生理前後・生理中の基礎体温の変化!体温が下がったのに生理が来ない原因は?

基礎体温は生理前、生理中、生理後と、生理周期を通じた変化を見せます。一般的に、排卵後に体温が上がり、生理前に下がるのが基本です。しかし生理前に体温が下がらない、生理中も体温が高いといったケースも存在します。そこで、一般的なグラフと基礎体温の変動が異なる場合、どのような原因が考えられるのか、対処法とともに解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 基礎体温と生理周期の関係
  2. 生理前の基礎体温は高温期?体調の変化は?
  3. 高温期から下がると生理が近い?いつ来る?
  4. 高温期から下がったのに生理が来ない!妊娠可能性は?
  5. 基礎体温が高温期のまま生理が来ることはある?
  6. 生理中・生理後の基礎体温と体調の変化は?
  7. 基礎体温と生理周期から身体の状態を確認しよう
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基礎体温と生理周期の関係

基礎体温とは

運動や食事をすると体温が上がりますね。これは活動のためにエネルギーが消費され、熱が生み出されるからです。ところが人の身体は安静にした状態でも、生命維持に必要なエネルギーを消費しています。このエネルギー代謝を「基礎代謝」といい、基礎代謝を行っているときの体温が「基礎体温」となります。一日のうちでもっとも低い体温とされています。

基礎体温の計測は、朝目覚めたときに安静にした状態で行います。計測には小数点第二位(0.05℃)まで測れる「婦人体温計(基礎体温計)」を使います。婦人体温計は通常、口に入れて舌下で使用します。測った数値を基礎体温表に記録しておくことで、体温の変化を把握することができるのです。

基礎体温は常に一定ではなく、女性の生理周期にあわせて規則的な変動を見せるのが理想です。そのため基礎体温の変化をみると、生理周期で起こる身体の変化を予測するのに役立ちます。

生理周期とは

女性の生理は3~7日のあいだ性器からの出血が続き、その後一定の間隔をあけて再び生理の出血が起こるという周期性をみせます。この生理初日から次の生理が始まる前日までの期間を「生理周期」といいます。

1回の生理周期は25~38日間となるのが正常で、この期間に排卵や妊娠の成立に向け身体は準備を整えていきます。一連のはたらきをつかさどるのは、視床下部、脳下垂体、卵巣です。

まず、脳下垂体から「卵胞刺激ホルモン」が分泌されると、卵巣内にある卵胞が成長を始めます。卵胞からは女性ホルモンの「エストロゲン」が分泌されるようになり、子宮内膜を成長させます。この時期を「卵胞期」といいます。卵胞が十分に成長すると、「黄体形成ホルモン」が分泌され、「排卵」が起こります。これが「排卵期」です。

排卵で卵子が飛び出した後の卵胞は「黄体」へと変化し、女性ホルモンの「プロゲステロン」を分泌します。この時期が「黄体期」になります。プロゲステロンは子宮内膜を着床に適した状態へと成熟させるはたらきをします。ここで着床が成立しないと子宮内膜は剥がれ落ち、生理が始まります。生理の出血がある期間を「月経期」といいます。

生理周期内で低温期と高温期にわかれる

生理周期は月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4つの時期にわけられます。さらに、基礎体温はこの4周期の中で、低温期と高温期にわかれます。低温期となるのは月経期、卵胞期です。

そして、基礎体温は排卵を契機に低温期から高温期へと移行します。高温期になるのは排卵期と黄体期です。体温が上昇するのは、黄体から分泌されるプロゲステロンに体温を上げる作用があるためです。

基礎体温は個人差があり、「何度でなければいけない」というような定義はありません。しかし、低温期と高温期の差が0.3~0.5℃で、高温期の体温が36.5℃以上あることが理想です。

基礎体温から生理予定日や生理不順の兆候がわかる

ホルモンが正常に分泌され、排卵が問題なく起こっていれば、基礎体温は低温と高温の二相を示します。また、黄体の寿命は約14日間のため、低温相から高温相に移行して約14日たてば生理が始まるのが一般的です。

基礎体温には個人差がありますが、自分の変動パターンがつかめれば、生理予定日や排卵日の予測につながります。一方で、低温と高温の二相にわかれていなかったり、高温期の日数が短かったりするなど、基礎体温のグラフが理想の形にならないケースもあります。

基礎体温が二相にならないときは、ホルモンの乱れや無排卵月経を疑います。黄体期が9日未満のときは黄体機能不全かもしれません。このように基礎体温が周期的な変動を見せないときは、身体になんらかの不調があると考えられます。生理不順や排卵の状態を知る手掛かりとなるため、妊活にも役立てられています。

生理前の基礎体温は高温期?体調の変化は?

基礎体温は排卵日前後に低温期から高温期へと移行します。高温期に入るのはプロゲステロンのはたらきによるものです。プロゲステロンは妊娠の成立を促すため、ほかにも子宮内膜を厚くさせたり、水分を貯蔵したり、食欲を増進させたりするはたらきをします。

そのため、むくみ、腹部や乳房の張り、便秘などがあらわれやすくなります。また、ホルモンバランスが急激に変わることで自律神経が乱れ、イライラや気分の落ち込みが激しくなるなどの症状が出ることもあります。高温期には体温が37℃以上になることもあり、寝苦しさから不眠を訴える人もいます。

こうした生理前の不調は「PMS(月経前症候群)」と呼ばれ、全女性の50~80%が感じているという報告があります(※1)。PMSは「生理前の3~10日間ほど続く精神的身体的症状で、生理の発来とともに症状が低減したり、消失したりする(※2)」と定義されており、一般的には基礎体温が高い時期は、身体の不調が続くと理解されています。

高温期から下がると生理が近い?いつ来る?

何日前に下がるかは個人差がある

高温期は黄体の寿命に応じて約14日間となるのが正常です。しかし、高温相から低温相へといつ下がるのかは個人差があります。高温期が10~14日間であれば正常の範囲内です。

生理の数日前に体温が低下することもあれば、生理直前になって体温がぐっと低下し、その翌日に生理が来るという人もいます。

下がり方もさまざま

生理前に高温相から低温相へと1日~半日で急に下がるグラフをよくみかけますが、体温の下がり方もだんだんと下がることがあったり、ガタガタと階段状に下がったりとさまざまです。

そのため、体温が下がり始めたら「数日で生理がくる」と予測できますが、下がり始めた直後に生理が来なくても、慌てずに様子をみるようにしましょう。

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高温期から下がったのに生理が来ない!妊娠可能性は?

一般的には基礎体温が下がれば数日以内に生理が来るのが通常です。しかし、高温相から低温相へと体温が低下したにもかかわらず、生理が来ないことがあります。これは、ホルモンバランスの乱れが影響し、生理不順が起こっていると考えられます。

ホルモンバランスは、精神的なストレスや身体の疲れがたまっているときに乱れがちです。生理不順は無排卵などの症状につながる可能性があるため、生理の遅れが2~3周期続くようであれば、一度産婦人科で相談してみると良いかもしれません。

また、妊娠していれば高温が維持されるものですが、体温が低下したのに「妊娠していた」というケースもあります。これは「インプランテーションディップ」という現象によるものです。インプランテーションディップは、受精卵が着床するタイミングで一時的に基礎体温が低下することを指します。

インプランテーションディップはすべての妊娠で起こるわけではなく、体温低下が必ずしも妊娠を意味するわけではありません。しかし、生理予定日から1週間を過ぎても生理が来ないときは、妊娠検査薬を使って検査をしてみましょう。陽性反応が出ないのに生理が来ないときは、生理予定日が間違っている可能性があります。もう1週間待って改めて検査をしてみてください。

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基礎体温が高温期のまま生理が来ることはある?

基礎体温が下がらないときは、妊娠の可能性が高く、生理が来ないのが通常です。それでは基礎体温が高いままなのに、生理のような出血があるのはどういうことが考えられるのでしょうか。症例ごとに原因と対処法をみていきましょう。

不正出血

基礎体温が高いままなのに、性器から出血があるときは、なんらかの病気が隠されている可能性が考えられます。子宮筋腫や子宮内膜症などの病気がある場合と、病気が認められないのに出血がある場合があります。出血のほか性交痛や腰痛、下腹部痛などがあるときは一度産婦人科を受診してみましょう。

ホルモン治療の影響を受けた生理

黄体機能不全などがあり、妊娠を希望している場合は、治療薬として黄体ホルモン剤を服用することがあります。たとえば、「ルトラール」という黄体ホルモン剤によって黄体ホルモンが補充されると、基礎体温が上昇して安定的に高温期が継続します。通常、ルトラールの服用を中止すると基礎体温が下がり、数日後に生理が来ますが、まれに基礎体温が高いまま生理が起こることがあります。

黄体ホルモン剤は個人個人の症状に合わせて服薬量や薬剤が決められます。治療中に異常があったときは、かかりつけの医師に相談すると良いでしょう。

排卵期出血

排卵で成熟した卵子が卵巣を飛び出すときに、卵巣の膜が傷つき出血が起こることがあります。また、排卵時期にはホルモンバランスが大きく変わるため、子宮内膜が剥がれて出血を起こすこともあります。

このような出血は、「排卵期出血」もしくは「中間期出血」と呼ばれます。治療の必要がないことがほとんどですが、腰痛や腹痛が激しい、出血量が生理よりも多い、出血が1週間以上続くというようなことがあれば注意が必要です。

着床出血

受精卵が子宮内膜に潜り込むときに、傷ついた組織から起こる出血が「着床出血」です。妊娠したときに生理予定日近くに見られる出血で「生理が始まった」と誤解することもあります。着床出血は一般的に生理の出血よりも色が薄く、出血量が少ないのが特徴です。

しかし、出血が数日続くこともあるため、高温期が続くのに出血があったときは生理予定日の1週間後に妊娠検査薬を使って検査をしてみましょう。ただし、出血量が多い、激しい腹痛を伴うというときは、早めに医療機関を受診してください。

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生理中・生理後の基礎体温と体調の変化は?

生理前に下がった体温は、生理後も排卵期まで低い状態が続きます。生理が終わり卵胞期になると、エストロゲンが分泌されます。エストロゲンは脳のはたらきを活発にしたり、髪や肌の状態を良くしたりする作用を持っています。そのため卵胞期は「キラキラ期」とも表現されるほど、気持ちも身体も軽快になる時期です。

しかし、ストレスや疲れがあってホルモンバランスが乱れていたり、年齢が高くなったりすると、低温期になっても体温が下がりきらないことがあります。高温期との差が0.3~0.5℃の範囲であれば問題ありませんが、基礎体温のグラフの変化に心配なことがあれば医師に相談してみると良いかもしれません。

基礎体温と生理周期から身体の状態を確認しよう

基礎体温の仕組みと、生理周期との関係性を把握すると、自分の身体の変化をある程度予測できるようになります。基礎体温のグラフがいつものパターンと違う様子をたどるときは、身体になんらかの不調が隠れているのかもしれません。ほかの身体の変化にも気を配り、心配なことがあれば医師に相談するなどの対応をしていきましょう。

とはいえ、基礎体温は測り方や部屋の環境などの影響を受けやすいため、実際の体温と誤差が生じることもあります。継続して状態を記録していくことで、自分のパターンがわかってくれば、様子を見て良いものか、医師に相談したほうが良いかもわかってくるかもしれません。

基礎体温を上手に活用し、生理前後の体調や生理周期にあわせた予定の管理に役立ててくださいね。

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