【小児科医監修】赤ちゃんもインフルエンザになる?予防接種は何歳から?子どもがかかったときの対処法

生後間もない赤ちゃんはママからもらった免疫があるため、感染症にはかかりにくいと一般的には言われています。しかしインフルエンザの流行シーズンに生後6ヶ月以内の赤ちゃんでもインフルエンザに感染してしまうケースがあります。ここでは乳児のインフルエンザの症状、合併症、予防対策について小児科医監修で解説します。

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この記事の監修

染谷 朋之介
小児科医
染谷 朋之介

目次

  1. 赤ちゃんのインフルエンザの症状
  2. 赤ちゃんのインフルエンザの診断はどうやってする?
  3. インフルエンザで赤ちゃんに薬を飲ませても良い?
  4. インフルエンザのときの赤ちゃんの食事と水分補給
  5. 気を付けたい赤ちゃんのインフルエンザの合併症
  6. インフルエンザのときは体温調整と室内の湿度に気を配ろう
  7. 赤ちゃんもインフルエンザの予防接種は受けられる?
  8. 赤ちゃんのインフルエンザの感染予防は?
  9. インフルエンザで保育園はいつから行ける?おでかけは?
  10. インフルエンザの流行時期は?
  11. 赤ちゃんのために自分の体調管理をしっかりと
  12. ままのてチャンネル
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赤ちゃんのインフルエンザの症状

インフルエンザを発症すると発熱、咳、鼻水、のどの痛み、頭痛といった風邪に似た症状に加え、38℃以上の高熱や強い関節痛、倦怠感におそわれます。

赤ちゃんがインフルエンザにかかった場合も同様の症状が出ますが、言葉が話せないうちは発熱や機嫌の悪さ以外に親が気づいてあげられることがないため、注意深く様子を見ることが大切といえるでしょう。赤ちゃんはもともとの体温が高く、免疫力が弱いためにインフルエンザ感染によって発熱が40℃を超えることもあります。高熱のほかにも、呼吸や動悸が速い、食欲がない、下痢嘔吐、眠りが浅くぐずぐず泣き続ける、という症状がでるでしょう。

また、ママからもらった免疫があるから大丈夫と思われがちな新生児でもインフルエンザにかかったという例があります。新生児がインフルエンザにかかると重症化しやすく、投与できる薬も限られています。赤ちゃんは熱性けいれんを起こすこともありますので、インフルエンザの流行シーズンに38℃以上の発熱がある場合には早めの受診をおすすめします。

発熱の時間帯や赤ちゃんの様子などをメモに取って受診の際にわかりやすく時系列で説明できるようにしましょう。周りにインフルエンザを発症した人がいた場合も医師に説明できるようにしておきましょう。夜間など受診に迷いのあるときは、小児救急電話相談(♯8000)に相談してみるのも良いでしょう。

赤ちゃんのインフルエンザの診断はどうやってする?

子どものインフルエンザの検査は、大人と同じように鼻の穴から鼻水を採取しておこなわれます。一般的なインフルエンザの検査では、正しい検査結果を出すために発症から12時間以上48時間以内に実施するのが好ましいとされています。(なかには高感度迅速検査機という、発症から6時間~8時間程度で検査結果の出る機械で検査を行ってくれる医療機関もあります。)

診察の際には、熱の出始めやぐずり始めなど発症したと思われる時間、発症からどのくらい時間がたっているかわからないという場合には、その旨を正直に医師に伝えましょう。

また高熱が出た後に一度平熱になり、半日ほどでまた高熱が出るという二峰性(にほうせい)発熱という症状がみられることがあります。一度熱が下がってもまた上がった場合は初めに熱がでたときの状況も医師に伝えてくださいね。

インフルエンザで赤ちゃんに薬を飲ませても良い?

1歳未満の赤ちゃんが抗インフルエンザ薬を服用することについては、小児科医のなかでも見解が分かれるようです。リレンザやイナビルといった子どものインフルエンザの際に処方される吸入薬は、赤ちゃんには適しません。

赤ちゃんにタミフルは飲ませられるの?

現在、1歳未満の新生児・乳児に対し、タミフル投与に関する安全性のデータが蓄積されてきており、タミフルの投与が可能であるとされています。(保険適用日:2016年11月24日、薬事承認日:2017年3月24日)

しかし小児用の抗インフルエンザ薬としてよく知られるタミフルドライシロップの添付文書に「低出生体重児又は2週齢未満の新生児、腎機能障害を有する小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と明記されています。(※1)

タミフルカプセルの添付文書にも「1歳未満の患児(低出生体重児、新生児、乳児)腎機能障害を有する小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と記されているため医師によっては0歳代の赤ちゃんへの処方は行わないと決めていることもあります。(※2)

赤ちゃんが1歳前後でタミフルを処方されなかった場合や赤ちゃんの症状がなかなか回復しない場合、本当にタミフルを飲まなくて大丈夫かしら…と気になる保護者もいるでしょう。納得できるまで医師に質問し説明を受けるようにしましょう。ほかにもかかりつけ医がいる場合は、そちらにも聞いてみるというのもひとつの手です。

ただし、タミフルは発症から48時間以上たってからの服用では効果がうすいという研究結果があります。セカンドオピニオンを求めるときには発症より48時間以内にした方が良いでしょう。

解熱剤は使用しても良い?

赤ちゃんが急な高熱を出すとあわててしまいますよね。できることはしてあげたい、と思ってしまうのが親心ですが、赤ちゃんがインフルエンザを発症しているかもしれないのであれば、自己判断で解熱剤などを使い無理に熱を下げようとすることは危険なことかもしれません。

インフルエンザにかかっているときに解熱剤を使うと、薬の種類によっては脳症などの合併症をおこす可能性があるといわれています。少量でも自己判断で使用することはやめておいたほうが良いでしょう。

赤ちゃんがインフルエンザの流行時期に高熱を出したときは頭や脇の下などを冷やして、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。解熱剤を使用するときには、インフルエンザにかかっていても安心して使えるものを医師に処方してもらうと良いでしょう。

タミフル・解熱剤以外の薬も処方されるの?

インフルエンザに赤ちゃんがかかると、タミフルが処方されない場合でも、鼻水、咳に対処できる薬が処方されるでしょう。医師の指導をよく聞いて服用させるようにしてください。

赤ちゃんや子どもの薬は飲みやすいよう甘い味つけがされていることがほとんどです。それでもにおいや口の中の感触に異変を感じて吐き出してしまう赤ちゃんもいるでしょう。多くの薬局や医療機関では赤ちゃんが薬を上手に飲めるようにアドバイスをしてくれるので、気になることがあれば遠慮なく聞いてみてくださいね。

インフルエンザのときの赤ちゃんの食事と水分補給

赤ちゃんや子どもがインフルエンザにかかると、下痢などの消化器症状が出現することがありなす。汗をたくさんかくこともあり、脱水症状にならないよう、水分補給はこまめにしてあげてくださいね。

授乳している場合

おっぱいやミルクを飲む力が弱まったり、あまり飲みたがらなかったりすることもあるかもしれませんが、授乳間隔などにこだわらず、飲めそうなときに与えるようにしましょう。嫌がる場合は、常温の水や赤ちゃん用のイオン飲料などもおすすめですよ。

離乳食を食べている場合

赤ちゃんが下痢や嘔吐を繰り返す場合は、水分がとれていれば無理に食事をとらせなくても大丈夫といわれています。生後5ヶ月~6ヶ月くらいの乳児なら離乳食をはじめていることが多いかもしれませんが、インフルエンザにかかっている期間は無理に離乳を進めなくても大丈夫です。

すでに離乳食が中期~後期に差し掛かっているような赤ちゃんが食事をとりたがるという場合は、普段の離乳食より軟らかめにした消化の良いものをあげましょう。

気を付けたい赤ちゃんのインフルエンザの合併症

乳児は免疫力やウイルス感染したときの抵抗力が弱いため、インフルエンザを発症すると合併症を引き起こすことがあります。赤ちゃんは、言葉や動きで伝えることが十分にできないため、パパやママも合併症に気付いてあげられるか不安ですよね。下記に合併症の症状と受診の目安を紹介していますが、判断がつかない場合には小児救急電話相談(#8000)に電話をして指示を仰ぐと良いでしょう。

インフルエンザ脳症

乳幼児が発症することもあるインフルエンザの合併症のひとつがインフルエンザ脳症です。一種の自己免疫疾患で、身体の自己防衛作用が過剰に反応し、かえって脳を傷つけてしまうという病気です。発熱から24時間以内に発症することが多いため、インフルエンザ検査の結果が出る前に発症することもあります。

意識障害(ボーっとする、目の焦点が合わない、呼びかけに反応しない)、異常行動(何かを怖がる、目の前にいるのにママを探す)などの症状が現れ、なかには激しい嘔吐をくりかえすケースもあるようです。そのあとに痙攣が出た場合には、すぐに医師の診察を受けましょう。10分以上の痙攣が続く場合は、躊躇せず救急車を呼んで病院に行くようにしましょう。

インフルエンザ脳症は、一見高熱にうなされているように見えますが、悪化すると後遺症がのこったり、死に至ったりするケースもあります。赤ちゃんの場合、ママから見ていつもと様子が違うと少しでも感じるようなことがあれば、嘔吐や痙攣がなくても早めに受診をしてくださいね。

熱性けいれん

熱性けいれんはインフルエンザでなくとも、38℃以上の熱が出た乳幼児10人のうち1人が発症するといわれています。特に1歳前後~2歳の乳幼児の発症率が高く、注意が必要でしょう。

熱の出始めから24時間以内におこることが多く、2~3分で収まることがほとんどのようです。白目をむいて手足を突っ張らせ、びくびくとなるような痙攣もありますが、赤ちゃんの場合眠っているときに痙攣が起こる場合もあり、びくびくっと顔が震えるような程度のこともあるようです。それでも何度も繰り返すようだったり、いつもと様子が違うと感じたりする場合には早めに病院を受診しましょう。

痙攣のような震えが10分以上続くときは速やかに救急車を呼びましょう。受診や救急車を呼ぶ際には、インフルエンザ脳症発症の疑いもないかを振り返って、その可能性も含め病状を説明するようにしましょう。

肺炎

肺炎はインフルエンザの合併症のなかでもかかりやすい病気のひとつです。乳児は肺炎を起こすと数時間で重症化してしまうこともあるため注意が必要です。

痰が絡み身体が大きく揺れるほどの咳を繰り返す場合や息苦しそうな様子の場合はすぐに受診をしましょう。大きな咳が出ているときは身体を横にしていると呼吸がしづらい場合があります。無理のない程度に上体を起こしたり縦向きに抱っこをしたりして、呼吸がしやすいよう工夫をしてあげてください。

中耳炎

インフルエンザの高熱が出た後に中耳炎を発症する乳児も多いようです。耳に触れると痛がる、耳を引っ張ろうとする、耳から変なにおいがする、という場合は急性中耳炎の可能性があります。

インフルエンザのときは体温調整と室内の湿度に気を配ろう

赤ちゃんが熱の出だしで震えているときはいつもより1枚厚着をさせて毛布などで温めてあげましょう。熱があがりきったら、ほかの高熱の出る病気のときと同じように、少し薄着にして、脇の下や頭、股関節は冷やし、身体全体は毛布などで温めてあげると良いでしょう。

室内は20℃以上25℃以内に保ち、湿度も50%~60%以内に保つようにしましょう。この温度と湿度は赤ちゃんが過ごしやすい目安でもありますが、ウイルスの繁殖を抑える効果もあります。赤ちゃんのお世話をする大人は二次感染の可能性が高いので、少しでもリスクを減らすためにも室温、湿度には配慮しましょう。

赤ちゃんもインフルエンザの予防接種は受けられる?

赤ちゃんは生後6ヵ月以降になるまで、インフルエンザの予防接種ができません。予防接種については賛否が分かれるところですが、ワクチンを接種することで少なからず合併症などの重症化を防ぐ効果はあるようです。

短い期間に2~4週間あけて2回接種をするため、注射のスケジュールが詰まっている場合や、体調のすぐれない日が続いた場合などはなかなか予防接種のタイミングが見つからないかもしれません。予防接種によって発熱、湿疹などの副作用もあり得るので、かかりつけ医によく相談して接種するかどうかを決めると良いでしょう。

また、24/25シーズンからは2023年に日本国内で承認された経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト」の接種が開始されますが、フルミストは2歳~18歳が対象となり、1歳以下の赤ちゃんはフルミストを接種できません。

これは、2歳未満で入院や喘鳴のリスクが上がったという報告があるためです。また、フルミストの接種後に飛沫や接触による水平伝播の可能性があり、妊婦や授乳中のママ、免疫不全の方がいる家庭では、フルミストの接種を避けたほうが良いとされています。

赤ちゃんのインフルエンザの感染予防は?

手洗い・うがい

インフルエンザの予防に一番効果的なのは、手洗いうがいだといわれています。しかし、赤ちゃんにうがいをさせるのはむずかしいですよね。ママやパパ、家族が帰宅した際には必ずうがいをしましょう。気休めかもしれませんが、ママやパパが手洗い後、赤ちゃんのうがいの代わりに脱脂綿などで口の周りを優しく拭いてあげるとさっぱりしますし、口内に入るウイルスを少し防げるかもしれません。

手洗いは石鹸を使って手首や爪もよく洗いましょう。その際に、赤ちゃんの手も泡で包むように洗ってあげてください。赤ちゃんの手は皮膚が弱く、石けんは大人用と赤ちゃん用で分けたほうが良い場合もあります。泡はよく洗い流し清潔なタオルでふき取りましょう。

室内の温度・湿度調節をする

人が一番心地良く感じる、といわれている20℃以上25℃以内の温度、50%~60%以内の温度はウイルスの増殖を防ぎ、死滅させる効果があるといわれています。インフルエンザの流行時期は、外は乾いた寒い空気になっているので、家のなかは心地良くしてインフルエンザウイルスに対抗しましょう。

人混みを避ける

インフルエンザの流行する時期はなるべく人混みを避けましょう。どうしても、行かないといけないときは、同行する大人はマスク着用したり、携帯用の除菌剤を持参し、マメに手を除菌したりするのも良いようです。

大人もしっかり予防しよう

赤ちゃんは自分で感染予防をすることができません。周りの大人が、家のなかへインフルエンザウイルスを持ち込まないように、感染予防のためにできることをしましょう。また副作用などの理由がない場合はママやパパだけでも予防接種を受けておくのも、有効な手段のひとつといえるでしょう。

インフルエンザで保育園はいつから行ける?おでかけは?

赤ちゃんのなかには保育園に通っている子どももいるでしょう。保健所の感染症対策ガイドラインでは保育園児がインフルエンザを発症した場合

「インフルエンザを発症した園児は、発熱した日を 0 日目として発症から 5 日間が経過し、かつ解熱した日を0日目として解熱後3日間が経過するまでは保育所を休んでもらうようにします。」

と、記されています。(※3)園によっても異なるので、事前に確認しておきましょう。

保育園に通っていない赤ちゃんの場合でも、インフルエンザを発症してから1週間前後は必要最低限の外出にとどめておく方が良いでしょう。症状や熱が下がって元気であってもインフルエンザの菌が体内にのこっており、感染を広げてしまうケースもあります。赤ちゃんも高熱がでたあとは、体力を激しく消耗していて、元気そうに見えても休息が必要なことも。

インフルエンザの赤ちゃんを看病するのは、とても大変なことです。お世話をしたママやパパも子どもと一緒に休息をとるつもりで、家で過ごすことをおすすめします。

インフルエンザの流行時期は?

インフルエンザシーズンはその年の第36週から翌年の35週までのあいだです。2024/25シーズンは2024年9月2日~2025年8月31日までになります。

インフルエンザは11月末ごろから報告数が増えはじめ、1月ごろにピークを迎えます。近年は新型コロナとの同時流行の可能性も懸念されているため、引き続き感染症対策をとるようにしましょう。

赤ちゃんのために自分の体調管理をしっかりと

赤ちゃんがインフルエンザにかかっても、まだ自分で病状を説明することはできず、泣いたりぐずついたりといったことでしか体調のつらさをアピールできません。急な高熱とぐったりとした子どもの様子に慌ててしまうこともありますが、なるべく落ち着いてできることをしましょう。

インフルエンザと診断されている場合でも、病状が変わったように感じたり、合併症や重症化の判断がつかなかったりという場合には、大げさかも、と考えず医療機関の受診をしましょう。赤ちゃんの普段の様子をよく知っているのは普段お世話をしているママやパパです。少しでも違和感を覚えるたら受診をする、くらいの心構えでいると良いかもしれません。

まずはパパとママがインフルエンザ感染予防のためにできることをしましょう。しっかりとした睡眠、バランスの良い食事もインフルエンザ予防には有効といわれています。赤ちゃんの世話をしながらではなかなか難しいときもありますが、ママやパパが倒れるとそれこそ大変です。家族で協力し合って、体調管理ができるよう配慮しましょう。

※この記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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