体外受精の採卵とは?痛みや採卵数、採卵の方法は?

体外受精は、卵子と精子を採取し、受精させてから子宮に戻す不妊治療法です。排卵日を正確に把握し成熟した卵子を採卵することが、妊娠成功への鍵となります。採卵までにどのような準備が必要なのでしょうか。採卵の詳しい方法や、排卵誘発の方法による採卵数を解説します。採卵の知識を蓄えて、不安を解消していきましょう。

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この記事の監修

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産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 体外受精の採卵とは?
  2. 体外受精の採卵の方法と流れは?
  3. 体外受精の採卵は痛みを伴う?
  4. 体外受精の採卵前に使う排卵誘発剤とは?使用する薬は?
  5. 体外受精の採卵数は方法によって異なる?
  6. 体外受精の痛みと採卵に関する体験談
  7. 体外受精の採卵について知って不安を解消しよう
  8. あわせて読みたい

体外受精の採卵とは?

タイミング療法や人工授精でも効果がなかったとき、次のステップとして体外受精が考えられます。体外受精では、採取した卵子と精子の受精を体外で行い、受精卵を子宮へ移して着床を待つ不妊治療法です。この卵子を採取する行程を「採卵」とよび、体外受精の成功を左右する、重要な役目を果たします。

体外受精では、成熟した良質な卵子をできるだけ多く採取することが、妊娠率を高めるといわれます。一般的には、採卵手術前に排卵誘発剤で卵巣を刺激し、数個~10 個前後の成熟卵を採取します。

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体外受精の採卵の方法と流れは?

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どのように採卵をするのか、一般的な例で流れを解説していきます。

排卵2日前

超音波検査で卵胞の成熟度を観察し、採卵の日を決定します。採卵の約36時間前(2日前の夜)に、hCG注射を行います。これによってLHサージ(黄体形成ホルモン(LH)の分泌量がピークに達すること)が起こり、約36~40時間で排卵が起こります。排卵前に卵子を取り出す体外受精では、LHサージの代用が必要なのです。hCG注射に加えてGnRHアゴニストという点鼻薬が使用されることもあります。

採卵前日

採卵時に麻酔をかける場合、前日の午後9時以降、絶飲絶食の必要があります。採卵が終わるまでは、少量の水も含めて一切の飲食ができなくなります。

採卵当日は緊張するものです。身体にも多少の負担がかかります。早めに就寝し、身体を休めましょう。アロマオイルで気分を和らげるのも、リラックスに効果的です。

当日の流れ

医師は薬によって排卵を綿密にコントロールしていますので、必ず指定された来院時間に間にあうように準備しましょう。事前に交通情報や天気予報をチェックしておくことも大事です。採卵後の出血に備えて、ナプキンや新しいショーツを用意しておきましょう。

採卵日当日は、来院した後、着替えの準備をします。麻酔をかける場合、事前に点滴をします。採卵日にあわせて、精液も採取します。夫婦でクリニックに行くのがスムーズですが、夫が行けない場合は、事前に採取した精液を専用容器で持参する方法もあります。

採卵までの流れ

着替えや点滴が終わったら、手術室で採卵の準備をします。手術前には、医師や看護師、胚培養士が立会い、名前や生年月日を復唱して本人確認を行います。

医師は超音波のモニター画面を見ながら、細い針を腟から刺して、卵胞から卵子を吸引します。卵胞数によって幅はありますが、5分~20分程度で採卵が終了します。

採卵は、身体の負担が少なく回復の早い局所麻酔か鎮痛剤のみの場合が多く、クリニックによっては麻酔を使用せずに採卵することもあります。

採卵後の注意点

採卵後はしばらく横になったまま、安静にします。安静時間は麻酔の有無によって異なりますが、30分~2時間くらいとなります。トラブルがなければ入院の必要はありません。病院によっては、当日に採卵結果報告があります。

医師から感染予防の抗生剤が処方され、帰宅となります。麻酔の影響もあるので、車や自転車の運転は避けましょう。当日のお風呂や運動などは医師の方針によりますので、気になることは質問してみても良いですね。

体調が良ければ、帰宅後の行動に大きな制限はありませんが、状況によっては痛みが残る可能性もあります。採卵当日はゆっくり休めるように調整しましょう。

体外受精の採卵は痛みを伴う?

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採卵時に痛みを伴うことがある

採卵は、腟から針を刺して行うため、痛みを伴うこともあります。麻酔使用の有無や麻酔の種類は、クリニックにより異なります。一般的なのは、局所麻酔の使用です。麻酔を使用せずに採卵する場合は、非常に細い針を使用するため、痛みも軽減されるようです。

採卵時の痛みに関しては、卵巣の位置や採卵する卵胞の数、医師の腕によっても大きく変わってきます。強い不安がある人は、前もって医師に伝えておくと良いでしょう。

採卵すると出血することも

採卵は腟から採卵針を卵巣へと穿刺し、超音波モニターを確認しながらすすめます。そのため、出血を伴うこともあります。昔と比べると、針の改良が進み、大量出血することがあまりありません。しかし、万が一出血が多い場合、入院安静が必要なこともあります。

針が膀胱や尿管を傷つけることもありますが、排便や排尿をなるべく事前に済ませておくことで予防が可能です。確率は低いですが、細菌による感染症が起こることもあります。感染予防のため、抗生物質を処方する病院もあるようです。

体外受精の採卵前に使う排卵誘発剤とは?使用する薬は?

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体外受精では、卵胞の成熟具合をコントロールし、排卵の直前と採卵予定日をあわせる必要があります。自然周期では排卵の予測が難しく、排卵される卵子もひとつになるため、同時に複数個の採卵が可能になる排卵誘発剤を使用するのが一般的です。

hCG(注射)

hCG注射は、LH(黄体形成ホルモン)と同じ作用をもっていて、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を促します。成熟した卵胞を排卵させる効果があり、hCGを投与してから約24~36時間後に排卵が起こることがわかっています。排卵の時期を特定できることから、他の排卵誘発剤と併用されることも多いです。

排卵の促進以外に、妊娠の維持に欠かせないプロゲステロンの補充に使われることもあります。不妊原因が黄体機能不全のときに、hCG注射は有効であるといわれています。

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シクロフェニル製剤(経口)

シクロフェニル製剤(セキソビット)は飲むタイプの排卵誘発剤です。LHとFSHの分泌を促して、卵巣を刺激します。注射に比べると排卵効果は弱いですが、身体への負担も少ないといわれています。軽度から中等度の軽い排卵障害に有効といわれています。

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クロミフェン製剤(経口)

クロミフェン製剤(クロミッド)も、シクロフェニルと同じく内服薬の排卵誘発剤です。ゴナドトロピン放出ホルモンを放出させ、FSHとLHの分泌がうながされて、排卵につながります。

クロミフェン製剤はシクロフェニルよりも排卵誘発効果は強く、不妊治療ではメジャーな薬ですが、長期間服用すると、子宮内膜の菲薄化や子宮頸管粘液の減少を引き起こす可能性もあります。

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アロマターゼ阻害剤(経口)

アロマターゼ阻害剤は、本来乳がんの治療に使われてきましたが、最近では排卵誘発効果が注目されています。代表的なものが「フェマーラ」です。保険適用外となりますが、子宮内膜の菲薄化などのデメリットがなく、クロミッドと比較すると妊娠率も高いため、排卵障害の治療に使われています。

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hMG(注射)

hMG製剤は「FSH製剤」とよばれる排卵誘発剤のひとつで、成分にはFSHとLHが含まれます。性腺刺激ホルモンを注射することで卵巣を直接刺激します。

経口薬と比較すると、排卵誘発効果は強力です。重度の排卵障害でも改善を見込めますが、OHSSなどの副作用の可能性もあるため、段階的に使用する必要があります。

rFSH(注射)

rFSH製剤も「FSH製剤」のひとつですが、遺伝子組み換え型の薬で、不純物を含まないのが特徴です。hMGとは違い、rFSH製剤はLHを含みません。より多くの卵胞を育てたい場合に使用します。

製品としては、「フォリスチム」や「ゴナールエフ」があり、自己注射が可能なタイプも存在します。

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GnRHアゴニスト製剤(点鼻)

GnRHアゴニスト製剤は、長期投与することでゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の分泌を抑制し、FSHやLHの分泌低下を生じさせます。

GnRHアゴニスト製剤は、LHサージのタイミングをコントロールするために用いられます。ショート法やロング法に用いる製剤で、製品名には「スプレキュア」などがあります。

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GnRHアンタゴニスト製剤(注射/経口/点鼻)

GnRHアンタゴニスト製剤は、脳の下垂体にある「GnRH受容体」への結合を阻害することで、GnRHを抑制し、排卵を抑制する効果があります。排卵日をコントロールすることで、採卵の成功率があがります。製品名としては、「セトロタイド」や「ガニレスト」があります。

エストロゲンリバウンド(経口)

「ジュリナ錠」や「プレマリン錠」などの内服薬を服用することで、エストロゲンを補充し、リバウンド効果で卵胞発育を期待する方法もあります。エストロゲンの補充の後、投与を止めることで、リバウンド現象が起こり、 FSHの分泌が促されるという流れです。

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体外受精の採卵数は方法によって異なる?

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体外受精では、排卵誘発法によって、より多くの良好卵子を採卵するのが一般的です。排卵誘発法には、数多くの種類があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。治療を受ける人の年齢や、排卵誘発の方法によって、採卵数の平均値もかわります。

単純に、採卵数が多い方法が良いわけではありません。年齢、ホルモンの分泌量、過去の採卵周期、不妊の原因によってもベストな方法は違ってきます。ここでは排卵誘発法の種類と採卵数の目安について解説します。

完全自然排卵周期法

完全自然排卵周期法は、排卵誘発剤は使用せず、自然周期にしたがって採卵する方法です。基本的に薬を使わないため、身体への負担が少なく、通院回数も少なくすみます。副作用の心配もないため、数周期連続して採卵も可能です。一般的には、生理開始から10日前後に卵胞の大きさをチェックし、生理から13日目あたりで採卵となります。

この方法は、排卵のタイミングの正確性が求められるため、生理不順の人にはむきません。また、排卵日をコントロールできないため、採卵時には排卵後の可能性もあります。自然周期に従うと、最も大きな主席卵胞のみが成熟し、排卵される卵子はひとつだけとなります。そのため、基本的には予備の凍結はできません。

クロミフェン法

クロミフェン法では、クロミフェン(クロミッド)を生理が始まった3日後から5日間続けて服用します。同時に複数の卵胞が成熟するので、数個の卵子が採卵可能です。経口薬のため通院回数が少なく済み、身体への負担も少ないのがメリットです。

生理開始12日目あたりが、採卵予定日となります。採卵数の目安として、31歳未満で3個~5個程度、31~35歳未満で2個~4個程度となっています。

hMG/rFSH(注射)

hMG/rFSH製剤注射をつかった排卵誘発法では、生理開始3日目からhMG/rFSH製剤を投与し、5日間ほどかけて数回打ちます。生理開始12日後付近が採卵予定日となります。

投与量を調整することで採卵数をコントロールできるのがメリットです。また、クロミフェンを使用しないため子宮内膜への影響もありません。採卵数の目安は31歳未満の人で、4個~10個程度、31~35歳未満の人で3個~8個程度といわれています。

クロミフェン+hMG/rFSH法(経口薬+注射)

経口薬であるクロミフェンと、FSH製剤注射を組み合わせた排卵誘発法もあります。。異なる種類の排卵誘発剤を併用することで、中刺激から高刺激まで調整が可能となります。

一般的に、クロミフェンは生理3日目から5日間服用し、FSH製剤注射は生理開始から3~8日目のあいだ、数回に分けて注射します。採卵予定日は、生理開始12日目あたりになります。卵数の目安は、31歳未満で5個~13個程度、31~35歳未満で4個~9個程度といわれています。

アンタゴニスト法

アンタゴニスト法では、生理開始の2、3日目から、卵胞を発育させるためのhMG注射をします。一番大きい卵胞が14mmを超えるころ、アンタゴニストを併用します。卵胞が十分に発育し、採卵日が決定するまで4日ごとにアンタゴニストを追加します。

メリットとしては、排卵のコントロールがしやすいため、採卵日を調整しやすいこと、ロング法と比較すると排卵誘発剤の使用量が少ないため、卵巣過剰刺激症候群になりにくいことがあげられます。採卵数の目安は、31歳未満の人で4個~10個程度、31~35歳未満の人で3個~8個程度といわれています。

ショート法

ショート法は、アゴニスト法のひとつです。GnRHアゴニストの使用直後、性腺刺激ホルモンが大量に分泌されるため、その現象を利用して卵胞を短時間で育てることができます。一般的にはアゴニストを生理開始日から11日間使用し、生理開始13日後に採卵します。

期間が短いため、薬の量が少なく済むというメリットがありますが、黄体化ホルモンの大量分泌により、卵胞の質が悪くなる可能性もあります。

ロング法/ウルトラロング法

ロング法、ウルトラロング法にも、GnRHアゴニストを使用します。どちらも、治療周期の前から準備周期が必要です。ロング法は、採卵を行う予定の前周期の高温期中ごろから、採卵前までGnRHアゴニスト製剤点鼻薬を使用します。下垂体を完全に抑制してからの排卵誘発するので、卵胞の発育が均一になり、採卵日のコントロールもしやすくなります。

ウルトラロング法は、下垂体ホルモンが数ヶ月完全に抑制されている状態から、排卵誘発をスタートします。排卵のスケジュールコントロールが最もしやすいため、採卵可能日が限られている場合に有効です。LHを抑制する分、排卵誘発剤の使用量が多くなり、身体や費用の負担も大きくなります。

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体外受精の痛みと採卵に関する体験談

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筆者は排卵誘発の筋肉注射や無麻酔での採卵経験があります。筋肉注射に関しては、痛みに弱い方はお尻に打ってもらうことをおすすめします。注射の後に座れないといったこともなく、注射の際の一瞬の痛みを我慢するだけで済みました。

そして無麻酔での採卵ですが、これも驚くほど痛くありませんでした。医師の腕が素晴らしかったのだと思います。それでも複数の卵子がとれたときは穿刺する回数が多い分、採卵後もお腹に鈍痛を感じることはありました。感覚としては生理痛のような痛みでした。

体外受精の採卵について知って不安を解消しよう

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体外受精では、質の良い卵子を多く採卵することが妊娠率の向上につながります。採卵スケジュールをベストな状態にするため、自分にあった排卵誘発法を医師と相談して探していきましょう。

採卵当日は、決められた時間を守り、リラックスして臨みましょう。事前に採卵の知識をしっかりと持つことで、痛みや結果への不安が解消されることもありますよ。

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