期や出産を控えた後期~臨月にかけては、妊婦さんにとっても気になる病気のひとつなのではないでしょうか。手足口病の症状や胎児への影響、治療法、予防法、ヘルパンギーナとの違いについて産婦人科医監修で解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 手足口病は妊婦にも感染する?
  2. 手足口病の症状
  3. 妊婦の手足口病の胎児への影響
  4. 妊娠中の手足口病の治療法
  5. ヘルパンギーナと手足口病の違い
  6. 妊婦にできる手足口病の予防法
  7. 妊婦の手足口病は心配しすぎず予防を徹底しよう
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手足口病は妊婦にも感染する?

手足口病は、ウイルス感染によって発症する感染症の一種です。コクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)といったウイルスに感染することにより、口の中や手足の水疱(すいほう)性湿疹や発熱といった症状があらわれます。夏に流行することが多いですが、秋から冬にかけてもみられる病気です。(※1)

手足口病というと、保育園や幼稚園での集団感染がニュースで話題にのぼることが多いのではないでしょうか。たしかに手足口病に感染するのは子どもがほとんどで、厚生労働省の感染症発生動向調査では例年報告者の約9割前後を5歳以下の乳幼児が占めています。

とはいえ、大人は絶対に感染しないというわけではありません。飛沫感染や接触感染、排せつ物からの感染などが考えられるため、小さな子どもがいる家庭では大人であってもまれにうつることがあります。妊娠中は抵抗力が低下しやすい時期であることから、二人目や三人目を妊娠中の妊婦さんは気をつけておきたいですね。

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手足口病の症状

手足口病の症状には個人差がありますが、子どもか大人か、妊婦さんかどうかで大きく変わるものではありません。代表的な症状や注意しておきたい合併症についてみていきましょう。

水疱性発疹

もっとも代表的な症状は、ウイルスに感染後、3~5日の潜伏期間を経てから口の中や手足にあらわれる2~3mmの水疱(すいほう)性の発疹です。多くはありませんが、肘やひざ、おしりに出るケースもみられます。口の中に粘膜の小さな欠損(=潰瘍)ができることもあるようです。

発熱

手足口病に感染する人の約3割に発熱がみられます。38℃以下の場合がほとんどで、高熱が出ることはめったにありません。発熱が長期間続くことも一般的にはなく、1日程度で落ち着くケースが多いようです。

合併症

手足口病は数日で自然に治る場合がほとんどですが、ごくまれに重症化することがあります。重症化すると髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症や、心筋炎、神経原性肺水腫(すいしゅ)、急性弛緩(しかん)性麻痺といった症状が出ることが考えられます。以下のような症状が出た場合には、すぐに病院に行きましょう。

・高熱
・発熱が2日以上続く
・嘔吐
・頭痛
・視線が合わない
・呼びかけに答えない
・呼吸が速くて息苦しい
・水分が取れず尿が出ない
・ぐったりとしている

手足口病の代表的な症状が出ていないにもかかわらず突然合併症が引き起こされるケースもあるため、手足口病がどうかわからなくても気になる症状があるときは早めに受診すると安心ですよ。病院に行く場合は、他の妊婦さんや新生児にうつしてしまうリスクがあるため、あらかじめ病院に連絡して指示を仰いでおくと良いでしょう。

妊婦の手足口病の胎児への影響

妊婦さんが手足口病にかかった場合、胎児に影響があるのではないかと気になる人もいるのではないでしょうか。母体の状態も胎児の成長も安定していない妊娠初期や、出産を直前に控えた妊娠後期・臨月の妊婦さんにおいては、なおさら気になるところかもしれません。

公益社団法人「日本産婦人科医会」によると、妊婦さんの手足病への感染は頻繁に起こることではないため、感染した場合について詳細かつ広範に分析された研究報告はありません。妊婦の手足口病が胎児異常につながるといった因果関係を医学的に証明した報告もないため、手足口病の胎児への影響はまだ解明されていないといえます。妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期、臨月といった妊娠の時期別の影響についても明らかにはわかっていません。

手足口病に感染しているケースにおいて、まれに流産や死産、胎児水腫の例などは報告されていますが、基本的には症状に応じた治療や経過観察をすれば十分で、その後に影響を与えることはほとんどないと考えられています。ただし、合併症を引き起こすなど重篤な状態になった場合には胎児への影響はないとは言い切れないため、心配しすぎず、安心しすぎず医師の判断に従うようにしてくださいね。

妊娠中の手足口病の治療法

手足口病には特別な治療方法がなく、特効薬があるわけでもありません。ワクチンの開発は中国を中心とするアジア諸国で進められていますが、実用化には至っていないのが現状です。

とはいえ、手足口病は症状が軽い場合が多いため、経過観察を行いながら自然に治まるのを待ったり、必要に応じて症状にあわせた治療を行ったりすればこと足りるケースがほとんどです。妊娠中は使用できない薬があるため、薬を使わずに安静にするか、妊婦さんでも服用できる薬を処方されるかのどちらかになるでしょう。かかりつけの産婦人科に相談すれば対応してくれる場合が多いですが、内科など別の病院を受診するときは必ず妊娠中である旨伝えてくださいね。

経過観察においては、合併症の兆候に十分に注意します。高熱や頭痛、嘔吐など、特徴的な症状がみられたときにはすぐに病院に行くことが大切です。生活面においては、水分補給を欠かさないように心がけましょう。経口補水液などを少量ずつ頻回に分けて飲むようにしてください。口の中に発疹がある場合は、食事においても工夫しましょう。うどんやおかゆ、煮物など、柔らかく薄味の食べ物を口にするのがおすすめですよ。

ヘルパンギーナと手足口病の違い

手足口病と同じく夏に乳幼児を中心に流行する病気のひとつに「ヘルパンギーナ」があります。発熱と水疱性の発疹が特徴であることから、手足口病と区別しにくいケースもあるかもしれません。どのように見分ければ良いのでしょうか。

ヘルパンギーナは急性のウイルス性咽頭炎で、いわゆる「夏風邪」の一種です。手足口病では38℃未満の熱が出ることが多いのに対し、ヘルパンギーナでは38℃~40℃の高熱が1日~3日間続きます。一方発疹については、手足口病では口の中だけでなく手足にもあらわれることがあるのに対し、ヘルパンギーナでは口の中の粘膜にしかあらわれません。このように2つの病気は体温と発疹の場所で区別することができます。

また、ヘルパンギーナでは高熱以外にも、全身倦怠感、食欲不振、のどの痛み、嘔吐、手足の痛みなどがみられることがあります。身体全体のさまざまな症状を確認することで、手足口病かヘルパンギーナかどうか検討をつけることができるかもしれませんね。いずれにしろ当てはまる症状があれば病院を受診し、正確な診断は医師に委ねましょう。

妊婦にできる手足口病の予防法

しっかり手洗い

手洗いを徹底することがもっとも簡単かつ有効な予防法です。手足口病は接触感染や飛沫感染によって広がるため、こうした基本的な風邪予防をしっかり行うことが手足口病の予防にもつながるのです。親子ともども手洗いを励行しましょう。

子どもが手足口病にかかっている場合は、排便後にはとくにしっかり手を洗うように伝えましょう。なお、手足口病の症状がなくなったあともしばらくはウイルスが体内におり、体液や便からウイルスに感染する可能性は否めません。子どもの手足口病が治ったあとも、数週間は注意してくださいね。

排せつ物の処理に気をつける

手足口病は排せつ物からの感染も多い病気です。子どもがまだ乳幼児の場合はおむつ替えなどで排せつ物を処理する機会があるかもしれませんが、できるだけ排せつ物に触れないように注意しましょう。

おむつ交換時にはマスクやビニールの手袋を使用する、外したおむつはすぐに新聞紙などに包んでビニール袋に入れ、家の外に用意したゴミ箱に捨てるなど、家の中にウイルスが広がらないように工夫をすると良いかもしれませんね。吐しゃ物の片付けについても同様のことがいえます。

タオルを分ける

家族全員でひとつのタオルを共有で使用しない、お風呂で一緒のお湯につからない、といったことも手足口病の対策になります。

保育園や幼稚園で夏に感染が拡大する原因のひとつとして、同じプールに入ることがあげられます。そうでなくても園内では子ども同士で頻繁に接触することに加え、共有で使用するものが多いため、いつの間にかウイルスが広まってしまうことになるのです。

家庭内でも同様に、共有物から感染することが考えられます。まったく接触しないのは不可能ですが、体液や便からのウイルスが直接付着しうるものはできるだけ分けるようにすると良いかもしれません。神経質になりすぎても逆にストレスになってしまうことがあるので、できる範囲で工夫してみてくださいね。

妊婦の手足口病は心配しすぎず予防を徹底しよう

妊婦さんが手足口病に感染する事例は決して多いわけではなく、たとえ感染したとしても自然と治まる場合がほとんどです。心配しすぎないでくださいね。

そうはいっても重症化するリスクがまったくないわけではなく、また手足口病の予防は風邪予防にもなります。健康管理のためにも、予防策を講じておいて損はないといえるでしょう。手足口病に感染している、あるいは感染して治ったばかりの子どもがいる家庭をはじめ、小さな子どもがいる家庭においては手洗いの励行など基本的な対策から始めてみてはいかがでしょうか。

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