低用量ピル服用中の不正出血!避妊効果は?飲み忘れや妊娠との関係は?|産婦人科医監修
産婦人科医監修|避妊や生理不順の治療といったさまざまな目的で使用される低用量ピルですが、低用量ピルの服用中に出血が起こると、生理でないのにどうしてだろうと心配になりますよね。低用量ピル服用中に不正出血が起こるのは異常なのでしょうか。低用量ピル服用中の不正出血の原因と対策、飲み忘れや妊娠との関係について解説します。
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目次
不正出血とは?原因と種類は?
生理以外で性器から出血することをまとめて「不正出血」と呼びます。不正出血はその原因によって大きく4種類にわけることができます。
ホルモンバランスの異常による機能性出血
生理周期を保っているエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンのバランスが崩れると、生理以外の時期に出血してしまう可能性があります。ホルモンバランスの異常によって起こる不正出血を「機能性出血」と呼び、ストレスや疲れ、体調不良、不規則な生活、喫煙や飲酒などさまざまな要因が関係してくるでしょう。ピルを服用することによる不正出血もホルモンバランスが変化することによって起こるため、機能性出血に当てはまります。
婦人科系の病気を原因とする器質性出血
子宮がんや腟炎など、女性特有の器官に発症する婦人科系の病気が原因で不正出血が起こる場合があります。病気を原因とする不正出血を「器質性出血」と呼び、放っておくと命にかかわる病気もあるため、ほかの不正出血と間違えないように注意する必要があります。
生理と生理の中間に排卵によって起こる中間期出血
生理と生理の中間あたりにある排卵期には、女性ホルモンの分泌量が変化しやすく「中間期出血(排卵出血)」と呼ばれる少量の出血が起こる可能性があります。中間期出血は生理的な現象なので病気ではありません。
排卵が起こったからといって必ずしも中間期出血があるわけではないため、出血があってもなくてもそれほど気にする必要はないでしょう。出血量が多い場合や出血が止まらない場合にはほかの原因が考えられるため病院を受診してください。
妊娠にかかわる不正出血
妊娠中に起こる不正出血は、着床や出産の兆候となることがあります。具体的には、妊娠超初期に受精卵の着床によって起こる出血(着床出血)や陣痛や破水が起こる前に出産の兆候となる「おしるし」と呼ばれる出血があげられます。
こうした妊娠にかかわる不正出血は異常ではありませんが、婦人科系の病気や流産や早産・切迫流産、切迫早産の症状として不正出血が起こる場合もあります。不正出血その他の症状をしっかりとチェックして、異常がある場合にはすぐに病院に連絡できるように知識をつけておきましょう。
低用量ピルとは?服用すると不正出血が起こる?
低用量ピルとは
ピルは避妊のために用いられることで有名ですが、生理不順や月経困難症といった生理のトラブルを解消するために用いられることも多い女性ホルモン剤です。ピルにはエストロゲンとプロゲステロンの両方が配合されており、ピルを飲むことで妊娠しているときと同じホルモンの状態を保つことができます。女性ホルモンの配合量によって低用量、中用量、高用量の3種類に分類されますが、一般的によく用いられているのはホルモンの配合量が少ない低用量ピルです。
低用量ピルを服用すると不正出血が起こりやすい?
低用量ピルを服用すると、飲み始めたばかりの頃や飲み忘れたときに不正出血が起こる可能性があります。女性ホルモンの量がピルを服用することで増え、服用をやめることで減るためです。
通常のピルを用いた治療では、生理開始日から3週間継続して同じ時間にピルを飲み、7日間服用を中断するというサイクルを繰り返します。服用していない7日間には女性ホルモンの減少によって出血が起こりますが、これも「消褪出血(しょうたいしゅっけつ)」という一種の不正出血です。
低用量ピル服用中の不正出血の原因
飲み始めには生理の名残があることも
ピルは一般に生理開始日から飲み始めますが、ピルを飲み始めることで無理に生理による出血を止めることになります。剥がれ落ちはじめていた子宮内膜が子宮に残っている場合には、少しずつ体外に排出されて不正出血がしばらく続くかもしれません。
飲み始め~服用中に起こる「破綻出血」
ピルを飲み始めて以降服用を継続しているあいだには、「破綻出血」と呼ばれる不正出血が起こる可能性があります。破綻出血は、ピルの服用によってエストロゲンが増加したために子宮内膜が分厚くなりすぎてしまい、プロゲステロンの働きが間に合わず子宮内膜を維持できなくなってしまうことで起こります。少量の出血であれば心配ないことがほとんどでしょう。
飲み忘れによる「消褪出血」
ピルを飲み忘れると、ピルの働きにより剥がれ落ちることなく保たれていた子宮内膜が、女性ホルモンの減少によって剥がれて不正出血を起こしてしまう可能性があります。ピルは通常3週間飲み続けたあと4週目に服用をやめ、そのあいだに女性ホルモンが減少することで消褪出血と呼ばれる出血が起こりますが、ピルを飲み忘れることでこれと同様の出血が起こることになるのです。
嘔吐や下痢による消化不良
嘔吐や下痢でピルが体内にしっかりと吸収されないまま体外に排出されてしまうと、ピルの効果が薄れてしまい不正出血が起こりやすくなると考えられます。ピルを飲み忘れたときと同様に、女性ホルモンの働きによって保たれていた子宮内膜が剥がれ落ちてしまう可能性があるでしょう。
低用量ピル服用中に不正出血!性行為をしても大丈夫?
低用量ピルの服用中に不正出血が起こった場合、性行為をしても避妊の効果はあるのでしょうか。飲み始めや服用継続中に不正出血が起こった場合には性行為をしても基本的には問題ありませんが、飲み忘れによって不正出血が起こった場合には注意が必要です。
1~2錠の飲み忘れ
1~2錠の飲み忘れであれば、できるだけ早く服用して次の日からまた同じ時間に服用することで避妊効果が保たれます。わざわざピル以外の避妊を行う必要はないでしょう。
3錠以上の飲み忘れ
3錠以上飲み忘れてしまった場合は、できるだけ早く服用して次の日からも継続して服用することに加え、7日間程度は性交を行わないか、コンドームを用いて避妊を行ってください。
低用量ピル服用中の不正出血は妊娠と関係ある?
低用量ピルの服用中に起こる不正出血は、妊娠と関係があるのでしょうか。
不正出血は子宮内膜が剥がれ落ちることで起こるため、不正出血が起こっているときに妊娠していることは基本的にはありません。たとえ受精卵が子宮内膜に着床したとしても、子宮内膜が剥がれ落ちてしまえば体外に流れ出てしまうことになるからです。
低用量ピルの服用を中断しているのに消褪出血が起こらない場合には、妊娠を疑うことがあるでしょう。
不正出血が止まらない!本当に低用量ピルが原因?
ピルの飲み始めの不正出血や飲み忘れによる不正出血は珍しくありませんが、しばらく様子を見ても出血が止まらない場合には婦人科で診てもらいましょう。ピル以外の原因で不正出血が起こっているかもしれません。
子宮の病気
子宮頸がん(しきゅうけいがん)や子宮体がん、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮頸管炎、子宮頸管ポリープといった子宮の病気になると不正出血が起こることがあります。下腹部痛や性交時痛、排尿時痛、性器のかゆみなど、病気によっては不正出血以外の症状を伴うことが多いため、不正出血だけでなく身体全体の症状をチェックしておきましょう。
腟の病気
腟がんや細菌性腟症、萎縮性腟炎といった腟の病気も不正出血を伴う場合があります。細菌性腟症にかかると灰色がかった水っぽいおりものが出るという特徴があるため、おりものの変化にも注目すると良いでしょう。
性感染症
トリコモナス腟炎や淋菌感染症(淋病)、性器クラミジア感染症といった性感染症にかかると不正出血が起こる可能性があります。病気によってはおりもの以外に下腹部痛や発熱、性器のかゆみや刺激感を感じる場合があるでしょう。
また、細菌性腟症と同様におりものの変化にも注目する必要があります。おりものが黄色や黄緑に変化したり泡状・膿状になったりした場合には、性感染症の疑いがあるため病院で診てもらいましょう。
低用量ピル服用中に不正出血が起こったら?
低用量ピルを飲み忘れないようにする
低用量ピルは継続して飲むことが大切です。飲み忘れで不正出血が起こることがあるため、毎日同じ時間に忘れず飲むように心がけましょう。
低用量ピルは21錠が1シートになっており、7日間服用を中断する場合が多いですが、ピルの成分を含まない7錠(プラセボ)を含む28錠で1シートになっている場合もあります。これは、服用を中断しないことでピルの飲み忘れを防ぐ目的でつくられたシートですので、飲み忘れが心配な人は28錠のシートを処方してもらうと安心です。
低用量ピルを飲み忘れた場合や嘔吐や下痢で体外に排出してしまった場合には、再度できるだけ早く服用し、次の日からまた予定通りに服用してください。
腹痛や腰痛がないか確認
低用量ピルの服用中に不正出血が起こったときは、腹痛や腰痛、性交時痛、排尿痛、性器のかゆみ、おりものの状態の変化といった不正出血以外の症状がないかを確認しましょう。これらの症状があるときには、低用量ピルの服用以外の原因によって出血を起こしている可能性があるため、病院を受診してください。
不正出血がいつまでも止まらないときは病院へ
不正出血以外の症状がない場合でも、不正出血が自然に収まらないときは病院に行きましょう。低用量ピル以外の原因があればその治療を行う必要がありますし、ピルが原因の場合でも出血量や期間によっては止血薬を用いて応急処置を行う可能性があります。
不正出血以外の低用量ピルの副作用は?
頭痛や吐き気
低用量ピルを服用すると、一般に頭痛や吐き気、乳房の張り、にきびといった副作用が出る場合があります。これらの症状は低用量ピルを服用し始めて1ヶ月~2ヶ月経つと収まってくる場合がほとんどであるといわれていますが、副作用がひどい場合には病院に相談しましょう。
血栓症になるリスクが高まる
ピルを服用すると、血栓症を発症するリスクが高まることが指摘されています。血栓症の主な症状としてはむくみや血栓ができた部位の疼痛(痛み)、重症の場合には呼吸困難などがあげられ、年齢や肥満などもともとの体質、喫煙などの要素と相まって引き起こされると考えられています。発症頻度は高くありませんが、定期的に血液検査を行ってチェックしましょう。また、飛行機に乗る際などじっとしている時間が長くなる際には、時々足を動かしたり歩いたりするなどして血栓ができるのを予防しましょう。
不正出血は低用量ピル服用中によくあること
低用量ピルの服用中に出血があると、ピルで生理を抑えているはずなのにどうして出血してしまったのだろうと不安になってしまうかもしれません。しかし、低用量ピルの服用中には、体内の女性ホルモンの量の変化によって不正出血が起こりやすいと考えられます。飲み始めの不正出血や飲み忘れた場合の不正出血は自然に収まる場合がほとんどなので、過度に心配する必要はありませんよ。
不正出血がいつまでも止まらないときや、腹痛や腰痛を伴うときにはすみやかに病院に相談してくださいね。