着床後の基礎体温の変化は?着床時期に体温が下がる・上がらないときの妊娠可能性は?【産婦人科医監修】

着床すると基礎体温はどのように変化するのでしょうか。着床完了のサインとなる基礎体温の目安や高温期に二段階上がりを示したり、着床時期に一時的に体温が下がったりする現象について解説します。基礎体温が低いままのときや、高温期に基礎体温が下がってしまったときに考えられる理由についても見ていきましょう。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 着床とは?いつ起こる?
  2. 排卵後から着床完了までの基礎体温の変化は?
  3. 着床時期に基礎体温が上がらない!妊娠可能性はある?
  4. 着床時期に基礎体温が二段上がりすることがある?
  5. 着床時期に基礎体温が下がる原因は?
  6. 着床後の症状
  7. 妊娠したときの高温期はいつまで続く?
  8. 着床時期の基礎体温はひとつの目安に
  9. 着床の関連記事はこちら

着床とは?いつ起こる?

妊娠が成立すること

妊娠は卵子と精子が受精する瞬間ではなく、受精卵が着床を完了した時点で成立します。着床完了にいたるまでは、排卵、受精、受精卵の分割、着床という複雑な過程を経ています。着床完了までの流れを細かく見ていきましょう。

卵巣から卵子が飛び出すことを「排卵」といいます。排卵した卵子は卵管の中に取り込まれ、卵管膨大部で精子と出会います。精子が卵子の中に潜り込むと「受精」が成立し、「受精卵」が誕生します。受精卵は分割を繰り返しながら卵管の中を子宮に向けて進みます。

子宮に到達した受精卵が、子宮内膜から伸びる絨毛に接着すると「着床」を開始します。その後、受精卵は子宮内膜の奥深くに潜り込み、表皮に完全に覆われて着床が完了するのです。

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妊娠3週に起こる

妊娠週数は、妊娠が起こる生理周期の初日からカウントを始めます。つまり、最終生理の開始日が妊娠0週0日目となり、平均的な28日周期で生理が来る場合、妊娠2週に排卵日を迎えます。

排卵後、受精卵が子宮にたどり着くまでには4~6日ほどかかり、着床が始まるのは受精から約7日目頃からです。着床が完了するまでにはさらに約5日を要します。こうして受精から約12日目に妊娠が成立するころには、妊娠3週を迎えています。

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排卵後から着床完了までの基礎体温の変化は?

基礎体温は生理周期で変化する

基礎体温とは、安静にしているときに計測できる体温のことで、排卵が正常に起こっていれば、生理周期に合わせ低温期と高温期の二相性を示します。基礎体温が二相性を示すのは、女性ホルモンの影響によるものです。エストロゲンの分泌が盛んな月経期から卵胞期までは低温となり、プロゲステロンの分泌が増える排卵期から黄体期までは高温となります。

体温の変動を基礎体温グラフに記録していくと、女性ホルモンの分泌が正常か、生理周期が乱れていないかなど、体調を管理するうえで役立ちますよ。

排卵後は高温期になる

排卵は、卵胞から分泌されるエストロゲンの血中濃度が一定値を超えたことを合図にして起こります。エストロゲンの血中濃度が上がると、脳下垂体から分泌される「黄体形成ホルモン(LH)」の量が急激に増加します。LHの急激な増加を「LHサージ」といい、そこから24~36時間以内で排卵が起こります。

LHサージが起こるタイミングと前後して、基礎体温が一時的に最低温を示します。この日を「体温陥落日」といい、一般的には体温が下がった翌日が「低温相最終日」となります。その後、体温は上昇に転じ、高温相へと移行します。排卵は体温陥落日、低温相最終日、高温相初日のいずれかで起こると考えられています。

排卵したあとの卵胞は、黄体へと変化します。黄体からはプロゲステロンが分泌されるようになります。プロゲステロンは体温上昇の作用がある女性ホルモンです。排卵後に基礎体温が上昇するのはプロゲステロンの作用によるものです。

着床すると高温期を維持する

黄体の寿命は約14日間で、寿命を迎えるとプロゲステロンの分泌が止まります。プロゲステロンは子宮内膜を維持するはたらきがあるので、分泌が止まると子宮内膜が剥がれ生理が始まります。

ところが受精卵が着床して妊娠が成立すると、黄体は妊娠黄体となり、子宮内膜を維持するためにプロゲステロンの分泌が続きます。そのため、着床後は基礎体温の高温が続きます。高温期が17日以上持続すれば、妊娠の可能性が考えられます。

体外受精の場合は、妊娠している状態を人工的に作るため、黄体ホルモン剤を投与します。胚移植後に黄体ホルモンの服用を中止しても高温相が維持されている場合は、妊娠していることが考えられます。

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着床時の基礎体温は個人差がある

基礎体温は個人差が大きく、妊娠したら何度になる、というような基準値はありません。37℃超えなら妊娠というような説も見受けられますが、基礎体温と妊娠の可能性については明確な指標がないため、37℃を超えていなくても妊娠している可能性はあります。

基礎体温を見るときは、体温が何度になっているかだけではなく、高温期の日数や生理の遅れなど、周期についても確認するようにしましょう。

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着床時期に基礎体温が上がらない!妊娠可能性はある?

基礎体温は体調や環境の影響を受けやすく、基礎体温がきれいな二相を示さないこともあります。基礎体温が乱れていても、排卵が起こり、性交のタイミングがあっていれば妊娠する可能性はあります。

もともと低温期と高温期の差が小さかったり、低いままだったりする人や、グラフがガタガタしてしまう人は基礎体温だけで排卵日を予測するのは難しいかもしれません。正確な排卵日を把握したいときは、排卵検査薬を使って予測すると良いでしょう。

基礎体温の乱れは、ホルモンバランスが崩れていたり、病気が隠れていたりすることも考えられます。もしも基礎体温が低温と高温にわかれない期間が2〜3周期続くときは、一度産婦人科で相談してみると安心です。

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着床時期に基礎体温が二段上がりすることがある?

一般的に、基礎体温が低温から高温へと上昇し、17日以上高温が続いた場合に妊娠が成立した可能性が高いと判断されます。着床と基礎体温の関係については、元助産師の福さんという方が唱えた「基礎体温の二段上がり」が知られています。

基礎体温の二段上がりは低温から高温へと移行した基礎体温が、着床したらさらにもう一段階上がるという現象です。医学的な根拠はなく、着床完了のサインとして基礎体温が二段階に上がるわけではありませんが、「排卵後4~5日目に二段上がりを見せた」という声も見受けられます。

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着床時期に基礎体温が下がる原因は?

正常妊娠でも基礎体温が下がることはある

基礎体温はホルモンバランスの影響を受けやすく、高温期であっても基礎体温が一時的に低下したり、ガタガタしたりすることは珍しくありません。また、風邪などの発熱で上昇した体温が、体調の回復とともに正常に戻ると体温が低下したように見えることもあります。

基礎体温は個人差があるものです。数日間の変化で判断するのではなく、週単位の長いスパンで状態を確認するようにしましょう。また、妊娠の可能性を考えるときは、基礎体温以外の妊娠の兆候に気を配ることが大切です。

インプランテーションディップ

インプランテーションディップとは、「インプランテーション=着床」と「ディップ=下がる」という言葉を組み合わせた言葉で、着床時期に基礎体温が一時的に下がる現象を指します。着床が開始するのは排卵から7日目頃というのが一般的で、インプランテーションディップもそのころに起こるとされています。

すべての妊娠に見られるわけではなく、医学的な定義も曖昧です。そのため、体温の低下が何日くらい続くのか、何度くらい下がるのかといった明確な指標はありません。ただし、インプランテーションディップが見られた場合、体温が低下した翌日には再び基礎体温は高温期の体温に戻ることが多いようです。

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正しい測り方ができていない

基礎体温は環境の変化を受けやすいものです。そのため、冬場の寒い部屋やクーラーが効いた部屋では体温が低めに計測されることがあります。基礎体温を計測するときは、できるだけ同じ条件で測れるように注意しましょう。

また、基礎体温は安静時に測るものなので、二度寝したり、寝返りを打ったりしたあとは通常より体温が高めになることがあります。このような場合、基礎体温が一定しない原因となります。正しい測り方ができなかったときは、グラフを空欄のままにするか備考欄に記載して、翌日から計測を再開するようにすると良いでしょう。

流産の可能性も

着床が完了すると、胎盤由来のホルモンである「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」の分泌が始まります。hCGは妊娠検査薬での判定に関係するホルモンで、市販されている検査薬では、hCGの分泌が安定する「生理予定日の1週間後」からの使用を推奨しています。

しかし、hCGは早ければ排卵から9日目頃には検知が可能となります。そのため、生理予定日前のフライング検査でも陽性反応を示すことがあります。妊娠検査薬で陽性反応が出た場合、生理予定日になっても生理が開始しなかったり基礎体温が高温のままだったりという妊娠の兆候があらわれると、妊娠している可能性が高いといえるでしょう。

しかし、基礎体温が下がってしまった場合は、生理開始予定日の1週間後に、妊娠検査薬を使って改めて検査をしてみましょう。検査結果が陰性であれば、化学流産の可能性が考えられます。陽性反応が出たときは、産婦人科を受診し医師による診察を受けるようにしましょう。

着床後の症状

受精卵が着床すると、着床痛や着床出血といった妊娠超初期症状を自覚することがあります。着床痛は受精卵が子宮内膜に潜り込んだときに起こる腹痛で、着床出血は生理予定日の一週間前から生理予定日のあいだに見られる出血です。いずれも医学的に証明された現象ではなく、妊娠しても症状があらわれないこともあります。

着床痛や着床出血以外に見られる妊娠初期症状には、吐き気やおりものの変化があげられます。ホルモンのバランスが大きく変わるため、全身のだるさ、眠気といった症状もあらわれやすくなります。

着床出血なのか生理なのかわからない出血の後に基礎体温が下がることもあります。この場合、妊娠しているのかその後に生理が始まるのか判断がつかないこともあるでしょう。基礎体温だけでは妊娠の可能性を否定できないため、そのほかの症状がないかを確認し、適切な時期に妊娠検査薬で検査するようにしましょう。

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妊娠したときの高温期はいつまで続く?

基礎体温は、妊娠中もずっと高温が続くわけではありません。妊娠12~15週頃には徐々に下がり始め、胎盤が完成する16週頃から出産までは低温相が続きます。胎盤が完成すると体調も落ち着いてくるので、妊娠の経過が順調であれば軽い運動や旅行を楽しむ人も増えてきまよ。

着床時期の基礎体温はひとつの目安に

排卵から着床が起こるまでの過程はとても複雑です。着床を示す基礎体温の変化や症状のあらわれ方には個人差があり、「絶対にこうならなければいけない」というものではありません。インプランテーションディップや基礎体温の二段上がりなど、着床と体温の関係については医学的な裏付けがないことも多いものです。基礎体温はひとつの目安としてとらえ、そのほかの身体の変化にも目を向けていきましょう。

着床時期は小さな変化に敏感になりすぎず、妊娠検査薬や医師による診断が可能となるまで、ゆったりとした気分で過ごすことも大切ですよ。

※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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