クロミッドの不妊治療への効果とは?服用後の排卵と妊娠の確率について

クロミッドは飲むタイプの排卵誘発剤であり、脳に作用して妊娠に関係するホルモンの分泌を促します。クロミッドは注射剤に比べると身体への負担が少ないとされ、不妊治療ではタイミング療法との併用が多いようです。クロミッドは排卵にどれほど効果があるのか、どのくらいの確率で妊娠できるのか、気になる人は参考にしてみてください。

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この記事の監修

産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. クロミッドとは?どんな効果がある?
  2. クロミッドの飲み方と治療の流れは?
  3. クロミッド服用後の排卵確率・妊娠確率は?
  4. クロミッドが効かない!妊娠しやすくする方法は?
  5. クロミッドには副作用があるの?
  6. クロミッドの効果で妊娠に近づこう
  7. あわせて読みたい

クロミッドとは?どんな効果がある?

不妊症治療における代表的な排卵誘発剤

クロミッドは、排卵誘発剤のひとつです。有効成分である「クロミフェンクエン酸塩」がホルモンの分泌に作用し、卵巣を刺激することで、排卵が促されます。内服薬であり、注射タイプの排卵誘発剤と比べると身体への負担が少ないといわれています。

クロミッドは生理不順の治療や不妊治療において使われています。一般的に、不妊治療は医師の指導のもとで排卵と性交のタイミングを合わせる「タイミング法」が最初のステップとされます。タイミング法だけでは妊娠しない場合、クロミッドを併用して排卵を誘発し、様子を見ます。

「エストロゲンが足りない」と脳に錯覚させる

クロミッドには、なぜ排卵誘発の効果があるのでしょうか。実はクロミッドの有効成分であるクロミフェンクエン酸塩には、わずかですがエストロゲン(卵胞ホルモン)と似た働きがあります。

エストロゲンがうまく機能するためには、「エストロゲン受容体」という名のスイッチと結合する必要があります。しかしクロミッドを服用すると、クロミフェンクエン酸塩がエストロゲンより先にエストロゲン受容体と結合するため、脳は「エストロゲンが足りない」と錯覚します。

そして足りないエストロゲンをコントロールしようと、脳の視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されます。このホルモンには、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)の放出を促す働きがあります。FSHとLHが卵巣を刺激し、排卵が誘発されるという流れです。

似たような働きをする薬に「シクロフェニル(商品名:セキソビット)」がありますが、排卵作用はクロミッドより弱く、そのぶん副作用が出る可能性が低いといわれています。

クロミッドの飲み方と治療の流れは?

生理3~5日目から服用を継続

クロミッドは、一般的に生理開始3~5日目から服用を始めます。1日1錠(主成分量は50mg)から始め、5日間継続して飲み、効果がみられなければ2錠に増やします。薬の効き目や医師の治療方針によっては、内服量は0.5錠~3錠のあいだで増減します。

1周目の生理周期で効果がみられない場合は服用を継続しますが、3周目の服用でもまったく排卵が起こらない場合は、次の治療に進むことが多いようです。

生理周期が正常で規則的な人の場合、排卵はクロミッドを内服しても特に早まることはなく、生理開始から14日目前後になります。生理不順の人は、もとの卵巣機能や薬の効き具合によって排卵日も変わってくるようです。排卵が起こったかどうかは、基礎体温や超音波検査などでチェックできます。

排卵に合わせて性交

クロミッドを服用後、病院によっては超音波検査で卵胞の発育をチェックします。卵胞がしっかり成熟しているかどうか、ホルモンの値を血液検査で調べることもあります。これらの検査や過去の基礎体温の変動によって、排卵のタイミングを予測し、それに合わせて性交するよう指導されます。

さらに排卵のタイミングを正確に把握するため、hCG注射をして排卵を促すこともあります。 排卵したあとすぐに精子と卵子が出会えば受精の可能性が高くなるため、性交のタイミングとしては排卵日少し前から排卵直後がベストといわれています。

もし生理予定日を大幅に過ぎても生理が来ない場合や、基礎体温の高温期が長く続く場合は、妊娠の可能性があります。いち早く知るためにも、基礎体温はしっかりチェックしておきましょう。

クロミッド服用後の排卵確率・妊娠確率は?

クロミッド服用により排卵する確率

生理があっても排卵がない「無排卵周期症」の人がクロミッドを服用したとき、無事に排卵が起こる確率はおよそ70~80%といわれています。生理が来ない人の場合、子宮内膜がある程度形成されている「第1度無月経」で50~60%、さらに重度の「第2度無月経」だと6%ほどに下がります。

他にもさまざまな要因で排卵率は下がってしまいます。たとえば、排卵障害のなかでも代表的な「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」の人は、まずクロミッドが治療の選択肢となりますが、排卵率は50~60%といわれています。

クロミッド服用により妊娠する確率

クロミッドを内服して排卵がみられれば、そこから妊娠にいたる確率はおよそ25~30%です。これは自然妊娠の確率とほとんどかわりません。妊娠率や流産率には年齢が大きく関わってくるので、20代であれば比較的妊娠率が高く、40代であれば難しくなります。

妊娠率はあまり変わりませんが、クロミッドを服用すると、自然妊娠と比べて多胎妊娠の確率がわずかに高まります。

他の方法・薬と併用すると妊娠率が上がることも

クロミッドで排卵はみられるものの思うように妊娠にいたらない場合、人工授精を併用することがあります。人工授精とは、精液を採取して洗浄し、精子を子宮の中へ注入するという方法です。子宮頸管粘液に問題がある場合や、精子の運動率や数に不妊原因がある場合に、人工授精が有効であるようです。

また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でクロミッドの服用量を増やしても排卵がみられない場合、メトホルミン製剤を併用することがあります。メトホルミン製剤は糖尿病の治療に使われる薬で血中インスリン値を低下させ、エストロゲンに変化する「アンドロゲン」の産生を抑えます。このクロミフェン・メトホルミン併用療法では排卵率が6割近くになるというデータもあり、排卵誘発に有効とされます。

クロミッドが効かない!妊娠しやすくする方法は?

不妊の原因をしっかり検査 

クロミッドは、軽度の排卵障害に有効とされています。しかし同じ排卵障害でも、クロミッドが有効でないこともあります。たとえば、乳腺の発達に関与しているプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の異常分泌である「高プロラクチン血症」であればドーパミン作動薬療法が有効です。また、第2度無月経では、注射で排卵を促す「ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法」が選ばれます。

卵巣障害ではカウフマン療法などが選択肢となります。FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)、プロラクチンなどの値を測定することで、ある程度不妊の原因が予測できます。

不妊の原因は、排卵障害だけではありません。卵管がふさがっていたり、子宮の働きに問題があったり、子宮頸管や頸管粘液の分泌に問題があったりすることもあります。また、精子の数が少ない、精子の運動率が低いなど男性側に不妊の原因がある場合もあります。

ホルモン値の測定や、超音波検査、精液検査など、夫婦でともに協力しながら、さまざまな方面から不妊の原因を探っていきましょう。

基本的な生活習慣を整える

妊娠には、ホルモンの分泌が大きく関係しています。ホルモンは脳の指令によってコントロールされているので、大きなストレスや不規則な生活は、正常なホルモン分泌を乱してしまいます。

朝はきちんと起きて太陽の光を浴び、夜は良質の睡眠を心がけましょう。妊娠しやすい身体には、バランスの良い食生活も重要です。葉酸など妊娠に欠かせない栄養をしっかり摂取し、身体を冷やさないようにしてみましょう。

また、不妊治療中は過度の飲酒や喫煙もおすすめできません。卵子の質が悪くなったり、血のめぐりが悪くなったりする可能性もあります。正常なホルモン分泌のために、規則正しい生活習慣を身につけていきたいですね。

クロミッドには副作用があるの?

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、卵巣が腫れ、腹水がたまってしまう症状です。重症化すると、血栓症が起こってしまうこともあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の人や、排卵誘発剤で多数の成熟卵胞が発育した人がなりやすい傾向にあります。

しかし、クロミッドによるOHSSの可能性は、ゴナドトロピン療法による排卵誘発の場合に比べるとかなり低いといわれています。おもな自覚症状は腹水によるお腹の張りや、喉のかわきです。体重が急に減ったり、尿の回数や量が減ったりしたときは、すぐに医師に相談しましょう。

子宮内膜が薄くなる

クロミッドを長期間(6ヶ月以上)服用した場合、子宮内膜が薄くなっていく傾向があります。これは、クロミッドがエストロゲンの作用を阻害するからであるといわれます。

妊娠の成立には、子宮内膜の厚さが重要とされます。子宮内膜は、受精卵のベッドのような役割を果たします。エストロゲンには、子宮内膜を厚くし、妊娠や着床に適した環境を作る働きがあります。

しかし医師によっては、クロミッドの子宮内膜への影響はほとんどないという見解を持ちます。また、クロミッドの服用をやめれば、子宮内膜の厚さも元に戻っていくといわれています。

子宮頸管の粘液の減少

子宮内膜の厚みと同じく、子宮頸管の粘液の分泌にもエストロゲンが作用しています。そのため、長期間クロミッドを服用すると、子宮頸管の粘液が少なくなっていくといわれています。

子宮頸管の粘液量が十分でないと、精子は活発に動くことができず、腟から子宮にたどりつくことが困難になります。頸管粘液には精子の待機場所としての役割もあります。そのため、妊娠には子宮頸管粘液の質や量が関わってくるのです。クロミッドの服用をやめれば、粘液の量も元に戻るとされています。

頭痛・吐き気など

クロミッドは、ホルモンの分泌を変化させるため、人によっては副作用として頭痛や吐き気などを感じることもあるようです。もし頭痛がひどいようなら医師に相談し、痛み止めを処方してもらっても良いでしょう。

クロミッドの副作用としては、目のかすみや発疹などもあげられます。気になる症状がある場合は、すぐに医師に伝えましょう。

多胎妊娠で双子が生まれやすい

自然の周期では、ひとつの卵胞が成熟し、そのうちのひとつの卵子が排卵されます。そのため、自然妊娠での双子以上の多胎妊娠の確率は1%以下となっています。

しかしクロミッドなどの排卵誘発剤を使うと、複数の卵胞が同時に発育し成熟していきます。これによって、複数の卵子が排卵される可能性があるのです。クロミッドによる多胎妊娠の確率は5%前後といわれています。そのほとんどが双子のようです。

クロミッドの効果で妊娠に近づこう

クロミッドはエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用を阻害し、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の分泌を促すことで排卵を誘発します。軽度の排卵障害に有効とされますが、不妊原因によっては効果がみられないこともあります。あせらず、医師と相談しながらさまざまな検査で不妊原因をさぐっていきましょう。

クロミッドは、排卵誘発剤のなかでも代表的な内服薬のひとつであり、多くの病院で処方されています。不妊原因に合った状況で正しく服用すれば、頼もしい味方となってくれるでしょう。

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