妊婦の膀胱炎対策!妊娠初期では流産につながる?薬を飲んでも大丈夫?
妊娠初期や妊娠中は身体にさまざまな変化が起こり、膀胱炎になりやすくなります。膀胱炎にかかると、頻尿や排尿痛がみられます。ほかにはどのような症状が出るのでしょうか。薬を飲んでも妊娠に影響はないのでしょうか。放置すると悪化する可能性もある膀胱炎の、適切な対処法と予防策を探ります。
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目次
膀胱炎とは?
細菌による尿路感染症の一種
膀胱炎には細菌感染によるもの、尿路に異物が混入したもの、筋肉の萎縮によるものなど、いくつかの種類があります。このうち、腎臓から尿道口までの尿の通り道が細菌に感染して炎症を起こした状態を単純性膀胱炎または尿路感染症といいます。尿路感染症の炎症は腎臓や膀胱でみられますが、膀胱で炎症が起こったものが膀胱炎です。
膀胱炎は、尿道が短い女性がかかりやすい病気です。通常は尿道口から感染し、次第に上行感染することで広がっていきます。ストレスや疲れなどで身体の免疫力が低下すると発症しやすく、排尿時の痛みや頻尿などが症状としてあらわれます。
妊娠中にかかりやすい
妊娠中はホルモンの影響や大きくなる子宮の圧迫を受け、膀胱炎を発症しやすくなります。膀胱炎を合併する割合は、妊婦全体の1~2%です。また、自覚する症状がないまま尿中に細菌が認められる無症候性細菌尿(むしょうこうせいさいきんにょう)となるケースもみられます。
妊娠中は、無症候性細菌尿から膀胱炎のさらに上にある腎臓が炎症を起こす腎盂腎炎(じんうじんえん)を引き起こしやすくなるため、注意が必要です。
生理前の膀胱炎は妊娠初期症状?
妊娠初期は頻尿になりやすい
妊娠を機に分泌量が増加するプロゲステロンは、尿路に関連する筋肉を弛緩させます。膀胱の張りが弱くなると、残尿感が残ったり、膀胱から尿管、腎臓へと尿が戻ってしまう膀胱尿管逆流現象を起こしやすくなったりします。
また、妊娠による循環機能の変化が腎臓の腫れや尿管の拡張を引き起こすことも知られています。こうした身体に起こるさまざま生理的変化は、尿意を感じやすくします。頻尿の定義は、朝起きてから寝るまでの1日にのあいだに8回以上排尿があることが目安ですが、排尿回数には個人差があり、自分で回数が多いと感じるときは頻尿です。
妊娠初期症状の頻尿と膀胱炎を見分けよう
妊娠初期に頻尿の傾向があっても、原因は必ずしも細菌感染によるものとは限りません。もしも頻尿の症状が出たときは、細菌感染にともなう膀胱炎なのか、身体の生理的な変化による頻尿なのか見極める必要があります。
残尿感や排尿痛があったり尿が白く濁っていたりすると、膀胱炎が疑われます。トイレに行く回数が増えたと感じたら、尿の様子をしっかりとチェックしてください。過去に膀胱炎にかかったことがあると、膀胱炎を繰り返すケースがみられます。心配な症状があるときはかかりつけの産科医に相談するか、泌尿器科を受診しましょう。
妊婦が膀胱炎になりやすいのはなぜ?
免疫力の低下
妊娠初期は不眠やさまざまな体調不良が起こりやすく、疲れやストレスもたまりやすいものです。ホルモンバランスも大きく変化するため、免疫力が低下しやすい状態です。そのため、通常は膀胱の免疫で排除していた細菌を退治できず、感染を起こして膀胱炎になってしまいます。
おりものの増加
妊娠初期はホルモンのバランスが急激に変化します。エストロゲンも多く分泌されるようになり、おりものの量が増加します。増えたおりものをしっかりケアしないと外陰部が不潔になりやすく、細菌感染を引き起こす可能性が高まります。
子宮による膀胱の圧迫
妊娠4ヶ月以降になると、大きくなってきた子宮が膀胱を圧迫し始めます。膀胱が圧迫されると、一度にためられる量がいつもよりも少なくなります。そのため、妊娠前と比べて尿意を感じやすくなるのです。
1日に行くトイレの回数が増えると、不快だったり生活の妨げになったりするため、どうしても尿意を我慢するようになりがちです。少しの我慢は問題ありませんが、我慢のしすぎは膀胱炎の原因となります。トイレに行きたくなったら我慢しすぎないようにしましょう。
妊娠中の膀胱炎の症状は?
頻尿
膀胱炎による頻尿では、1時間のうちに2回、3回と尿意を感じます。多いときには5分、10分おきにトイレに行きたくなるほどです。通常の排尿よりも量が少なく、残尿感にともなって尿意を感じるときもあります。
血尿
炎症によって膀胱の粘膜が傷つき、尿が目に見えて赤くなる血尿が出ることがあります。これを出血性膀胱炎と呼びます。出血性膀胱炎はウイルス感染によるものが多いことが特徴ですが、細菌感染でもみられます。
出血性膀胱炎は薬剤の副作用だったり、悪性腫瘍が原因だったりする可能性も考えられます。血尿が出たら放置せず、早めに医師に相談しましょう。
排尿痛
炎症の影響で、排尿が終わるころから排尿後に強い痛みが出ます。炎症が強いと、尿道口や膀胱付近に焼け付くようなツーンとした刺激のある痛みが出て、トイレに行くのが憂うつになることもあるほどです。
しかし、痛みを避けるために排尿を我慢すると、さらに膀胱炎が悪化してしまいます。細菌を体外に排出するためにも、痛みを乗り切るようにしましょう。
残尿感
膀胱炎になると、おしっこを出しても出してもいつまでも膀胱に尿がたまっているような感覚に悩まされます。排尿後に残尿感があっても実際に膀胱に尿が残っているわけではありませんが、排尿してもすっきりせず、何度もトイレに行きたくなる原因にもなります。
腹痛
膀胱炎でみられる下腹部痛は、排尿時に限定される場合や常に鈍痛がある場合、違和感を覚える程度など、痛むタイミングや程度に個人差があるのが特徴です。痛みとともに頻尿や残尿感などの膀胱炎と思える症状を放置していると、痛みが強くなることもあるので、早めの対処が重要です。
発熱
膀胱炎の症状とあわせ、発熱があったときは注意が必要です。発熱が生じた場合、感染が腎臓へ広がり、腎盂腎炎(じんうじんえん)を併発している可能性が考えられるためです。腎盂腎炎になると、悪寒や高熱の急激な症状があらわれます。腰やわき腹の痛みを伴う場合は早急に医療機関を受診してください。
長期間放置すると流産・早産につながる可能性
膀胱炎の治療を施さないまま長期間放置し腎盂腎炎に発展すると、炎症が全身にあらわれ、子宮の収縮が起こることがあります。また、菌の感染が卵膜におよぶことで破水が起こるおそれもあります。流産や早産につながる可能性があるため、膀胱炎では早期の治療が欠かせません。
妊婦は膀胱炎で薬を飲んでも大丈夫?
膀胱炎の80~90%は大腸菌が原因で起こります。そのため、治療には抗生物質が用いられるのが一般的です。抗生物質は種類がたくさんありますが、耐性菌や胎児への影響を考え、どの種類の抗生物質を投与するかは慎重な判断が求められます。また、薬を使用する期間はできるだけ短期間が望ましいとされています。
通常はセフェム系の抗菌薬を1日3回、5日間~7日間服用する処方が推奨されます。また、使用を避けるべき治療薬もあります。日本化学療法学会が定めたガイドラインでは、妊娠初期はニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、トリメトプリムの使用を避け、妊娠後期ではサルファ剤の処方を避けるとされています。
使用する薬剤に対して不安があるときは、どのような薬が使われているのか医師にしっかり確認することが安心につながります。また、残尿感や排尿痛への効果をうたった市販薬が販売されていますが、妊娠中の使用については医師や薬剤師、登録販売者に相談してください。
妊娠中の膀胱炎の対処法・予防法
症状に気づいたら病院へ
頻尿や残尿感など気になる症状があるときは、自己判断せずに病院で診断を受けましょう。尿検査で簡単に調べることができます。基本的には抗生物質での治療が行われますが、症状が重いと入院措置が取られます。また、一般妊婦健診で尿中に細菌が認められるケースもあり、症状がなくても治療が行われることがあります。
水分を摂取する
膀胱炎にかかったら、菌を体外に排出するためこまめな水分摂取を心がけましょう。普段からトイレの回数が1日数回と少ない人は、積極的な水分補給が大切です。
デリケートゾーンを清潔に保つ
妊娠初期に増えるおりもの対策として使用するおりものシートやナプキンは、細菌の温床となりやすいものです。清潔を保つために、こまめに取り替えましょう。パートナーと性交があった場合は、シャワーで洗い流すことも予防につながります。
排便後は前から後ろに拭き取るようにし、肛門付近の大腸菌が尿道口に付着するリスクを減らしましょう。
免疫力を高める
細菌に負けない身体づくりは、重要な予防方法のひとつです。バランスの良い食事をとり、質の良い睡眠をとることが免疫力の向上につながります。
身体を冷やさない
身体を冷やすと血行が滞り、膀胱や周辺臓器の機能が低下しやすいものです。お腹や腰まわりを冷やさないようにしましょう。水分を摂取する際は、冷たい飲み物は避けたいものです。温かい飲み物か常温のものを用意し、身体を冷やさないように注意してください。
休息をとる
疲れやストレスは、ホルモンバランスを乱します。ホルモンの乱れは睡眠不足にもつながるので、疲労をためないように気をつけてください。日中に15分ほど休息をとることで、リフレッシュにつながりますよ。
妊娠初期の膀胱炎は適切な処置で乗り切ろう
膀胱と子宮は近くにあるため、赤ちゃんに影響がないかとても気になりますね。しかし、膀胱炎になっても、問題なく妊娠を継続している妊婦はたくさんいます。膀胱炎対策は、安定した妊娠にもつながるものです。膀胱炎の症状がみられても不安になりすぎず、医師に相談しながら適切に対応していきましょう。