受精から着床まで気をつけること|性行為は?飲酒、運動などの影響を解説【産婦人科医監修】

妊娠を望んでいると、着床時期の過ごし方が妊娠の行方を左右するのではないかと、心配になることがあるのではないでしょうか。実は妊娠しやすい身体づくりのためには、日ごろから気をつけておきたいポイントがあります。妊娠の確率を高めるための生活習慣や過ごし方、着床までに気をつけることを産婦人科医監修で解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 着床時期はいつ?
  2. 着床時期に妊娠確率を高める過ごし方はある?
  3. 着床時期に気をつけることは?
  4. 着床時期に性行為をしても大丈夫?
  5. 体外受精の胚移植後の過ごし方は普段と異なる?
  6. なかなか着床しないのは着床障害?着床しやすくする方法は?
  7. 着床後の身体の変化
  8. 着床時期の過ごし方はいつも通りを意識して
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着床時期はいつ?

排卵日に卵巣から飛び出した卵子は、卵管采に取り込まれ卵管膨大部に入ります。そのタイミングで受精能力を備えた精子と出会えれば、精子と卵子は融合し「受精卵」となります。受精卵は分割を繰り返しながら卵管を進み、4~6日後に子宮へと到達します。

受精卵は受精から4日目に「桑実胚」と呼ばれる状態となります。その後もさらに分裂を続け、5~7日目には「胚盤胞」へと成長します。受精から7日目になると、受精卵は子宮内膜に潜り込み、着床を開始します。受精卵は子宮内膜の奥へと侵入し、受精から約12日目に完全に表面が覆われた状態となって着床を完了します。

このように、受精から着床までは何日もかかります。排卵、性交、受精、着床が複雑に連携しており、いずれのタイミングがずれても妊娠の成立とはなりません。

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着床時期に妊娠確率を高める過ごし方はある?

妊娠は複雑な仕組みで成り立っており、「これをやったら妊娠できる」というような確実な方法があるわけではありません。しかし、ホルモンバランスが乱れると、生理周期に影響が出ることから、着床率を上げるには普段からホルモンバランスを整えることを意識して生活することが大切です。

質の良い睡眠

生理周期や排卵に関係するホルモンは視床下部、脳下垂体、卵巣が分泌をコントロールしています。このネットワークのいずれかに問題があるとホルモン分泌に問題が生じ、生理不順、無排卵、黄体機能不全など妊娠に不利な状況が生まれます。

睡眠時間が短かったり、飲酒の影響などで睡眠の質が低下したりすると、視床下部や脳下垂体に影響が出やすくなります。睡眠が不足すると、稀発月経や頻発月経の傾向が見られるという報告もあります(※1)。必要な睡眠時間は個人差があるものですが、日本人の平均的な睡眠時間である6~8時間を目安に睡眠をとるようにしましょう(※2)。

適度な運動

適度な運動は筋力を維持するだけではなく、基礎代謝をアップし冷えにくい身体を作ったり、質の良い睡眠に導いたりといった効果が期待できます。身体を動かすことでリフレッシュにもなるため、心身の健康を保つためにも、毎日の生活に取り入れていきたいですね。

適度な運動には、ストレッチや水中ウォーキングなどの軽いスポーツのほか、子どもと一緒に遊ぶこと、家事を15分ほど続けることといった日常の動作も含まれます。適度な運動といっても、運動習慣がないとその時間を作るだけでも難しいものです。普段の生活の中から、身体を使う習慣を作っていきましょう。

ただし、排卵後から生理予定日までの「黄体期」は女性ホルモンのプロゲステロンが分泌されている時期です。着床が成立すると女性ホルモンに加え「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」も分泌され、注意力が散漫になったりイライラしたりという作用があらわれます。自転車やジョギングなど屋外での運動には十分に注意しましょう。

栄養バランスの良い食事

ホルモンバランスを整えるためには、規則正しい食生活も大切な要素です。朝食をしっかりとると、体内時計がリセットされ、ホルモン分泌や自律神経の切り替えがスムーズにいくようになり、睡眠リズムも整います。

また、妊娠前にママに痩せすぎや肥満の傾向があると、赤ちゃんに低出生体重、小児肥満が生じやすく、ママ自身の妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といったリスクも上がるため、妊娠前からバランス良く食事を摂取することが大切です。

摂取したい栄養素は、糖代謝に必要な「炭水化物」、栄養素の吸収を助ける「ビタミン・ミネラル」、血や肉のもととなる「たんぱく質」です。特にビタミンB群の一種である「葉酸」は赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発生リスクを下げるため、妊婦に必要な栄養素として推奨されています。葉酸が多く含まれている食材は、ブロッコリーなどの緑黄色野菜です。

着床の確率を高める食材として、抗炎症作用がある酵素を持ったパイナップルが取り上げられることもあります。しかし効果に対しては医学的な根拠は乏しいのが実情です。ビタミンCや鉄分が含まれているため、必要な栄養素が手軽にとれる食材として、情報だけが独り歩きしてしまったのかもしれませんね。

食事をとるときはどの栄養素もまんべんなく摂取できるよう、食べ方や食材を工夫してみてください。また、飲み物に含まれるカフェインは赤ちゃんの成長や流産との関係が指摘されているので注意しましょう。

ツボを刺激

東洋医学のツボ刺激は、身体の各器官とつながっている「反射区」を刺激して、その器官のはたらきを良くしていこうというものです。ツボを刺激することで身体の冷えを改善したり、ホルモン分泌のバランスを整えたりという効果が期待できます。

身体の冷えを解消するツボとして有名なのは、足の「内くるぶし」から指4本分あがったところの「三陰交(さんいんこう)」です。ただし三陰交は子宮のはたらきを活性化させるといわれており、着床のさまたげになるという説があることから、排卵後の刺激は避けたほうが良さそうです。

また、手の甲の親指と人差し指のあいだのくぼんだところにある「合谷(ごうこく)」には、ストレスで乱れた自律神経を正常に戻す作用があるようです。一方で合谷は流産や堕胎のツボとしても知られる場所です。三陰交と同じく、妊娠中は鍼や灸での刺激が禁止されています。

このようにツボは良い面と悪い面を持つため、ツボ刺激をする際には鍼灸院で専門家の意見を聞きながら行うと良いでしょう。下腹部を温めるツボとして取り上げられるのは、おへそから指4本分下にある「関元(かんげん)」です。また、ストレスに効くツボには、手首の付け根を小指側になぞったところのくぼみにある「神門(しんもん)」があります。

着床時期に気をつけることは?

飲酒やカフェイン摂取

着床時期に重なる妊娠2~3週頃は「All or None」の法則がはたらく時期です。飲酒によって受精卵になんらかの異常が発生すれば、妊娠の可能性に気付かずに過ぎてしまいます。

小さな異常であれば、受精卵が分裂を繰り返す過程で修復され、何の問題もなく着床しますが、妊娠している可能性があるときは、飲酒やカフェインの摂取に対しては慎重を期したほうが良いでしょう。

厚生労働省がまとめた「健康日本21」では、一日当たりのアルコール摂取量の目安として、純アルコールで約20g程度としています。ビールに換算すると5%のアルコール濃度で500mL、日本酒では15%のアルコール濃度で1合が目安です。女性の場合は適正量が基準より少ないことがあります。

しかし、妊娠中は「胎児に影響がない」といえる飲酒量は確立されていません。妊娠3~4週になると、飲酒によって奇形リスクが発生します。日常的に飲酒の習慣がある場合は排卵から生理予定日までの飲酒を控え、妊娠に気付かず飲酒を続けていた場合は妊娠が判明した時点で禁酒するようにしましょう。

カフェインの妊娠に対するリスクは専門家でも意見が分かれるところですが、流産の可能性が高まることが示唆されていることから、大量の摂取は控えたいものです。食品安全委員会がまとめたところでは、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインの1日当たりの摂取目安量は、コーヒーカップで2杯程度、200~300mL以下です。

喫煙

喫煙は妊娠に多大な影響を与えます。妊婦が喫煙することのほか、受動喫煙でも、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高まることが報告されています。

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素といった有害物質は、胎盤で循環する血液量を減少させたり、酸素を各器官に届けるはたらきをさまたげたりするため、赤ちゃんは低酸素状態となります。その結果、低出生体重児、早産、流産の発症頻度が高まります。

また妊娠前であっても、喫煙は女性ホルモンの分泌を低下させたり、月経異常をきたしたりする可能性が指摘されています。妊娠を希望しているときは、夫婦で禁煙に取り組んでみてはいかがでしょうか。

服薬

薬の影響を最も受けやすい時期は、妊娠4~7週頃までの妊娠初期の段階です。妊娠2~3週頃は、All or Noneの法則がはたらくため、服薬の影響で受精卵に異常が発生すると、妊娠に気付かずに過ぎてしまうこともあります。妊娠の可能性があるならば、常用している薬を使用するときや、市販の鎮痛剤や風邪薬などを服用したいときは、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

最近の研究では、排卵時期に鎮痛剤を常用していると、黄体化未破裂卵胞症候群(LUFS)を発症する可能性が示されています。LUFSでは排卵の時期に卵胞が破裂せず、卵子が卵胞の中に取り残されたまま黄体化が進みます。妊活中は排卵日前後の服薬に対しても、慎重に検討してください。

身体の冷え

身体の冷えの原因はさまざまで、クーラーのあたりすぎや冷たい飲み物のとりすぎによる直接的な冷えのほか、自律神経の乱れ、ホルモンの乱れ、筋肉量の低下、血行不良などがあげられます。

こうした要因で身体が冷えると、血管が収縮し血行不良となる悪循環が生まれてしまいます。血行不良はホルモンの運搬をさまたげ、卵巣機能に影響してきます。子宮内膜の成長に欠かせない女性ホルモンの分泌の低下が考えられるため、適度な運動、バランスの良い食事、質の良い睡眠を確保し、冷えを根本から改善していきましょう。

ストレス

不妊治療を行っている人を対象に、着床時期にストレスがあると分泌されるホルモンや酵素の量を調査した結果、着床に成功した人のほうがこれらのストレスマーカーの分泌量が低かったことが報告されています(※3)。この研究結果は、ストレスが着床障害の原因になる可能性を示唆しています。

一方でストレスが高くても妊娠するケースがあることや、ストレスが低いことと着床に成功したこととの因果関係が解明されていないことから、ストレスと不妊の相関関係は認められないという説もあります。

一般的に、精神的なストレスは自律神経の乱れやホルモンバランスが乱れる要因となると考えられているため、日ごろからリラックスを心がけることは大切です。しかし、妊娠を考えることがかえってストレスとなり、それがまた不安につながるという悪循環が生まれているときは、「ストレスがあっても気にしない」という心構えが必要かもしれません。

レントゲン

日本放射線技術学会が公開している資料によると、妊娠の可能性に気付かないままレントゲン検査を受けた場合の影響は、妊娠周期によって異なります。受精から8日までの時期を「着床前期」といい、この時期に出る放射線の影響は「流産」です。受精後9日から8週までは「器官形成期」で、この時期に被ばくすると「奇形」の影響が出ます(※4)。

しかし、流産や奇形の異常が出るのは、一定の線量を超えた場合です。この線量のラインを「しきい線量」といいます。着床前期のしきい線量は0.1Gy(グレイ)、器官形成期では0.15Gyです。

通常のレントゲン検査で使われるX線写真の被ばく線量は、胸部を正面から撮影した場合で約0.07mGy、腹部正面で約2.6mGyです。線量の多いCT検査でも、胸部の乳腺撮影で受ける平均線量は約20mGyです。

20mGyは0.02Gyとなり、しきい線量よりもはるかに低いといえます。胎児が受ける被ばく線量は1/20以下に減少すること、撮影場所が胎児に当たらない部位であればほとんど影響ないこともわかっており、着床時期に知らずにレントゲン撮影をしても問題ないといえます。

着床時期に性行為をしても大丈夫?

海外の論文では、着床時期の性行為でオーガズムにたっすると、子宮収縮や胚の流出などを引き起こし、受精卵の着床をさまたげることが示唆されています。性交を連日した場合には、妊娠率がさらに低下することが示されています。しかし、受精や着床のタイミングをはっきりととらえることは難しいため、研究の結果は疑問の余地を残します。

性行為が必ずしも着床をさまたげると断定できるわけではありませんが、排卵から10日頃までは仲良しを控えたほうが賢明かもしれません。

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体外受精の胚移植後の過ごし方は普段と異なる?

体外受精や顕微授精で胚を移植した後は、「着床しやすくするには安静にしたほうが良いのではないか」という疑問がわくのではないでしょうか。基本的に胚移植をした医師の指導に従うことが大切ですが、一般的には胚移植後は妊娠検査を行うまでのあいだ、性交や激しい運動を避けるよう指導されることが多いようです。

これは、自然妊娠では受精卵が子宮に到達した際に子宮内膜が十分に成熟した状態となっているのに対し、2~3日の培養で胚移植を行う場合、子宮内膜がまだ十分に育っておらず、着床するにはまだタイミングが早いことがあげられます。

ただし、あまりナーバスになりすぎる必要もありません。医師によっては性交や運動に制限を設けないこともあります。また、胚移植を行うと、移植時の刺激で出血することがあります。着床出血との区別がつきにくいため、心配なことがあれば必ず医師に確認するようにしましょう。

なかなか着床しないのは着床障害?着床しやすくする方法は?

着床障害とは

不妊治療で体外受精や顕微授精を行い、良好な胚の移植を繰り返し行っているのにもかかわらず、なかなか着床にいたらないことを「着床障害」もしくは「着床不全」といいます。2~3回以上移植を行った時点で妊娠しないとこのように診断されることが多いようです。

着床障害の原因

着床はとても複雑な過程を踏んでおり、胚の状態と子宮内膜の状態のいずれかに異常があっても妊娠が成立することはありません。原因が胚にある場合、染色体異常であることがほとんどです。

子宮側の異常としては、子宮筋腫や子宮形態不良、子宮内膜炎といった器質的なもの、自己免疫抗体異常、ホルモン異常などがあげられます。子宮側に原因があるときは、原因に沿った治療が求められます。

着床障害の治療法

子宮に器質的な異常がある場合は、外科的処置で対応します。自己免疫の異常があるときは免疫療法がおこなわれます。最近用いられている方法として、胚移植の数日前にhCG注射を行う「新子宮内膜刺激胚移植法」があります。

hCGは自然妊娠で着床を促すために、胚から子宮内膜に対して分泌されている成分のひとつです。これを子宮内に注入することで、着床率があげられるのではないかと期待されています。

不妊治療で多く用いられている「デュファストン」も、着床障害の治療に使われる薬です。デュファストンは黄体機能不全があるときに治療に用いられます。

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着床後の身体の変化

着床から10日目頃になると、hCGの分泌が増えていきます。女性ホルモンの分泌も増え、ホルモンバランスが大きく変わることからさまざまな症状があらわれます。

妊娠超初期症状のあらわれ方は個人差がありますが、吐き気や胃の不快感、着床出血、着床痛、おりものの変化、だるさ、眠気、胸の張りなどの症状がよく見られます。このような身体の変化があらわれたら妊娠の兆候かもしれません。

集中力が続かない、イライラするといった傾向も出やすくなるので、車や自転車の運転には細心の注意を払い、できるだけ穏やかに過ごすようにしましょう。生理予定日を1週間過ぎても生理が来ない、基礎体温が高い日が続くなどがあれば、妊娠検査薬を使って検査をしてみると良いでしょう。

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着床時期の過ごし方はいつも通りを意識して

着床時期に着床しやすくするために気を付けなくてはいけないのは、喫煙や飲酒による影響です。夫婦ともに喫煙や飲酒の習慣があるときは、妊娠の確率を上げるため生活を見直すようにしたいですね。

運動や性交の影響はまったくないとは言い切れませんが、妊娠の確率を著しく下げるという確証もないため、ナーバスになりすぎないことが大切です。身体の冷えを予防し、ストレスのケアをしながら普段通りの生活を心がけていきたいですね。

もしも基礎体温が二相に分かれていて排卵時期に性交しているのになかなか妊娠しないというようなことがあれば、なんらかの問題があるかもしれません。気になることがあれば医師に相談してくださいね。

※この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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