【産婦人科医監修】基礎体温についてきちんと学べる!生理前は体温が下がる?高温期はいつから?妊娠の可能性がある場合は?
基礎体温が下がるときは、一般的に生理が来るタイミングと考えられています。それでは、基礎体温が下がってから何日で生理になるのでしょうか。低温期と高温期が通常の変動と違う場合の原因、基礎体温が下がったのに生理が来ないとき、基礎体温が低くても妊娠の可能性があるときなど、基礎体温の概要とともに産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
基礎体温とは?低温期と高温期があるの?
安静時の体温
基礎体温とは、朝目覚めてすぐに安静にした状態で測った体温のことをいいます。人は身体を動かすと体温が変化するので、基礎体温は活動による影響を受けないように起き上がる前に測定するのが基本です。
理想的な基礎体温は36.7℃程度とされていますが、もともとの体質や生活習慣、計測方法などが影響するため、数値は目安と考えると良いでしょう。
生理周期にあわせて二相になるのが理想的
初潮を迎えた女性の身体は、閉経を迎えるまで生理と排卵が繰り返し起こります。1回の生理は、3~7日間続くのが一般的です。生理が始まってから次の生理が来るまでの日数は平均して25~38日で、このサイクルを「生理周期」と言います。
生理周期は月経出血がある「月経期」、卵胞や子宮内膜が成長する「卵胞期」、十分に育った卵胞が破れ卵子が飛び出す「排卵期」、子宮内膜が厚く柔らかくなる「黄体期」に分かれます。基礎体温は月経期と卵胞期では低温を示します。そして排卵をきっかけに高温へと切り替わり、排卵期、黄体期のあいだは高温で推移します。
基礎体温の低温と高温との差は、風邪で熱が出るときほど大きくありません。そのため、基礎体温を測るときは小数点第二位(0.05℃)まで表示される婦人体温計(基礎体温計)を使用します。低温と高温の差は0.3~0.5℃が目安です。
エストロゲンとプロゲステロンが関係する
排卵を境に基礎体温が低温期と高温期の二相となるのは、女性ホルモンの分泌が影響しています。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあり、卵胞や子宮内膜に作用して排卵と着床に向けた準備を進めます。
エストロゲンは卵胞から分泌されるホルモンです。排卵前に急激に分泌が増加し、排卵を促します。排卵後に黄体期に入ると、卵胞から変化した黄体がプロゲステロンを分泌します。プロゲステロンは体温を上昇させる作用があるため、分泌量が増える黄体期に基礎体温が高くなると考えられています。
基礎体温を把握すると、排卵や生理のときに起こる変化を視覚化できます。自分の身体のリズムが予測でき、妊娠の可能性や着床のタイミングを予測するのに役立ちますよ。
基礎体温は生理前に下がる?下がっても生理が来ない場合は?
高温期が約14日続いてから基礎体温が下がる
生理周期には個人差があり、月経開始日から排卵までの日数はバラつきがあります。一方で、排卵から生理が始まるまではおよそ14日間とほぼ一定です。
受精が成立すれば基礎体温は高温のまま維持されますが、受精が成立しないと10~14日間高温期が続いた後に基礎体温は下がります。これは黄体が生理開始予定日の4日前頃から退行し始めるためです。
黄体が退行するとプロゲステロンの分泌が減少し、基礎体温は高温から低温へ移行します。基礎体温は1~2日のあいだに一気に下がるのが一般的ですが、2~3日かけてゆっくり下がることもあります。ただし、高温期が短く途中から下がってしまうときは黄体機能不全が疑われます。
基礎体温が下がるのをみて生理がいつからか予測可能
生理開始の何日前から基礎体温が下がるのか気になる方は多いようです。10~14日間の高温期の後に基礎体温が0.3~0.5℃下がったら、黄体が退化しプロゲステロンの分泌が減ってきた合図です。子宮内膜が維持できなくなり、剥がれ落ちて生理が開始します。黄体の機能が低下するのは生理開始予定日の4日前頃からです。
基礎体温が高温期に入ったタイミングや低温になったタイミングがつかめると、生理の何日前なのかだいたいの予測が可能です。生理予定日を把握して、1ヶ月のスケジューリングや、妊娠・避妊のタイミングをはかるのに活用しましょう。
低温期に生理が来ないと生理不順や妊娠の可能性がある
高温期から低温期に入ったのにもかかわらず生理が来ないときは、基礎体温の測り方に問題がないか確認してみましょう。室温が低く身体が冷えている場合は、基礎体温が下がることもあります。
測り方に問題がなく、それでも低温が続く場合は生理不順や妊娠が疑われます。高温期が10日以下や高温と低温の差が0.3℃未満のときは「黄体機能不全」、低温が続く場合は「無排卵月経」などが考えられるので、産婦人科を受診し医師に相談してみてはいかがでしょうか。
また、通常は妊娠すると高温が維持されますが、妊娠中でも基礎体温が下がることがあります。基礎体温が低温から高温へ一気に上昇しており、なおかつ高温期が10~14日間持続していて、排卵日から17日以上経っていても生理が来ない場合は、妊娠検査薬で検査してみましょう。陽性を示す場合は産婦人科を受診してください。
基礎体温が下がって出血!妊娠の可能性はある?
妊娠超初期症状のひとつとして、生理開始予定日前後に茶おり(茶色いおりもの)が見られることがあります。生理と混同しやすく、妊娠の可能性に気付かないことも少なくありません。茶おりは生理よりも出血量が少なく色が薄いことが特徴です。この傾向を見逃さず、茶おりと生理を区別していきたいですね。
さらに妊娠中でも基礎体温が下がることはあります。基礎体温が下がった後に通常の生理と違う出血があったときは、妊娠の可能性を考慮してみましょう。
また、排卵時に性交があり、生理開始予定日の1週間前あたりに出血があれば、受精卵が子宮内膜に潜り込むことで起こる「着床出血」かもしれません。いずれも妊娠検査薬を使い、妊娠の有無を確認すると安心です。
高温期に基礎体温が下がる原因は?
ホルモンバランスの乱れ
高温期は10~14日間続くのが理想ですが、高温期の途中で一時的に基礎体温が下がることがあります。基礎体温は低温期と高温期のあいだで上がったり下がったりを繰り返し、グラフはガタガタのラインとなります。
基礎体温の変動が激しいのは、ホルモンバランスが乱れていることが原因と考えられます。ストレスや疲れが自律神経の乱れや視床下部の異常を生み、結果としてホルモンの分泌が減少するため、ホルモンバランスが乱れやすくなるのです。
ホルモンバランスが乱れると、生理不順、免疫力の低下、冷え、抑うつ、風邪を引きやすいなどの症状があらわれます。体調悪化の悪循環が生まれやすいため、ストレスや疲れをうまく解消することが大切です。
黄体機能不全
高温期が10日未満と短いとき、生理周期が短いときは、黄体の機能が低下しプロゲステロンの分泌が少なくなっていると考えられます。この状態を「黄体機能不全」と言います。プロゲステロンが不足した状態では子宮内膜が維持できないので、頻発月経や着床不全による不妊の原因となります。
妊娠を希望しているときは、黄体機能不全や生理周期の異常を改善していくことがのぞまれます。黄体機能不全の治療には、黄体ホルモンを補充する「ルトラール」や「デュファストン」もしくは、hCG製剤が用いられます。
着床によるインプランテーションディップ
インプランテーションディップとは、「implantation(着床)」と「dip(下げる)」からなる言葉です。基礎体温は排卵後に高温を維持しますが、着床のタイミングで少しだけ下がります。この現象を「インプランテーションディップ」と言います。
着床が起こるのは、受精してから7~11日目です。そのため、インプランテーションディップが見られるのは、高温期に入ってから7日頃となるのが一般的です。ただし、インプランテーションディップは必ずあらわれる現象ではありません。
また、医学的な定義が示されておらず、何度下がるのか、なぜこのような現象が起こるのかは明確になっていないのが現状です。そのためインプランテーションディップがなくても、妊娠している可能性はあるのです。もしも生理予定日の7日前頃に出血があったり、腹痛を覚えたりすれば、妊娠初期の兆候かもしれません。
測り方や気温の影響
基礎体温は、婦人体温計を使って口腔内で測定します。体温計の先端を下の裏の奥まで入れ、できるだけ毎日同じ時間帯に同じ条件で測るのが理想です。しかし、冬のあいだやクーラーの影響で室温が低下していると、基礎体温が低くなることがあります。また、時間が早ければ低く、時間が遅いと高くなる傾向があります。
トイレに行ったり、家事をしたりした後に二度寝をすることもあるでしょう。このようなときは、できるだけ活動を開始する前に計測しておきたいですね。条件が著しく変わったり、うまく計測できなかったりした日は無理に計測せず、翌日から計測を再開してください。
基礎体温が最も下がる時期が排卵日なの?
排卵は基礎体温が低温から高温に移行するときに起こるとされています。そこで基礎体温と排卵日の関連性を調べてみると、いくつかのパターンがあることがわかってきました。代表的なのは低温期の最終日に排卵するタイプ、高温期に切り替わる2~3日前に排卵するタイプ、高温期に移行した2~3日後に排卵するタイプと、3つのパターンです。
このため、自分の排卵日がいつなのかを正確に把握するためには、基礎体温だけではなく「排卵検査薬」を併用することが望ましいと言えます。
排卵検査薬は排卵前に分泌が増える「LH(黄体形成ホルモン)」を感知し、排卵のタイミングを探ります。一般的に、生理開始予定日の17日前から使用を始めます。排卵検査薬で陽性反応が出たら、2日以内に排卵が起こるとされています。
生理開始予定日の予測がずれていると、排卵のタイミングが図れません。基礎体温で生理周期を把握し、適した時期に排卵検査薬を活用していきましょう。
体外受精の胚移植後に基礎体温が下がることがある?
体外受精では、排卵前の卵胞を体内から取り出し、射精した精液の中から取り出した運動精子と体外で受精させます。受精卵は体外で培養し、採卵後2~6日のあいだで子宮に移植します。
体外で受精卵を培養しているあいだも黄体期を維持できるよう、薬剤を使って黄体補充を行います。胚移植後も薬剤の投与は続きますが、基礎体温の計測条件などで一時的に基礎体温が下がることがあります。
基礎体温が下がると妊娠の経過に問題が起こったのかと心配になることもあるでしょう。しかし、基礎体温の低下が即座に妊娠の経過に結びつくわけではありません。ホルモン剤が処方されていれば医師の指導に従い、心配なことがあれば医療機関を受診して医師に相談してみましょう。
基礎体温が下がる理由はじっくりと見極めよう
基礎体温は身体のリズムを把握し、生活サイクルを見極めるのに役立つものです。その一方で、基礎体温の上下動を見て、ときにはうれしく感じたり、がっかりしてしまったりということもあるのではないでしょうか。
基礎体温が下がる理由や上がる理由はさまざまな要因が考えられます。一日の変化だけで判断せず、生理周期を通じて身体の変化をチェックしていきましょう。基礎体温はあくまで目安としてとらえ、おおらかな気持ちで計測することが継続のポイントとなります。
計測の結果、もしも基礎体温の変化が一般的なリズムと大きく異なっているときや、今までの自分のサイクルと変わっているときは、一度産婦人科を受診して異常がないか検査してみると安心です。ただし、出血や腹痛など明らかな異常があれば、早めに医療機関を受診するようにしてくださいね。
※この記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。