【産婦人科医監修】高温期3日目の体温は?排卵・着床・妊娠と腰痛・腹痛の関係
基礎体温が高い状態が続く「高温期」は、排卵後から生理までの期間にあたります。「高温期の3日目に体温が下がった」など、排卵、低温期から高温期への移行、高温期の基礎体温の変動について、いつもと違う点があると不安になるかもしれません。ここでは生理周期について、基礎体温・身体・おりものの変化などを解説します。
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目次
基礎体温と女性の身体の関係
基礎体温とは安静な状態で測った体温のことを指します。最も安静な状態は睡眠時ですが、睡眠中に体温を測ることはできないため、朝起きて身体を動かす前に測った体温を基礎体温とみなしています。脇で測る一般的な体温とは異なり、基礎体温は、専用の基礎体温計を用いて0.00℃単位の細かな体温の変化を観察します。
基礎体温は生理や排卵といった女性特有の身体の変化とともに変動します。卵巣で作られる女性ホルモンの分泌量の変化により、基礎体温は上下します。女性ホルモンは「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の二種類があり、それぞれ基礎体温を下げる・上げる働きがあります。女性ホルモンは生理・排卵とも深く関係があるため、基礎体温の変化から自分の身体の変化を読み取ることができます。
基礎体温と妊娠
基礎体温には、高くなる時期(高温期)と低くなる時期(低温期)があります。生理が始まってから次の生理がくる直前までの「生理周期」の中で、高温期と低温期はそれぞれ約2週間ずつあります。
生理周期の中で低温期から高温期に移行するタイミングでは、健康的な女性であれば排卵があります。妊娠の成立には排卵・受精・着床といった一連の流れが必要となります。このため、排卵の有無を知る目安となる「生理周期の中で高温期と低温期があるか」は、基礎体温を計測する上で重要なポイントのひとつとなります。
生理周期は卵胞期・排卵期・黄体期・月経期の4つの期間にわかれます。基礎体温を変化させる女性ホルモンのひとつ、妊娠を助ける働きがあるといわれている「黄体ホルモン」は黄体期に多く分泌されます。
生理前の妊娠準備期間ともいえる黄体期には、受精した場合に着床しやすいように子宮内膜が厚くなります。妊娠が成立しなければ黄体ホルモンの分泌は減少し、厚くなった子宮内膜がはがれて「生理」が起こります。妊娠していれば黄体ホルモンの分泌は維持され、基礎体温が高い状態が2週間以上続きます。
高温期3日目に基礎体温が下がる・上がるのはなぜ?
高温期といっても、37℃以上になれば高温期といった方法で判断することはありません。体温には個人差があるため、低温期に比べて0.3℃以上の体温上昇があれば高温期となります。日本人女性31万人のデータを解析した研究によれば、低温期の平均体温は36.4度、高温期の平均体温は29歳で36.7度となり、その後緩やかに下降傾向となるそうです(※1)。
ただし、体温は1日の中でも、外の気温や食事、飲酒、運動、入浴などの影響で変動します。日によっても変化があり、例えば高温期1日目、2日目は体温が上がっていたのに3日目に体温が下がるといったことも起こります。0.00℃単位の細かな変化を観察する基礎体温では、多少のばらつきは気にせず、全体の大きな変化をみてください。
このように、基礎体温は外的要因や体調により、高温期の中でも体温が上がる・下がるといった変動があるのが普通です。1日ごとのちょっとした上下に一喜一憂する必要はありません。一方で、高温期がない、高温期が短いといった場合には病気の可能性もあるので、婦人科で相談してくださいね。
高温期が短い・ない・低い場合には注意が必要
高温期が短い場合はホルモンに異常があるかも
高温期が10日未満といった短い期間で終わり、基礎体温が下がる場合には黄体ホルモンの分泌に異常がある可能性があります。「黄体機能不全」と呼ばれます。不妊につながる可能性があるため、病院で相談しましょう。
高温期がない場合には無排卵や更年期の可能性が
低温期と高温期の体温の差が少なく、高温期がはっきりしない場合には無排卵の可能性があります。生理があっても排卵が起こっていなければ、不妊の原因になる可能性があるため、様子を見て病院へ相談しましょう。
ただし生理が始まったばかりの10代の女性では珍しいことではないので、あまり心配はいりません。逆に50前の女性も更年期の影響でホルモンバランスが崩れて高温期がなくなることがあります。更年期症状に当てはまるものがないかをあわせて確認すると良いでしょう。つらい更年期症状があれば、病院へ相談し、ホルモン補充療法や漢方薬などの治療を受けられます。
36℃未満の場合には低体温かも?
低体温の正確な定義はなく、35℃台でも元気な人は問題ありません。ただ低体温になると風邪を引きやすくなったり、血行が悪くなってむくんだり、生理不順の一因になったりする可能性があります。低体温は生活習慣に問題があるケースが多いため、食事でしっかりと必要なカロリーを摂る・適度な運動を心がけると良いでしょう。
高温期3日目に排卵・着床することはある?
一般的に排卵日は基礎体温のみで特定するのは難しいといわれています。なぜなら排卵は、最終低温期から3日間のあいだに起こるからです(※2)。そのため、低温期から高温期に移行するまで3日かかることも珍しくありません。
排卵が起こるタイミングによっては高温期3日目でも妊娠する可能性があります。妊娠を希望する場合、排卵日の確認には市販の排卵検査薬や病院でのエコー検査を併用すると良いでしょう。
着床は受精後6〜7日目から開始するといわれています。高温期の3日目で妊娠した場合、妊娠検査薬が反応を示すタイミングも既定の検査可能日から遅れると考えられます。妊娠検査薬が陰性だったにもかかわらず生理予定日を過ぎても生理が始まらない場合は、1週間後に再検査するか医師の診察を受けましょう。
高温期の腹痛・吐き気・眠いといった症状の原因は妊娠?生理?
高温期に起こる腹痛・イライラといった症状の原因は?
高温期に腰痛などのさまざまな症状がある場合には、PMS(月経前症候群)の可能性があります。イライラ、のぼせ、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、怒りっぽくなる、頭痛、乳房痛、落ち着きがない、憂鬱など、同じ人でも月によって異なる症状が出る場合があります。
PMSは、生理開始の3日〜2週間前から症状が出始めますが、生理とともに解消します。生理周期に関係なく症状がある、生理が始まっても症状が解消されない場合には他の病気の原因を考える必要があります。
PMSの症状は妊娠の初期兆候に似ている部分も
PMSの眠気や腰痛、風邪のような微熱などは妊娠初期の兆候と似ています。PMSと妊娠初期兆候を見分けるためには、生理の遅れを確認する、市販の妊娠検査薬を試す、病院で詳細な検査をしてもらうといった方法があります。
一般的な市販の妊娠検査薬は生理予定日の1週間後から使用可能なため、しばらくは様子を見ても良いかもしれません。「フライング検査」と呼ばれる、使用可能期間より前に検査薬を用いる方法では正確な判定を行うのは難しいでしょう。妊娠していても判定に必要なホルモンの分泌が足りず陰性になる可能性もあります。
高温期のおりものの変化は?
おりものは子宮頸管から出た粘液や分泌物が混じり合ったもので、女性の身体を守る大事な働きがあります。おりものは女性ホルモンの影響を受けて生理周期にともなって変化します。個人差はありますが、最も量が多くなる排卵期には透明なゼリー状で、よくのびるおりものが2〜3日続きます。人によっては少量の血液が混じることもあります。
黄体期には次第におりものの量は少なくなり、粘り気がある白いおりものになります。下着につくと黄色のように見えることもあります。普段から生理周期ごとのおりものの変化を観察しておくと、異常や変化に気付きやすくなるかもしれません。病気によって量や色、においに変化が生じるケースもあるため、気になるようであれば婦人科を受診しましょう。
高温期の出血!病気の可能性はある?
生理以外のタイミングで出血があると、妊娠や生理への影響が心配になりますよね。一般的に生理以外のタイミングでの性器からの出血は「不正出血」と呼ばれます。不正出血には、器質的な病気によって起こる出血、ホルモンバランスの乱れによって起こる出血、排卵期に起こる中間期出血といったものがあります。人によっては妊娠初期に少量出血する場合もあるようです。
不正出血の診断は非常に難しいため、素人が判断できるものではありません。問題ない出血もあるようですが、病気が原因の可能性もあるので、念のため病院で診察を受けると良いでしょう。
妊娠を希望している場合に気をつけたいこと
妊娠を希望している方は、早い段階からさまざまな対策を講じておくのは良いことでしょう。妊娠初期は赤ちゃんにとってもママにとっても大切な時期になります。妊娠前からいろいろと準備しておけば安心かもしれませんね。
妊娠を希望している場合、具体的には「妊娠できる身体かどうかの検査を受けておく」「飲酒・喫煙を控える」「服用している薬があれば医師に相談しておく」「葉酸や鉄分をしっかりとる」といった対策を事前に講じることができます。妊娠の成立・維持に支障をきたす病気などが隠れていないかを確認できれば、少し心に余裕ができるかもしれません。
飲酒・喫煙は妊娠の可能性がある段階でやめれば大きな影響はないといわれていますが、妊娠を希望しているのであればあらかじめ控えると良いでしょう。薬の服用は妊娠を希望している旨を事前に医師に相談しておけば、妊娠がわかってからもスムーズに相談できるでしょう。
妊娠検査薬は生理予定の1週間後から!
高温期3日目は一般的に特別なイベントがあるわけではなく、基礎体温、おりものの変化や身体の諸症状も決まったものはありません。ちょっといつもと違うなと思ったら、まず病院に相談するのが確実ではないでしょうか。
妊娠の可能性がある場合には、必要に応じて飲酒・喫煙などを控え、常用している薬があれば妊娠の可能性があることを医師に相談して服用すべきかどうかの判断を仰ぐと良いでしょう。市販の妊娠検査薬は一般的に生理予定日の1週間後から使用可能なものが多いため、時期が来たら試してみてください。ストレスによって身体に影響が出る場合もあるため、あまり神経質にならないことも大切ですよ。
※この記事は2023年9月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。