基礎体温とは?妊娠した時の高温期は二段上がりする?いつから・何度上がるのか解説|産婦人科医監修
基礎体温が高温期に二段上がりするという情報を目にしたことはないでしょうか。福さん式として知られ、着床のタイミングで高温期にさらに体温が上昇し、グラフが二段階を示すというものです。福さん式の二段上がりではいつから体温が上昇し、何度になるのかを解説します。二段上がりしない理由や医学的な根拠についても見ていきましょう。
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目次
基礎体温とは?
生理周期にあわせて変化する
基礎体温は、人の身体が生命維持のために必要最低限のエネルギーだけを消費している状態のときの体温を指します。通常、人は食事や運動などの活動で体温が上昇するため、基礎体温は活動の影響を受けていない安静時や起床前に計測します。
基礎体温を毎日計測すると、一般的には周期的な変動を見せます。なぜならば、基礎体温が女性ホルモンの影響を受けるからです。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあり、生理周期に合わせて分泌バランスが変わります。排卵を境にホルモンバランスが変わると、基礎体温も同じリズムで変動するのです。
生理周期は生理の出血がある「月経期」、卵巣内で卵胞が育つ「卵胞期」、成長した卵子が卵巣を飛び出す「排卵期」、卵子が黄体に変化する「黄体期」の4つに分かれます。このうちエストロゲンが多く分泌されるのは卵胞期、プロゲステロンの分泌が増えるのは黄体期です。
低温期と高温期の二相にわかれるのが理想的
正常な生理周期では、排卵が起こると基礎体温が0.3~0.5℃上昇します。基礎体温が上がるのは、プロゲステロンに体温を上昇させる作用があるからです。プロゲステロンは排卵後に卵胞が変化した「黄体」から分泌されます。そのため、排卵後の黄体期に体温が高くなるのです。
黄体の寿命は約14日とほぼ一定のため、高温期は10~14日継続します。黄体からプロゲステロンが分泌されなくなると、子宮内膜は維持されなくなり生理が始まります。プロゲステロンの減少にともない、基礎体温も下がり低温期に入ります。
このように、基礎体温は月経期から卵胞期にかけて低温となり、排卵期から高温期にかけて高温になる二相性を示します。
排卵日や生理予定日の予測に役立つ
基礎体温を毎日計測していると、低温から高温、高温から低温に切り替わるタイミングが把握できます。体温が切り替わるタイミングがわかれば、自分の生理周期を把握し、排卵からおよそ14日後にくる生理日を予測することが可能です。
また、基礎体温は排卵の有無や黄体機能の確認に役立ちます。たとえば、低温期から高温期への移行が1~2日でスムーズに進めば問題ありませんが、基礎体温が低温のままの場合は、排卵機能や卵胞の成長に問題があるのかもしれません。高温期が10日未満と短い場合は、黄体機能の低下が考えられます。
基礎体温は計測するときの条件が影響して、正しく計測できないこともありますが、自分の身体を知る目安となります。
高温期が続くと妊娠の可能性がある
受精卵が着床せず妊娠が成立しないと、黄体機能は低下します。黄体からプロゲステロンの分泌が少なくなり、生理が起こります。ところが妊娠が成立すると黄体は「妊娠黄体」に変化し、プロゲステロンの分泌を続けます。
そのため、高温期が16日以上続く場合は妊娠の確率が高まります。妊娠検査薬を使って、妊娠の可能性を確認してみましょう。高温期が続いているのに陰性になるときは日をずらして再検査を行い、それでも疑わしいときは病院で医師に相談してください。
また、基礎体温は個人差があり、妊娠しているときの体温が何度になるという基準はありません。2~3ヶ月のあいだ基礎体温を計測し、低温期から0.3~0.5℃上昇している体温を高温期の目安にすると良いでしょう。
妊娠すると基礎体温が二段上がりするって本当?
基礎体温の二段上がりとは、低温期から高温期に移行する体温の上昇とは別に、妊娠するとさらに体温が上昇し、高温期が二段階となるというものです。元助産師の「福さん」という方が2002~2007年頃を中心に、ご自身の日記で紹介していました。排卵日の特定方法や妊娠二段上がりについてまとめていることから、福さん式とも呼ばれています。
妊娠二段上がりは福さんの助産師としての経験をもとに、妊娠の兆候のひとつとして発信されているものです。二段階になる理由については、定かではありません。なぜ二段階になるのか、二段上がりしないこともあるのかなど、医学的に検証されているものはないのが現状です。
基礎体温が二段上がりするのはいつから?何度上がる?
福さん式では、排卵後4日間ほど高温期が横ばいとなり、5日目頃にもう一段体温が上昇し、その後基礎体温が小刻みに上下しながら高温期が続く状態を妊娠二段上がりとして紹介されています。
また、受精卵が着床するのは受精7日目頃ということもあり、二段上がりが着床のサインなのではないかとする説もあります。
とはいえ実際に、何日目から二段上がりするのかは明確ではなく、二段上がりの発生頻度や、何度くらい体温が上昇するのかについても医学的に立証されていません。妊娠していても二段上がりしないケースもあり、妊娠と二段上がりを結び付けて良いのかは疑問が残るのが現状のようです。
高温期に二段上がりした後に基礎体温が下がる原因
インプランテーションディップ
インプランテーションディップとは、インプランテーション(着床)とディップ(下げる)を組み合わせた言葉です。高温期に基礎体温が一時的に下がる現象で、着床と同じようなタイミングで起こることから着床のサインではないかと考えられています。
インプランテーションディップにおいても医学的な根拠はあいまいで、何度下がるのか、高温期何日目に起こるのかなど、明確な定義はありません。福さん式の二段上がりと同様、妊娠を知る手掛かりのひとつとしてとらえ、妊娠の可能性が考えられるときは妊娠検査薬で確認するようにしましょう。
ホルモンバランスの乱れ
高温期は通常、10~14日間持続するのが理想です。高温期が10日以上持続せず、低温期に入ってしまう場合はホルモンバランスの乱れが理由のひとつと考えられます。ホルモンの分泌は視床下部、脳下垂体、卵巣が連携してコントロールしています。しかし、ストレスや疲れがあると、ホルモン分泌の系統が乱れ、ホルモンのバランスも崩れてしまうのです。
また、風邪をひいたときは基礎体温が上がるため、風邪が治ると低温期、高温期にかかわらず、体温が下がる傾向が見られます。
基礎体温が上がったり下がったりして、グラフがガタガタになるようであれば、ストレスや身体の不調に向き合ってみると良いかもしれません。
黄体機能不全
高温期が10日以上持続しない場合、黄体機能不全の可能性も考えられます。黄体機能不全とは、黄体の形成に異常があったり、プロゲステロンの分泌が少なかったりして、黄体が働いていない状態を指します。
プロゲステロンの分泌が少ない場合、高プロラクチン血症や多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)などの原因があることが考えられます。原因によって治療方法が異なるので、高温期が短い場合は医療機関を受診し、医師に相談してください。
低温期に入った
高温期に基礎体温が二段上がりしても、その後に基礎体温が下がった場合、妊娠は成立しておらず低温期に入ったのかもしれません。
妊活中の女性からは、基礎体温が二段上がりしたのに生理が来たという声も寄せられています。二段上がりは医学的な根拠に乏しいため、基礎体温が二段階を示したとしても、その後の経過は慎重に見極めるようにしたいですね。
測り方や気温の影響
基礎体温は測り方や気温の影響を受けるため、冬場や冷房が効いた部屋では基礎体温が低くなることがあります。また、トイレや朝の支度などで活動した後に、二度寝してから基礎体温を測ると正確な体温が測れません。
「予測式」の基礎体温計は、短時間で5~10分後の体温を予測した数値を表示するため、誤差が生じることもあります。
妊娠検査薬で陰性なのに二段上がりする原因
基礎体温は排卵日から1~2日で一気に高温期へ移行しますが、ゆっくりと体温が上昇することもあり、このようなときにグラフが二段上がりになっているように見えます。基礎体温がゆっくり上昇するのは、ホルモンバランスの乱れが一因になっている可能性があります。
風邪などの感染症で発熱しているときも、基礎体温は上昇します。高温期の途中で風邪症状があらわれたときは、発熱している可能性を考慮しておきましょう。
高温期が続いて妊娠したかもと思ったらセルフチェック!
高温期の二段上がりだけでは妊娠したかどうかわからない
高温期に基礎体温が二段上がりすることについては、医学的な検証が十分になされていないのが現状です。基礎体温は計測の条件によって実際と異なる可能性もあるため、基礎体温だけで妊娠の判定はできません。
排卵から7日目頃に基礎体温が二段上がりを示したとしても、その後の経過を待って妊娠したかどうかを判断するようにしましょう。
妊娠超初期症状を確認しよう
一般的に、高温期が16日以上継続していると妊娠の可能性が高いといえます。生理予定日を過ぎても生理がこないときは、妊娠検査薬で検査してみると良いでしょう。
高温期が続いているのに生理がきた場合は、着床出血の可能性が考えられます。着床出血は医学的な用語ではありませんが、生理予定日近くに起こる出血は、受精卵が子宮内膜に潜り込むときの出血が排出されたものと考えられています。
生理予定日近くに出血があり、「生理がきた」と思っても1~2日ほどの短い期間で終わってしまったら、妊娠の可能性を考えてみましょう。
妊娠検査薬は生理予定日を一週間過ぎてから
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを検知する検査薬です。hCGは尿の中に含まれるため、自宅で簡易的に検査することができます。
日本で販売されている一般的な妊娠検査薬は、尿中のhCGが50IU/L以上になると反応し、陽性を示します。hCGは妊娠4週頃に血中濃度が100~200IU/Lとなり、妊娠5週頃に約2,000~4,000IU/Lと分泌量が一気に増加します。
妊娠5週というのは、生理予定日の一週間後あたりです。したがって、妊娠検査薬を使用するのは生理予定日一週間後が推奨されています。通常の妊娠検査薬よりも感度の良い早期妊娠検査薬であれば、生理予定日当日から検査が可能です。
基礎体温の二段上がりはひとつの目安に
基礎体温は個人差があり、必ずしも理想的な二相性を示すグラフになるとは限りません。自分の見立てと医師の見立てが違うこともあります。誤差を生じることもあるため、基礎体温はあくまで自分の身体のリズムを知るひとつの目安としてとらえるようにしましょう。
また、高温期に基礎体温が二段上がりを示しても、それだけで「妊娠した」と判断することは難しいものです。着床出血、生理の遅れ、いつもと違う身体の不調など、ほかに妊娠の兆候がないか合わせて確認してみると良いかもしれません。
※この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。