【産婦人科医監修】妊婦の肩こりの症状と原因!対処法や予防法、注意点は?
妊娠中に「肩こり」で悩む妊婦は少なくありません。なかには頭痛や吐き気を伴うひどい肩こりに悩む方もいますが、妊娠中は薬の使用に制限があるため、薬に頼らない肩こり・首こりの解消法を見つけたい方も多いかもしれませんね。妊婦の肩こりの原因やマッサージ・ツボ・塗り薬などの対処法をアンケート結果や体験談とあわせて解説します。
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目次
妊婦は肩こりが起こりやすい?
妊娠中、妊婦の身体にはお腹(子宮)が大きくなる、つわりが起こる、血液量が増えるといったさまざまな変化が生じます。また、お腹の胎児の成長に伴い、めまい・便秘・腰痛などの不快な症状が現れることがあります。個人差はありますが、肩こりも妊娠中に感じる場合がある不快な要因のひとつです。妊娠前から肩こりに悩んでいた人は肩こりが悪化することもあるようです。
妊娠後期から臨月にかけて肩こりに悩むようになる妊婦は多いようです。理由としては、大きなお腹が原因で姿勢が悪くなったり血行不良になったりといったトラブルが多くなる時期であり、出産に向けて妊婦の身体がさまざまな部分で大きく変化することが影響している可能性があります。
一方で、肩こりは妊娠特有の身体の変化以外でも、心理的ストレスや病気が原因で症状が現れる場合もあるため、妊娠初期からつらい肩こりに悩む方もいます。
先輩ママに質問!妊娠中に肩こりを感じた・肩こりが悪化した?
ままのて調査隊調べ(有効回答数123)
妊婦になって肩こりになった、または肩こりが悪化したと答えた人は全体の約4割いました。約半分弱の方が経験した妊娠中の肩こりですが、肩こりが悪化するとなかには頭痛・吐き気といった症状を引き起こす場合もあるため、可能な限り放置せず対処していくことが大切でしょう。
妊娠中の肩こりに関連した諸症状
肩が痛い、重い、こわばっている
肩が重い、肩がこわばっている、肩に鈍痛があるといった感覚を総称して「肩がこっている」と呼ぶ人が多いのではないでしょうか。妊娠中の肩こりの症状は、筋肉疲労や血行不良など、さまざまな原因から引き起こされています。このため特定の病気を指すのではなく、肩の不快感の表現方法のひとつだと唱える人もいるようです。
首こりや背中の張りを伴う
身体の「こり」は肩こりがもっともポピュラーですが、首や腰、背中にこりを感じる人もいます。原因にもよりますが、肩こりとともに「首こり」を感じる妊婦もいます。
また妊娠をすると大きくなるお腹を支えるために姿勢が変化します。段々と重心が前方に移動することで骨盤や腰椎が前に傾く傾向があり、バランスを保つために背中の筋肉が張った状態になることがあるようです。
腕が上がりにくい
肩こりを感じる部位によっては、「腕が上がりにくい」と感じる人もいるようです。肩は肩甲骨を通じて腕や背中、脇、胸といった部位とつながっているため、肩や首の筋肉疲労は他の部位の可動に影響を与える場合があります。一方で肩とつながっている腕や背中の筋肉疲労が原因で肩こりが引き起こされていることもあります。
吐き気や頭痛、腰痛を伴う
肩こりが悪化すると、吐き気や頭痛をはじめ、腰痛・のぼせ・耳鳴り・発熱・眠れないといった症状を伴う場合があります。妊娠中はつわり・むくみなどさまざまな身体の不調を感じることが多いため、取り除くことができる症状は少しでも取り除いていきたいですね。
妊娠中の肩こりの原因
妊婦特有の身体の変化
肩こりは、筋肉の疲労や悪い姿勢が原因となっていることが多いといわれています。妊娠中はお腹が大きくなることで、身体の重心が前方に寄って姿勢が悪くなる、普段とは異なる筋肉の使い方をして疲れる場合があります。
また、お腹の胎児の発育のために貧血気味になる妊婦が多いです。貧血によって血液中の酸素が減少すると、血行不良が起こり、肩こりの原因のひとつになる場合があります。
ホルモンバランスの変化
妊娠中は、妊娠前と比べてホルモンバランスが大きく変化します。妊娠維持のために必要な身体の変化ですが、ホルモンバランスの乱れは自律神経に影響を与え、筋肉の緊張を高めたり血管が収縮したりして、肩こりを助長することがあります。
ストレスや不安といった心理的要因
妊娠は身体・心だけでなく、環境や人間関係などにも変化をもたらす場合があります。仕事をしている方であれば産休・育休中の仕事の引き継ぎ、第一子の妊娠の場合には母親という社会的役割に対しての責任など、出産に向けてさまざまな問題に直面する機会が多く、不安やストレスを抱え込むことが多いといわれています。
こうしたストレスは筋肉に過度な緊張を引き起こし、妊娠中の肩こりの原因となります。また、心理社会的ストレスが原因の心身症により、肩こりを訴えるケースは少なくないと報告されています。
寝るときの姿勢の変化
ひどいつわりが続いて横になる日が続いている妊婦や切迫流産・早産などで入院になり寝たきりになっている妊婦が肩こり・首こりに悩むこともあります。妊娠によってお腹が大きくなることで、仰向けで寝られなくなったなど寝方が変わったり、枕が合わなかったりすることが原因である場合があります。
寝起きの状態でも肩こりが気になっていた人でも、寝方を変えるだけで肩こりが解消する人はいるようです。妊婦の寝るときの姿勢としてはシムス位(シムス体位)と呼ばれる、身体の左側を下にして横向きに寝る方法がおすすめです。
目の疲れ、病気などその他の要因
肩こりは目の疲れや寒さ、病気などさまざまな原因で生じることがあります。妊娠中の肩こりの大半は即座に胎児や母体への影響が出るものではないといわれています。
しかし、肩こりの原因を見極めるのは非常に難しいため、あまりにもひどい肩こりが続く場合には念のため病院に相談しましょう。右だけ肩が重いといった片側のみの肩こりは顎や肩の局所的な疾患の可能性があります。
先輩ママに質問!いつごろ肩こりが治った?
mままのて調査隊調べ(有効回答数49)
妊娠中の肩こりがいつごろ治ったのかを調査したところ、「産後に治った」という人が全体の約6割を占めていました。産後に治るということは、妊婦の肩こりは妊娠中特有のものである可能性が高いといえるでしょう。
ただ、期間限定とはいえつらい症状が続くのはあまり気分が良いものではないでしょう。自分にあう対処法を見つけて妊娠期を過ごしたいですね。
妊娠中の肩こりの対処法
ストレッチ、体操、ヨガなどで身体を動かす
肩こりの原因のひとつとして筋肉の緊張、血行不良などがあげられます。妊娠中は安静を指示されることも多いですが、出産に向けた体力作りや妊娠中毒症などの予防として適度な運動は効果が期待できるとされています。
妊娠中に肩こりが気になる場合には、肩甲骨を意識的に動かしても良いかもしれません。ただし、運動をはじめる前に必ず医師に相談してから専門家の指導の下で安全に行いましょう。
妊娠中の肩こりの解消法として運動を取り入れる際には、マタニティヨガやウォーキング、マタニティスイミングなど、妊婦さんに向いている運動がおすすめです。
妊娠中だと思い切った運動はなかなかできないため、自宅でできるストレッチをしました。椅子に座ったまま、両腕を上げて、ゆっくり左右に倒れてみるとか、肩甲骨を開くようなイメージで猫背になってみるなど、普段伸ばさない筋を伸ばしていました。また、昔から父がお世話になっている整体の先生から「肩凝りは指先の凝りも影響する」というお話を伺ったので、手を握ったり大きく開いてみたり、考えつく限り、あちこち伸ばしてみました。
(chiruru/出産当時26歳)
妊娠すると身体がだるかったり、重くなり思うように動かなくなって肩こりがひどくなっていきました。肩甲骨を回すイメージで腕をグルグルと回したり、肩甲骨を伸ばす感じで猫のポーズをするなど、肩こりに効くストレッチ運動をしていました。妊婦の私でも身体が伸びるととても気持ちよくなりました。
(みれい/出産当時27歳)
仕事の合間を見て、軽いストレッチや、ランチをかねて少し歩いてみたりして毎日こまめに意識をして血流を良くする努力をしていました。帰宅後は、お風呂にのんびり浸かったり、妊婦用のヨガ、ストレッチDVDなどを見ながらのんびりと身体をほぐすような運動をしていました。体を温めることで、随分と良くなったように思います。
(きんぐ/出産当時36歳)
整体、マッサージ、ツボ、鍼灸などの専門店を利用する
整体、接骨院、マッサージ、ツボに鍼灸、カイロプラティック、低周波にリラクゼーションなど身体のリフレッシュや癒やしを目的とした専門店が街中には多く存在します。なかには妊婦でも利用可能なサービスもあり、身体の不調の緩和やリラックス効果を得るため専門店を利用するという妊婦もいます。
ただし、専門店を利用する際には必ず妊娠中であることを告げ、妊婦でも利用可能かどうかを確認しましょう。あん摩マッサージ指圧や柔道整復については法的な資格制度がありますが、他のサービスにおいては法的な資格制度がなく、医療類似行為による骨折や症状の悪化などのトラブルが増えているようです。
対象のすべてのサービスに問題があるわけではありませんが、不明点・不安点がある場合には病院に相談してからサービスを利用しましょう。
「もともと肩こりはありましたが妊娠をきっかけに血行が悪くなってしまい末端冷え性も強くなっていました。まずいと思い整骨院にお世話になっていました。時間にしたら15分から20分で短めでしたが妊娠前と違い横を向いての施術をしていただきました。」
(カーズ/出産当時30歳)
患部を温める
血行不良が原因の肩こりの場合には、該当の部位を温めて症状の緩和を目指す方法を活用する人も多いでしょう。妊婦の場合でも、肩を温めるだけであれば気軽に試すことができる点が良いですね。
肩の温め方としては、お風呂に浸かる・温湿布やカイロなどを利用するといった方法が手軽で人気があります。お風呂はゆっくりと湯船に浸かることでリラックス効果にも期待ができます。
カイロなどの市販グッズを利用する際には、温度の刺激によって思わぬ副作用が出ることがあるため、あらかじめ妊婦にも使用できる商品かどうか注意書きをきちんと確認しましょう。異変を感じたら使用を中止し、医師に相談してくださいね。
「秋〜冬にかけ寒くなると身体に力が入っていまい、ひどくなることが増えました。そんなときはホッカイロなどを肩に貼ったりすることで、多少マシになりました。」
(きんぐ/出産当時36歳)
蒸気を含んだ温熱で患部を温め、血のめぐりを良くしていく温熱シートです。40度の快適温度が5~8時間持続し、人の手であたためられているような心地良さが続きます。
肩こり解消グッズを試す
肩こり解消に効果が期待できるグッズに頼るという方法を試すという対処方法があります。さまざまなマッサージ機や磁気が使用されているネックレスなどが販売されていますが、商品によっては妊娠中の使用を推奨していないものもあるため、使用する際にはあらかじめ確認しましょう。
磁気の力で血管を拡張し、血行を良くする医療器具です。ばんそうこうのように貼るだけで良く手軽に使用できます。妊娠初期の不安定期や出産直後の使用は医師に相談してください。
従来の製品に比べ重さが半分になった磁気ネックレスです。軽くて細く、ファッションの邪魔になりにくいデザインです。妊娠初期の不安定期または出産直後の方は使用する前に医師に相談してください。
置き場所に困らないコンパクトサイズのルルドクッションは、もみ玉が回転しながら患部をマッサージします。ルルドシリーズには、ヒーターで温める機能が付いたタイプのクッションもあります。
市販の塗り薬、貼り薬、湿布
肩こりや筋肉痛などに効果が期待できる塗り薬、貼り薬で筋肉疲労の緩和を目指す妊婦もいます。手軽な肩こり改善法として根強い人気がある方法ですが、妊娠中の肩こりに市販薬を使用する際には注意が必要です。
市販の湿布や塗り薬になどに含まれている場合がある「インドメタシン」「フェルビナク」という成分は妊婦への使用はできません。他にも市販薬に含まれている成分の中には、妊婦や胎児への影響が懸念されているものがあります。
妊娠中は飲み薬のみならず、塗り薬・貼り薬にも注意し、市販のものを使用する際には医師に事前に相談しましょう。不安がある場合には、医師に相談の上で適切な薬を処方してもらう方が良いかもしれません。
有効成分が深く浸透、肩こりや筋肉疲労に効果を実感できます。しなやかな貼り心地でつっぱり感がなく、妊娠中の敏感な肌でも負担を感じにくいでしょう。
ロイヒツボ膏は直径2.8cmのパッチタイプの張り薬です。トウガラシ成分に似たノニル酸ワニリルアミドによる温感の刺激で患部の血行を促進します。妊娠中、授乳中も使用できますが、心配な場合は枚数を貼る減らすなどして使用してください。ロキソプロフェン配合タイプは妊娠中の使用は避けましょう。
消炎成分や血行促進成分を配合し、肩こりなどの症状にはたらきかけます。無臭性なので湿布のにおいが苦手な妊婦さんや見た目が気になる妊婦さんにおすすめです。
4.2×6.5cmとカードサイズよりも小さく、薄手で目立ちにくいタイプの貼り薬です。角が丸くカットされているため、服などにすれてもはがれにくい仕様です。
産婦人科、整形外科など病院に相談
市販のグッズや塗り薬、湿布などには妊婦に使用できない成分などが入っているケースがあり、使用する際には注意が必要です。病院で医師に相談し、妊婦でも使用できる薬や湿布を処方してもらうことが、肩こりの改善方法としては一番安全かもしれません。
一般的には肩こりの場合には整形外科を受診しますが、妊婦の場合は妊娠の経過や出産に関わる病気の可能性がないかを調べてもらうために産婦人科へ相談するのも良いでしょう。
一般的な肩こりではモーラステープ、ロキソニンテープ、カロナールなどが処方されるケースがありますが、妊婦の場合には症状に応じて妊婦でも使用できる漢方薬などが処方されることもあります。
「お腹が大きくなったころ、ちょうど寒い季節だったのでお風呂に長くつかるようにしました。それでもまだ肩が重いとか、痛いときには夫に肩から背中までできる範囲でマッサージをしてもらいました。肩こりが酷くなって、頭がたまらなく痛くなってきたときは、通っていた産婦人科で症状を伝え、妊婦でも飲める漢方のお薬を処方していただきました。」
(なる/出産当時32歳)
普段から肩こり予防に努める
妊娠中の肩こり対処法として、普段から肩こりの原因になりそうなものを回避し、予防に努めるという方法があります。一般的な肩こりの原因である目の疲れ、疲労、正しい姿勢などから始めると良いかもしれません。
妊娠中は身体の変化をかばうために、無意識のうちに猫背になったり、のけぞった姿勢になったりする人もいます。気がついたときだけでも、背筋を伸ばして正しい姿勢を心がけましょう。妊婦のなかには目が疲れやすくなったと感じる人もいるため、暗いところでの読書やパソコン・スマートフォンの長時間の使用は避けましょう。無理をせず、意識的に休息をとったり、入浴やストレッチなどで気分転換したりして疲労をためないようにすることも大切です。
妊娠中の肩こりの注意点
妊娠中の肩こりで特に意識的に注意したいのが、「ただの肩こりといって軽視しない」「妊婦には使えないグッズ・薬・湿布などがある」という2点です。ただの肩こりだと思って無理してしまう方もいますが、妊娠高血圧症などが原因で肩こりが引き起こされている可能性があります。少しでも違和感があったり、気になることがあったりする場合には、妊婦健診などの際に医師に相談してくださいね。
また、市販の肩こり解消グッズや薬・湿布などは気軽に購入することができるため、つい試してみたくなるものですが、妊娠中という特殊な状況下であることを忘れずに、お腹の赤ちゃんや妊婦自身を守るためにも取扱説明書の確認などは怠らないようにしましょう。疑問や不安があれば、医師に相談してから使用しましょう。
妊娠中の肩こりに関する体験談
筆者は妊娠前からひどい肩こりに悩んでいましたが、妊娠後に悪化しました。筆者が行っていた妊娠中の肩こり解消法は「患部を温めること」と「ストレッチなどでこりをほぐすこと」です。
肩をぐるぐる回す・首を左右前後に倒すというかんたんな動作ではありますが、とても気持ち良く感じました。また、少し時間に余裕があるときにはホットタオルを肩・首・眼に当てるようにしていました。思いついたときにいつでも気軽にできる肩こり対処方法を見つけておくと良いかもしれませんね。
妊娠中の肩こりは我慢せず、積極的に対処しよう
肩こりは肩が重くなる・痛くなるだけでなく、めまい・頭痛・腕が上がりづらくなるなど他の症状を引き起こす原因になることがあります。妊娠による身体の変化で、妊婦はさまざまな不調に悩むことがありますが、肩こりも軽んじずに早めに相談・対処していくことが大切でしょう。
妊娠中だけでなく、出産後には育児やストレスで肩こりが生じるケースもあります。出産後にも試せるような自分にあった対処法を見つけておくと良いかもしれません。
※この記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。