人工授精のタイミングは?排卵前、排卵後?妊娠確率を上げるには?

人工授精は、タイミング療法の次のステップとなる不妊治療のひとつです。女性の子宮に直接精子を注入しますが、それ以外は自然妊娠と近い状態ともいえます。人工授精には排卵日を予測することが重要となってきます。どのような方法で予測し、排卵日の前後どちらがベストなのかをご紹介します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 人工授精とは?排卵のタイミングにあわせる?
  2. 人工授精の流れ・精子を注入するタイミングは?
  3. 人工授精のタイミングは排卵前?排卵後?
  4. 人工授精のタイミングを知るためには?
  5. 人工授精のタイミングは、排卵誘発剤で調節できる?
  6. 人工授精のタイミングを予測して、妊娠率を高めよう
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人工授精とは?排卵のタイミングにあわせる?

人工授精は不妊治療法のひとつです。医師が予測した排卵の時期に、子宮の入り口から管を入れ、採取した精液を子宮内へ直接注入する方法です。日本では基本的に配偶者間でのみ行われ、「AIH」ともよばれます。

不妊治療の流れにおいて、人工授精は、医師が排卵日を予測して性交日を指定する「タイミング療法」の次のステップといわれています。タイミング療法でもなかなか妊娠できないときや、夫の精子に問題がある場合、フーナーテストで結果が悪かった場合などに選択肢のひとつとなります。

体外受精と混同されやすいですが、精子と卵子が出会う受精以降は自然妊娠と変わらないため、不妊治療の中でも抵抗がない人が多いようです。ただし、妊娠率が飛躍的に上がるわけではなく、5、6回で妊娠できなければ人工授精での妊娠の可能性は薄いといわれています。人工授精の次のステップとしては、体外受精や顕微授精などが考えられます。

人工授精の費用は保険適応外になるので、1回につき10,000円~30,000円ほどかかるといわれています。病院によってばらつきがあるので、人工授精を行う医療機関に確認しておきましょう。

人工授精の流れ・精子を注入するタイミングは?

排卵日の予測と人工授精(AIH)の決定

人工授精を行うために最も重要なのは、排卵のタイミングを見極めることです。卵子の寿命はおよそ1日といわれているので、少しずれるだけでも受精の可能性が低くなってしまいます。

ひとつめのステップは基礎体温の計測で、朝目覚めてすぐ、舌下に専用の体温計を入れて測定します。低温期と高温期から、いつ排卵があったかを推測できます。ただし、基礎体温では排卵日をピンポイントに出すものではなく、過去の排卵の有無やおおよそのタイミングなどを確認するものなので、より詳しく検査をする必要があります。

より正確な排卵時期を知るため、排卵直前に病院側で卵胞の大きさや子宮内膜の厚さを測ります。尿検査やホルモン値を見ることもあるようです。排卵時期が特定できれば、医師の指導の下、 人工授精を行う日時を決定します。

病院によっては、より確実にタイミングをあわせるため、排卵を促す点鼻薬や、hCGという注射などで人工授精前の排卵をコントロールします。

精液採取(採精)

人工授精では、夫の精液を妻の子宮に注入します。採取方法は大きく分けてふたつで、人工授精の当日に精液を病院で採取するか、自宅で採取して持っていくかです。自宅の場合は専用の容器を病院から借りることになります。精子は卵子より生存時間が長いので、射精後3時間~4時間であれば問題ないといわれています。

精子は、そのまま使うことはほとんどなく、洗浄力のある培養液にいれ、遠心分離で元気な精子だけを選別します。これによって、精子濃度や運動率も改善でき、精液中の細菌なども防げます。この作業に1時間~2時間ほどかかるようです。

人工授精(AIH)

注入するための精液が用意できれば、いよいよ人工授精です。内診台に横になって子宮内に管を入れ、濃縮した精液を注入します。精液の量は少量なので、痛みはあまりありません。人によっては、子宮を器具で固定したり広げたりするときに痛みを感じるようです。

その後は、注入した精子がしっかり上っていけるよう、しばらく横になったまま安静にします。感染予防の抗生剤などを処方され、何もトラブルがなければ、自宅に帰ることができます。

排卵後チェック

人工授精が行われた2、3日後に、病院で排卵が行われたかどうかをチェックします。排卵の有無をチェックするには、いくつかの方法があります。自分でできるチェック方法は、基礎体温の計測です。排卵すると、基礎体温はプロゲステロンというホルモンの影響で排卵前に比べて高くなっています。

排卵すると、破裂した卵胞は「黄体」に変化し、プロゲステロンの値が高くなります。プロゲステロン値を血液検査ではかることで、排卵があったかどうかを確認することができます。また、排卵すると卵胞の中に出血するので、超音波検査でも確実に知ることが可能です。

黄体ホルモンの補充

排卵すると卵巣では黄体ができ、プロゲステロンが分泌されます。黄体にトラブルがあってホルモンがしっかり分泌されないと、子宮内膜が受精卵を受け入れる状態になりません。プロゲステロンには、着床に備え、子宮内膜の柔らかさと厚みを増す作用があるのです。

人工授精後の黄体機能不全を防ぐため、黄体ホルモンを補充することがあります。黄体ホルモンは、着床しやすい環境、妊娠を維持しやすい環境をつくってくれます。デュファストンなどの飲むタイプの薬や、プロゲステロン注射をする場合もあります。

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妊娠判定

受精が成立すると、受精卵は卵管の中を子宮に向かって進んでいきます。受精後7日~10ほどで受精卵は子宮内膜にもぐり込み、根を張ります。これが着床といわれ、基本的には妊娠と同義です。

妊娠は、人工授精の後の生理予定日で判断します。予定日を大幅に過ぎても月経が来ない場合、妊娠検査薬などでチェックします。また、体温で判断することも可能です。人工授精から3週間以上高温期が続けば、妊娠の可能性があります。病院でも、血液のhCGホルモンの値をみることで判定できます。

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人工授精のタイミングは排卵前?排卵後?

人工授精のベストタイミングは排卵前から排卵直後といわれています。これはタイミング療法なども同じで、精子は数日間卵管膨大部で生存できるので、排卵より少し早いタイミングでも問題ないのです。医師の方針にもよりますが、少しずれることも見越して排卵予定日2日前ぐらいを選ぶこともあるようです。

排卵と人工授精のタイミングがあわなければ、妊娠することは難しくなります。精子と卵子にはそれぞれ寿命があり、精子は2~3日なのに対して、卵子はわずか1日しか持ちません。しかも、受精可能な時間はその半分ほどといわれています。それゆえ、排卵後よりは、排卵直前にあわせることで、受精の確率が上がるといわれています。

人工授精のタイミングを知るためには?

基礎体温表をつける

基礎体温表は、人工授精を行う上でとても大切な情報です。妊娠するためには、排卵自体が確実に行われている必要があります。基礎体温表をつけることで過去の体温変化を把握し、排卵があったかどうかを判断することができます。

排卵が起こると、プロゲステロンが分泌される影響で高温期になるので、排卵日を知る目安になります。おおよその排卵日のタイミングがわかれば、事前に病院でさらに詳しい予測をすることが可能です。

排卵検査薬を使用する

排卵検査薬では、脳下垂体から分泌されるLH(黄体形成ホルモン)値で排卵日を予測します。排卵日が近づくとLHの数値は急激に上昇し、排卵直前にピークを迎えます。これをLHサージと言います。

排卵検査薬は、尿の中に含まれるホルモンの値を調べ、LHサージをとらえるものです。そのため、ある程度排卵日を予測して使用しないと、意味のないものでもあります。

検査薬によっても違いますが、一般的に20~50mIU/mLの感度で尿中のLHをとらえることができます。正確なLHサージをとらえるには、朝と夕方、2回の検査することが望ましいようです。

おりものの状態を観察する

排卵期になると、子宮頸管から大量の粘液が分泌されます。粘液は、精子が子宮に進入するための動きを活発にし、受精しやすくしてくれます。自分でもおりものをチェックすることで、頸管粘液の状況を知ることができます。

排卵日が近付くとおりものの量は増え、透明でよく伸びるようになります。あまりにおいは強くありません。この時期が人工授精のベストタイミングともいえます。排卵が終わると、おりものは白くにごっていきます。

病院側で頸管粘液検査をすることもあります。しかし、排卵誘発剤などを使用しているときは、卵胞成熟度の指標とならないこともあるようです。

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婦人科で卵胞の大きさをチェック

最も確実な排卵日の予測は、超音波検査による卵胞の大きさの測定です。排卵は成熟しきった卵胞が破れることで起こります。この卵胞の大きさが、LHサージには20mmほどになり、21mmぐらいになると、排卵直前といわれています。この大きさに達すれば、人工授精のタイミングといえます。

排卵誘発剤を使用すると、発育した卵胞の数も多く、排卵前の卵胞も大きくなるようです。排卵直後には、卵胞が縮小したり消失したりするので、排卵が行われたかどうかもチェックできます。

子宮内膜の厚み

受精卵が着床する場所である子宮内膜は、女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、排卵直前には厚さを増していきます。一般的に、排卵時には10mm以上になるといわれています。超音波検査で子宮内膜の厚さを測ることで、排卵日を予測することも可能です。

人工授精のタイミングは、排卵誘発剤で調節できる?

排卵のペースは人によって違うので、排卵日の予測は難しい場合があります。基礎体温や排卵検査薬を使用してもはっきりとした排卵日がわからない場合は、排卵誘発剤を使用してタイミングを調節することができます。

クロミッド、セロフェン、セキソビッドなどの排卵誘発剤を服用することで、エストロゲンやプロゲステロンの濃度が上昇し、着床しやすい環境を整えることもできます。卵胞が成熟した状態になったところで、人工授精前日にGnRHアゴニストをつかった点鼻薬や、hCG注射をして排卵を起こします。

以上のような方法で排卵を促すと36~48時間後に排卵が起こるといわれ、そのタイミングで人工授精を行えば妊娠率は上がるとされます。排卵誘発剤は排卵をコントロールできるので便利ですが、まれに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などが発生することもあるので、リスクもあることを知っておきましょう。

人工授精のタイミングを予測して、妊娠率を高めよう

人工授精は、乏精子症やフーナーテストで不良だった場合の選択肢となります。人工授精には排卵日を予測することが大切で、基礎体温や超音波検査、尿検査などが必要になってきます。パートナーや医師と協力し、ベストなタイミングで人工授精に望みましょう。

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