【産婦人科医監修】胎児の成長とは?赤ちゃんの成長曲線(発育曲線)と過程・スピード
ママにとって胎児の成長はとても気になるところです。お腹の赤ちゃんが順調に大きくなっているのか、今はどのような状態なのか、さまざまな思いがめぐるのではないでしょうか。胎児の成長の早い、遅いを判断する目安のひとつに胎児の体重をグラフにした胎児発育曲線があります。妊娠月数の標準値とともに、成長の過程をみていきましょう。
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目次
胎児の発育曲線とは?
胎児発育曲線とは、正期産で生まれてきた赤ちゃんがお腹の中にいたときの推定児体重をグラフとしてまとめたもので、妊娠週数ごとの平均体重が示されています。一般的に「胎児の成長曲線」と呼ぶ人もいるようです。
推定児体重は、胎児の発育状態を計測した結果から求められます。妊婦健診時に行われる超音波検査で胎児の頭部、腹部、大腿骨などのサイズを測り、胎児の成長を評価するのです。
赤ちゃんはお腹の中で日に日に成長しています。妊娠週数ごとに成長の度合いを把握することは、妊娠の経過を知るうえでとても大切な指標となります。
胎児の成長過程:妊娠1ヶ月~2ヶ月
妊娠1ヶ月
妊娠期間のうち、妊娠1ヶ月目は超初期にあたります。妊娠週数では0週から3週目までの期間です。0週0日目は妊娠が判明する前の最後の生理、いわゆる「最終月経」が開始した日となります。
一般的な生理周期の場合、妊娠が成立するのは2週から3週頃です。0週から1週にかけては排卵前の時期となります。排卵後に精子と出会った卵子は受精卵となり、分裂を繰り返しながら5日~6日目に子宮へ到達します。ここで着床してはじめて、妊娠の成立となります。はっきりとした妊娠の自覚症状はありませんが、排卵後の高温期が続くため倦怠感やイライラなど、生理前と似たような症状がみられる場合もあるでしょう。着床時の少量の出血(=着床出血)や軽い下腹部痛(=着床痛)がある人もいます。
子宮の中で胎児を包む膜となる胎嚢(たいのう)はまだ確認できない状態です。しかし、3週頃には心臓や中枢神経といった生命を維持するための重要な器官が形成されはじめます。薬やレントゲンによる放射線への感受性が高まる時期のため、妊娠を意識しているときは影響を受けないよう注意しましょう。
妊娠2ヶ月
妊娠2ヶ月は、妊娠4週~7週の期間となります。生理予定日となる4週頃には、生理の遅れから妊娠に気づくことも増えてきます。精度の高い医療用の早期妊娠検査薬では妊娠反応が得られ、早い人ではつわりの症状が出現します。6、7週頃は切迫流産や初期の出血が起こることもあるので、無理は禁物です。不安なときは医師の診察を受けましょう。
胎児は急速に成長し、目や口といった顔のパーツや手足がつくられはじめます。胃腸・肝臓などの臓器もできはじめ、心臓が拍動を開始するのもこの時期です。超音波検査で確認すると5週頃から胎嚢をみることができますが、心拍が確認できるようになるのは6週頃からとなります。
7週に入ると、頭部と胴体の区別がはっきりとしています。4~7週は胎児の器官形成にかかわる最も重要な時期です。奇形や機能障害を避けるためにも、妊娠に気づいたら薬やアルコールの摂取などは避けましょう。
胎児の成長過程:妊娠3ヶ月~4ヶ月
妊娠3ヶ月:身長約9cm・体重約20g(11週末)
妊娠週数8~11週となる妊娠3ヶ月目は、子宮が徐々に大きくなってきます。一般的につわりのピークの時期と重なるため、体調がすぐれない日々が増えるかもしれません。子宮に膀胱や腸が圧迫され尿の回数が増えたり、便秘になったりといった症状に悩まされることもあります。
子宮の中では胎児がぐんぐん成長を遂げています。フルーツでいうと、レモンくらいの大きさです。手足や顔の形がハッキリして人間らしい身体つきになり、四肢を動かす様子や羊水の中で身体を曲げ伸ばしする様子が超音波検査でみられることもありますよ。腎臓機能が発達するため、 羊水を飲んでおしっことして排泄する練習もはじめています。
妊娠3ヶ月に入ると薬や放射線などに対する感受性は低下してきますが、耳や生殖器といった一部の器官は、機能や形態異常が起こる可能性を残しています。妊娠すると免疫も低下するため、ウイルスや細菌への感染には十分に注意しましょう。
妊娠4ヶ月:身長約16cm・体重約100g(15週末)
妊娠4ヶ月は、妊娠週数は12~15週になります。12週頃からつわりが徐々に落ち着きはじめ、高温期のままだった体温も元に戻ってくるため体調が安定してくることが多くなります。ママのお腹は少しずつふっくらして、丸みを帯びてきますよ。
このころの胎児は身長約16cmで、ちょうど手のひらくらいの大きさに成長しています。外見で性別が識別できるようになるので、超音波健診で「もしかしたら」というものが見られるかもしれません。羊水の中で指しゃぶりやあくびをする仕草もでてきますよ。
15週頃になると胎盤が完成し、へその緒を通じて栄養や酸素が胎児に届けられるようになります。内臓や身体の各器官が完成し、働きが整ってくるのもこの時期です。耳が機能しているため、お腹の外の音も聞こえていると考えられています。透明だった皮膚が不透明になり、ますます人間らしさに磨きがかかってくる時期ですよ。
胎児の成長過程:妊娠5ヶ月~7ヶ月
妊娠5ヶ月:身長約25㎝・体重約250g(19週末)
妊娠5ヶ月は妊娠16~19週の期間です。妊娠中期となり、一般的には安定期と呼ばれます。妊娠経過に異常がなければ、適度な運動をはじめるのに適していますよ。胎盤も完成するので、赤ちゃんの成長はスピードアップします。大きくなってきた子宮に胃や腸が圧迫され、便秘になったり、食後の胃もたれが起こったりすることもでてきます。
胎児は骨格や筋肉が発達してくるため、動きが活発になってきます。経産婦であれば18週頃からかすかな胎動を感じはじめることもあるようです。お腹の赤ちゃんに話しかけながら、動きを感じてみてくださいね。
病院により対応は異なりますが、この時期の妊婦健診から胎児の成長を評価する胎児発育曲線のグラフが示されることがあります。また、妊娠5ヶ月目は戌の日の安産祈願に出かけると良いとされる時期でもあります。体調が良い日を見計らって、お参りに出かけてみるのも良いかもしれません。
妊娠6ヶ月:身長約30cm・体重約650g(23週末)
妊娠20~23週目となる妊娠6ヶ月目は、初産婦でも胎動を感じられるほど胎児が成長しています。お腹のふくらみが目立つようになり、乳房も大きくなって乳汁がでたという体験談も聞かれます。
羊水が増え胎児が活動しやすい環境となるため、手足の動きはますます力強くなってきますよ。お腹の壁を蹴ったり、指でこしょこしょくすぐるような様子を感じたりすることもしばしばです。ときにはしゃっくりをしている振動が伝わってきて、生命の営みを感じます。
この時期は子宮内で胎児が動き回れるスペースがあるため、逆子になる可能性があります。臨月までに元に戻るケースが多いので、逆子だからと気にしすぎないようにしましょう。気を付けたいのは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクです。高齢出産だったり肥満だったりすると発症リスクが高まるといわれています。できるだけ規則正しい生活習慣を心がけたいですね。
妊娠7ヶ月:身長約35cm・体重約1,000g(27週末)
妊娠中期もいよいよ後半となる妊娠7ヶ月は、妊娠週数でいうと24~27週にあたります。お腹が前にせり出してくるため、身体のバランスに注意しましょう。無理をした日はお腹の張りを感じることもでてきます。大きくなった子宮に下半身の静脈が圧迫され、静脈瘤ができたり足のむくみが生じたりといった症状が出やすい時期でもあります。
胎児は大脳の機能が発達する時期です。聴覚や味覚もしっかりとする時期とされています。外の音に対する認識ができるため、ママの声と周りの音をしっかりと聞き分けているかもしれませんね。
7ヶ月になると、妊婦健診の頻度が4週に1回から2週に1回に変わります。出産前にやりたいことがあるなら、後期になる前に整理しておくと良いかもしれません。ただし、妊娠高血圧症候群や貧血の症状があらわれやすくなる時期でもあるので、身体に不調を感じたら無理をせずに安静にし、早めに医師に相談するようにしましょう。
胎児の成長過程:妊娠8ヶ月~9ヶ月
妊娠8ヶ月:身長約40㎝・体重約1,500g(31週末)
妊娠8ヶ月は妊娠週数でいうと28~31週となる期間で、妊娠後期に区別されます。大きくなった子宮に内臓が押し上げられ、動悸や息切れ、胸やけの症状を感じることがあるかもしれません。妊娠線が気になり始めるのもこの時期です。クリームやオイルでケアをして乾燥を防ぎましょう。体重増加は1週間に300~500gとなるのが目安です。
この時期の胎児は、肺や内臓の機能が充実してきています。脂肪もついてふっくらと丸みの帯びた身体つきとなるのが特徴です。仮に早産となった場合でも、外の世界で生きられる力がついているほどの成長をみせていますよ。
妊娠後期に入ったら、出産に備えて入院の準備を進めておきたいものです。外出時は保険証や病院の診察券、携帯電話を持ち歩くようにしましょう。切迫早産や妊娠高血圧症候群への注意も必要です。むくみやお腹の張りが頻回にあるようなら、妊婦健診を待たずに医療機関を受診するようにしてくださいね。
妊娠9ヶ月:身長約45cm・体重約2,000g(35週末)
あともう少しで臨月を迎える妊娠9ヶ月は、妊娠週数でいうと32~35週となります。胃が圧迫されることで、後期つわりの症状に悩む妊婦さんもいます。股関節痛や腰痛のマイナートラブルもでる時期です。逆子の場合は、逆子体操をするよう指導されます。
胎児は髪の毛が伸び、背中以外のうぶ毛が消えてきます。身体がふっくら丸くなり、肌のしわがのびて、かわいさがますます増す時期です。見た目は新生児とほとんど変わりありません。
妊娠9ヶ月になると、働いている妊婦さんは産前休暇が取得できるようになります。労働基準法の定めでは、出産予定日の6週前から休暇取得ができます。また、里帰り出産の場合は、34週までに移動を済ませるようにしましょう。
胎児の成長過程:妊娠10ヶ月(臨月)
臨月となる妊娠10ヶ月目は妊娠36~39週を指します。いよいよ出産が間近に迫り、赤ちゃんと対面できる期待感と分娩に対する心配事で気持ちが揺れることも増えてきます。お腹の張りや尿の回数が増えますが、穏やかな気持ちで過ごせるようにリラックスできる方法を見つけてくださいね。
39週末の出産予定日間近の胎児は身長約50cm、体重約3000gといつ生まれてきてもおかしくない大きさまで成長しています。分娩に備えた準備も着々と進み、胎児の頭が骨盤内に降りてくるため、胎動が減少します。とはいえ、まったく動かなくなることはありません。胎児の健康を評価するために、朝からの胎動回数を確認しておくと良いでしょう。
胎児が骨盤内に降りてくると、胃の圧迫が取れるため一時的に食欲が回復することもあります。ここで食べすぎてしまうと、一気に体重が増加する可能性があります。カロリーが高すぎる食事は避け、バランスの良い食事を心がけてくださいね。正期産となる37週以降は、適度な運動や家事などで身体を動かすと安産の傾向が高まるようです。
胎児の成長に早い・遅いはあるの?
妊婦健診では、推定の身長や体重が示されます。計測結果が標準に届いているかどうかが気になるところですが、胎児の成長を評価する胎児発育曲線はあくまで目安です。たとえ標準からそれていたとしても、成長のスピードは個人差があるため、おおらかな気持ちで発育状況を見守っていきましょう。
また計測値はあくまでも推定値であり、体重は前後10%前後の誤差が生じると認識しておくことも大切です。たとえば、2500gと計測された場合の誤差は前後250gとなり、胎児の体重は2250~2750gの範囲と推定されます。プラスとマイナスのどちらに振れるかは、生まれてみないとわかりません。
胎児の発育の遅れは病気や障害との関連性が心配されますが、発育が遅いからといって必ずしも異常があるとは限らないので焦りすぎないでくださいね。ただし、母体にもともと妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの合併症があると、発育が遅れたり成長が止まったりする胎児発育不全につながることもあるため、気になることがあれば病院に相談しましょう。
胎児の成長に関する体験談
筆者は二人目の妊娠のとき、臨月に入ってすぐの妊婦健診で「2,500gを超えたね」と太鼓判を押されました。一人目が2,510gと低出生体重ギリギリのラインだったため、2,500gを超えたという言葉にすっかり安心したのです。
しかし、38週になって生まれてみたら2,400gとやや小ぶりの赤ちゃんでした。「一緒に退院ができないのかも」と不安がよぎったものの、助産師さんに哺乳がしっかりでき、産後の経過が順調だったため低出生体重児としての治療や入院は必要ないと言われほっとしたのを覚えています。
もしも臨月に入っても2500gを超えないと言われていたら、相当な焦りが生じていたことでしょう。結果として2,500gを超えてはいませんでしたが、無事に健康な赤ちゃんが生まれたことを思えば、胎児の発育に対してはそこまでナーバスになりすぎない方が良いのだなと感じています。
人それぞれの変化と発育を楽しもう
ママの身体や心の変化、胎児の成長状況は人それぞれです。上の子と下の子でも妊娠の経過は異なります。同じ道をたどる妊娠は、ひとつもないのです。標準の数値やほかのママの妊娠経過と比較して一喜一憂することなく、自分自身に起こっている変化を前向きに受け止めて、妊娠そのものを楽しめると良いですね。
食事のバランスや生活リズムを整えること、適度な運動をすることなど、妊娠の経過を順調にする方法はいくつかあります。赤ちゃんにたっぷりと栄養が送れるよう、貧血や脱水に注意しながら、今できることに取り組んでいきましょう。