卵管閉塞症とは?原因や自覚症状、治療法と妊娠との関わり
卵管閉塞症とはどんな病気かご存知ですか。妊娠と深く関わる卵管の病気について、その原因や自覚症状、治療法についてご紹介します。紹介内容を参考にしながら、お医者さんより適切なアドバイスを受けましょう。
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目次
卵管とは
子宮の左右には卵巣と子宮をつなぐ「卵管」と呼ばれるくだがあります。
卵管の区分
卵管は子宮に近い部分から以下のように分けられています。
・卵管間質部…長さは約1cmの子宮壁とつながる部分。
・卵管峡部…子宮壁から約2cmの内腔が狭い部分。
・卵管膨大部…長さ約6cmほどの卵管峡部より外側の内腔が広くなっている部分。
・卵管采部…卵管の先端部分。
卵管壁
卵管の壁は粘膜、筋層、外膜の3層から形成されています。そのうちの粘膜上皮は次のふたつの細胞です。
・分泌細胞 精子に栄養を与え、保護する。受精卵への栄養を与えることもある。
・線毛細胞 受精卵を子宮に向かわせるような方向に運動する。
卵管の役割
卵管は妊娠において、下記のような重要な役割を担っています。
卵子を卵管采でピックアップし、卵管に取り込む。
卵管采は、イソギンチャクのような形をしています。排卵の時期に排卵する予定の卵胞に近づいていって、卵巣にはりつくようにして、卵胞から出てくる卵子をピックアップします。
出会った卵子と精子を受精させる。
卵管采によって卵管内に取り込まれた卵子は卵管峡部もしくは卵管膨大部で精子と出会い、受精します。
受精卵を発育させる。
受精の後、受精卵はコロコロと卵管内を行ったり来たりと転がりながら成長します。
受精卵を着床場所である子宮へ運ぶ。
成長した受精卵は子宮へと向かいます。精子は元々運動能力があり、卵管の中を移動できますが、受精卵は運動能力ありません。そこで、卵管の線毛細胞が一方向に動くことによって、受精卵が卵管から子宮に向かうことができるようになります。
卵管閉塞とは
左右ある卵管の片方または両方の内腔が閉塞して完全に通過性が失われている状態を卵管閉塞、または卵管閉鎖とも言います。
卵管閉塞症の原因とは?
卵管閉塞症の原因として腟から侵入したクラミジアなどの細菌による卵管炎、子宮内膜症による癒着、虫垂炎(結果として卵管水腫になります)などが原因としてあげられます。しかし、どれにも当てはまらず原因不明の場合もあります。
自覚症状は?
卵管閉塞症の自覚症状として、おりものの量が多い、下腹部の鈍痛などがあげられますが何も感じない場合も多いので妊娠を希望するまでは発見することが難しい場合が多いようです。
卵管閉塞症と妊娠
卵管は子宮の左右に1本ずつあります。このうち、どちらか片側だけでも通っていれば妊娠をすることは可能です。しかし両側が閉塞していると自然妊娠することはできません。
そこで、卵管が機能しているかどうかを調べる検査をすることができます。以下のような検査方法があります。
通気検査
炭酸ガスを卵管に注入して圧を記録して通過性があるかを見る検査です。ガスの圧力変化を記録することで、癒着や変形の有無を調べることができ、短時間で行えるというメリットがあります。
子宮卵管造影検査
子宮の中に特殊なチューブを固定し、粘性度の高い油性の造影剤を注入して、X線透視で造影剤が子宮~卵管~腹腔まで拡がる様子を観察することで検査します。もし卵管に障害があると造影剤が広がらずにとどまります。ただし、この卵管造影検査には副作用などのリスクがあります。どのようなリスクがあるのか、以下にまとめてみました。
・被爆
卵管造影はレントゲン写真を連続で透視しながら撮影します。透視の時間は約20~30秒で、その間に2~3枚撮影します。これで卵巣への被ばく量は大体2.1mSV程度です。
・痛み
造影剤を入れる痛みには個人差があります。卵管の狭窄や閉塞がある場合には痛みがひどくなります。
・腹膜炎
腟内の消毒と、検査後の抗生剤の服用でを腹膜炎の発生はほぼ抑えることができるようです。
・アレルギー:ヨード過敏症
まれなケースですが造影剤によるアレルギーは注意が必要です。
・血栓症
油性造影剤が脈管侵入して血栓を起こすことがあります。もし脈管侵入が認められたらすぐに検査を中止します。
・甲状腺への影響
卵管采から腹腔内へこぼれた造影剤は油性のため半年近く腹腔内に残ります。造影剤は主成分がヨード(ヨウ素)のため、一時的に体内のヨード濃度を高めますので甲状腺ホルモンの産生を押さえ、一時的な甲状腺機能低下症を引き起こしてしまいます。
卵管閉塞症の治療法
もしも両側の卵管が閉塞していた場合、そのままでは自然妊娠することはできません。両側卵管閉塞で、自然妊娠を希望する場合は治療を必要があります。それでは2つの治療法を説明していきます。
卵管通水法
卵管通水は外来でできる、比較的簡単な治療です。卵管閉塞の検査のために子宮卵管造影検査を行った際に造影剤が通らなかった場合、後日ステロイド剤や抗生物質の入った水や、食塩水を圧力をかけて注入します。軽い癒着による閉塞の場合は、この治療により詰まりがとれて開通します。
卵管形成手術
もうひとつの有効な治療として卵管形成手術があります。従来は卵管形成手術といえば腹腔鏡下での手術が一般的で、この場合は全身麻酔による手術となり、数日間の入院が必要だったため、患者への負担が大きいのが難点でした。しかし現在は、日帰りでの手術が可能な卵管鏡下卵管形成術(falloposcopic tuboplasy:FT)で治療することが多くなってきています。この治療ではカテーテルを子宮へ挿入し、子宮の中から卵管の入口を探します。カテーテルが卵管に届いたら、内蔵のバルーンを卵管に通し、狭くなっている部分でバルーンを拡張することで卵管の通過性を回復させます。また、バルーン内側を通る外径0.6mmの子宮鏡で卵管内のひだ構造を観察することができ、卵管の機能を評価することも可能です。
なかなか妊娠しないときは卵管の検査をしましょう
卵管は妊娠の成立に関わるとても重要な部分です。両側の卵管が閉塞していては妊娠することができません。しかし、卵管が閉塞していても何の症状も出ないために不妊の原因がわからないまま時間ばかりが過ぎてしまうことが多いようです。妊娠を希望する場合は、まずは自分の身体について知ることが大事です。もし他に原因が思い当たらずに、なかなか妊娠しないようでしたら一度、検査をしてみることも良いかもしれません。最も適した検査方法は人によって異なります。医師に十分に相談して受けましょう。