【産婦人科医監修】胎児の耳はいつから聞こえる?耳形成の過程と聴覚障害の原因は?エコーで耳を見ると異常がわかる?
胎児の耳は、いつから外の音を聞いているのでしょうか。ママやパパの声は、聞き分けることができるのでしょうか。羊水の中に浮いている赤ちゃんにも、外の音は届いています。耳の構造や耳が形成される過程、胎児の発達段階を追いながら、赤ちゃんの聴覚について見ていきましょう。聴覚障害となるリスクや検査についても解説します。
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目次
胎児の耳の形成の過程は?
耳の構造
耳は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感のうち、聴覚をつかさどる器官です。大きく分けて「外耳(がいじ)」、「中耳(ちゅうじ)」、「内耳(ないじ)」の3つの区分で構成されており、外耳は音を集める役割、中耳は音を伝える役割、内耳は神経へと伝達する役割を果たしています。
外耳は一般的に「耳」と認識されている部分です。顔の両脇にある「耳介(じかい)」と耳の内部に通じる「外耳道(がいじどう)」から成り立っています。
中耳は「鼓膜(こまく)」と、鼓膜の震えを内耳に伝える「耳小骨(じしょうこつ)」などから構成されています。内耳には聴覚をつかさどる「蝸牛(かぎゅう)」や平衡感覚に関係する「三半規管(さんはんきかん)」があります。
耳の形成
赤ちゃんは、卵子と精子が出会い受精卵になった瞬間から、めざましいスピードで進化を遂げています。胎児の耳も妊娠7週頃から形成が始まり、外耳、中耳、内耳が同時進行で発達していくのです。
内耳では、妊娠4~6週頃に皮膚の表面が次第に陥没し、「耳胞(じほう)」と呼ばれる耳の穴が形成され始めます。妊娠7週頃になると、耳胞の表面が閉じられ外部と遮断されます。同時期に蝸牛が作られ始め、妊娠16週にかけ音を受け止める「感覚上皮(かんかくじょうひ)」が形成されます。
外耳では妊娠8週頃から耳介が徐々に盛り上がり、妊娠9~10週にかけ外耳の原型が完成します。妊娠10~11週になると、首付近にあった耳介が顔の脇へと移動を始めます。目に「まぶた」がかぶさるのもこの時期です。
音の振動を内耳に伝える耳小骨は、「ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨」という3つの骨が連なったものです。妊娠15~18週頃には骨化がはじまります。中耳で重要な役割を果たす鼓膜は、その発生について解明が進められている段階です。しかし、出生時には大人とほぼ同じ大きさとなっていることがわかっています。
胎児の耳はいつから聞こえる?
胎児の耳が聞こえるのはいつからなのか、とても気になりますね。胎児の耳は妊娠5ヶ月(16~19週)頃に外見上の形ができあがっています。しかし内部はとても緻密な構造をしており、音の伝達に必要な耳小骨や蝸牛が大人と同じ状態になるのは、妊娠7ヶ月になる妊娠24~25週にかけてです。
妊娠20週頃になると、胎児が音への反応を示したという事例が出てきます。また、妊娠26~29週の早産の赤ちゃんから、脳波で聴覚を検知できる「聴性脳幹反応」が得られたという報告があります。このため、妊娠6ヶ月頃には、音を聞き取れるまでに耳が発達していると考えられます。
しかし、耳の器官ができあがったとしても、まだ神経は発達途上の段階です。耳に入った音を「音」だと認識できるほどに脳とのネットワークは成熟していません。そのため、耳に入った音を理解し、音の聞き分けができるようになるのは妊娠8ヶ月頃からといわれています。
妊娠9ヶ月頃になると、聴覚はほとんど完成に近づいています。臨月に向け、お腹の中で獲得する機能を成熟化させているのです。そして聴覚は、生まれた後も2~3歳頃まで発達を続けます。外耳にいたっては、骨格の成長に伴い7歳頃まで大きさが変化するようです。
胎児はどんな風に音が聞こえる?パパの声は届く?
妊娠8ヶ月に入ると、聞きなれたママの声や他の人の声を区別して、赤ちゃんはそれぞれに異なる反応を見せはじめます。ママが話しかけると、赤ちゃんは外の音に呼応するように、お腹の中で口をパクパクさせる動きをするそうですよ(※1)。
お腹の中を満たす羊水は、高い音域は減衰する性質を持っています。一方で、人の声の音域はほとんど減衰しないといわれています。パパの声も、お腹越しにしっかり聞こえていると信じて、赤ちゃんの耳になじむように、たくさん声かけをしてあげたいですね。
赤ちゃんは騒音にも敏感に反応します。近いところで犬の鳴き声や電車の音などを聞くと、全身を震わせる「モロー反射」があらわれます。大きな音に反応して、びっくりしたような胎動を感じることもありますよ。
胎児はママのイヤホンの音が聞こえる?
ママがイヤホンを通じて聞いた音は、ママの耳に届きます。赤ちゃんの耳にはイヤホンから流れる音は聞こえていません。
しかし、ママが好きな音楽やお話を聞いてリラックスした気分で過ごしていれば、赤ちゃんにも良い影響が与えられるのではないでしょうか。妊婦のストレスや疲れは、ホルモンの分泌や筋肉の緊張に影響してきます。妊娠中も趣味の時間を大切にして、穏やかに過ごしましょう。
胎児に話しかけるコツは?
胎児は、ママがやさしく語りかける声が大好きです。抑揚にとんだハイトーンで話すと、赤ちゃんの反応が良くなることが知られています。ママの声が聞こえているか気になるときは、高いトーンの声を出すと胎動が感じられるかもしれません。反応が返ってくると、胎児の耳が聞こえることが実感できますね。
パパからのメッセージを赤ちゃんに贈るときは、ママのお腹にやさしくタッチしたり、ママを後ろからハグしたりしてみましょう。夫婦の絆が深まって、親としての自覚も芽生えやすくなりますよ。
胎教を考えて、絵本の読み聞かせに取り組んでみるのも良いですね。「会えるのを楽しみにしているよ」、「大好きだよ」というメッセージが込められた絵本なら、ママやパパの思いが赤ちゃんに伝えられそうです。言葉遊びや童話集を選べば、赤ちゃんに良い刺激が与えられるかもしれません。
胎児の聴覚障害の原因は?いつわかる?
胎児が聴覚障害を持って生まれてくる確率は、1,000人中1人という割合といわれています。このような先天的な聴覚障害を発症する原因は、いくつかあることがわかっています。
たとえば、赤ちゃんがお腹の中にいるときに、風疹、トキソプラズマ、梅毒などの子宮内感染を起こすと、胎児が聴覚障害となる可能性が出てきます。極低出生体重児、頭の奇形、細菌性髄膜炎の発症があった場合もリスクは高まります。妊娠中のアルコールや薬の摂取も、聴覚への影響が懸念されるリスクです。
聴覚障害は言葉の習得や情緒の発達に関係してくるため、早めに把握しておくことが望ましいものです。しかし、感染症や出生時の異常がなくても聴覚障害となるケースがあるため、生後3日以内に新生児聴覚スクリーニング検査を行う産院が増えています。
聴覚スクリーニング検査が実施できる病院は、自治体のホームページなどで紹介されています。もしも「耳が聞こえないのではないか」と心配なときは、自治体や病院で相談してみてはいかがでしょうか。
エコーで胎児の耳を見ると異常がわかる?
3Dエコーや4Dエコーは、条件が合えばお腹の中の赤ちゃんの様子を鮮明にとらえることができます。そのためエコー検査の画像で、耳の位置が通常より低いと感じたり、鼻が平たいと感じたりすると、「ダウン症なのではないか」「なにか異常があるのではないか」と気になることもあるかもしれません。
しかし、エコー写真は羊水量や胎児の向きに左右されるため、生まれてきた赤ちゃんが必ずしもエコー写真と同じ顔つきだとは限らないのです。
また、ダウン症などの遺伝子異常は、血液検査や羊水検査などで診断されるため、エコー写真の所見だけでは障害かどうか判断することは難しいものです。妊娠中に心配なことがあれば遠慮なく医師に相談し、気持ちをクリアにしていきましょう。
お腹の中の赤ちゃんに話しかけた体験談
筆者の第一子は男の子ということもあり、妊娠中は胎動にあわせ「キック、キック」「ハイタッチ」などとたくさん話しかけました。単にタイミングがあっただけなのかもしれませんが、キックという声がけに応じてポコポコとお腹を蹴ってくれた気がして、夫とともに「すごいね」「天才だね」などと親バカぶりを発揮していたのを覚えています。
キックでコミュニケーションをとった影響か、幼稚園の年中ころに、息子は誰に言われるでもなく「サッカーを習いたい」と言い始めました。胎児のころの記憶はないようですが、頭の片隅にでも、お腹の外から話しかけていた記憶が残っているのなら素敵だなと思います。
リラックスしながらお腹の赤ちゃんに語りかけよう
正常な妊娠であれば、音を受け取る器官としての耳は、妊娠週数が進むにつれて次第に形成されていきます。しかし、耳が外の音を聞き分ける力を身に着けるには、たくさんの声や音に触れることが大切です。
「胎児の耳が聞こえるはずがない」などと考えず、早い時期から話しかけたり音楽を聞かせたりして、愛情がたくさん感じられる環境を準備してあげたいですね。もしもママやパパが声を出すのを難しい状況なら、お腹をとんとんとやさしくタップして振動を伝えたり、楽器を使ったりするのもコミュニケーションにつながります。
普段の会話の言葉選びや、ママの気持ちがリラックスしていることも重要なポイントです。ママとパパの会話も赤ちゃんに届いていることを意識して、普段からパートナーへの思いやりを持って接していけると良いですね。
※この記事は2024年6月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。