妊娠初期の働き方で気をつけることは?仕事を休むときや辞めたいときは?|助産師監修

妊娠初期はつわりのピークで、仕事をしている妊婦さんは思うように働けずに不安になるかもしれません。このころに仕事を休みがちになり、辞めたいと悩む妊婦さんは多いようです。ここでは、妊娠初期の働き方で気をつけることのほか、つわりで仕事を休んでよいのか、出産前に退職するのはどんなメリットとデメリットがあるのかを解説します。

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この記事の監修

河井 恵美
助産師・保育士
河井 恵美

目次

  1. 妊娠初期はどんな状態?
  2. 妊娠初期に起こりうるリスク
  3. 職場に妊娠を報告したのはいつ?
  4. 妊娠初期の仕事で気をつけること
  5. 妊娠初期に仕事を休むのはOK?
  6. 妊娠初期に仕事を辞めるメリット
  7. 妊娠初期に仕事を辞めるデメリット
  8. 妊娠初期の仕事は無理をしないで
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妊娠初期はどんな状態?

妊娠初期とは、妊娠0〜15週の期間を指します。医学的な言葉ではりませんが、妊娠初期の中でも特に妊娠0〜4週は「妊娠超初期」と呼ばれます。

0週0日から数えて2週に排卵があり、受精が成立して、3週に着床、4週以降に赤ちゃんを覆う「胎嚢(たいのう)」が子宮内に確認できるようになります。本来は生理予定日である妊娠4週になると、生理が来ないことから、「妊娠したかも」と思う方もいるようです。

妊娠5週頃になると、妊娠検査薬で陽性反応が出て、妊娠6週くらいに心拍が確認できるようになります。つわりはこの時期に始まることが多く、妊娠8~11週頃にピークになります。つわりの症状は「吐き気」や「嘔吐」のほか、「においに敏感になる」「頭痛」「眠くなる」などさまざまです。

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妊娠初期に起こりうるリスク

異常妊娠

妊娠初期のリスクとして「異常妊娠」があげられます。異常妊娠には、受精卵が子宮以外に着床する「子宮外妊娠」と、胎盤のもとになる絨毛(じゅうもう)細胞が異常に増殖する「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」があります。いずれも、妊娠の継続は困難で、手術による処置が必要です。

流産

流産も妊娠初期に生じやすいトラブルです。流産のほとんどは12週未満に起こる早期流産だとされています。早期流産の原因は、受精卵に成長する力がもともと備わっていないことです。そのため、妊娠11週までは妊婦さんがどんなに気をつけていても、流産してしまう可能性があります。一方、妊娠12週以降の流産は母体側に原因があることも多くなりますが、染色体異常など、事前に防げない場合がほとんどのようです。

「切迫流産」は流産しかけている状態で、少量の不正出血や下腹部の痛みが兆候としてあらわれることがあります。妊娠初期の切迫流産の治療法はありませんが、医師の判断に従ってできるだけ安静に過ごしましょう。

葉酸不足

妊娠初期には「葉酸不足」に伴うリスクを無視できません。葉酸はビタミンB群の一種で、細胞の生成や造血に欠かせない栄養素です。胎児の細胞の分裂や増殖が活発に行われる妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の中枢神経に障害が起こり、神経管閉鎖障害という先天障害のリスクが高まります。厚生労働省は、妊娠初期には食事やサプリメントなどから積極的に葉酸を摂取するよう推奨しています。

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購入後に販売元に問い合わせをすると、1,000人以上の妊活・妊娠中の食事のサポート実績がある、専任の栄養士さんから出産までの食事について継続的にアドバイスを受けることもできます。サプリを飲むだけではなく、日頃の食事から改善し、自分の身体や赤ちゃんの健康を維持したい方におすすめですよ。

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職場に妊娠を報告したのはいつ?

ままのて 編集部がままのてのユーザー373人にアンケートで「職場に妊娠を報告した時期」を聞いたところ、「心拍が確認できてから」と回答したのが47%で最多でした。「妊娠検査薬で陽性が出たとき」(9%)、「胎嚢が確認できてから」(18%)と合わせると、74%が妊娠初期の早い時期に妊娠を報告していることがわかりました。

「小さな事務所で働いていたので、他の人がかかわっておらず、私しかわからない仕事が多くありました。そのため、なるべく早めに引き継ぎがしたいと思い、妊娠が判明してすぐに上司へ伝えました。」
(ぷー/出産当時30代)

「妊娠初期はつわりなどもあり、仕事をすることは大変だと思います。私は一度、初期流産を経験していたので、妊娠判明後すぐに職場に報告しました。人数の少ない職場や忙しい職場では、妊娠したことを報告しづらいかもしれませんが、できるだけ早く報告することで自分も相手も仕事がしやすいのではないでしょうか。」
(ゆき/出産当時30代)

いつ職場に妊娠を報告する?会社の上司や同僚への報告の順番や言い方

妊娠初期の仕事で気をつけること

上司には早めに報告

妊娠初期はつわりによる体調不良が起こりやすく、定期的に妊婦健診に通う必要もでてくるため、母子手帳を発行してもらった段階で直属の上司には妊娠を報告しましょう。事情を伝えないままに急な欠勤が続くなどすると、上司に不信感が募ってしまう可能性があります。

早めに報告することで、会社側は人員補充や配置転換が迅速に行えて、いざというときのサポート体制を整えやすくなり、妊婦さんにとっても安心です。

なお、妊娠初期には早期流産の可能性が高いことから、安定期に入るまでは公言しないよう上司にお願いするのも手です。

つわりの症状を周りに伝える

眠りつわりがあると、寝坊して遅刻したり、仕事中に眠気が襲ってきたりする可能性があります。においつわりの場合、職場のちょっとしたにおいで気分が悪くなり、外の空気を吸いに行きたくなることがあるかもしれません。食べつわりの人は、空腹を感じたら気持ち悪くなるため、勤務中も飲食したい場面が多いはずです。

においつわりならばマスクをつけるなど、自分でつわり対策をすることはもちろん必要ですが、自分ひとりでできることには限界があります。どんなつわりの症状がいつ出やすいかを職場の人に伝えて、休憩や飲食の許可を得るようにしましょう。

つわりの症状を伝える際には、医師が書いてくれる「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を活用すると良いでしょう。母健連絡カードは、働いている妊婦さんが医師から勤務内容や通勤・勤務時間などの指導を受けた場合に、その内容を勤務先に伝えるためのものです。母健連絡カードを提出することで、会社側に勤務時間の短縮といった必要な措置をとってもらうことができます。

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働き方を変えてもらう

妊娠初期は胎児が急成長を遂げる時期で、母体の心身にもさまざまな変化が起こります。つわりがあり、体調が安定しない場合には、妊娠前と同じような働き方は難しいかもしれません。自分とお腹の赤ちゃんを第一に優先して、心身に過度のストレスがかかる仕事は担当から外してもらうようにお願いしましょう。

特に、長時間の立ち仕事や重いものを持つ仕事は、お腹に負担がかかりやすいうえ、転倒のリスクもあり、流産につながる可能性が高まることから注意が必要です。こうした仕事が多い接客業や介護職の妊婦さんは、こまめに休憩を取らせてもらったり、力仕事を他の人に代わってもらったりして、くれぐれも無理のないようにしましょう。

「人数の少ない職場だったので、代わりの人を入れてもらうか、退職したほうが良いかを相談しました。すると、無理をせずに続けてくれたら良いと返事をもらいました。立ち仕事でしたが、休憩をとらせてもらいながら出産ギリギリまで働かせてもらいました。」
(ゆき/出産当時30代)

周りへの感謝を忘れない

妊娠中は注意散漫になりやすく、仕事をしていてもどうしてもミスが増えがちです。また、つわりがひどいと仕事がなかなか思うように進められず、不安になることがあるかもしれません。仕事がはかどらないことで、周りの目が気になってしまうこともあるでしょう。しかし、妊娠前のように仕事ができなくなるのは「しかたがないこと」です。お腹の赤ちゃんが成長しているからこそと割り切り、自分を責めすぎないようにしてくださいね。

自分やお腹の赤ちゃんをいたわりながら仕事をする一方で、フォローやサポートをしてくれる職場の上司や同僚に対して感謝を忘れないようにしましょう。感謝の気持ちをしっかりと伝えることで、相手もより快く協力できるようになります。また、コミュニケーションが密になり、妊娠に対する理解を深めてもらうことにもつながるでしょう。

「周りの理解と協力が妊娠初期の仕事にはとても重要なのだと思いました。接客業ということもあり、突然の立ちくらみや悪阻(おそ)といった体調の問題から、重い荷物や高いところに登ってはいけないといった注意点は、周りの人たちに把握してもらわなければ自分への負担となってしまいます。上司や同僚の多くが妊娠・子育ての経験者で理解があったため、休憩時間などを配慮してもらえて、妊娠後期まで無理なく働くことができました。」
(ささはる/出産当時20代)

混んでいる電車やバスに乗らない

働いている妊婦さんにとって、特につらいのは通勤かもしれません。妊娠中は、満員電車や混んでいるバスはできる限り避けるようにしましょう。窮屈な車内では、お腹を強く圧迫されたり、気分が悪くなったりする可能性があり、心身のストレスが大きいためです。職場の上司に相談して、通勤ラッシュにあたらないよう通勤時間をずらしてもらうと良いでしょう。どうしても変更できない場合は、朝早起きして数本早い電車やバスに乗ったり、比較的空いている各駅停車を利用したりしましょう。

妊娠初期に仕事を休むのはOK?

つらい場合は無理をせずに休もう

妊娠中に「今日は仕事を休みたい」と思ったことがある人は多いでしょう。つわりの症状がつらく、起き上がることすら難しい日もあるかもしれません。そんなときは、無理をして出勤しても、逆に周りに迷惑をかけてしまう可能性もありますし、大事を取って仕事を休むようにしましょう。妊娠初期は特に母体も胎児も不安定な状態です。社会人としての責任を持つことは大切ですが、妊娠中は赤ちゃんや自分の身体を最優先してくださいね。

なお、切迫流産と診断された場合には、流産のリスクがあるため、入院するか自宅で安静にしなければなりません。症状が改善し、医師の許可が出るまでは休職する必要があります。

【体験談】上司からのアドバイス

筆者は妊娠中に接客業で立ち仕事をしていました。妊娠初期はまだお腹も出ておらず、妊婦とわからないので、上司からは「マタニティマークを名札につけたらどうか」とアドバイスしてもらいました。上司の提案が功を奏して、周りのスタッフからたくさんサポートしてもらえたのでありがたかったです。また、気持ち悪いときにはスタッフルームに隠れて休みやすくなりました。

つわり休暇を取得する

妊娠初期につわりで仕事を休みたい場合、休暇の申請はどのようにするのでしょうか。妊婦さんが医師から仕事を休むように指導されると、事業主は男女雇用機会均等法により、休暇を受け入れる義務があります。こうした休暇は「つわり休暇」と呼ばれています。ただし、会社にはつわり休暇中の賃金を支払う義務はなく、無給になるため、妊婦さんは形式的には有休休暇を取得するケースが多いようです。

つわり休暇取得の申請に法律で定められた形式はありませんが、診断書や母健連絡カードを会社に提出するのが一般的です。ただし、診断書の発行基準は医療機関によって異なり、妊娠悪阻(おそ)や切迫流産といった疾患でなければ診断書を発行してもらえない場合もあります。診断書がなくても休みを認めてもらえるよう、日ごろから職場で信頼関係を築いておきたいところです。場合によっては、つわりに理解のある病院への転院を検討する必要もあるでしょう。

傷病手当金を申請する

勤務先で健康保険に加入していれば、「傷病手当金」を申請できる可能性があります。傷病手当金とは、病気やケガで連続4日以上、無給で休んだ場合、4日目以降の日数を対象に支給される保険給付です。妊娠悪阻や切迫流産、妊娠高血圧症候群などの疾患があり、入院や自宅での安静が必要だと診断された場合に給付を受けられます。傷病手当金の手続きには、指定の申請書に医師に記入してもらい、出勤簿の写しなどとともに健康保険組合に提出する必要があります。

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妊娠初期に仕事を辞めるメリット

妊娠初期は赤ちゃんができて嬉しい半面、これから無事に妊娠生活を送れるか不安も生まれますよね。仕事についても続けられる自信がなくなり、この時期に「辞めたい」と悩む人は少なくありません。妊娠初期に仕事を辞めたり休職したりした場合、どういったメリットが考えられるでしょうか。

仕事のストレスがなくなる

仕事をしていると、多かれ少なかれ精神的なストレスがかかるものです。妊娠中はホルモンバランスの変化や出産への不安などが原因でストレスが生まれ、イライラしてしまいがちですが、仕事を続けることで、よりストレスがたまる可能性があります。ストレスがたまり過ぎると、ストレスホルモンにより血管が収縮することから、胎児に栄養素や酸素を十分に供給できなくなるリスクが高まってしまいます。

退職すれば、仕事のプレッシャーや職場の人間関係などから解放されるため、ストレスがやわらぎ、比較的リラックスして過ごせるようになるかもしれません。

安静にできる

妊娠初期は通勤するだけでも身体に大きな負担がかかるものです。また、いったん仕事が始まると、周りに迷惑をかけまいと、つい無理をして動いてしまいがちです。
しかし、仕事を辞めて自宅で過ごすようにすれば、「長時間同じ姿勢でいる」「重いものを持つ」といった妊娠中にあまり良くない行動を避けられるようになります。また、つわりがひどいときやお腹が張ったときも、すぐに横になるなどして安静にできるようになります。

ゆっくりと出産の準備ができる

退職すると自由な時間が増えるため、その分、出産の準備に使うことができます。出産や子育ての情報を集めたり、赤ちゃんの名前を考えたり、ベビー用品を選びに行ったりしながら、ゆっくりとマタニティライフを過ごせますよ。今のうちに旦那さんとデートを楽しんでも良いですね。

妊娠初期に仕事を辞めるデメリット

妊娠初期に退職や休職をすることはもちろんメリットがありますが、デメリットがあるのも事実です。妊娠初期に仕事を辞めたくなる理由の多くはつわりですが、胎盤が完成して安定期に入ると、多くの人はつわりが軽くなります。そのため、周囲の理解と協力を得ながら妊娠初期を乗り越え、妊娠後期まで仕事を続けられる可能性は高いのです。仕事を辞めるかどうかは、メリット・デメリットを総合的に判断し、慎重に決めてくださいね。

再就職が難しい

妊娠初期に退職してしまった方は、出産後に社会復帰を目指す場合、まずは再就職先を探さなければなりません。しかし、子育てをする女性の職探しはまだまだ難しいのが現実です。時短勤務制度などを取り入れて、子育てと仕事の両立を支援する企業は増えてきているものの、その数は十分とは言えません。出産後、第一線で働きたいと正社員を希望しても、雇用条件がマッチする求人がなかなか見つからないという人は多いです。

また、就職先と同時に、子どもの保育園も探さなければなりませんが、認可保育園の入園基準で「求職中」は優先順位が低く、入るのは困難です。まずは無認可保育園に預けながら働く手もありますが、保育料が高く、経済的な負担が大きくなります。

もらえない手当金がある

日本では、妊娠・出産に関するさまざまな手当金の制度があり、申請すればお金をもらうことができます。「妊婦健診の助成金」「出産育児一時金」「児童手当金」は、仕事をしている・していないにかかわらず、受け取ることができます。しかし、手当金のなかには、妊娠中に退職すると支給の対象にならないものもあるため、注意が必要です。

妊娠初期に退職するともらえないお金は以下の通りです。

□出産手当金
勤務先で健康保険に加入している妊婦さんが、出産のために会社を休む場合にもらえるお金です。産休中の生活支援として、給料の代わりに健康保険から支給されます。

□育児休業給付金
育児休業給付金は、雇用保険に加入し、規定の要件を満たしている人が育児休業期間中に受け取れます。

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妊娠初期の仕事は無理をしないで

妊娠初期はつわりのピークで、妊娠前のような働き方ができない場面が多くなるものです。身体も心も思うようにならず、焦る気持ちが生まれてしまうかもしれませんが、決して無理はしないでくださいね。職場ならば、自分の代わりは見つかりますが、赤ちゃんにはママの代わりはいないですよ。

一緒に働き、フォローしてくれる人たちに感謝しつつ、心穏やかに働けると良いですね。

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