【産婦人科医監修】排卵後の卵子の寿命は?受精可能時間はいつまで?受精しやすいタイミングについて
妊娠するためには、女性の身体に排卵が起こることが大切です。さらに、排卵後の卵子がどのような状態なのか、卵子や精子には寿命や受精可能時間があるのかを知ることで、妊娠の確率を高めることができます。ここでは、排卵と生理周期についての知識や、精子と卵子が受精しやすい状況、パートナーとの性交渉におすすめのタイミングを紹介します。
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目次
排卵と生理周期
「排卵」とは、月に1回、通常ひとつの成熟した卵子が卵巣から飛び出すことです。
卵子はもともと卵巣内の袋状組織「卵胞」の中にあります。卵胞期に脳の下垂体から分泌される「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の影響で、卵巣内に「卵胞ホルモン(エストロゲン)」が分泌され、卵胞が成熟していきます。排卵は、卵胞ホルモンがピークに達して下垂体から「黄体形成ホルモン(LH)」が分泌され、その影響で成熟した卵胞を破って卵子が飛び出してくることなのです。
女性の生理周期は「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」にわけられ、順調な生理周期ではこの4つのサイクルを25~38日で繰り返します。
・月経期
分泌されていた黄体ホルモンと卵胞ホルモンが減少し、いらなくなった子宮膜がはがれ、血液と一緒に体外に出される時期(いわゆる生理の期間)
・卵胞期
卵胞刺激ホルモンの働きで卵巣内の原始卵胞のひとつが成長しはじめ、卵胞ホルモンのはたらきによって卵胞が成熟する時期
・排卵期
卵胞ホルモンの分泌がピークを迎え脳の下垂体から黄体形成ホルモンが分泌されることにより、成熟した卵子が卵胞から飛び出し、卵巣の外へ出る時期
・黄体期
卵巣内に残った卵胞が黄体となり、黄体ホルモンが分泌され、受精卵が着床する準備に入る時期(このときに受精卵が子宮内膜に着床しなかった場合、月経期へとループし生理が起こります)
排卵期は経血が排出される月経期と違い、目に見えた身体の変化がありません。しかし、まれにお腹がチクチク痛む排卵痛があったり卵巣が少し傷ついて少量の出血があったりするなどの違和感がある場合があります。
排卵期の卵胞の状態
排卵期の成熟した卵胞は20mm程度です。まだ成熟していない原始卵胞の段階で0.05mm程度とされているので、卵胞ホルモンの影響を受けて短期間で急激に成長を遂げて排卵に備えているといえます。その後、卵胞が20mm程度に達したときに卵子が卵胞の外に飛び出し排卵します。
卵胞の成長スピードにはムラがありますが、卵胞が約20mmに至らないまま排卵すると、不妊の原因となることがあります。卵胞の成長は卵胞ホルモンとの関わりが大きく、卵胞ホルモンの分泌が少ないと卵胞が十分に成長できない状況にあるというわけです。
その結果、通常であれば28日くらいの周期で訪れる生理が、卵胞の成長が遅いために30日、35日、40日周期と普段よりも伸びることになります。ただし、もともとの月経周期が35日など長めな場合には、周期に目立った変化がない限りは心配いらないことがほとんどです。定期的なタイミングで排卵が起こるように卵胞の成長をサポートするためにも、卵胞ホルモンが正常に分泌されるように生活習慣を整え、できるだけストレスを抱えない生活を心がけると良いでしょう。
排卵後、卵子の寿命と受精可能時間
排卵した卵子と精子が交わることで受精が成立しますが、卵子は体内にいるあいだずっと生き続けるわけではなく、寿命があります。さらに、妊娠の過程において重要な、精子との受精可能時間も限られてくるのです。
卵子の寿命
排卵した卵子の寿命は、わずか24時間といわれています。
排卵時に卵巣を飛び出した卵子は、卵管の先にある卵管采に取り込まれると少し奥に入り、卵管膨大部で精子を待ちます。そこでタイミングよく精子がやってきて交わることができれば、受精が成立するということです。
受精可能時間
卵子と精子の受精が成立する時間は卵子の寿命よりさらに短く、排卵後、約6~8時間です。ひと昔前までは、排卵をしてから卵子の寿命である1日程度は妊娠が可能だとされていましたが、現在では、卵子の寿命と受精可能時間は異なるとされています。そのため、排卵時期を見極めることは、妊娠するうえで大切だといえるでしょう。
卵子の寿命と年齢の関係
卵子は加齢とともに数、質ともに低下します。日本生殖医学会の「年齢による卵細胞数の変化」によると、卵子のもとになる原始卵胞は、出生時には約200万個あったものが37歳を過ぎると急速に減り、1,000個を下回ると閉経するとあります。
原始卵胞は生まれたときから数に限りがあり、毎月ひとつずつ成熟させて排卵しているのです。
精子の寿命と受精可能時間
精子の寿命は、女性の身体に入ってから約3日、72時間です。
精子は、1度の射精で1億〜4億個排出されます。そのうちの数千万~数億個の精子が腟内に入り、卵管膨大部で待つ卵子にたどり着くために前へ進みます。しかし、女性の腟内は細菌やウイルスに侵されないように強い酸性の状態に保たれているため、すべての精子が卵子と出会えるわけではなく、酸性に弱い精子は腟内でほとんどが死んでしまうのです。
子宮頸管までたどり着く精子の数は、射精時の100分の1程度だとされています。さらに、卵子までたどり着ける精子の数は数十個~数百個と減少します。生き残った精子が子宮内を移動して卵管に入り、卵管膨大部で待っている卵子と交わることができれば受精可能というわけです。
排卵日は予測できる?
排卵日の予測は不可能ではありませんが、個人で行った場合、正確に予測することは難しいでしょう。
計画的に妊娠するためには、排卵日を予測して精子と卵子をうまく受精させることが大切になってきます。基礎体温表から排卵日を推測することが可能とされていましたが、経腟超音波の普及によって数時間単位で排卵を予測できるようになると、最低体温日が排卵日になるとは限らないことがわかってきました。また、ストレスなどから生理周期が乱れるなど、予測が正確でない場合もあります。
排卵日かどうか自分で見極めるために、排卵検査薬のような自宅で排卵を予測できる検査薬があります。排卵検査薬は、排卵前に分泌が盛んになる黄体形成ホルモン(LH)に反応し、排卵日を予測するツールです。排卵検査薬の陽性反応が出ると、約40時間以内に排卵が起こるとされています。基礎体温表をサポートするために、排卵検査薬を活用しても良いでしょう。
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性交渉のタイミング
妊娠しやすいのは排卵前の性交渉?
排卵期を予測し、排卵前に性交渉することで妊娠の可能性が高くなります。
これは、精子の寿命は約3日、卵子の寿命は約24時間で受精可能時間が6~8時間という精子と卵子の寿命に着目したものです。排卵が起こる前に精子が卵管膨大部で待機していることが、受精にベストなタイミングといえます。
米国の生物統計学者である、デビッド・ダンソン博士が避妊をしないカップルを集めて行った実験によると、「排卵の2日前が最も妊娠にいたる確率が高い」というデータが出たそうです。もともと女性の腟内は酸性で、精子にとって生存しにくい環境なのですが、排卵日前からはアルカリ性の粘液が分泌されます。腟内がアルカリ性になると、精子にとって過ごしやすい環境となるため、子宮から卵管膨大部へたどり着くことができやすいとされています。
性交渉のタイミングで産み分けができる?
産み分けに関しては解明されていないことが多いのが現状です。しかし、医学的には性交渉のタイミングや精子や卵子・女性の腟内の状況など、さまざまな特徴を生かして産み分けができるとされています。
精子には「女の子を作るX染色体」と「男の子を作るY染色体」の2種類があるのに対し、卵子は「X染色体」のみを持っています。つまり、「XX染色体=女」「XY染色体=男」とされ、排卵した卵子にどちらの染色体の精子が交わるかによって、男の子か女の子か産み分けられるということです。
そのためには、X染色体とY染色体の特徴を知っておきましょう。男の子を作るY染色体の寿命が1日なのに対し、女の子を作るX染色体の寿命は2~3日と長く生きます。
また、Y染色体が酸性に弱くアルカリ性に強いのに対し、X染色体は酸性に強くアルカリ性に弱いので、その特徴を活かして性交渉のタイミングをはかることが大切です。そのほかに、2ヶ月以上、リンカルという体質改善のカルシウム製剤を使用してから男児の産み分けをする場合もあります。
産み分けを実施している産婦人科もあるので、計画的に産み分けをしたい場合は受診してみると良いでしょう。ただし、産み分けは100%の確率で希望通りにいくとは限りません。ひとつの産院のデータでは70~80%とされています。妊娠にいたるだけでも奇跡なので、授かった命を育む身体づくりも心がけていきたいですね。
卵子の質を上げる方法
卵子の質に個人差はある?
卵子の質には個人差があり、老化が進んでいない卵子ほど妊娠の確率が高くなるといわれています。老化が進んでいないということは、卵子の寿命も長いということであり、実年齢が若いほど卵子の質が良いとされ、妊娠しやすい卵子だということです。
年齢を重ねるのは自然の摂理です。しかし、年齢とともに卵子の質が低下すると、妊娠しても染色体異常や胎児発育不全、胎児発育遅延などのリスクが高まるため、妊娠率が低下して流産の確率が増えるとされています。
卵子の質を上げるには
生まれたときから卵巣に備わっている原始卵胞は、排卵のたびに通常ひとつずつ排出されます。人間の身体を若返らせるのが不可能なように、生まれたときから持っている卵子を若返らせるのは、今の技術では難しく、卵子の質を劇的に上げることはできないのが現状です。
ただし、「卵子の質の低下=老化」と考えると、質を落とさないための予防策はあげられます。まず、老化を予防するためには規則正しい生活習慣が大切です。身体を温め、成長ホルモンが分泌される時間帯を考えて夜の12時までには就寝するなど、生活習慣を整える必要があります。
また、身体の細胞はさまざまなストレスを受けて損傷が進むとされているので、できるだけストレスフリーの生活を心がけることは、卵子の質と寿命を保つことにつながるでしょう。
受精は奇跡のタイミング
計画的に妊娠するためには、女性の身体に起こる排卵の時期を知ることが大切です。さらに、排出された卵子の寿命や受精時間、そのあいだに精子がどこにいるべきかを知ることによってパートナーと性交渉のタイミングを測ることができ、妊娠に近づくことができます。
卵子の寿命は約24時間程度、受精のタイミングはわずか6~8時間というメカニズムを知れば知るほど、妊娠は奇跡に近いと思えるのではないでしょうか。
毎日基礎体温を測り、自分の身体の状態を知っておきたいですね。基礎体温を日課にすることに加え、できるだけ質の良い卵子の状態を保つために、規則正しい生活とストレスを減らす生活を心がけましょう。
※この記事は2023年8月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。