産婦人科医監修|更年期の不正出血は長引くと病気?下腹部痛や大量の鮮血は大丈夫?
閉経前後の約10年間の「更年期」には、急速な身体の変化や体調不良に戸惑ってしまう人が多いのではないでしょうか。たとえば、生理のタイミングでない(あるいは閉経している)のに性器から出血があると不安ですよね。更年期に不正出血が起こるのは病気なのでしょうか。更年期の不正出血の原因と治療法、予防法について解説します。
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この記事の監修
目次
不正出血とは?更年期は不正出血が起こりやすい?
不正出血とは
生理以外で性器から出血することを「不正出血」と呼びます。不正出血の量や期間はさまざまで、一時的な少量の出血で収まる場合もあれば、量が多く何日も続く場合もあります。血液は鮮血のこともあれば、体内で血液が酸化して茶色や赤褐色になることもあるでしょう。
更年期の不正出血について知ろう
閉経の前後の計10年間の「更年期」と呼ばれる期間には、女性ホルモンの分泌量が低下することによって不正出血が起こりやすいと考えられています。40代~50代の女性が更年期の症状としての不正出血を体験することは決して珍しいことではありません。
しかし、更年期の症状だと思っていたものが実は別の病気の症状だったという場合もあります。正しい知識を持ち、病気の兆候を見逃さないようにしたいですね。
更年期の不正出血の原因は?
ホルモンバランスの乱れ
更年期の不正出血の大きな原因として、ホルモンバランスの乱れがあげられます。女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量は20代~30代にピークを迎え、更年期に近づくにつれて減少します。更年期にエストロゲンの分泌量が減り排卵しなくなると、通常はプロゲステロンのはたらきによって厚く保たれるはずの子宮内膜が少しずつ剥がれ落ちて不正出血をきたします。また生理が終わった後(閉経後)であっても、脂肪細胞が産生するエストロゲンの作用で不正出血が起こることがあります。
その他のホルモンバランスの乱れの原因としては、ストレスや疲れ、生活習慣の乱れがありますが、更年期には健康的な生活をしていてもホルモンの影響で不正出血が起こることがあります。
子宮や腟の病気
更年期に注意すべき不正出血の原因として、子宮や腟の病気があります。子宮や腟の病気はどの年代の人でも罹りますが、更年期以降はリスクが高まります。女性ホルモンの減少によって子宮や腟が細菌に感染しやすく、体力や免疫力も低下します。腫瘍性疾患の頻度も加齢ともに増えますよね。
子宮や腟の病気の場合には、下腹部痛や性交時痛、腰痛、排尿痛といった不正出血以外の症状を伴うことが多いため、不正出血とあわせて身体全体の症状を確認しておくことで、病気を早く発見することにつながるかもしれませんよ。
更年期に注意すべき不正出血の原因となる病気
更年期の不正出血の原因となる子宮や腟の病気には、どのようなものがあるのでしょうか。病気が進行すると治療が難しくなるものもあるため、病気の兆候を知って早期に発見しましょう。
子宮頸がん(しきゅうけいがん)
子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんである子宮頸がんは、不正出血を伴う可能性のある病気です。茶色い悪臭のあるおりものが出たり、性交時出血や経血量の増加を伴ったりすることもあります。早期に発見できれば比較的治療しやすい病気ですが、進行すると治療が難しくなるといわれています。定期的にがん検診を受けて早期に発見したいですね。
子宮体がん
子宮内膜にできる「子宮体がん」では不正出血がよくみられ、その他の症状としては、排尿時痛、性交時痛、骨盤付近の痛みがあります。子宮体がんの不正出血は、少量の出血が長く続く傾向があります。早期発見のために、不正性器出血や月経異常、あるいは茶褐色のおりものがある場合は、他の症状がなくても検査をうけるようにしましょう。
絨毛性疾患
胞状奇胎や絨毛がんがあります。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮頸管にできる腫瘍です。子宮頸管ポリープの組織は傷つきやすく、充血しているため、ちょっとした刺激に反応して不正出血を起こします。良性のものがほとんどで、病院に行けば簡単な処置で切除してもらえますよ。
萎縮性腟炎
「萎縮性腟炎」は、女性ホルモンの分泌量の低下によって腟内が委縮・乾燥してしまい、腟の中が傷つきやすくなり、性交時痛や性交時出血を認めたり、細菌に感染しやすくなったりします。「老人性腟炎」とも呼ばれます。
細菌性腟症
「細菌性腟症」は、多くの人にとって腟内の正常細菌叢であるラクトバシラス属が減少し、他のさまざまな細菌が異常増殖する病気です。灰色がかったおりもの、不正出血、下腹部痛が特徴です。症状がひどくなると子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎につながる場合もあるため、早い段階で治療をはじめたいですね。
子宮頸管炎
腟と子宮を結ぶ子宮頸管に細菌が感染して炎症が起こることを「子宮頸管炎」といいます。不正出血、性器のかゆみ、おりものが膿のようになる、といった症状があり、子宮内膜炎や骨盤腹膜炎と併発することもあります。
更年期の不正出血で病院に行く目安は?
更年期にはホルモンバランスの変化で不正出血が起こりやすい傾向がありますが、以下の症状がある場合には子宮や腟の病気が原因で出血している可能性があります。早めに婦人科を受診してください。
■不正出血がだらだらと長引く
■下腹部痛や腰痛、性交時痛を伴う
■大量の鮮血や茶色のおりものが出る
更年期の不正出血の治療法
ホルモンバランスを整える治療
女性ホルモンの減少が原因で起こる不正出血の場合は、止血効果のある薬を服用したり、足りないホルモンを身体に補てんする治療を行ったりする場合が多いでしょう。エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンを含むホルモン剤を投与してホルモンバランスを整えることによって不正出血をはじめとする更年期の症状を和らげます。
ただし、子宮体がんや乳がんをわずらっている場合には、エストロゲンを投与することでがん細胞のはたらきを促してしまう可能性があります。ホルモンの投与によって影響を受ける病気がないかどうか、治療をはじめる前に確認しておきましょう。
子宮がんの治療
子宮頸がんや子宮体がんの治療では、がんのステージや年齢など、治療を受ける人の状態に応じて手術や放射線治療、抗がん剤治療を行います。子宮体がんの場合には、プロゲステロン剤を用いたホルモン療法を行う場合もあるでしょう。医師から十分に説明を受けるとともに、医師や家族と十分に話し合い、納得した状態で治療を受けることができると良いですね。
子宮や腟の炎症の治療
子宮頸管炎や細菌性腟症のような細菌の感染による子宮や腟の炎症は、原因菌の種類によって抗生物質や抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原虫剤といった薬を用いて治療を行います。薬は飲み薬の場合もあれば、座薬のように腟の中に入れる薬の場合もあります。
更年期の不正出血の予防法
ストレスや疲労をためない
更年期はもともと女性ホルモンの分泌量が低下しやすい時期ですが、ストレスや疲労をためると余計に女性ホルモンの分泌を阻害してしまう可能性があります。疲れたときにはしっかりと休息をとり、ストレスをためないように心がけましょう。
規則正しい生活
不規則な生活もホルモンバランスの乱れにつながる場合があります。夜ふかしせずに十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送りましょう。
栄養バランスの良い食事
ホルモンバランスを整えるためには、偏食せずにさまざまな栄養素をバランス良く摂取することが大切です。主食、主菜、副菜から炭水化物やタンパク質、ビタミン・ミネラル、適度な脂質を摂取し、暴飲暴食や極端なダイエットは控えましょう。
女性ホルモンのはたらきを補う食べ物・サプリ
女性ホルモンと似たはたらきをする成分を摂取することにより更年期に低下する女性ホルモンのはたらきを補うことができる可能性があります。
こうした効果を持つ成分としては、大豆イソフラボンとレッドクローバーイソフラボンがあります。食事から取り入れることが困難な場合には、サプリで摂取しても良いでしょう。ただし、科学的に効果が証明されているわけではありません。過剰摂取には注意してください。
更年期の不正出血以外の症状
更年期には、女性ホルモンの分泌低下によって不正出血以外にもさまざまな症状があらわます。更年期に女性ホルモンの分泌低下をきっかけとして起こる身体的・精神的な不調のことを「更年期障害」と呼びます。更年期障害の主な症状は以下のとおりです。
自律神経にかかわる症状
のぼせ、ほてり、発汗、不眠、息切れ、動悸、疲労感、脱力感
精神神経にかかわる症状
不安感、抑うつ状態、恐怖感、集中力の欠如
運動器にかかわる症状
肩こり、腰痛、身体の節々が痛い(関節痛)
知覚にかかわる症状
手足のしびれ、手足の感覚が鈍い、皮膚の上をアリが張っているような感じがする
ひとりで抱え込まずに病院へ受診して
更年期は、さまざまな身体的・精神的な不調を感じやすい時期です。普段通りの生活を続けるだけでもつらいと感じてしまう人もいるかもしれません。そんなときに不正出血が起こると、ますます不安やつらい気持ちが大きくなってしまう人もいるのではないでしょうか。
身体の様子がおかしいと感じたときやつらいときには、自分で抱え込まずに病院に相談しましょう。自分の身体の状態を知ることで、少し安心できたり、早めに症状を改善できたりするかもしれませんよ。
更年期や閉経後の不正出血は病気でなくても起こることがあるとはいえ、病気の可能性についても十分に考慮しておく必要があります。自己判断に頼りすぎず、おかしいと感じたときには病院を受診することで、病気にできるだけ早く対処したいですね。