【産婦人科医監修】絨毛膜下血腫とは?原因や腹痛・出血などの症状、流産との関連性について解説
妊娠初期から中期に「絨毛膜下血腫」と診断されることがあります。安静にしていれば治る場合もありますが、腹痛や出血など流産と似た症状があらわれることがあり、心配になる妊婦さんも少なくありません。仕事を続けられるか気になる人もいるでしょう。ここでは絨毛膜下血腫の原因や症状、治療法、流産との関連性について解説します。
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目次
絨毛膜下血腫の原因は?エコーでわかる?
「絨毛膜下血腫」という病名は、聞き慣れない人が多いかもしれません。読み方は「じゅうもうまくかけっしゅ」で、妊娠初期から中期にみられる病気です。
赤ちゃんを包む胎嚢(たいのう)のまわりにある絨毛膜という部分の下に、なんらかの原因で血液がたまっている状態を指します。絨毛がエコー写真で絨毛膜と子宮壁のあいだにスペースを確認できた場合には、絨毛膜下血腫と診断される可能性があるでしょう。
絨毛膜下血腫の原因は不明ですが、絨毛膜を経て脱落膜へと絨毛が伸びる際に絨毛膜と脱落膜の剥離を起こしたため、または血管が破けて出血したために血液がたまり血腫になると考えられています。絨毛膜下血腫の原因はストレスという説もありますが、絨毛膜下血腫とストレスの関係性については不明です。
むしろ絨毛膜下血腫を心配しすぎることで、大きなストレスがかかるかもしれません。妊娠中は精神的に不安定になりやすい傾向があるためなかなか難しいかもしれませんが、できるだけ気にし過ぎないようにしたいものですね。なお、血腫は身体に吸収されて自然に消えることが多いといわれています。
絨毛膜下血腫の症状は?腹痛や出血?
絨毛膜下血腫があると、切迫流産に似た症状が現れることがあります。主な症状は出血や下腹部痛ですが、出血しかみられないこともあるので注意が必要です。おりものに少量の血が混ざることで茶色になることもあるでしょう。人によっては腰痛を感じることもあるようです。
妊娠初期は、妊娠に気づいていない場合もあるので、下腹部痛や出血を生理によるものと思い込み、受診が遅れることも考えられます。茶色いおりものは生理前にもみられることがあるので、生理前の症状と勘違いしてしまう場合もあるでしょう。
下腹部痛や出血、腰痛などの症状が止まらない場合や繰り返す場合に限らず、症状が一度でも現れた場合は念のため病院を受診しましょう。絨毛膜下血腫以外のなんらかの異常が見つかる可能性もあります。
絨毛膜下血腫と流産の関連性は?
絨毛膜下血腫と流産の関連性
絨毛膜下血腫の多くは、身体に吸収されて自然治癒するといわれています。しかし、血腫が大きくなると、流産や早産の原因になる場合があると考えられています。具体的にどれぐらいの大きさになると流産や早産がおこるかはわかっていません。また、流産になる確率についても詳しくはわかっていないため、絨毛膜下血腫と診断された場合には、医師の指示にしたがって治療を受け、安静に過ごすことが大切です。
なお、絨毛膜下血腫があり、流産した場合には、他の原因がある可能性も考えられます。たとえば、妊娠12週までの流産は赤ちゃんの染色体異常によるものが多いといわれています。また、絨毛膜羊膜炎を併発することで流産や早産が起こる可能性もあります。
絨毛膜下血腫と早産の関連性
絨毛膜下血腫が大きくなった状態で出産を迎えた場合には、早い段階で破水する可能性があります。このように、子宮になんらかの問題が起こっている場合には、前期破水や早期破水などイレギュラーな事態が起こることがあるため、妊娠の経過に合わせて適切に行動する必要があります。
前期破水や早期破水の可能性がある場合は、早いタイミングで病院に連絡をとることになるでしょう。また、状態によっては陣痛が起こる前に入院するよう指示されることもあります。
絨毛膜下血腫の治療法・予防法は?
安静療法・経過観察となる場合が多い
絨毛膜下血腫の治療法は確立されていません。そのため薬を使用して治療を行うケースは少なく、医師から安静にするよう指示される場合が多いようです。安静にすることの効果についてもまだ研究段階で、肯定的な意見もあれば否定的な意見もあります。
漢方薬を用いることがある
絨毛膜下血腫に漢方の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が有効との報告もあるため、使用が検討される場合があります。漢方薬には、妊娠中でも使える安全性が高いものもあります。ただし、漢方薬であっても薬を自己判断で服用すると、身体に悪影響をおよぼす可能性があります。漢方医や医師の指示にしたがって服用するようにしましょう。
治療は保険適用内
絨毛膜下血腫の治療は保険適用で受けられます。ただし、入院が必要になった場合にかかるベッド代などは自費になることが多いです。どれぐらいの費用がかかるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
残念ながら予防法はない
絨毛膜下血腫を予防する方法は、今のところ発見されていません。また、絨毛膜下血腫になりやすい人の傾向も不明です。そのため絨毛膜下血腫の予防のために特別になにかをする必要はないでしょう。
ただ、妊娠初期は胎児の器官が形成される大切な時期であるとともに、心身が不安定な時期でもあります。できるだけ無理をしないように心がけましょう。
絨毛膜下血腫でも仕事はできる?いつまで安静?
診断後も仕事ができる場合は?
絨毛膜下血腫と診断された場合には、安静に過ごす必要があります。そのため、医師の許可を得られるまでは仕事を休むことになるでしょう。ただし、デスクワークであれば医師の許可を得られる場合があります。その場合は、「1日3時間まで」など業務時間の短縮を指示されることがあります。
宅配業や引っ越し業の他、保育士や介護士、看護師など身体を使う仕事は休まざるをえないかもしれません。また、営業の外回りの他、調理師やレジ業務、ライン作業などで歩いたり立ったりする時間が長い仕事も避けたほうが良いでしょう。具体的にどのような業務が勤務継続が可能なのかは、症状によって変わります。仕事を休むかどうかは、医師の指示にしたがいましょう。
また、勤務先に自分の病状を伝えづらい場合は、母性健康管理指導事項連絡カードを使用することを検討してみましょう。
安静期間はいつまで?
絨毛膜下血腫の診断によって医師から指示される安静期間は、絨毛膜下血腫の大きさや絨毛膜羊膜炎のリスク、妊娠の経過など、さまざまなことを踏まえて決まります。
場合によっては、入院して処置を受けることもあるでしょう。「いつまで安静にすればよいのか」といった期間は、症状に個人差があるため一概には言えません。血腫が自然に身体に吸収される場合もあれば、大きくなっていく場合もあり、診断してすぐは判断がつかないためです。
体調に変化が起きた場合は病院に連絡を
自宅での安静期間中に、出血の量が増えたり腹痛が強くなったりと症状に変化がみられた場合は、病院に連絡して医師の指示を仰ぎましょう。症状によっては絨毛膜羊膜炎が疑われ、入院・治療が必要になります。
絨毛膜羊膜炎の初期症状は、お腹の張りやおりものの増加などですが、まったく症状が現れない場合や、絨毛膜下血腫の症状に隠れている場合もあります。症状が進行すると、子宮の痛みや発熱がみられることがあるので、少しでも違和感がある場合には、医師の診察を受けるようにしましょう。
絨毛膜下血腫と診断されたら医師の指示にしたがって過ごそう
絨毛膜下血腫になったからといって、すぐに流産や早産につながるわけではありません。血腫の多くは自然に身体に吸収されます。あまり心配しすぎないようにしましょう。
また、絨毛膜羊膜炎に進行すると流産や早産のリスクが高まるため、予防のための治療が必要になります。絨毛膜下血腫は、大きさや腟内の細菌の量などによって対応が異なるので、医師の指示にしたがってくださいね。
※この記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。