流産の手術の流れと費用は?手術後は出血や腹痛がある?生理・妊娠はいつから?

流産すると、手術を行って胎児や胎盤を排出することになります。流産手術の方法は、流産する時期によって異なりますが、ここでは、流産の約8割を占める早期流産の手術の流れを中心にまとめました。手術後の出血や腹痛はいつまで続くのか、生理が再開する時期はいつか、体験談を交えながら解説していきます。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 流産とは
  2. 流産すると手術が必要?
  3. 流産の手術の流れは?日帰りでできる?
  4. 流産手術のリスクは?
  5. 流産の手術の費用は?保険は適用?
  6. 流産手術後の出血・腹痛はいつまで?
  7. 流産手術後の生理はいつ来る?仕事はどうする?
  8. 周囲にサポートしてもらいながら心身をケアして
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流産とは

流産とは、何らかの原因によって妊娠22週未満に妊娠が中断してしまうことです。エコー検査で赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」が確認できてから妊娠12週未満に起こるのは「早期流産」、妊娠12週以降に起こるのは「後期流産」と呼ばれています。

流産は誰にでも起こる可能性があり、すべての妊娠のうち約15%の確率で発生します。特に妊娠初期に発症するリスクが高く、流産の約80%は早期流産です。早期流産の原因の多くは受精卵の染色体異常で、未然に防ぐことはできないといわれています。一方、後期流産では、「絨毛膜羊膜炎」や「子宮奇形」など母体側に問題があるケースが多くなります。

流産は、胎児や胎盤などの子宮内容物の状態によって「進行流産」と「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」に分けられます。進行流産と稽留流産では、あらわれる兆候・症状も異なります。

なお、流産にはいたっていないものの、その危険性が高い状態を「切迫流産」と言います。妊娠初期の切迫流産には治療法がありませんが、妊娠を継続できる可能性もあり、安静にするよう指導されます。

進行流産

子宮内容物が外に流れ出てきている状態です。子宮内容物の排出の程度によって、さらに分類され、子宮内容物の一部が子宮内に残っている場合は「不全流産」、子宮内容物が完全に排出されると「完全流産」です。

不全流産では、生理に似た不正出血や下腹部痛、お腹の張り、腰痛の症状が持続します。妊娠初期には、特に問題がなくても出血や腹痛がみられることがあるものです。しかし、血の塊が出る、陣痛のようなお腹の痛みや張りが周期的にあらわれる、しばらく安静にしても症状が治まらないといった場合、流産の兆候の可能性があります。

完全流産では、子宮内容物がすべて排出されるまでは不全流産と同様の症状があらわれますが、完全流産後は症状がなくなるか軽減します。

稽留流産

稽留流産とは、子宮内で胎児が亡くなった後、子宮内容物が排出されずに残っている状態です。腹痛や出血といった自覚症状があらわれないことが多く、手術などで子宮内容物が排出されるまでは、つわりが続くケースもあります。そのため、自分で流産に気付きにくく、妊婦健診のエコー検査で初めて判明することが少なくありません。

稽留流産は、放置すると自然に子宮内容物が排出され始め、症状があらわれることがあります。

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流産すると手術が必要?

流産が起こると、子宮内容物が自然にすべて排出されるのを待つ「待機療法」が選択される場合もあります。しかし、いつ自然排出されるかわからないほか、子宮内容物を長期間、子宮内に残しておくと、出血量が増加したり、感染の原因になったりしかねません。そのため、不全流産や稽留流産では、子宮内容物を除去する手術を行う場合がほとんどです。

早期流産の場合に行う手術は「子宮内容除去術」と呼ばれています。子宮内容除去術の方法としては、ハサミ状の器具で子宮内容物を出す「掻爬(そうは)法」と、吸引器を使う「吸引法」があります。

一方、後期流産では、胎児の成長が進んでいる分、子宮内容除去術を行うと母体への負担が大きくなります。したがって、子宮収縮剤で陣痛を起こし、通常の分娩と同様に子宮口を開いて胎児と胎盤を排出します。

なお、子宮内容物がすべて排出された完全流産では、子宮が自然に妊娠前の状態に戻り、症状も治まっていきます。そのため、手術なしで経過観察となります。

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流産の手術の流れは?日帰りでできる?

流産の多くは妊娠12週未満に起こる早期流産です。ここでは、早期流産が起こったときに行う「子宮内容除去術」という手術の流れを解説します。

手術は30分程度で終わるため、日帰りで行えるケースもあります。ただし、前日に子宮頸管を拡げる処置を行なうことがあり、病院によっては前日に入院となります。

なお、手術の6時間前からはよほどのことがない限り絶飲食です。

手術前の検査

手術を行う前に、エコー検査で胎児の心拍動がないことを何度か確認し、流産していることを確かめます。また、手術の合併症を防ぐため、子宮の大きさや位置についても内診で把握する必要があります。将来の血液型不適合妊娠のリスクを減らすため、血液型を確認することも重要です。

膀胱を空(から)の状態にする

膀胱が空の状態でないと、手術中に子宮を固定しづらくなり、処置が困難になります。また、手術直後の子宮収縮も悪く、出血が多くなるといわれています。そのため、排尿をしっかりする、もしくは、管を通して採尿します。

子宮頸管を拡げる処置

初産などで子宮頸管が硬く閉じられていると、手術の器具が挿入できないため、ラミナリアやラミセルと呼ばれる特殊な棒を用いて、子宮頸管を拡げる処置を行います。半日ほどかけて徐々に拡張させる必要があるため、手術前日に行うことがほとんどです。この処置の際に強い痛みを感じる人もいるようです。

麻酔

麻酔は、点滴による静脈麻酔が一般的です。心電図や血圧などを観察しながら、慎重に投与していきます。投与し始める際、麻酔がしっかり効いているか確認するため、数をカウントさせられることがあります。「いち、に、さん」と数えている途中で意識がなくなり、眠っているあいだに手術は終了します。

掻爬法・吸引法による処置

掻爬法の場合、鉗子(かんし)というハサミのような器具で子宮内容物を挟んで取り出します。さらに、キュレットという器具を使い、子宮内容物が残らないよう子宮壁をかきます。ただし、強くかき過ぎると、手術後に子宮内腔が癒着する「アッシャーマン症候群」を発症するリスクが高まるため、適度に行うことが重要です。

吸引法の場合、子宮内に吸引器を挿入して子宮内容物を吸引し、最後にキュレットで子宮内容物が残っていないか確認します。吸引法は搔爬法に比べて子宮収縮が良好で、出血や術後の痛みが軽くて済むというメリットがあります。しかし、器具の洗浄や減菌に手間がかかるため、日本では掻爬法が行われるケースが多いようです。。吸引法、掻爬法の両方を併用するケースも多くなっているようです。

子宮内容物の確認

子宮内容物を取り除いたら、異常出血がないかどうかを確認します。また、子宮内容物を肉眼で見て絨毛を確認して、「胞状奇胎」や「子宮外妊娠」ではないことを確かめます。

術後の処置

手術後、プロスタグランジン製剤などで子宮の収縮を促します。また、抗菌薬を投与して感染を防止します。

退院

手術後は病室で数時間休みます。麻酔が完全にきれて、歩ける状態になり、エコー検査で腹腔内の出血がないことなどが確認できたら退院です。少量の出血や軽い痛みがみられる場合がありますが、通常は大きな問題にはなりません。

退院後、基本的に2~3日間は自宅で安静に過ごすよう指導されます。お風呂については、シャワーは浴びることができますが、入浴は術後1週間控えるようにいわれることが多いようです。

通常、手術の1週間後くらいに診察があります。指定された日に必ず受診しましょう。

流産手術のリスクは?

感染

手術は、十分に消毒した器具を使うなど、注意深く行われます。しかし、まれに子宮内感染を起こし、発熱といった症状があらわれることがあります。その場合、抗生剤の投与などの治療が必要になります。感染の原因菌としては、嫌気性菌やクラミジアがあげられます。

感染が起こると、子宮内膜の細胞層の一部が欠け、子宮内腔に癒着が起こる「アッシャーマン症候群」や「卵管閉塞」を発症する恐れがあります。こうした後遺症は、不妊のリスクを高める原因になったり、次回妊娠時に「前置胎盤」や「癒着胎盤」といった胎盤のトラブルを引き起こしやすくなったりします。

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子宮穿孔(しきゅうせんこう)

子宮穿孔とは、手術によって子宮壁に穴が開いてしまうことです。妊娠中の子宮は柔らかいため、子宮壁にもろい場所があると穿孔が起こりやすくなります。そのため、手術前には子宮の形態を慎重に確認し、手術中は無理な力を加えないよう、つねに注意する必要があります。

万が一、子宮穿孔が起こった場合、小さな穿孔ならば子宮収縮薬と抗生剤を投与し、経過を観察しますが、大きい場合や腹腔内に出血がみられるときは開腹手術を行うことがあります。

頸管裂傷

子宮頸管を無理に拡げようとすると、子宮頸管が裂傷してしまう危険性があります。これを防ぐため、ラミナリアなどを使ってゆっくりと拡張するようにします。

子宮内容物の遺残

慎重に手術をしても、子宮内容物や血液が子宮内に少量残ってしまうことがあります。たいていは自然に排出されますが、術後数週間しても出血が続く原因になります。また、感染源になり、発熱や腹痛の症状があらわれる恐れもあります。子宮収縮薬を投与して経過を観察しますが、場合によっては再手術が必要です。

麻酔の副作用

静脈麻酔は即効性があり、鎮痛効果が高い反面、吐き気やめまい、嘔吐といった副作用があらわれる場合があります。ただし、副作用の出方には個人差があり、まったく症状があらわれなかったという人もいます。

流産の手術の費用は?保険は適用?

子宮内容除去術は健康保険が適用されるため、自己負担額は3割で済みます。費用は日帰りか入院かによって異なりますが、1万円台後半~5万円程度が一般的です。

ただし、後期流産では、子宮内容除去術が行えず、通常の分娩と同様の処置をとるため、分娩費用が発生します。分娩費用は健康保険の適用外で全額自己負担のため、数十万円かかります。しかし、妊娠12週以降の流産や死産の場合、健康保険から支給される「出産育児一時金」の対象になり、ひとりの赤ちゃんの流産につき42万円が受け取れます。

なお、医療保険や生命保険に加入していれば、給付金の対象になる場合があるため、保険会社に確認しましょう。

流産手術後の出血・腹痛はいつまで?

流産手術の直後は、少量の出血や腹痛がみられることがあります。これは、子宮が妊娠前の状態に戻ろうとする「子宮復古」の過程で起こるものだと考えられます。

出血や腹痛がいつまで続くかは個人差があり、手術後、1週間程度で治まったという人もいれば、数週間続いたという人もいます。ただし、自分では不正出血だと思っていても、実は生理が再開していたという可能性もあります。また、最初は出血がみられ、次第に血液が混じった茶色いおりものに変化し、症状が治まっていくというケースもあります。

多くの場合、手術後に軽度の出血や腹痛が続くことは大きな問題ではありません。しかし、2週間以上、症状が治まらなければ、病院を受診するようにしましょう。また、大量に出血している、発熱を伴う、日常生活に支障をきたすほど腹痛がひどいといった場合、術後の合併症を発症している可能性もあるため要注意です。

手術後2日間は、重い生理痛のような痛みがありました。陣痛に近い痛みだと感じました。出血は1週間ほど続きましたが、徐々に血の量が少なくなりました。

流産手術後の生理はいつ来る?仕事はどうする?

手術後の生理・妊娠

生理は、流産の手術をしてから3~6週間後に再開することが多いようです。一般的に、排卵は生理の約2週間前に起こるため、術後1~4週間で排卵することになります。ただし、流産後は精神的、身体的なストレスにより、生理周期が乱れやすくなっているため、あくまでも目安と考えてください。もしも手術後2ヶ月以上経過しても生理が来なければ、病院を受診しましょう。

子作りの再開のタイミングについては、流産後、少なくとも1~2回は生理を見送った方が良いと考える医師が多いようです。ただし、手術後の体調は個人差が大きく、子宮の状態が妊娠に向けて完全に整うまで時間がかかる人もいるため、いつから妊娠して良いのかは医師に相談しましょう。

流産後はまた妊娠できるか不安や焦りが生まれるかもしれませんが、まずは流産によって受けた心身のダメージを回復させることを優先してくださいね。栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠などで心と身体をケアすることで、結果として、ホルモンバランスが整い、妊娠しやすい身体を作ることにもつながりますよ。

流産後の生理は1ヶ月半後に来ました。流産前に比べて、生理の量や色の変化は特に感じませんでした。また、性行為は生理が再開するまでは控えるように医師に指導されました。

手術後の仕事

仕事をしている場合、流産の手術後、どれくらい会社を休んでよいのか悩むかもしれません。手術後2~3日間は安静にするよう指示されるため、会社に事情を話して、少なくとも安静期間はお休みをもらいましょう。仕事に穴を開けられないという方も多いでしょうが、まずはしっかりと心身を休めることが大切ですよ。

会社に妊娠を報告する前に流産してしまったという場合は、無理に流産したことを伝えなくても良いかもしれません。しかし、安静期間後も体調が不安定な時期が続き、やむを得ず遅刻・早退や欠勤しなければならない日が出てくる場合もあるため、直属の上司には話しておいた方が安心ではないでしょうか。周りの人に流産したことが知られたくない場合、口外しないように配慮してもらいましょう。

流産というつらい経験をしたのですから、自分が思っている以上に気持ちは落ち込んでいるものです。仕事をすることで気が紛れる人もいるかもしれませんが、自分の心の声に耳を傾けながら、くれぐれも無理をしないようにしてくださいね。

周囲にサポートしてもらいながら心身をケアして

残念ながら、流産は誰もが経験する可能性があります。何の兆候もなく、突然起こることもあるため、「どうして私が」と苦しんでしまうかもしれません。しかし、流産は防ごうと思って防げるものではないため、自分を責め過ぎないでください。

流産手術後、仕事や家事、子育てなどで忙しい日々がすぐに戻ってくるかもしれませんが、夫など周囲の人にサポートを頼みながら、自分の心身の回復を優先するようにしましょう。

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