卵子の大きさと妊娠の関係性。卵子が小さいと排卵しにくいの?|産婦人科医監修
産婦人科医監修|卵子の大きさと妊娠に関係があるということを知っていますか?卵子の数は年々減り、残った卵子の中からしっかり成熟したものだけが排卵されます。ホルモンバランスが崩れてしまうと、卵胞内の卵子も発育できなくなってしまいます。卵子の大きさの検査方法や、成熟に必要なものをご紹介します。
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目次
卵胞と卵子の関係
卵胞とは?
「卵胞」とは、卵巣内にある卵子の入っている袋のような組織のことをいいます。ひとつの卵胞の中にひとつの卵を含んでおり、周りは卵胞液で満たされています。
生理周期にともない、いくつかの選ばれた卵胞が発育していきます。排卵期には、発育している卵胞の中で最も大きくなった「主席卵胞」が成熟し、袋が破れて卵子は卵管内に放出されます。これが排卵です。排出された卵子と精子が結びつくことで受精卵となり、受精卵が着床すれば妊娠が成立します。
卵胞とは卵子を育てる袋であり、卵子の数と卵胞の数は比例しているといえます。妊娠を目指すのであれば、質の良い卵子、ひいてはきちんと成熟できる卵胞が必要なのです。
卵胞の大きさとつくられる数
卵胞にはいくつかの段階があり、最初は「原始卵胞」といわれる状態です。原始卵胞の大きさはわずか0.03mmほどで、月経周期ごとにいくつかの卵胞が、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌によって成熟し、直径0.2mm~5mm程度になっていきます。排卵前にはひとつの主席卵胞が1日で約1.5mmずつ大きくなり、最大で18mm〜22mmまでに成熟します。
排卵するころには、卵子自体の大きさは、0.1~0.2mmほどとなっています。卵胞が育っても、卵子自体がなかったり、卵子の大きさがまったく育っていなかったりすることもありますが、一般的には卵胞の大きさで卵子の大きさも推定可能です。主席卵胞が分泌するエストロゲンにより、他の卵胞は退化して消えます。卵胞の大きさを見ることで、排卵時期が予測できるのです。
卵胞の数は産まれたばかりの時点で約200万個ありますが、加齢にともなって減少していきます。つまり、卵子の元になる卵胞には、年齢による数のリミットが存在しているのです。
1回の排卵で消える卵子の数は、20代で1,000個、35歳を超えると100個ほどといわれています。消失する卵子の数が少なくなるにつれ、卵子の質が低下し、染色体異常も増えていくようです。
卵子の大きさは肉眼で見える?
卵子の大きさは排卵前の最大値で約0.1~0.2mmほどです。よく目を凝らせば、肉眼でも見ることは可能といえるでしょう。一般的には顕微鏡をつかって見ます。
ちなみに、卵子の大きさは植物性プランクトンのミカヅキモと同じくらいです。ミジンコが2mm程度なので、本当に小さいものですね。しかし、実は、卵子は人体の細胞のなかでは最も大きい細胞なのです。精子の大きさは約0.06mmといわれているので、肉眼で見るのは不可能といえます。
卵子の大きさを測る検査方法は?
超音波検査
卵子の大きさを測るには、卵子の周りを包む卵胞の大きさを測る必要があります。卵胞の大きさを測るには、「経腟プローブ」という器具を使った超音波検査を行います。不妊治療においては、基礎体温をチェックする次の段階で超音波検査をすることが多いようです。
経腟プローブは、超音波を送受信できる直径2cmほどの棒状のものです。検査用のゼリーを塗ったプローブにカバーをつけ、腟内に挿入します。医師と同時に、自分でもリアルタイムで子宮や卵巣の状態を観察できます。
卵胞の大きさと数を測定して排卵日を予測します。排卵後には、卵胞がつぶれてなくなっていることを確かめることもできます。また、きちんと排卵が起こったかどうかの指標にもなります。一般的に、体外受精の際には、生理が始まった日から2日目に超音波検査を行い、排卵誘発方法を決めるようです。
数を測るのがAMH検査
大きさではなく、卵巣に残っている卵胞の数を測る検査もあります。これを「AMH(抗ミューラー管ホルモン)検査」といい、不妊治療において最近注目を浴びています。卵胞から分泌されるホルモンの値を測ることで、卵巣に存在する未熟な卵胞(原始卵胞)の残り数を知ることができます。
卵子の大きさも卵子の数も、必ずしも妊娠のしやすさをあらわしているわけではありません。卵胞がしっかり成熟しなければ受精しにくく、卵子の数が少なくなれば、不妊治療が可能な期間も変わってきます。それぞれの検査は、自分の人生設計をつくる指標になるといえるでしょう。
卵子が小さいとどうなる?
小さすぎると排卵しにくい
卵子が含まれる卵胞が18mm未満であれば、排卵しにくい状態といえます。排卵があって妊娠に結びつくので、排卵がないと妊娠することはありません。しかし、卵胞の大きさが小さいからと妊娠をあきらめる必要はありません。薬や注射のホルモン剤によって、卵胞の成長を促して排卵させることができます。
ホルモン剤は万能のように思いますが、副作用もあります。倦怠感や頭痛、子宮の腫れなどを引き起こすことも考えられます。必ず医師に相談しながら処方してもらい、不調があればすぐに受診しましょう。
無排卵月経の場合も
生理があるのになかなか妊娠しない場合は「無排卵月経」の可能性もあります。生理のような出血はあるのに排卵がともなっていない状態で、無排卵周期症ともいわれます。基礎体温では高温期がなく、低温期のみとなります。
原因としては、卵胞が破裂せずに卵巣の壁にくっついてしまう「多囊胞性卵巣症候群(PCOS)」や、「高プロラクチン血症」「甲状腺疾患」などが考えられます。これらはホルモン分泌の異常が原因であり、卵胞の発育や成熟にダメージを与える要因となってしまいます。
体外受精で採卵できないことも
体外受精とは、女性の卵巣から成熟した卵子を取り出し、培養液のなかで精子と受精させ、受精卵を子宮の中に戻すという治療法です。しっかりと成熟した卵子を採卵できるかどうかが成功の鍵を握ります。体外受精では、頻繁に経腟超音波やホルモン採血などで卵胞の発育を調べ、排卵直前に採卵を行います。
多くの成熟した卵子を効率良く得るために排卵誘発剤などが使用されますが、十分な数の卵胞が発育しない場合などは、採卵を中止することもあります。そのため、不妊治療においては、卵胞の発育や卵子の大きさを気にかけなければなりません。
卵子の大きさと妊娠率
卵子が小さいと自然妊娠できない?
卵胞の大きさが排卵の時期の目安となります。つまり、卵子が小さいまま成長していないと、排卵自体が起こらない可能性もあるのです。卵胞がまだ小さいうちに成長が止まってしまう理由のひとつに、「多嚢胞卵巣」があります。卵胞が小さいまま卵巣の膜が厚くなり、排卵障害が起こってしまうのです。
また、成長が非常に遅くなっている場合もあります。排卵までの周期が長い人は要注意です。卵胞が成熟するために必要な「卵胞ホルモン(エストロゲン)」や「卵胞刺激ホルモン(FSH)」などが不足している場合もあります。
卵胞が小さくて成熟していないと、たとえ排卵されても受精につながりません。つまり、自然妊娠は難しくなるといえます。体外受精などの場合は、しっかり成熟した卵胞から卵子を採取するので、卵胞が小さいことは大きな問題となります。卵胞が小さいという症状は、脳下垂体や卵巣から分泌されるホルモンの異常によって起こるといわれており、ホルモン検査で診断が可能です。
卵子を成熟させるには?
卵胞が成熟しない場合、不妊治療においては、クロミッドなどの排卵誘発剤を使う治療法が一般的です。排卵誘発剤は卵巣を刺激し、卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの分泌を促進する働きがあり、飲み薬や貼り薬、注射などの種類があります。ホルモン剤は副作用の危険もあるので、医師と相談してから治療にあたりましょう。
軽度の症状であれば、サプリや漢方をすすめられることもあります。たとえばビタミンA、ビタミンE、コエンザイムQ10などは抗酸化作用があり、ホルモンの分泌を助けてくれるといわれています。漢方では、身体を温めて血の巡りを良くするものが処方されます。
ストレスや生活習慣を見直すことも重要です。ホルモンの分泌は脳が司令塔になっているので、過度なストレスはホルモンバランス異常の元になるからです。また、不規則な生活は、身体の酸化をすすめてしまいます。喫煙や飲酒を避け、早寝早起きを心がけながら、リラックスできる環境を整えていきましょう。
妊娠を望むなら卵子の大きさも気にしてみよう
卵胞や卵子の大きさと妊娠とは、大きく関係しています。しっかりと成熟した卵胞に入っている卵子は、受精できる確率が上がります。妊娠を望む場合は早めに婦人科や産婦人科に行き、超音波検査やホルモン検査をしてもらっても良いでしょう。
ホルモンバランスが崩れてしまうと、卵胞も成熟できなくなってしまいます。ホルモン分泌を整えるために、食事の見直しやストレス発散など、普段からできることを始めてみてはいかがでしょうか。
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