AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で卵巣年齢がわかる?費用は?

30代、40代になっても美しく、アクティブで若々しい現代女性はたくさんいますが、身体の中の卵子は日々減少しています。いざ子どもがほしいと思うときには、妊娠自体が難しくなっている可能性もあります。妊娠を考えている女性なら知っておきたい、卵子の残数の目安となる「卵巣年齢」と「AMH検査」について解説します。

16461

本ページはプロモーションが含まれています

この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 今、不妊治療の場面で注目されている「AMH検査」
  2. AMH検査でわかる卵巣年齢とは?
  3. 卵巣予備能力の目安となるAMH(抗ミュラー管ホルモン)とは?
  4. AMH検査で、なぜ卵巣予備能力がわかるの?
  5. AMH検査の方法、費用、注意点とは?
  6. AMH検査の結果からわかることとは?
  7. AMH検査の意義とは?
  8. AMH値と妊娠率は比例するの?
  9. 卵巣機能を判断するための、他のホルモン検査とは?
  10. 自分の卵巣の状態を知って、前向きに妊活を!
  11. あわせて読みたい

今、不妊治療の場面で注目されている「AMH検査」

「子どもが欲しいけれど、なかなか授からない…」「妊娠出産は何歳までできるの」と悩んでいる女性は多いのではないでしょうか。初婚・出産年齢が年々上昇し、結婚後も男性と肩を並べて働く女性が多い昨今では、妊活のためにクリニックを訪れるカップルが増えています。

近年、不妊治療の場面で注目されているのが「AMH検査」です。このAMH検査で何がわかるのか、検査内容や方法、費用について詳しく述べます。

AMH検査でわかる卵巣年齢とは?

卵巣年齢とは、卵巣に備わっている能力(=卵巣予備能力)のことです。

卵子のもととなる細胞(原始卵胞)は、女性が母親の胎内にいるときに作られ、その数は700万個ほどです。しかし、出生時には200万個ほど、初潮を迎えるころには約30万個にまで減少します。

また、毎月の生理のたびにおよそ1,000個ずつ減少するといわれています。卵巣内の原始卵胞がおおむね1,000個以下になると閉経を迎えます。

もともとの卵子の数は人によって差があり、痩せすぎによる低体脂肪率や、ビタミンDの不足が卵子の減少スピードを早めるという研究結果もあります。「卵巣内に卵子がどれくらい残されているのか」を推定する検査が「AMH検査」であり、AMHの値は卵巣予備能力を判断する重要な指標とされています。

AMH値は個人によって数値の開きが大きく、必ずしも年齢と正規分布しない特徴があります。したがって、「正常値」や「基準値」を算出することが難しく、AMH値の評価基準は「同世代の中央値」です。中央値と比較してAMH値が高いと、卵子の残数が多い=卵巣年齢が若い(卵巣予備能力が高い)といえます。

卵巣予備能力の目安となるAMH(抗ミュラー管ホルモン)とは?

卵巣内の卵子数を推定するためのAMH検査の対象となる「AMH」とは、「アンチミューラリアンホルモン」もしくは「抗ミュラー管ホルモン」(anti-Mullerian hormone)の略称です。AMHは、卵巣内の「前胞状卵胞」の顆粒膜細胞から分泌されます。また、ミュラー管とは、女性の内性器である子宮や腟のもととなる組織のことです。

女性の身体の中では、常に一定のサイクルで原始卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞→成熟卵胞へと卵胞が成長し続けています。原始卵胞から成熟卵胞となり、排卵するまでには120日以上かかるといわれています。

原始卵胞から2〜6mm前後の前胞状卵胞に成長すると、卵胞はAMHを分泌し始めます。9〜10mmの胞状卵胞にまで大きくなると、AMHの分泌は止まります。

AMHは25歳〜30歳で最も多く分泌され、その後は卵胞数の減少とともに、徐々に分泌量が減少します。また、他のホルモンと違い、生理周期によって値が大きく上下しない点が特徴です。

AMH検査で、なぜ卵巣予備能力がわかるの?

AMHは、「原始卵胞から成長した前胞状卵胞の顆粒膜細胞」から分泌されます。卵巣内には、まだAMHを出していない原始卵胞が眠っています。AMHの値と原始卵胞の数は相関することがわかっているので、検査によって残りの卵子がどれくらいなのかを推定できるのです。

AMH検査の方法、費用、注意点とは?

検査はどこで受けられるのか?

AMH検査は、主に不妊治療を行なっている医療機関で受けられます。不妊治療に入る前の基礎検査として、他のホルモン(FSH,LHなど)とセットで検査を行う医療機関もあります。

検査方法と費用、どれくらいで結果が出るのかについて

AMH検査は血中のAMH濃度を測る検査のため、採血によって行います。基本的に生理周期の影響を受けないとされていますが、排卵後は値が多少下がる傾向にあります。クリニックによっては望ましい検査時期(生理3日目など)を定めているところもあります。

検査費用はおよそ5,000円から10,000円です。健康保険は適用されず、すべて自費診療です。結果が判明するまでには、通常1〜2週間ほどかかります。検査結果はクリニックによって郵送、もしくは診察の際に医師から報告されるケースに分けられます。

検査の注意点

AMH検査の値は誤差が大きく、最大で15%増減することがわかっています。また、検査結果はピルの服用や排卵誘発剤の影響を受けます。ピルは卵胞の発育を抑制する働きがあるため、服用中はAMHの値が低下することが判明しています。薬を服用している場合は必ず医師に相談し、正しい検査結果が得られるよう注意しましょう。

AMH検査の結果からわかることとは?

値が平均値、またはやや高い場合

・年齢なりの卵巣予備能があると判断できる
・高すぎる数値は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性が考えられる(PCOSとは、何らかの原因で排卵ができず、卵巣の中に多数の未成熟な卵胞がたまった状態のことを指します)

値が低い場合

・卵子の残数が同世代女性の平均より少ないと考えられる
・閉経が通常よりも早く訪れる可能性がある
・自然排卵しにくい傾向がある
・不妊治療の際の排卵誘発剤が効きにくい可能性がある

AMH検査の意義とは?

以下の項目の判断材料として、AMH検査は重要な役割を果たします。

妊娠のリミットや治療ペースの参考にできる

いずれは出産して子どもを持ちたいと考えている女性の場合、検査結果が妊娠のリミットの参考になります。また、不妊治療やこれから妊活に取り組もうとしているケースでは、AMHの値によってタイミング法から人工授精、体外受精と早めのステップアップが必要な場合もあります。たとえば、年齢が若いけれどAMHが非常に低いケースなどです。

効果的な治療方針を定めることができる

AMHの検査結果を元に、一人ひとりにあった治療方針を定めることができます。何らかの原因があって排卵がうまくできない場合や、体外受精において卵子を取り出す必要がある場合、薬やホルモン注射によって卵巣を刺激するケースがあります。なお、人工的に排卵を促すことを「排卵誘発」と呼びます。

しかし、PCOSによる排卵障害がある場合、効果が強い排卵誘発を行うと、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる副作用を起こす可能性があり、非常に危険です。卵巣の状態をより詳しく把握するために、AMH検査は重要な役割を果たします。

また、排卵誘発には多くの種類があり、刺激がマイルドな方法から強い効果のあるものまで、特徴もさまざまです。卵巣予備能を知ることは、治療方針を定める上で大切な判断材料となるでしょう。

AMH値と妊娠率は比例するの?

AMHの値は、妊娠できる確率とは無関係です。したがって、AMHが高いから妊娠しやすい、AMH値が低いから妊娠しにくい、などの考えは誤りです。妊娠できるかどうかには、卵子の質が大きく関わっています。AMH検査では、卵子の質は調べることができません。

卵子は年齢とともに古くなり、質は低下することがわかっています。つまり、AMHの値が同じでも、30歳の人と40歳の人とでは、30歳の人の方が妊娠しやすいということです。

AMHの値が低い人でも、質の良い卵子が排卵されていれば、妊娠のチャンスは十分あります。ただし、妊娠できるリミットが通常よりも短いことを念頭に置き、早めに妊活に取り組むことをおすすめします。

【産婦人科医監修】自然妊娠の確率と限界年齢は?自然妊娠のためにできること

卵巣機能を判断するための、他のホルモン検査とは?

AMHは卵巣の機能を知る上で重要なホルモンですが、他にも排卵に深く関わっているホルモンがあります。排卵に関わるホルモンの検査結果を総合して判断すると、より正確に卵巣の状態を把握できます。

FSH ・LH(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)

FSHとLHは、脳の下垂体から分泌され、卵巣に働きかけるホルモンです。FSHは「卵胞刺激ホルモン」と呼ばれ、原始卵胞から成熟卵胞へと卵子を成長させる働きがあります。LHは「黄体形成ホルモン」のことで、排卵直前に爆発的に分泌量が増え、卵巣からの排卵を促します。

FSH・LHは生理周期によって値が大きく変動します。判断基準となる基礎値を測る場合は、生理の3〜7日目に血液検査によって測定します。多嚢胞性卵巣症候群や、早期性卵巣機能障害などの排卵障害がある場合、FSHやLHの値に異常が現れるケースが多いようです。

一般的には、年齢とともにLH・FSHの値は高くなります。また、FSHの値は、実際の卵巣機能がかなり低下してから高くなる傾向があります。特に年齢が高い場合は、FSHの値が正常でも、すでに卵巣機能が落ちている可能性があるので注意しましょう。

E2・P4(エストラジオール・プロゲステロン)

E2とは、卵胞の顆粒膜細胞から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」に含まれる成分「エルトラジオール」の一種です。エストロゲンは「卵胞ホルモン」とも呼ばれ、女性らしさの元となるホルモンです。女性らしい身体つきを作り、肌や髪の潤いを保つ働きがあります。

P4は、排卵後の黄体から分泌される「プロゲステロン」のことです。プロゲステロンは別名を黄体ホルモンといい、体温を上げ、妊娠に備えて子宮内の子宮内膜を厚くします。P4・E2の分泌量は、排卵前の低温期には低く、排卵日に向けて上昇する特徴があります。通常、E2の値は排卵直前に最も高くなり、P4は排卵後の黄体期に最も多く分泌されます。

E2は排卵前に、P4の値は高温期に入って1週間後に、血液検査によって計測します。E2の値が基準値よりも低い場合、卵胞が十分に成熟しないまま排卵している「未成熟排卵」の可能性があります。また、P4の値が低い場合は、黄体機能不全が疑われます。黄体機能が低下していると子宮内膜が厚くならないため、受精卵が着床しづらい状態です。

自分の卵巣の状態を知って、前向きに妊活を!

卵子の数は生まれる前から決まっており、生涯に渡って増えることはありません。現在の医療技術では、AMHを改善する方法はないと考えられています。しかし、妊娠率には卵子の質が強く関わっています。赤ちゃんを授かるためには、AMHの値だけにとらわれることなく、生活習慣や食事内容を見直し、質の良い卵子が育つように努力することも大切といえるでしょう。

あわせて読みたい

初産の平均年齢は?初産の年齢が上がるリスクと妊娠できる年齢の限界
https://mamanoko.jp/articles/23922