基礎体温が低いまま妊娠できる?高温期がいつもより低い原因は?無排卵の可能性もある?

産婦人科医監修|基礎体温が低いというのはどのような状態を指すのでしょうか。いつもより低いときの原因はあるのでしょうか。基礎体温は妊活の目安ともなるため、冷えや排卵が影響しているのではないかと気になります。基礎体温が低い原因や妊娠の可能性について探り、日常的にできる改善方法についても解説していきます。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 理想的な基礎体温とは?
  2. 基礎体温が低いとは?身体にどんな影響がある?
  3. 基礎体温が低い原因
  4. 基礎体温が低いのに生理が来ない原因
  5. 高温期が低いまま妊娠できる?無排卵に注意?
  6. 低体温の改善方法
  7. 季節や時間帯の影響で基礎体温がいつもより低いことはある?
  8. 基礎体温が低いときは生活習慣から見直してみよう
  9. あわせて読みたい

理想的な基礎体温とは?

基礎体温とは

人の身体は何もせずにじっとしていても、生命を維持するために必要な活動を行ってエネルギーを消費しています。このエネルギーの消費を「基礎代謝」といいます。基礎体温は、基礎代謝を行っているときの体温で、一日で最も低い体温になります。

基礎体温は女性ホルモンの影響で、生理周期の中で規則的な変動を見せます。女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」があり、排卵を挟んで分泌量が増減します。プロゲステロンには体温を上昇させる作用があるため、プロゲステロンの分泌が増える時期は基礎体温が高くなることがわかっています。

基礎体温を正しく計測することで、ホルモンバランスが整っているか、排卵が行われているかなどを知ることができます。しかし、体温は食事や身体を動かすことで上昇してしまうため、活動の影響を受けないように朝起きて寝たままの状態で計測します。

基礎体温の計測に使うのは、小数点第二位(0.05℃)まで計測可能な基礎体温計(婦人体温計)です。口の中に入れて舌下で使用するものが広く使われています。同じ時間帯に毎日続けて記録すると、基礎体温の変動を把握できます。

低温期と高温期の二相にわかれる

基礎体温に影響する女性ホルモンは、排卵や生理をコントロールしています。排卵は「卵胞期」に卵巣の中で育った卵胞から、卵子が飛び出すことを指します。卵胞はエストロゲンを分泌するはたらきも持ち、卵胞期にエストロゲンを大量に分泌して子宮内膜を厚くします。

卵子が飛び出すのは、脳の下垂体から「黄体形成ホルモン(LH)」が大量に分泌されることが合図となります。黄体形成ホルモンの大量分泌は「LHサージ」といいます。LHサージが起こってから排卵までの期間は「排卵期」と呼ばれます。

排卵が正常に行われていると、卵子が飛び出した後の卵胞は「黄体」へと変化します。黄体はプロゲステロンを分泌し、子宮内膜を着床に適した状態へと成熟させます。プロゲステロンは基礎体温を上昇させる作用があるため、基礎体温は排卵を境に上昇します。黄体がはたらき、基礎体温が高温期になる時期を「黄体期」といいます。

黄体の寿命は約14日間で、寿命が尽きるとプロゲステロンの分泌は減少し、子宮内膜が剥がれ落ちて「月経期」に入ります。プロゲステロンの分泌が止まった影響で、基礎体温は生理前から低下します。このように、基礎体温は生理周期に関連したホルモンの分泌によって、月経期と卵胞期には低温、排卵期と黄体期には高温の二相性を示します。

低温期と高温期の差が0.3~0.5℃

基礎体温は低温と高温の二相に分かれるのが理想です。一般的に、低温期と高温期の差が0.3~0.5℃であることが望ましいとされています。

しかし、体温の変動には個人差があり、「何度なら正常」というような医学的な定義はありません。はっきりと二相にわかれなくても、排卵や妊娠に問題がないという人もいます。

排卵日の前後に体温が低くなる

基礎体温は排卵日の前に、体温が低下する日があります。これを「体温陥落日」といいます。体温陥落日が過ぎると、基礎体温は低温から高温に転じます。低温期から高温期に移行した日が「低温相最終日」、高温期に入った日が「高温相初日」となります。

排卵が起こるのは、体温陥落日、低温相最終日、高温相初日のいずれかと考えられており、最も排卵が起こる確率が高いのは低温相最終日と考えられています。排卵後は体温が一気に上昇し、2~3日以内に低温相から高温相に移行するのが一般的です。

妊活中であれば、体温が低下した日が性交に適したタイミングといえます。しかし体温陥落日がみられないケースもあり、体温の低下と排卵の関連性は明確に解明されていない部分もあります。基礎体温だけでは排卵日を予測するのが難しいため、正確な排卵を予測するためには、排卵検査薬を用いると良いでしょう。

基礎体温が低いとは?身体にどんな影響がある?

日本人の平熱は36.55~37.23℃と36℃台後半とされていますが、基礎体温には「平熱は何度」というような定義はありません。しかし、一般的には低温期が36℃以上となることが望ましいとされています。

そのため、低温期が35℃台で高温期が36℃台前半になると「低体温」と判断されることがあります。基礎体温が低いと基礎代謝も低いと考えられ、冷え、血行不良、疲れなどの身体の不調があらわれやすくなります。

また基礎体温が低い人の傾向としては、頻発月経や稀発月経といった生理不順がみられます。低体温が長期的に続くと、免疫機能や生殖能力が低下することも考えられるので注意が必要です。

基礎体温が低い場合、ストレスや睡眠不足を抱えていることが多いものです。基礎体温が低い人の高温期をあげるには、生活の質を高めていくことも大切です。さらに、生活習慣を見直しても改善が見込めないときは、隠れた病気がないか、一度産婦人科で相談してみるのも良いかもしれません。

基礎体温が低い原因

ホルモンバランスの乱れ

基礎体温に関係するホルモンの多くは視床下部、脳下垂体、卵巣といったネットワークで分泌がコントロールされています。しかし、ダイエットによる急激な体重減少、寝不足、ストレスなどがあると、ホルモン分泌をつかさどるネットワークに異常をきたします。基礎体温がいつもより低いときは、睡眠や休息を多めにとって生活リズムを整えていきましょう。

また、流産後や中絶後もホルモンバランスが乱れやすい時期です。基礎体温の低温期が長くなったり、高温期の状態が続いたりするケースも報告されています。2~3ヶ月様子をみて以前の基礎体温に戻らないときは、かかりつけの医師に相談してください。

とはいえ、基礎体温は測り方で誤差が生じることもあるものです。冬の寒い時期やクーラーが効いていたといった要因で、基礎体温が低くなることもあります。基礎体温が低いときは、測り方やそのほかの身体の不調がないか意識してみると良さそうです。

筋力低下

一般的に基礎代謝が低下すると、体温は低くなると考えられています。基礎代謝は脂肪質な人よりも、筋肉質な人や「活動強度」が高い人の方が高くなる(※2)ことから、日常的な運動不足を感じている人は、適度な運動を心がけるようにしたいですね。

一方で、運動や食事量は基礎体温に影響しないという報告もあります(※3)。基礎体温には個人差があるため、運動をしたことがすぐに基礎体温の上昇につながるというわけではないようです。また、低体温となる原因がいくつか絡んでいることも予想されます。

栄養不足

低温期と高温期では、必要とする栄養素や味覚にも違いがある可能性があると、いくつかの研究が示唆しています。とくに黄体期では卵胞期よりも基礎代謝が増加し、エネルギー摂取量や糖代謝量がアップするとされています。そのため、高温期にはエネルギーの消費に合わせた栄養摂取が欠かせないといえるのです。

さらに、脂質や糖質が低下すると、身体の中のたんぱく質がエネルギーとして使われるようになります。たんぱく質が消費されると、赤血球の中にある「ヘモグロビン」の量が低下し、貧血になりやすくなります。貧血傾向があると身体は冷えを感じやすいことがわかっています。

甲状腺ホルモンの分泌異常

甲状腺とは喉元で「甲状腺ホルモン」を分泌している器官です。甲状腺ホルモンは全身の細胞の新陳代謝を促したり、自律神経を刺激したりするはたらきをします。甲状腺はストレスなどの影響を受けやすく、甲状腺ホルモンが不足したり、分泌が過剰になったりする異常が起こることがあります。

甲状腺ホルモンが不足している状態は「甲状腺機能低下症」といいます。全身の代謝が低下し、寒気、低体温、筋力の低下、皮膚の乾燥、疲れやすさなどの症状があらわれます。一方で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されているときは「甲状腺機能亢進」となり、のぼせ、手足の震え、発汗、イライラ、息切れといった症状が出やすくなります。

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更年期

更年期とは閉経前の前後10年を指し、一般的には45~55歳頃の年齢を指します。更年期が近づくと女性ホルモンが減少し、段々と高温期が短くなるなど基礎体温に変化があらわれます。最終的には低温期と高温期の二相を示さなくなり、閉経となります。

閉経すると基礎体温は低温期がずっと続くようになります。甲状腺炎などの自己免疫疾患があると、40歳未満で閉経する「早発閉経」となる可能性があります。基礎体温が高温とならないときは、一度医師による診察を受けましょう。

基礎体温が低いのに生理が来ない原因

生理不順

黄体期には、高温相が約14日間続いたあと、基礎体温が下がり生理が始まるのが通常です。しかし、低温期になったのに生理が来ないのは、ホルモンを分泌するネットワークに問題があり、生理不順となっているのかもしれません。

基礎体温の変動、排卵、生理をコントロールしているホルモンは、視床下部、脳下垂体、卵巣が連携して分泌が行われます。このネットワークは生理周期を通じて綿密に連動しており、どこかに異常があると、生理が来ない、基礎体温がガタガタになる、排卵がないなどの症状があらわれます。

ホルモン分泌の異常の多くは、ストレスや疲れなどに起因することが多いものです。なるべくリラックスすることを心がけ、生理不順が2~3周期と続くようであれば、一度産婦人科で原因を調べてみると良いかもしれません。

妊娠している可能性も

高温期が終わり低温期に入った場合、1~2日で生理がくるのが通常です。もしも、基礎体温が下がったのに生理がこないときは、妊娠の可能性が考えられます。基礎体温のほかにだるさ、熱っぽさ、胃の不快感、便秘などの「妊娠超初期症状」がないか確認してみましょう。

また、妊娠していると高温期に一時的に体温が低下する「インプランテーションディップ」という現象がみられることがあります。インプランテーションディップは着床のタイミングで起こると考えられています。妊娠すれば必ずあらわれる現象ではありませんが、高温期に入ってから1週間頃に体温が低下したら、妊娠を疑っても良いかもしれません。

いずれにしても、高温期が終わっても生理が来ないときは、妊娠検査薬を使って検査をしてみましょう。妊娠検査薬は生理予定日の1週間後以降に使うことができます。

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高温期が低いまま妊娠できる?無排卵に注意?

高温期の体温が低くても、低温期と高温期の二相にわかれていれば妊娠する可能性はあります。実際に「妊娠できた」という体験談も多く、心配しすぎることはないでしょう。

しかし、低温期と高温期の差が0.3℃よりも小さかったり、36℃台前半よりも低かったりするときは何らかの異常が隠されているかもしれません。たとえば黄体の機能が弱くプロゲステロンが不足する「黄体機能不全」では、低温期から高温期への移行に時間がかかる、高温期が9日以下と短いという症状もみられます。黄体機能不全があると妊娠継続が難しくなるため、黄体ホルモンを補充するなどの治療が行われます。

また、無排卵なのに生理が起こっている「無排卵月経」の可能性もあります。高温期の体温が低い、高温期の日数が短い、生理があるのに不妊が続くというときは卵巣や排卵の状態を調べてもらうと安心です。

低体温の改善方法

低体温はホルモンバランスが影響していることが大半です。ホルモンバランスを整えるには、規則正しい生活をすることが大切です。睡眠や食事に気を配り、適度な運動を心がけましょう。

適度な運動には、日常生活で行っていることも含まれます。掃除や子どもとの遊びを15~20分続けると、体操や水中運動を行った程度の活動強度が得られます(※2)。運動する時間をとれないときは、日常的な活動の中で早足で歩く、階段を使うといったことを意識すると良さそうです。

黄体期の身体は、妊娠の成立に向けてエネルギーを貯め込むと考えられています。ダイエットや疲労で食生活が偏ると、栄養不足となり体温を上げるためのエネルギーが不足してしまいます。妊娠に適した環境を整えるためにも、脂質、糖質、ミネラルを含んだバランスの良い食事を摂るようにしたいですね。

とはいえ、規則正しい生活は簡単にできるものではありません。食事も運動もと気にかけることが、かえってストレスになってしまうこともあります。無理のない範囲で取り組んで、心地良い生活をおくることが、ホルモンバランスを改善する近道です。

季節や時間帯の影響で基礎体温がいつもより低いことはある?

基礎体温は季節や時間帯、周囲の環境の影響を受けやすいものです。正しい測り方ができていなくても、大きく変動してしまうため、毎日同じ時間帯で、同じ条件のもと計測するのが重要です。

基礎体温が低くなる要因として、寝る前の飲酒や寝不足があげられます。また、冬場やクーラーの効いた部屋など、室温が低いときも基礎体温がいつもより低くなりやすいものです。

夜中にトイレに起きた、早朝から活動を始めた、二度寝したなどの動作も影響するため、いつもと違ったことがあれば基礎体温表に記録しておくと良いでしょう。

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基礎体温が低いときは生活習慣から見直してみよう

近年の研究では、50年前と比べて体温が低い人が多いことがわかっています。体温が低いと、だるさ、疲れやすさ、気力の低下といった問題が起こりやすく、生活の質自体が低下してしまうことが懸念されます。

長い目で見ると生殖機能や免疫機能の低下につながる可能性もあるため、毎日の生活で、基礎体温を上げるための取り組みを少しだけ意識してみてはいかがでしょうか。もしも生理周期や基礎体温の二相性に心配なことがあるときは、一度医師に相談してみるのも良いでしょう。

基礎体温は排卵日や生理日の予測に役立つだけではなく、体調や生活全般を見直す目安ともなります。すこやかな毎日を送れるよう、基礎体温を役立ててください。

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