受精障害とは?自然妊娠できる?治る?原因と体外受精における確率、改善方法について

不妊症の原因のひとつに「受精障害」があり、体外受精や顕微授精の過程で受精障害と診断されることがあります。卵子と精子が受精をしてはじめて妊娠となりますが、受精障害は受精が成立しない疾患です。受精障害は治るのでしょうか。また、症状を改善できれば自然妊娠が可能なのでしょうか。受精障害の原因や症状、治療方法について解説します。

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この記事の監修

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産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 受精障害とは?
  2. 受精障害の場合に受ける検査
  3. 受精障害の原因
  4. 受精障害の治療法と改善方法
  5. 受精障害で自然妊娠は可能?
  6. 受精障害と診断されたら治療方針を相談しよう
  7. あわせて読みたい

受精障害とは?

不妊の原因として「受精障害」があると診断される場合があります。受精障害はあらかじめわかるものではなく、不妊治療を受け続けて体外受精や顕微授精を試みたときに診断されることが多いようです。受精障害とはどのような症状で、どの程度の割合で起こるのでしょうか。

受精障害とは

通常の受精では、腟内に入った精子は卵子に向かって進み、そのうち1つだけが卵管膨大部で卵子と結合して受精卵となります。

受精障害とは卵子に対して十分な精子の数があるにもかかわらず、卵子と精子の結合がうまくいかず、受精できない状態のことをいいます。

受精障害は主として、精子の機能障害から起こることが多いとされている病気です。しかし、卵子のほうに機能的な問題がみられるケースもあります。また、卵子と精子のどちらにも原因があることもあります。

受精できないのは精子と卵子の相性の問題なのかも、と思う人がいるかもしれませんが、精子と卵子の相性と受精障害などの不妊症との関係に医学的な根拠はありません。

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受精障害は不妊治療を始めてすぐにわかるの?

受精障害は、体外受精や顕微授精を実施して初めて明らかになる不妊症の原因です。体外受精や顕微授精をしない限り発見できないので、自己流で妊活を進めていると受精障害があることに気付かず、なかなか妊娠できない状態が続いてしまうこともあります。

なかなか妊娠に至らない場合の原因が受精障害であるかどうかを判断するのはとても困難です。受精障害が原因だと突き止められるまでには、かなりの時間と治療費用がかかるとみて良いでしょう。

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体外受精で受精障害が発生する確率

2004年9月の日本産科婦人科学会の報告によると、1998年から5年間の体外受精919治療周期中124周期、つまり13.5%に受精障害周期があったとのことです。

919周期(491例)のうち初めての体外受精は311周期(311例)で、受精障害例は13.8%となっていたそうです。また、初回と2回目に連続で受精障害が認められた例はおよそ40%で、受精障害は繰り返されやすいことを証明する結果となりました。

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受精障害の場合に受ける検査

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抗精子抗体検査

抗精子抗体検査は、体内に抗精子抗体があることで妊娠のさまたげとなっている可能性を調べる検査です。抗精子抗体検査は男女ともに受けられます。

女性の場合は、体内に入ってきた精子を異物として反応した結果、精子に対して抗体ができてしまいます。男性の場合は、本来ならば精子と血液は接触しないようになっていますが、精巣や精巣上体などに炎症があって精子と血液が接触すると抗精子抗体ができてしまいます。不妊男性の約6%が抗精子抗体を持っているといわれます。

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受精テスト

受精テストとは、体外受精と同様に卵子を採り出して直接精子をかけ、受精できるかどうかを見る検査です。受精できなかった場合や受精卵が分割しなかった場合には卵子の状態や精子がどこまで卵子に接近できたのかをチェックし、その後の治療や体外受精の検討に入ります。

受精障害の原因

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受精障害の原因は、精子に問題がある場合、卵子に問題がある場合、精子と卵子の両方に問題がある場合の3つのパターンに分けられます。精子と卵子、それぞれの原因についてみていきましょう。

卵子側の原因の場合

受精障害の卵子側の原因については、次の通り考えられます。

・卵子の殻の部分である透明帯が固かったり厚かったりして精子が通過することができず、卵子の中に入り込めない。
・卵子は通常、精子が透明帯を通過したのちに精子の持つ因子が卵子内に放出されることで活性化して受精するが、何らかの原因で活性化しない。
・体外受精時に採取した卵子が未熟な状態であることなどにより、卵子自体に受精能力がない。

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精子側の原因の場合

受精障害の精子側の原因については、次の通り考えられます。

・精子の機能的な問題から卵子の殻である透明帯にくっつくことができず、透明帯を通過することができない。
・精子が透明帯を通過して卵子内に入れても、卵子を活性化させる因子を放出することができない。あるいは、活性化因子自体を持っていない。

受精障害の原因はひとつとは限らず、複数の原因から起こる可能性もあります。精子と卵子の両方に原因があり、それらが複合的に受精障害の原因となっているパターンもあります。

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受精障害の治療法と改善方法

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精子と卵子がうまく受精することができない受精障害では、どのような治療を行うのでしょうか。そもそも受精障害は治るのでしょうか。受精障害の改善方法も含めて解説します。

顕微授精

体外受精で受精障害に気づいた場合は、顕微授精に進むことが多いようです。卵子の殻の部分である透明帯が固い場合や精子に透明帯を通過する力がない場合に、強制的に透明帯を突き破り、人工的に精子を卵子の中に注入して受精をサポートする治療です。卵子と精子に活性化についての障害がなければ、受精にいたる可能性があります。

日本産科婦人科学会は、受精障害が一度確認されれば次も受精障害となる確率が高いことから、できるだけ早めに顕微授精に進むことを勧めています。

2004年のデータによれば、顕微授精下では、受精障害の発生頻度は5.6%です。初回の顕微授精での受精率が0%であっても、2回目の顕微授精での受精障害発生率は13%程度にとどまること、つまり顕微授精では受精障害が繰り返されにくいこともわかっています。

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卵子の活性化処理

卵子の活性化処理は、卵子が活性化しないことが受精障害の原因である場合にとられる治療法です。顕微授精によって卵子に精子を注入したのちに卵子をカルシウムイオノフォアという薬剤液に10分間浸けることで、卵子の活性化をうながします。卵子に電気刺激を与えて活性化を図る「電気刺激法」を行う場合もあります。

電気刺激法では、33周期で7例が妊娠、6例の分娩は正常でした。卵子の活性化処理は、顕微授精と併用して行われます。

未成熟卵の体外成熟培養(IVM)

体外受精や顕微授精では通常、体内で成熟した卵子である成熟卵を使います。しかし受精障害の原因が卵子が成熟しない(受精できない)ことである場合、成熟卵の採取が不可能なことがあります。成熟卵が採取できない場合は、成熟する前の段階の「未成熟卵」を採取して「体外成熟培養(IVM)」を行います。

体外成熟培養では、ホルモン剤などを添加した培養液に未成熟卵を1~2日間浸けることにより体外で成熟させます。体外成熟培養で育った成熟卵は体内に戻されることはなく、じゅうぶんに成熟しているかどうかの確認のためにも顕微授精が必須となります。

体外成熟培養のメリットは、ホルモン治療などによる「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」の回避が可能なことです。しかし、体外成熟培養によって成熟しない未成熟卵もまれにあり、成熟卵を得られても妊娠できる確率はまだ低いのが現状です。

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排卵誘発方法の変更や採卵数を増やすこと

体外成熟培養以外の方法としては、排卵誘発の方法を変えてみることがあげられます。また、エコーなどの装置を用いて卵子を観察する回数を増やし、成熟卵の採取数を増やす方法などがあります。

受精障害で自然妊娠は可能?

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受精障害があり自然妊娠をする確率は、ゼロとは言い切れません。連続して受精障害の周期となる可能性は高いものの、連続しない可能性もあるからです。周期によって受精できる場合もありますし、精子に異常がある場合でも、数は極めて少ないながらも正常な精子が存在することもあります。

しかし受精能力のある卵子と精子が出会う確率はとても低いため、自然妊娠には時間がかかるでしょう。自然妊娠できる可能性は、顕微授精などの医学的措置を行う場合と比べると非常に低いと言わざるを得ません。

顕微授精を行った場合の受精率は約70%以上といわれ、顕微授精をすれば5回中3回の割合で受精卵ができる計算になります。しかし受精卵を子宮に戻したあとに妊娠が継続するかどうかはまた別の問題です。

受精卵が着床して初めて妊娠に至りますが、その確率は女性の年齢にも関係があります。20代では平均40%、30~34歳では約35%、35~40歳では約20%となり、40歳を超えると数%にまで下がってしまうといいます。

受精障害がなくても、年齢が上がれば上がるほど受精ひいては妊娠が難しくなります。不妊治療を始めた年齢が高い人は特に、受精障害の原因を知り、早めに治療にあたることが大切です。

受精障害と診断されたら治療方針を相談しよう

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受精障害と診断されたら、医師とパートナーと治療方針を早めに検討することをおすすめします。原因にもよりますが、受精障害は治療によって治る例や改善が可能な例が多いため、受精障害の状況は少しずつでも変わっていくでしょう。

卵子や精子に薬剤処理や電気刺激を与えることに抵抗がある人がいるかもしれませんが、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療技術は赤ちゃんが欲しいという気持ちを応援してくれるものだと考えてはいかがでしょうか。卵子に電気刺激法を施す場合、遺伝的に安全性の高い電気刺激を適切な方法で加えれば、染色体異常の発生頻度は低いとする研究結果もあります(※1)。

受精障害の治療法は原因によってさまざまであり、受精障害を専門とする病院もあります。医師の説明をよく聞き、少しでも不安や疑問があれば遠慮なく質問しましょう。まずは自分たち自身が正しい知識を持って治療に臨めると良いですね。

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