子どもが感染しやすい感染性胃腸炎とは?症状や家庭内感染を防ぐポイントについて解説
毎年冬になるとノロウイルスやロタウイルスの流行がニュースになりますね。こうしたウイルスなどが原因で起こる急性胃腸炎は感染性胃腸炎と呼ばれ、子どもがかかりやすい感染症のひとつです。重症化することはまれですが、子どもが苦しむのはできるだけ避けたいものです。原因や症状、感染性胃腸炎にかからないためのポイントを解説します。
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目次
子どもの感染性胃腸炎とは?
子どもが激しく嘔吐したり、1日に何度も下痢をしたりすると心配になりますね。こうした症状が見られる急性胃腸炎は、ウイルスや細菌によって引き起こされる感染性胃腸炎かもしれません。
感染性胃腸炎は細菌、ウイルス、寄生虫が病原体となる急性胃腸炎の総称です。主に吐き気や嘔吐、腹痛、発熱、下痢などの症状があらわれるのが特徴で、胃腸風邪と呼ばれることもあります。
季節的な流行があり、冬はノロウイルス、春はロタウイルス、夏は細菌による胃腸炎が多くみられます(※1)。いずれも対症療法(たいしょうりょうほう)による治療が中心で、水分を補給できていれば自然と軽快することがほとんどです。
※対症療法…病気の原因をのぞくのではなく、あらわれた症状に応じてする治療法
子どもの感染性胃腸炎の主な症状は?
感染性胃腸炎の症状は病原の種類や量、身体の状態により異なりますが、主に下痢、悪心、嘔吐、腹痛、発熱などがみられます(※1)。腹痛や嘔吐などの胃腸症状よりも先に、発熱の症状があらわれることもあります。重症化することはまれですが、乳幼児は脱水症状や吐いたものがのどに詰まって起こる窒息に注意が必要です。
診断には症状のほか、感染源に触れる機会があったかが重要なポイントとなります。医師による診察を受けるときは、いつごろに何を食べたか、周囲で胃腸炎が流行しているか、基礎疾患や動物との接触の有無、渡航歴など、わかる範囲でまとめておくと良いでしょう。
潜伏期間は通常1~3日ほど
感染してから発症するまでの潜伏期間は通常1~3日ほどです。6~12時間ほどで急激に発症したり、3~10日後に遅れて発症したりするケースもあります(※2)。
子どもの感染性胃腸炎は何日くらいで治る?
感染性胃腸炎は通常1~3日で症状のピークを迎え、その後1週間ほどかけて軽快するという経過をたどります。発熱や嘔吐のピークは1~2日、下痢症状のピークは2~4日ほどです。症状には個人差があり、10日~2週間、時には1〜2ヶ月ほど下痢が続くこともあります。
ウイルスによる感染性胃腸炎は、症状がなくなったあとも数日~1ヶ月ほど排泄物にウイルスが含まれるといわれています。子どもの体調が回復してもトイレやおむつ交換のあとは手洗いなど普段通りの感染予防対策を続け、二次感染を予防しましょう。
子どもの感染性胃腸炎の主な種類・原因は?
ウイルス性胃腸炎
日本で症例が多く報告されているのが、ウイルス性胃腸炎です。ノロウイルス(小型球形ウイルス)、ロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルスが主な病原体にあげられます。
ウイルスは感染力が非常に強く、さまざまな感染経路が確認されています。たとえばウイルスが付着した食器や調理器具を使ったり、汚染された食品を食べたりすることによる経口感染は頻繁に起こります。
嘔吐物やドアノブなどを介した接触感染、排せつ物に触れることで起こる糞口感染もあるため、手洗いなどの予防策が重要です。
ウイルスの種類 | 流行時期 | 特徴 |
---|---|---|
ロタウイルス | 冬~春 | 乳幼児に多い。便が白っぽくなることもある。 |
ノロウイルス | 冬 | 激しい嘔吐。冬に多い。食中毒を起こす。 |
アデノウイルス | 夏~秋 | 潜伏期間が長い。下痢が長く続く。 |
サポウイルス | 春~夏 | 食中毒の原因。年間を通じてみられる。 |
細菌性胃腸炎
細菌性胃腸炎を引き起こす主な細菌は、サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O157など)、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、ウエルシュ菌などさまざまです。
経口感染が主な経路で、汚染された井戸水を飲んだり、牛や鶏などの肉を加熱が不十分なまま食べたり、土をよく洗い流さずに調理したりすることで感染します。
細菌はウイルスと比べ潜伏期間が短く、感染して30分から12時間ほどで発症することがほとんどですが、カンピロバクターやO157などは潜伏期間が1~8日程度と長くなります(※3)。
■妊娠中はリステリア菌に注意
チーズやハムなどの食肉加工品に含まれるリステリア菌は、妊娠中に感染するとごくまれに流産や赤ちゃんに影響がおよぶ可能性があります。日本国内では集団食中毒とみとめられた事例はありませんが、子どもの感染はもちろん、きょうだいを妊娠しているママも注意しましょう。
寄生虫によるもの
寄生虫による感染性胃腸炎も確認されています。日本では感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)において、クリプトスポリジウム、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)、赤痢アメーバがインフルエンザなどと同等の五類感染症に位置づけられています。
寄生虫の主な感染経路は、汚染された水、生野菜、加熱が不十分な豚肉やジビエ肉(野生鳥獣の肉)などです。症状は軽く感染に気づかないこともありますが、その一方で下痢や吸収不良症候群が慢性化することがあります。
過去には水道水の飲用やプールでの水泳による集団感染がみられたり、輸入食品や海外渡航において感染が起こったりした事例がありました。現在は衛生環境が向上し、国内での報告はまれな症例となっています。
衛生が行き届いている地域では心配しすぎる必要はありませんが、寄生虫のリスクを理解し流行地においては生水を飲まない、食品は加熱してから食べるなどの予防策を覚えておきたいですね。
子どもが胃腸炎になったときの対処法
薬よりも水分補給
子どもに嘔吐や下痢があると、一刻も早く症状をやわらげたいですよね。しかし、下痢止めは体内に病原体をとどめることになるため、通常は使用を控えます。
子どもの胃腸炎のケアは、脱水症を予防することが第一です。経口補水液もしくは授乳により水分を補給してあげましょう。牛乳は下痢を悪化させる可能性があるので避けたほうが良いでしょう。
症状が強いときは一気に飲ませるのではなく、スプーン1杯程度の少量ずつを5分おきにこまめに飲ませることがポイントです。飲んだ後に吐き気や下痢が強くならないか確認し、徐々に量を増やします。もしも嘔吐してしまったら、2~4時間ほどお腹を休めることが大切です(※4)。
吐き気が強く経口摂取ができない状態が続くと脱水症にいたってしまうので制吐剤(せいとざい)を使用します。
※制吐剤…吐き気や嘔吐をしずめるための薬
医師による受診の目安
子どもは体重あたりの必要水分量が大人よりも多く、新生児では体重の約8割を水分が占めるといわれています(※5)。水分がとれないと脱水を招きやすく、そのサインに注意が必要です。
・水分が十分にとれない
・おしっこの量が少ない、おしっこが黄色い
・涙が出ない
・口内や唇が乾燥している
・目がくぼんでいる、肌に張りがない
・1日に6回以上の水様下痢が大量にある
・嘔吐が1日に4~5回以上ある
ほかに、機嫌が悪かったり嘔吐や下痢が続いたりするときも、市販薬に頼らず医師による診察を受けてくださいね。
ほかの病気との区別を
嘔吐や下痢をともなう病気には、脳炎、髄膜炎、腸重積、毒物の摂取(誤飲)などすみやかに受診したほうが良い病気もあります。下記のような症状がある場合は、すぐに医師による診察を受けましょう。
・39℃以上の発熱がある
・10~30分ごとに激しく泣く、痛がる
・便や嘔吐物に血が混じる
・嘔吐物が緑色もしくはコーヒーのような黄色
子どもの感染性胃腸炎を予防するには?
予防接種
令和2年10月1日からロタウイルス感染症の予防接種が定期接種になりました。ワクチンは生後6週から生後14週6日までに1回目を接種するよう推奨しています。
接種により入院率を8割以下に低下させるという効果が示されていますが(※6)、接種後1週間ほどは腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)への注意が必要です。予防接種について心配なことがあれば、自治体や医師に相談しましょう。
手洗い
感染性胃腸炎の感染拡大を防止するには、手洗いがとても重要です。調理前や盛りつけ前、トイレやおむつ替えの後は必ず手洗いをしましょう。
流水による手洗いだけでもウイルスは減少しますが、石けんやハンドソープで洗うとさらに効果が上がります。指のあいだ、指先、爪のあいだ、手首も忘れずに、ていねいな手洗いを心がけたいですね。
食品の十分な加熱
感染源となるウイルスや細菌、寄生虫は熱に弱いものが多く、加熱することで死滅させることができます。食品を調理するときは、中心部分の温度が75℃で1分間以上を目安に加熱しましょう。
気をつけたいのは、ウエルシュ菌のように加熱しても死なない菌があることです。ウエルシュ菌による感染性胃腸炎は、前日に調理して室温で一晩寝かせる食品で多く発生しています。
ウエルシュ菌は50℃~20℃が発育に適した温度で、調理した食品を冷ましているあいだに増殖しやすいのが特徴です。そのため調理後すぐに食べない場合は時間をおかずに冷蔵庫に入れ、2時間以内に冷やすことが感染予防になります。
動物とのふれあいに注意
細菌性の腸炎のなかでも比較的報告が多いサルモネラ菌は、犬やカメなどのペットからの感染が報告されています。自宅でペットを飼育していなくても、農場での乳しぼり体験や動物園のふれあいコーナーで動物に触れたときは、必ず石けんで手を洗いましょう。
子どもの家庭内感染を防ぐポイント
家族みんなが手洗いをする
外から帰ったときはしっかり手洗いをしていても、家にいるときの手洗いはおろそかになっていることがあるかもしれません。「持ち込まない、広めない」を合言葉に、トイレのあとや調理前、食事前にも石けんやハンドソープを使って手を洗う習慣を身につけましょう。
石けんやハンドソープで10 秒もみ洗いしたあとに、流水で15 秒すすぐことを2回繰り返す(※8)
食器やドアノブなどを消毒する
ウイルスの中には、アルコールでは死滅しないものもあります。そこで、重要となるのが熱水や塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)による消毒です。
食器や箸、嘔吐物がかかった衣類やシーツ類は85℃の熱水に1分間さらして消毒しましょう(※7)。このとき、やけどに注意してください。
ドアノブやスイッチ、水道の蛇口、トイレの便座やペーパーホルダーなどは塩素系漂白剤を0.05%に薄めた次亜塩素ナトリウム溶液で拭き取ります。掃除をするときはビニール手袋を着用し、窓を開け換気しましょう。金属は腐食しやすいので、掃除した後は十分な拭き取りが必要です。
次亜塩素ナトリウムは商品によって濃度が異なります。溶液を作るときは表示を確認してください。厚生労働省では、主な商品を使った次亜塩素ナトリウム溶液の作り方を紹介していますよ。
汚物を適切に処理する
嘔吐物や下痢のおむつから感染を広げないよう、適切に処理することが大切です。処理するときは使い捨てのマスクや手袋を着用し、使い捨てのペーパータオルや新聞紙に吸収させて静かに拭き取ります。
その後、次亜塩素ナトリウム溶液で消毒し、最後に水拭きをします。汚れたペーパータオルや手袋などはビニール袋に入れ密閉しましょう。処理が終わったら、しっかりと手洗いしてくださいね。
胃腸炎のあと、保育園・幼稚園はいつから登園できる?
感染性胃腸炎は通常、下痢や嘔吐の症状がなく、全身の状態が良ければ登園が可能とされています(※9)。飲食をしても嘔吐や下痢がなければ登園しても良いでしょう。
ただし、流行の状況に応じて感染拡大防止の観点から出席停止の措置をとることがあります。登園に際しては園に確認し、必要に応じて医師の判断をあおぐと安心ですね。
感染性胃腸炎は家庭内でも予防しよう
感染性胃腸炎は1週間ほどで軽快することがほとんどですが、その症状はつらく、体力も削られます。感染症にかからないためにも、普段から手洗いや消毒などの習慣を身につけたいですね。
感染性胃腸炎が流行する冬や夏は、嘔吐対策としてビニール手袋や凝固剤入りのエチケット袋などを用意しておくといざというときに役立ちますよ。
※この記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。